
登録支援機関はどのように利益を上げるのか|収益構造と事業モデルを詳しく解説
登録支援機関は、特定技能1号外国人を受け入れる企業から支援委託を受け、その対価として支援委託手数料を受け取ることで収益を上げます。
主な収益源は、外国人1人ごとの月額支援料です。そのほか、初回受入れ支援、生活支援、企業向け研修、翻訳・通訳、在留手続の専門家との連携などを組み合わせることで、安定した事業に発展させることができます。
ただし、特定技能外国人への義務的支援に要する費用を、外国人本人に負担させることはできません。支援費用は、原則として受入れ企業が負担します。
本記事では、行政書士法人塩永事務所が、登録支援機関の収益構造、料金設定、利益を確保する方法、注意すべき法令上の問題について詳しく解説します。
登録支援機関の基本的な収益構造
登録支援機関の収益は、大きく次のように分けられます。
このうち、登録支援機関の中心的な売上は、受入れ企業から受け取る月額支援委託料です。
月額支援委託料
1人ごとの月額制
最も一般的な方法は、特定技能外国人1人につき、毎月一定額の支援委託料を受け取る方式です。
月額制には、次のようなメリットがあります。
-
売上を予測しやすい。
-
外国人が在籍する限り継続収入になる。
-
支援対象者数に応じて人員配置を調整できる。
-
受入れ企業との契約を長期化しやすい。
-
支援業務の対価と費用の関係を説明しやすい。
支援委託料を設定する場合は、次の事項を明確にします。
-
1人あたりの月額
-
支援対象者が増えた場合の計算方法
-
支援開始月・終了月の扱い
-
入国前支援の料金
-
退職・転職時の料金
-
通訳費用の扱い
-
送迎費用の扱い
-
実費の負担者
-
支援未実施時の精算方法
出入国在留管理庁の支援委託手数料に係る説明書では、1号特定技能外国人1人あたりの月額支援委託費用と、その内訳を記載することとされています。
料金に上限はあるのか
受入れ企業から徴収する支援委託料について、入管法令上の一律の上限額は設けられていません。
ただし、契約時には、支援業務の内容、料金額、料金の内訳を明示する必要があります。単に「月額支援料」とだけ記載するのではなく、どの支援にいくらかかるのかを説明することが必要です。
月額料金の設計例
たとえば、次のような料金体系が考えられます。
実際の料金は、支援対象者数、国籍、対応言語、受入れ地域、夜間対応の有無、送迎の頻度などを考慮して設定します。
初回支援料・入国時支援料
月額支援料とは別に、初回の受入れに伴う業務について、初期費用を設定する方法があります。
初期費用の対象例
-
初回面談
-
雇用条件の確認
-
事前ガイダンス
-
生活オリエンテーション
-
住居確保支援
-
銀行口座開設支援
-
携帯電話契約支援
-
市区町村での手続支援
-
入国時の送迎調整
-
受入れ企業への事前説明
-
支援計画・連絡体制の確認
初回費用を設定する場合は、月額支援料に含まれる業務と、別料金となる業務を区別します。
たとえば、事前ガイダンスや生活オリエンテーションを月額支援料に含めるのか、入国時の初期支援費用として別途請求するのかを契約書に明記します。
生活支援・行政手続支援に関する収益
特定技能外国人の生活開始時には、多くの支援業務が発生します。
-
住居の確保
-
転入届
-
国民健康保険
-
国民年金
-
銀行口座開設
-
携帯電話契約
-
電気・ガス・水道契約
-
医療機関の案内
-
防災説明
-
交通ルールの説明
これらの支援に要する費用は、原則として受入れ企業が負担します。外国人本人に支援費用を負担させることはできません。
ただし、登録支援機関が行政書士業務や職業紹介業務など、別の専門業務を行う場合は、業務内容と報酬を明確に区分する必要があります。
行政書士業務との区分
行政書士法人が対応できる業務には、次のようなものがあります。
-
在留資格認定証明書交付申請
-
在留資格変更許可申請
-
在留期間更新許可申請
-
特定技能に関する各種届出
-
登録支援機関の登録・更新
-
登録事項変更届出
-
雇用契約・支援委託契約の書類確認
-
行政機関へ提出する書類の作成
-
申請取次
これらは、登録支援機関の支援委託料とは別の行政書士業務報酬として整理します。
企業向け研修による収益
登録支援機関や受入れ企業に対して、外国人雇用に関する研修を提供する方法もあります。
研修内容
-
特定技能制度の基本
-
受入れ企業の義務
-
登録支援機関の役割
-
支援10項目
-
外国人への指示方法
-
ハラスメント防止
-
労働条件の説明
-
相談・苦情対応
-
文化・宗教上の配慮
-
失踪防止
-
退職・転職時の対応
-
支援記録の作成方法
-
届出の管理方法
研修は、次のような形式で提供できます。
-
企業訪問による出張研修
-
オンライン研修
-
半日研修
-
新任担当者向け研修
-
現場管理者向け研修
-
定期的な制度改正研修
研修を有料で提供する場合は、研修時間、参加人数、資料の有無、訪問交通費、研修後の質問対応を契約書や見積書に記載します。
書式・マニュアル作成による収益
登録支援機関の業務を効率化するため、支援記録や業務マニュアルを作成するサービスも考えられます。
作成できる資料
-
支援業務マニュアル
-
事前ガイダンス書式
-
生活オリエンテーション記録
-
相談・苦情対応記録
-
定期面談記録
-
送迎記録
-
日本語学習支援記録
-
転職支援記録
-
支援実施状況一覧表
-
在留期限管理表
-
届出期限管理表
-
受入れ企業向け説明資料
-
緊急時対応フロー
-
個人情報管理規程
こうした資料は、一度作成すれば、複数の支援担当者が共通して使用できます。
ただし、他社の書式をそのまま流用するのではなく、登録支援機関の対応言語、受託人数、支援地域、支援担当者数に合わせて作成することが重要です。
通訳・翻訳業務の収益
登録支援機関では、事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談対応、定期面談などで通訳が必要になります。
通訳者を自社で雇用する方法のほか、外部の通訳者と業務委託契約を締結する方法もあります。
通訳費用の設計
-
月額支援料に含める。
-
通訳対応が必要な場合のみ別途請求する。
-
言語ごとに料金を設定する。
-
夜間・休日対応に追加料金を設定する。
-
対面通訳とオンライン通訳で区分する。
-
交通費を実費請求する。
通訳費用は、特定技能外国人本人に負担させず、受入れ企業との契約で負担者を明確にします。出入国在留管理庁のQ&Aでも、支援に必要な通訳人の確保に要する費用は、受入れ企業が負担することとされています。cite
職業紹介との連携
登録支援機関は、特定技能外国人の転職支援を行うことがあります。
受入れ企業の都合による解雇、事業縮小、倒産などの場合には、転職先に関する情報提供、求人情報の提供、ハローワークの案内などを行います。
一方、求人者と求職者の間に立って雇用関係の成立をあっせんする場合は、職業紹介事業に該当する可能性があります。
注意点
-
登録支援機関の登録だけで職業紹介はできない。
-
有料職業紹介には許可が必要となる。
-
無料職業紹介でも許可・届出が必要となる場合がある。
-
紹介手数料を徴収する場合は、職業紹介事業のルールを確認する。
-
支援委託料と職業紹介手数料を明確に分ける。
-
外国人本人から不適切な費用を徴収しない。
職業紹介を事業の柱にする場合は、職業安定法上の許可や届出を確認したうえで、適法な事業形態を構築します。
収益モデルの具体例
例1:月額支援料中心型
特定技能外国人20人を受託し、1人あたり月額25,000円の支援委託料を受け取る場合、月間売上は次のとおりです。
年間では、次の金額になります。
ここから、次の費用を差し引きます。
-
支援担当者の人件費
-
通訳費
-
交通費
-
事務所費
-
通信費
-
システム利用料
-
書類管理費
-
保険料
-
営業費
-
税金・社会保険料
例2:初期費用と月額費用の組み合わせ
-
初回支援料:1人あたり50,000円
-
月額支援料:1人あたり25,000円
-
初年度受託人数:20人
初回支援料の売上は、次のとおりです。
月額支援料の年間売上は、次のとおりです。
初年度の支援関連売上は、合計700万円となります。
ただし、これはあくまで売上の計算例です。利益は、人件費、通訳費、交通費、営業費、事務所経費などを差し引いて計算します。
利益を上げるためのポイント
支援対象者数と担当者数のバランス
登録支援機関の利益を確保するには、受託人数と支援体制のバランスが重要です。
受託人数が少なすぎると、1人あたりの管理コストが高くなります。一方、受託人数を増やしすぎると、定期面談や相談対応が不十分になる可能性があります。
人数を増やす前に、次の事項を確認します。
-
支援担当者1人あたりの担当人数
-
対応言語
-
支援対象地域
-
移動時間
-
面談時間
-
通訳の確保
-
休日・夜間対応
-
記録作成時間
-
相談件数
移動コストを管理する
熊本県内や九州各県のように支援地域が広い場合、交通費と移動時間が利益に大きく影響します。
-
同じ地域の企業をまとめて訪問する。
-
オンライン面談を適切に活用する。
-
定期面談のスケジュールを早めに組む。
-
交通費の負担者を契約書に定める。
-
遠隔地対応の料金を事前に説明する。
-
支援担当者の担当エリアを分ける。
ただし、オンラインで実施できる支援と、対面で行うべき支援を適切に判断する必要があります。
業務を標準化する
支援対象者が増えた場合、担当者ごとに対応が異なると、業務効率が低下します。
-
相談受付フォームを作る。
-
面談チェックリストを使用する。
-
支援記録を統一する。
-
多言語資料を標準化する。
-
在留期限管理表を共有する。
-
企業への報告様式を統一する。
-
支援業務の手順書を整備する。
標準化によって、支援の品質を維持しながら、1人あたりの事務負担を抑えられます。
受入れ企業と長期契約を結ぶ
短期的な単発契約だけでなく、複数年の支援委託契約を締結できると、売上が安定します。
契約時には、次の事項を明確にします。
-
契約期間
-
自動更新の有無
-
支援対象者の追加方法
-
料金改定の条件
-
対応言語の変更
-
交通費・通訳費用
-
夜間・休日対応
-
契約解除
-
支援記録の引継ぎ
利益を圧迫しやすい要因
低すぎる料金設定
受注を優先して料金を下げすぎると、支援担当者の人件費や通訳費をまかなえなくなります。
月額料金を決める際には、次の費用を含めて計算します。
-
1人あたりの面談時間
-
相談対応時間
-
移動時間
-
記録作成時間
-
通訳費
-
交通費
-
届出資料の整理時間
-
企業との連絡時間
-
緊急対応コスト
-
管理者の確認時間
追加業務が無償化している
契約範囲に含まれていない業務を無償で引き受けると、利益が減少します。
たとえば、次の業務を無制限に無償対応しないよう、契約内容を明確にします。
-
夜間・休日の緊急対応
-
遠方への送迎
-
家族の相談
-
転職先の紹介
-
大量の翻訳
-
受入れ企業の社内研修
-
退職後の長期的な生活相談
-
契約対象外の在留申請
支援費用を外国人本人に請求する
支援に要する費用を外国人本人に負担させることはできません。支援費用を給与から控除したり、保証金や違約金と組み合わせたりすることも問題になる可能性があります。
料金は、受入れ企業に請求し、契約書・説明書・請求書の内容を一致させます。
行政書士法人塩永事務所が支援できること
行政書士法人塩永事務所では、登録支援機関の事業化・収益化について、次の業務をサポートしています。
料金・契約関係
-
支援委託料の設計
-
支援委託契約書の作成・確認
-
支援費用の内訳整理
-
追加業務の料金設定
-
遠方対応・通訳費用の整理
-
契約期間・更新条項の確認
-
契約変更・終了時の手続
事業運営関係
-
支援業務の標準化
-
支援担当者の役割分担
-
支援業務マニュアルの作成
-
支援記録の書式整備
-
在留期限管理
-
届出期限管理
-
受入れ企業向けサービス設計
-
多言語支援体制の整備
-
社内研修・企業研修
在留・行政手続関係
-
登録支援機関の新規登録
-
登録更新
-
登録事項変更届出
-
休止・廃止届出
-
在留資格認定証明書交付申請
-
在留資格変更許可申請
-
在留期間更新許可申請
-
特定技能関係の各種届出
-
申請取次
-
行政機関からの照会対応
まとめ
登録支援機関の主な収益源は、受入れ企業から受け取る月額支援委託料です。
さらに、次のようなサービスを組み合わせることで、事業の安定化を図れます。
-
初回受入れ支援
-
生活支援
-
企業向け研修
-
支援マニュアル・書式作成
-
多言語対応
-
通訳・翻訳
-
在留手続に関する行政書士業務
-
届出・更新サポート
-
職業紹介事業者との連携
ただし、特定技能外国人への支援費用を本人に負担させることはできません。支援内容、料金、内訳、費用負担者を受入れ企業との契約書に明確に記載することが重要です。
行政書士法人塩永事務所では、登録支援機関の登録申請だけでなく、事業計画、料金体系、契約書、支援記録、在留手続、届出管理、受入れ企業向けサービスの整備まで総合的にサポートしています。
登録支援機関として事業を始めたい方、受託人数を増やしたい方、料金設定や契約内容を見直したい方は、行政書士法人塩永事務所までご相談ください。
