
【熊本県の事業者様へ】「こども性暴力防止法」(日本版DBS)施行まであとわずか ― 震災対応と並行して進める体制づくりのポイント
行政書士法人塩永事務所
はじめに ― 震災対応に追われる事業者様へ
令和8年12月25日、子どもたちを性暴力から守るための新しい法律「こども性暴力防止法」(通称:日本版DBS)が施行されます。学校、保育所、学童保育、学習塾、スポーツクラブなど、子どもと接する事業を営むすべての方にとって、避けて通ることのできない重要な制度です。
一方で、熊本県内では令和8年7月28日に発生した「令和8年熊本地震」により、多くの施設が甚大な被害を受け、現在も復旧作業や日々の運営対応に追われている事業者様が少なくありません。そうした状況の中で、
「法律の重要性は理解しているが、具体的に何から手を付ければよいのか分からない」
というお声を数多くいただいています。本記事では、制度の概要と、震災の混乱の中でも着実に進めていただきたい準備のポイントを、できるだけ分かりやすく整理してご説明します。
1. 「こども性暴力防止法」とは
正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(令和6年法律第69号)です。令和6年6月19日に成立し、同月26日に公布され、令和8年12月25日に施行されます。
子どもと接する職場に性犯罪歴のある者が就くことを防ぎ、あわせて事業者に対して性暴力の未然防止・早期発見・発生時の適切な対応を義務づけることで、子どもたちの安全な環境を守ることを目的としています。イギリスの犯罪歴確認制度「DBS(Disclosure and Barring Service)」を参考にした仕組みであることから、「日本版DBS」とも呼ばれています。
対象となる事業者
| 区分 | 該当する事業者 | 犯罪事実確認の位置づけ |
|---|---|---|
| 学校設置者等(義務対象) | 公立・私立の学校、幼稚園、保育所、認定こども園、学童保育など | 犯罪事実確認が義務 |
| 民間教育保育等事業者(認定対象) | 学習塾、スポーツクラブ、各種習い事教室など | 国の認定を受けることで日本版DBSの照会の仕組みを利用可能(任意) |
熊本県内では、震災の被災有無にかかわらず、上記に該当するすべての事業者様が対象となります。義務対象の事業者はもちろん、認定申請を検討している学習塾やスポーツクラブなどの事業者様も、早めの準備が必要です。
2. 制度対応は「規程づくり」から始まる
日本版DBSと聞くと、「職員の性犯罪歴を確認する制度」というイメージが先行しがちですが、実際に事業者に求められる対応はそれだけではありません。むしろ実務の出発点となるのは、**就業規則の見直しを含めた組織内の「ルール(規程)整備」**です。
犯罪事実確認の手続きだけを整えても、日常的な安全確保の体制や、万一の事案発生時の対応ルールがなければ、法の趣旨を実現することはできません。震災対応で人手が限られている今だからこそ、優先順位を明確にして着実に一つずつ進めていくことが大切です。
3. 実務上つまずきやすい5つのポイント
これまでご相談をいただく中で、特につまずきやすいと感じるポイントを整理しました。
① 各種「規程」の整備
- 情報管理規程、児童対象性暴力等対処規程など、必要となる書式の策定
- 施行スケジュールに合わせた整備の優先順位づけ
② 犯罪事実確認(日本版DBS)の手続き
- 確認の対象となるスタッフの区分整理
- 対象者本人の戸籍取得など、必要書類の取得手順
③ 安全確保措置(未然防止・早期発見)
- 日常的な観察の基準づくり
- 定期的な面談やアンケートの導入方法
④ 事案発生(疑いを含む)時の初期対応
- 対象職員と子どもとの一時的な接触回避の判断
- 客観的な事実調査の進め方
- 警察・行政庁への通報基準、保護者への説明の手順
⑤ 情報管理措置
- 犯罪事実確認記録などの閲覧責任者の設定
- 情報漏洩を防止するための安全管理体制の構築
このほか、配置転換や自宅待機といった労働法制との整合性が問題となる場面もあります。個別の労働問題については、企業法務に精通した弁護士のご紹介も行っておりますので、あわせてご相談ください。
また、二次被害を防ぐための子どもからの聴き取り方法や、保護者への説明タイミングなど、コミュニケーション面でのご相談も多く寄せられています。
4. 施行までのスケジュールと今後の動き
制度は令和8年12月25日に施行されますが、義務対象の施設ではすでに段階的な準備が始まっています。こども家庭庁からは、施行ガイドラインやQ&A、研修教材、報告・対応ルールのひな型などが順次公表されており、これらに基づいた準備が求められます。
なお、すでに勤務している職員(施行時現職者)についての犯罪事実確認は、令和9年4月以降に順次実施される予定とされています。また、認定対象事業者の認定申請は、施行日である令和8年12月25日以降にオンラインで受け付けが開始される見込みです。
犯罪事実確認書の交付までには、対象者が日本国籍の場合で2週間〜1か月程度、外国籍の場合で1〜2か月程度を要する見込みとされており、採用スケジュールにはあらかじめ余裕を持たせておく必要があります。急な欠員や合併・新設など、やむを得ない事情がある場合の特例的な取扱いも用意されていますが、いずれの場合も確認そのものを省略できるわけではない点にご留意ください。
5. 熊本県の事業者様への対応地域・対象
- 対象地域:熊本県 全域
- 対象者: 公立・私立学校、幼稚園、保育所、認定こども園、学童保育、学習塾、スポーツクラブ、各種習い事教室 など
- ※義務対象の事業所に加え、認定申請を検討中の事業所もご相談を承ります
震災からの復旧対応でお忙しい中とは存じますが、施行日は待ってくれません。当事務所では、被災された事業者様の状況に寄り添いながら、無理のないペースで準備を進められるようサポートいたします。
6. 塩永事務所がご提供できること
ご相談・アドバイス
- 法制度全体の概要説明、手続きの流れのご案内
- 体制構築に関する実務上のアドバイス
- 実務上の疑問に対するご相談対応
- 弁護士対応が必要な場合の専門家のご紹介
規程整備・実務代行
- 組織内規程・各種ルールの策定・改定の代行
- 犯罪事実確認に関するシステム権限設定のサポート
- スタッフ向け法定研修の実施
「何から手を付ければよいか分からない」という段階からで構いません。まずは現在の施設の状況や震災対応の状況をお聞かせいただき、優先順位を一緒に整理するところから始めましょう。
行政書士法人塩永事務所 こども性暴力防止法(日本版DBS)に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
