
【熊本対応・2026年9月時点】就労継続支援B型の開業・運営ガイド― 指定申請から運営顧問・運営指導対策まで一括支援|行政書士法人塩永事務所 ―
本記事の基準日:2026年9月 2026年6月施行の臨時報酬改定(令和8年度障害福祉サービス等報酬改定)および、2025年11月28日付厚生労働省「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」を反映しています。制度・自治体運用は頻繁に変わるため、実際の手続きでは必ず指定権者(熊本市内は熊本市、市外は熊本県)の最新の要項・様式をご確認ください。
はじめに|B型を取り巻く環境は「拡大期」から「適正化期」へ
就労継続支援B型は、障がい福祉サービスの中でも事業所数が急速に増えた分野です。しかし2025〜2026年にかけて、国の姿勢は明確に**「量の拡大」から「質の確保と適正化」**へ転換しました。
具体的には、次の3つが同時に進んでいます。
- 新規指定審査の厳格化 厚生労働省が2025年11月28日に自治体向けガイドラインを発出。事業計画書の審査、専門家会議による審査、現地審査などを含む多段階の審査プロセスが示されました。
- 新規開設事業所への報酬単価引き下げ 2026年6月1日以降に新たに指定を受けるB型事業所は、基本報酬が所定単位数の984/1000(約1.6%減)となりました。
- 総量規制の強化(熊本市は明確に実施中) 熊本市は区ごとに指定枠を設定し、枠を超える新規指定を行いません。
つまり、「開業しやすい事業」ではなくなったというのが2026年時点の正確な現状認識です。一方で、地域における役割そのものは引き続き重要であり、丁寧に設計された事業所は依然として指定を受け、安定運営できています。
1. 就労継続支援B型とは(制度の正確な理解)
制度上の位置づけ
障害者総合支援法に基づく訓練等給付の一つです。
一般企業等での雇用が困難な障がいのある方に対し、雇用契約を締結せずに就労の機会および生産活動の機会を提供し、知識および能力の向上のために必要な訓練等を行うサービス
A型との違い(正確な整理)
| 項目 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 |
|---|---|---|
| 雇用契約 | あり | なし |
| 支払われる金銭 | 賃金(最低賃金法の適用あり) | 工賃(最低賃金法の適用なし) |
| 工賃・賃金の下限 | 地域別最低賃金 | 月額平均3,000円以上(工賃向上計画に基づく目標設定が必要) |
| 主な対象者 | 雇用契約に基づく就労が可能な方 | 雇用契約に基づく就労が困難な方(年齢・体力・障害特性等による) |
| 基本報酬の主な決定要素 | スコア方式(経営改善計画等) | 職員配置・利用定員・前年度の平均工賃月額等 |
よくある誤解:B型は「賃金」ではなく「工賃」です。求人票・利用者向け資料・ホームページでの表記ミスは、運営指導で指摘される典型例です。
対象者要件(見落としが多い重要ポイント)
B型を利用できるのは、原則として次のいずれかに該当する方です。
- 就労経験があり、年齢や体力の面で一般企業等での雇用が困難となった方
- 50歳に達している方、または障害基礎年金1級を受給している方
- 上記以外で、就労アセスメントにより就労面の課題等の把握が行われた方
このアセスメントは、**2025年10月1日に施行された「就労選択支援」**へ順次移行しています。対象者の範囲は段階的に拡大される予定のため、利用者受入れフローの設計時には、指定権者に最新の取扱いを確認してください。ここを誤ると「利用契約はできたが支給決定が下りない」という事態になります。
主なサービス内容
- 生産活動(軽作業、農作業、清掃、飲食、IT・デザイン、内職受託 など)
- 就労に必要な知識・能力の向上のための訓練
- 生活支援・健康管理支援
- 一般就労や就労移行支援等への移行支援
- 社会参加の機会の提供
新ガイドラインでは、生産活動の内容が「就労に必要な知識・能力の向上」に資するものかが重点確認項目とされています。単なる作業の切り売りや、利用者の能力向上に結びつかない活動は、指定・運営指導の両面でリスクになります。
2. 開業までの流れ【実務ベース】
① 法人格の取得
株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人等の法人格が必須です。定款の事業目的に「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」等の記載が必要です。目的追加を忘れて手戻りになるケースが多発します。
② 事業計画の策定(採否を最も左右する工程)
2026年現在、事業計画書は形式審査ではなく内容審査の対象です。国のガイドラインは、事業計画に次の事項を記載させるよう自治体に求めています。
- 事業の目的および事業所に求められる責務の理解
- 法人の理念
- 当該事業を選択した理由
- 支援員の人員体制および研修計画
- 利用定員の根拠
- 地域の関係機関(相談支援事業所、就労支援機関、特別支援学校等)との連携
さらに審査の観点として、次が挙げられています。
- 地域のニーズとの整合性
- 利用者確保の現実性(見込みの根拠)
- 生産活動の継続性・内容の適切性
- 収支計画の妥当性(工賃を支払える収支構造か)
重要:ガイドラインでは、自治体が行う面談はコンサルティング会社や代理人ではなく、法人代表者・管理者・サービス管理責任者本人に対して行うことと明記されています。代行業者に丸投げして代表者が制度を説明できない、という状態では通りません。当事務所が「伴走型」を採るのは、この点が理由です。
③ 物件の選定(早い段階で不可逆的に決まる部分)
必須チェック項目
- 都市計画法上の用途地域と、建築基準法上の用途(「児童福祉施設等」に該当)
- 用途変更の要否(特殊建築物への用途変更は原則200㎡超で確認申請が必要)
- 消防法令適合(用途区分の判定、消防用設備等、防火管理者の要否)
- 設備基準:訓練・作業室(利用者1人あたり概ね3㎡以上が目安)、相談室(プライバシーに配慮された区画)、洗面所、便所、多目的室等
- バリアフリー、動線の分離
- 賃貸借契約における使用目的の記載、貸主の承諾
賃貸借契約を結んだ後に不適合が判明すると、原状回復費用や違約金が発生します。契約前の確認が必須です。
④ 人員配置(制度上の最難関)
必置の職種
| 職種 | 基準の概要 |
|---|---|
| 管理者 | 1名(常勤。業務に支障がない場合は他職種・他事業所と兼務可) |
| サービス管理責任者 | 利用者60人以下で1名以上(うち1名以上は常勤) |
| 職業指導員・生活支援員 | 合計で常勤換算10:1以上(人員基準上の最低ライン)。それぞれ1名以上を配置し、いずれか1名以上は常勤 |
サービス管理責任者の要件(ここで計画が崩れるケースが最多)
- 一定の実務経験(従事した業務の種別により3〜8年、証明書の取得が必要)
- サービス管理責任者基礎研修の修了
- 基礎研修修了後、OJT(原則2年、要件を満たせば6か月)を経て実践研修を修了
研修は年間の開催回数・定員が限られており、申込時期を逃すと開業が半年〜1年単位で遅れます。人材を確保しても「実践研修が未了で配置できない」という事例が非常に多く見られます。
加算に関連する配置
- 目標工賃達成指導員:配置により「目標工賃達成指導員配置加算」の対象
- 常勤換算10:1を上回る7.5:1・6:1配置により、上位のサービス費区分を算定可能
⑤ 指定申請(行政手続き)
主な提出書類
- 指定申請書、付表
- 登記事項証明書、定款
- 運営規程
- 重要事項説明書
- 勤務形態一覧表、資格証・実務経験証明書の写し
- 組織体制図、経歴書
- 平面図、写真、設備・備品等一覧
- 事業計画書、収支予算書
- 利用者からの苦情解決措置の概要
- 損害賠償保険の加入状況を証する書類
- 障害福祉サービス事業者等指定申請書別紙(体制等状況一覧:加算届)
- 消防法令適合通知書 等
書類総量は100〜150ページ規模になるのが通常です。
スケジュールの目安
指定希望日の数か月前から準備が必要です。熊本市のように年1回の公募制を採る自治体では、公募時期を逃すと1年待ちになります。
⑥ 指定後(ここからが本番)
- 個別支援計画の作成・6か月に1回以上のモニタリングと見直し
- サービス提供記録・支援記録の作成と保存(原則5年)
- 国保連合会への給付費請求(毎月10日までの請求)
- 各種加算の要件充足の継続的管理と体制届の提出
- 工賃向上計画の策定・提出、平均工賃月額の実績報告と報酬区分の届出
- 障害福祉サービス等情報公表制度への年1回の報告
- 変更届(10日以内)、指定の更新(6年ごと)
- 運営指導への対応
新ガイドラインでは、新規指定から概ね6か月を目途に運営指導を実施する方針が示されています。「開業して落ち着いてから体制を整える」では間に合いません。
3. 2026年の制度変更で、必ず押さえるべき点
① 2026年6月施行の臨時報酬改定
本来、次の大改定は2027(令和9)年度の予定でしたが、物価上昇等を踏まえ、2026(令和8)年度に臨時の改定が行われました。B型に関する主な内容は次のとおりです。
| 改定事項 | 施行 | 内容 |
|---|---|---|
| 就労移行支援体制加算の見直し | 2026年4月1日 | 前年度の就職者数に応じた評価に変更(A型・B型・生活介護・自立訓練が対象) |
| 基本報酬区分の基準見直し | 2026年6月1日 | 平均工賃月額の区分基準が全体的に約3,000円引き上げ |
| 新規事業所への臨時応急的な特例 | 2026年6月1日 | 2026年6月1日以降に新規指定を受けるB型は所定単位数の984/1000 |
| 処遇改善加算の拡充・再編 | 2026年6月1日 | Ⅰ〜Ⅴ(Ⅴは細分)からⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの6区分へ再編。B型の加算率は概ね7.4%〜10.9% |
処遇改善加算についての重要な訂正情報 かつて存在した「福祉・介護職員処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3加算は、2024年度改定で「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化されました。現在も「特定加算」という名称で説明している情報は古いものです。さらに2026年6月から上記のとおり区分が再編されています。
開業初年度の収支計画は、984/1000の減算を織り込んだうえで作成する必要があります。従来の試算モデルをそのまま使うと、初年度の資金繰りを見誤ります。
② 新ガイドライン(2025年11月28日付)による審査・指導の重点項目
指定権者向けの文書ですが、事業者側から見れば「どこを見られるか」の一覧です。
新規指定時 事前説明・確認 → 事業計画書等の審査 → 専門家会議による審査 → 指定申請審査 → 現地審査 → 指定
既存事業所の運営状況の把握・指導の観点
- 管理者の業務の実施状況
- 人員配置の実態
- 誘因行為(利用者の勧誘方法。金品提供等は厳禁)
- 障害福祉サービス等情報公表制度への対応状況
- 生産活動の実態、収入額、取引先情報(生産活動シートによる確認)
- 利用者への支援内容の実施状況および適切性
- 会計情報
- 賃金・工賃の支払い状況
- 在宅支援の実施状況
在宅でのサービス提供は要件が細かく定められており、運営指導での指摘が目立つ領域です。在宅利用を前提としたモデルを組む場合は、要件の確認が不可欠です。
③ 「実地指導」ではなく「運営指導」
行政による指導の名称は**「運営指導」**に変更されています。記事・社内規程・研修資料の表記もあわせて更新してください。
4. 熊本の事情(最重要)
指定権者の区分
- 熊本市内に事業所を置く場合 → 熊本市(中核市のため指定権者)
- 熊本市以外の県内市町村 → 熊本県
様式・スケジュール・ローカルルールが異なるため、どちらに申請するかで準備内容が変わります。
熊本市の総量規制
熊本市は「事業所の地域偏在の解消」を目的として、サービス供給量が必要量の見込みを上回る場合に新規指定を行わない総量規制を実施しています。
対象サービス:就労継続支援A型、就労継続支援B型、生活介護、児童発達支援、放課後等デイサービス(主として重症心身障害児を通わせるもの・共生型を除く)
区ごとの指定必要量(就労継続支援B型)
| 年度 | 中央区 | 東区 | 西区 | 南区 | 北区 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和6年度 | ― | 1 | 1 | ― | ― |
| 令和7年度 | 1 | 2 | 1 | ― | 1 |
| 令和8年度 | ― | 1 | ― | ― | ― |
令和8年度のB型の枠は、市全体で東区の1事業所のみでした。 「熊本市内でB型を開業したい」という段階で、まず確認すべきはこの枠の有無です。物件も人材も、枠がなければ意味を持ちません。
手続きの流れ(熊本市・就労継続支援A型/B型)
- 市の公募(電子申請フォーム)に応募 ※令和8年度分は令和7年8月1日〜8月18日の受付でした
- 指定希望等確認票、事業所の基本方針等確認書、収支予算書、就労継続支援事業概要、市税滞納有無調査承諾書(市内に主たる法人住所がある場合)等を提出
- 事前面談
- 審査基準に基づく審査・選定
- 指定申請 → 現地確認 → 指定
令和9年度分の公募は、例年どおりであれば2026年8月頃に受付が行われています。 最新の実施状況は熊本市の「【総量規制】特定障害福祉サービス及び特定障害児通所支援の指定について」のページで必ずご確認ください。
熊本県(市外)の場合
県においても、障害福祉計画に基づく必要量の判断や事前協議が行われます。市町村の意見照会が実質的な判断材料となる場合もあるため、地域の相談支援事業所・基幹相談支援センター・市町村障がい福祉担当課との関係構築が、書類作成と同等かそれ以上に重要です。
結論として、熊本での開業は「書類の完成度」以前に「枠と地域ニーズ」で決まります。
5. よくある失敗と、その構造
| 失敗パターン | 何が起きるか | 回避策 |
|---|---|---|
| 枠の確認より先に物件を契約 | 公募枠がなく1年待ち。賃料だけが発生 | 公募スケジュールと区ごとの枠を最初に確認 |
| サービス管理責任者の確保を後回し | 研修未了で配置できず、指定申請自体が不能 | 研修の開催時期から逆算して採用計画を立てる |
| 旧制度の情報で収支計画を作成 | 新規開設の984/1000減算、工賃区分の3,000円引き上げを見落とし、初年度に資金ショート | 2026年6月施行の改定内容を反映した試算を行う |
| 生産活動の中身が説明できない | 事業計画審査・運営指導の両方で指摘 | 「就労に必要な知識・能力の向上」との関係を言語化する |
| 記録・個別支援計画の不備 | 運営指導での指摘、給付費の返還 | 開業前に記録様式と運用ルールを確定させる |
| 代表者が制度を理解していない | 事前面談は代表者・管理者・サビ管本人が対象。説明できず不可 | 代行ではなく、理解を伴う準備を行う |
6. 行政書士法人塩永事務所のサポート
① 開業可否の診断・戦略設計
- 熊本市の区ごとの指定枠、公募スケジュールの確認と適否判断
- 地域ニーズの整理と、利用者確保の見込みの根拠づくり
- 2026年6月改定を織り込んだ収支シミュレーション
- 算定可能な加算の整理と、必要な体制の逆算
- 物件候補の事前スクリーニング(契約前チェック)
② 指定申請のフルサポート
- 事業計画書・収支予算書をはじめとする書類一式の作成支援
- 熊本市・熊本県との事前協議、事前面談の準備(代表者・管理者・サビ管ご本人が説明できる状態まで同行支援)
- 補正・差戻しへの対応
③ 人員・設備に関する助言
- サービス管理責任者の要件確認(実務経験証明・研修状況)
- 採用計画と研修スケジュールの逆算
- 建築基準法・消防法の適合確認の段取り
④ 運営顧問(指定後こそ本番)
- 処遇改善加算の区分選択と体制整備の支援(賃金制度・就業規則・給与計算等の労務実務は、提携社会保険労務士と連携)
- 運営指導対策、書類の内部点検
- 個別支援計画・記録様式の整備と運用定着
- 変更届・更新申請、体制届の管理
- 行政からの指導・改善指示への対応
税務・会計は提携税理士、労務は提携社会保険労務士と連携し、行政書士の業務範囲を明確にしたうえでチームで対応します。
7. 費用の目安
| サポート内容 | 費用の目安 |
|---|---|
| 開業支援(診断・計画策定・指定申請一式) | 50万円〜150万円 |
| 運営顧問 | 月額3万円〜10万円 |
※上記は当事務所の報酬の目安です。事業規模、多機能型か否か、案件の難易度、指定権者、対応範囲により変動します。登録免許税・公証人手数料・各種証明書取得費用等の実費は別途申し受けます。正式なお見積りは、ご面談のうえ提示いたします。
まとめ|2026年に成功するB型の条件
B型は、「開業前の設計」で成否の大半が決まる事業です。そして2026年現在、その難易度は明確に上がっています。
必要なのは、次の3点を同時に成立させることです。
- 通る申請 — 枠・地域ニーズ・事業計画の内容審査を突破する
- 続く運営 — 記録・計画・加算要件を、運営指導に耐える水準で維持する
- 成り立つ収支 — 新規開設の減算と工賃区分の引き上げを織り込んだ、現実的な収支構造
行政書士法人塩永事務所は、単なる手続きの代行ではなく、開業前の可否判断から運営定着までを一貫して伴走する支援をご提供します。「まず開業ありき」ではなく、開業すべきかどうかの判断からご一緒するのが当事務所の姿勢です。
お問い合わせ
就労継続支援B型の開業可否のご相談、指定申請、運営顧問については、お気軽にご連絡ください。
行政書士法人塩永事務所(熊本市) TEL:096-385-9002 Mail:info@shionagaoffice.jp
主な参照情報
- 厚生労働省「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」(令和7年11月28日)
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について」
- 熊本市「【総量規制】特定障害福祉サービス及び特定障害児通所支援の指定について」
- 熊本市「令和8年度 熊本市特定障害福祉サービス等指定事務要項」
