
【2026年最新】日本版DBSとは?こども性暴力防止法の概要・施行日・外国人雇用への影響を行政書士が解説
行政書士法人塩永事務所
学校、保育所、認定こども園、学習塾、スポーツクラブなど、こどもと接する機会のある事業者にとって、従事者による性暴力等を防止するための体制整備は重要な課題です。
こうした背景から、2024年6月に「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(令和6年法律第69号)が成立・公布されました。
一般に「こども性暴力防止法」や「日本版DBS」と呼ばれている法律です。
この法律は、こどもと接する業務に従事する者について、一定期間内の特定性犯罪の前科を確認する「犯罪事実確認」をはじめ、研修、安全確保措置、相談・報告体制、情報管理などを事業者に求めるものです。
施行日は2026年12月25日(金)です。
2026年8月現在、こども家庭庁から施行ガイドライン、Q&A、義務事業者用準備ガイド、各種ひな型、研修教材等が公表されており、制度施行に向けた具体的な準備段階に入っています。さらに、2026年8月には、こどもへの性暴力防止の取組に関する横断指針も改訂されています。
本記事では、2026年8月時点の公表資料をもとに、日本版DBSの仕組み、対象となる事業者・従事者、犯罪事実確認の対象、外国人従事者との関係、事業者が施行前に準備しておくべき事項について、行政書士の視点から解説します。
1.日本版DBSとは何か
「日本版DBS」とは、こどもに教育・保育等を提供する事業者が、こどもへの性暴力等を防止するために必要な措置を講じる制度です。
正式な法律名は、
「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」
です。
英国の「Disclosure and Barring Service(DBS)」を参考に検討されたことから、一般に「日本版DBS」と呼ばれています。
ただし、日本の制度が英国のDBSと同一というわけではありません。
日本版DBSでは、対象となる事業者について、対象従事者の犯罪事実確認を行うほか、こどもへの性暴力等を防止するための研修、安全確保措置、相談・報告体制、情報管理等の取組が求められます。
つまり、日本版DBSは「前科を確認するだけの制度」ではありません。
事業者全体として、こどもの安全を確保するための仕組みを整備することが求められる制度です。
2.施行日は2026年12月25日
こども性暴力防止法は、2024年6月19日に成立し、同年6月26日に公布されました。
その後、政令により施行日が定められ、2026年12月25日に施行されます。
したがって、2026年8月現在は、単なる「将来導入される制度」という段階ではありません。
こども家庭庁からは、すでに施行ガイドラインやQ&A、準備ガイド、研修教材、各種ひな型などが公開されています。2026年7月には、施行に向けた義務事業者への準備要請も行われています。
事業者にとっては、2026年12月25日の施行を見据えて、今の段階から社内体制を確認しておくことが重要です。
3.すべての事業者が同じ義務を負うわけではない
日本版DBSを理解するうえで、特に重要なのが、
「義務対象事業者」と「認定事業者等」を区別すること
です。
事業者によって、法律上当然に対応が義務付けられる場合と、国の認定を受けることで制度の対象となる場合があります。
義務対象となる事業者
法律上の「学校設置者等」に該当する事業者などについては、こども性暴力防止法に基づく措置が義務付けられます。
例えば、学校教育法上の学校や、児童福祉法等に基づく一定の施設が対象となります。
なお、対象となる事業者の具体的な範囲については、法律の定義を確認する必要があります。
「私立だから対象外」ということではありません。
例えば学校教育法上の幼稚園についても、設置者が公立か私立かによって当然に制度対象から外れるものではありません。
認定を受けることができる事業者
一方、学習塾、スポーツクラブ、認可外保育施設等の民間教育・保育等事業者については、法律上の要件を満たして国の認定を受けることで、こども性暴力防止法に基づく制度の対象となる仕組みがあります。
したがって、
「学習塾やスポーツクラブはすべて日本版DBSの義務対象である」
という説明も正確ではありません。
自社がどの区分に該当するのかを確認することが、最初の重要なポイントとなります。
4.認定申請はいつからできるのか
認定対象となる事業者については、2026年12月25日の法施行後に認定申請を行うことになります。
つまり、2026年8月現在、認定対象事業者がすでに通常の認定申請を行う段階ではありません。
ただし、だからといって準備を始める必要がないわけではありません。
認定を受ける場合には、犯罪事実確認だけでなく、安全確保措置、研修、相談体制、情報管理等についても対応する必要があります。
そのため、施行前に必要な社内体制を整えておくことが重要です。
5.犯罪事実確認の対象となる「特定性犯罪」とは
日本版DBSで確認されるのは、すべての犯罪歴ではありません。
法律で定められた**「特定性犯罪」**について、一定期間内に該当する者が「特定性犯罪事実該当者」として確認対象となります。
法律上の対象には、例えば不同意わいせつ、不同意性交等、監護者わいせつ・監護者性交等、児童買春・児童ポルノ関係の一定の犯罪、性的姿態等撮影罪関係の一定の犯罪などが含まれます。
また、法律上は一定の条例違反も対象となり得ます。
重要なのは、確認対象となる犯罪は法律上具体的に定められているという点です。
単に「性犯罪の前科があればすべて対象」という制度ではありません。
6.何年前までの犯罪事実が確認されるのか
特定性犯罪事実該当者については、犯罪の種類や刑の種類等に応じて確認対象となる期間が定められています。
基本的には、
拘禁刑の場合
刑の執行を終わる等の日から20年間
執行猶予の場合
裁判が確定した日から10年間
罰金の場合
刑の執行を終わる等の日から10年間
です。
したがって、
「日本版DBSでは罰金刑は確認されない」
という説明は誤りです。
特定性犯罪については、罰金刑も法律上の確認対象に含まれます。
また、これらの期間は刑法上の「刑の消滅」の期間とは別に定められているため、両者を混同しないことが重要です。
7.犯罪事実確認の期限は「全員一律」ではない
日本版DBSへの対応で特に注意したいのが、犯罪事実確認の期限です。
「すべての職員について施行日から3年以内に確認すればよい」という理解では不十分です。
こども家庭庁のQ&Aでは、事業者や従事者の区分に応じて期限が整理されています。
義務対象事業者の場合
新規従事者
2026年12月25日の施行日以降に新たに対象業務に従事する者については、原則として対象業務への従事開始日までに犯罪事実確認を行う必要があります。
施行時現職者
2026年12月25日時点で対象業務に従事している者、または内定していた者については、2029年12月24日までが確認期限とされています。
ただし、施行時現職者については、申請を一時期に集中させないため、こども家庭庁から分散申請の方法が示されています。
認定事業者等の場合
認定日以降に新たに対象業務に従事する者は、原則として従事開始日まで。
認定時点ですでに従事または内定している者については、認定等の日から1年を経過する日までが期限となります。
したがって、
「日本版DBSは全員3年以内に確認すればよい」
という説明は正確ではありません。
8.犯罪事実確認の結果が出たら、必ず解雇されるのか
これも非常に誤解されやすい部分です。
犯罪事実確認によって特定性犯罪事実該当者であることが判明した場合でも、
「確認されたら自動的に解雇される」
という制度ではありません。
事業者には、こどもへの性暴力を防止するため、対象従事者をこどもに接する業務に従事させないための措置を講じることが求められます。
そのため、まずは配置転換や担当業務の変更等を検討することになります。
解雇については、労働契約法等の労働関係法令も関係するため、個別具体的な事情を踏まえて判断する必要があります。
したがって、事業者側が施行前に、
- 就業規則
- 配置転換のルール
- 採用時の確認事項
- 雇用契約上の取扱い
- 問題発生時の対応手順
などを整理しておくことが重要です。
なお、解雇の有効性など具体的な労働問題については、弁護士等への相談が必要となる場合があります。
9.外国人従事者も日本版DBSの対象になる
外国人を雇用している学校、保育所、認定事業者等にとって重要なのが、外国人従事者の取扱いです。
結論として、外国籍であることを理由に日本版DBSの対象から除外されるわけではありません。
対象業務に従事する外国人についても、制度上必要な犯罪事実確認を行うことになります。
ただし、外国人の場合、日本人と比べて犯罪事実確認に時間を要することが想定されています。
こども家庭庁のQ&Aでは、犯罪事実確認書の交付までの標準処理期間について、
- 日本国籍者:2週間~1か月程度
- 外国籍者:1か月~2か月程度
とされています。
実際の期間は、個別の事情によって変動する可能性があります。
そのため、外国人を採用する事業者は、採用日や従事開始日から逆算して、余裕を持って準備することが重要です。
10.外国人の「無犯罪証明書」と日本版DBSは別制度
外国人雇用で特に注意したいのが、
「日本版DBS=母国の無犯罪証明書を提出する制度」
ではないという点です。
日本版DBSにおける犯罪事実確認は、こども性暴力防止法に基づく国の制度です。
一方、外国人の在留資格申請等において必要となることがある犯罪経歴証明書等は、入管手続等に関連する別の制度です。
したがって、
日本版DBSの犯罪事実確認
と
在留資格・入管手続における犯罪経歴等の確認
は分けて考える必要があります。
外国人を雇用する場合は、両方の制度を混同せず、個別の手続きごとに必要書類・要件を確認することが重要です。
11.日本版DBSと在留資格は直接同じ制度ではない
日本版DBSは、出入国在留管理庁が行う在留資格審査とは別の制度です。
例えば、外国人が「教育」「技術・人文知識・国際業務」「経営・管理」などの在留資格を取得・更新する場合、日本版DBSの認定を受けていることが一般的な在留資格要件になるわけではありません。
ただし、日本版DBSへの対応によって外国人従事者の担当業務を変更する場合には注意が必要です。
例えば、従来は講師として勤務していた外国人を別の業務へ配置転換する場合、変更後の業務内容が現在の在留資格で認められる活動に該当するかを確認する必要があります。
つまり、
「こども性暴力防止法上の雇用・配置の問題」と「入管法上の在留資格の問題」は別々に確認する必要があります。
外国人従事者の配置転換等を行う際には、必要に応じて行政書士等の入管専門家へ相談することをおすすめします。
12.事業者が施行前に準備しておきたいこと
2026年8月現在、施行まで約4か月です。
事業者は、今の段階から少なくとも次の事項を確認しておくことをおすすめします。
① 自社がどの事業者区分に該当するか確認する
まず、
「義務対象事業者なのか」
「認定対象事業者なのか」
を確認します。
ここを誤ると、その後の手続きやスケジュールをすべて誤ってしまう可能性があります。
② 対象となる従事者を整理する
誰が対象業務に従事しているのかを確認します。
正規職員だけでなく、雇用形態や業務内容に応じて対象となる者を整理する必要があります。
③ 採用手続きを見直す
こども家庭庁は、募集要項・求人票、誓約書、内定通知書等の参考例を公表しています。
採用段階から制度に対応できるよう、求人・採用手続きを見直しておくことが有効です。
④ 就業規則・雇用管理を確認する
犯罪事実確認の結果、特定性犯罪事実該当者であることが判明した場合に備え、配置転換等を含む雇用管理上の対応を整理しておく必要があります。
⑤ 情報管理体制を整える
犯罪事実確認に関する情報は非常に慎重な取扱いが必要です。
誰が情報を取り扱うのか、どこで管理するのか、誰に情報を共有できるのか、不要となった情報をどのように廃棄・消去するのかなど、具体的な管理体制を整備することが重要です。
⑥ 研修・相談体制を確認する
日本版DBSは犯罪事実確認だけではありません。
研修、安全確保措置、相談・報告体制等についても、事業者としての対応を確認する必要があります。
こども家庭庁は、研修教材、解説動画、報告・対応ルール、保護者・児童等向け周知資料のひな型等を公開しています。
13.行政書士法人塩永事務所がサポートします
日本版DBSへの対応は、犯罪事実確認だけを行えば終了するものではありません。
事業者の区分を確認し、対象従事者を整理したうえで、採用、雇用管理、研修、情報管理、相談・報告体制等を総合的に確認する必要があります。
また、外国人を雇用している事業者については、日本版DBSだけでなく、在留資格との関係についても確認が必要となる場合があります。
行政書士法人塩永事務所では、行政書士として、事業者の制度対応に関する行政手続や外国人雇用・在留資格に関する手続きをサポートしています。
このようなご相談に対応しています
- 日本版DBSへの対応について確認したい
- 自社が義務対象事業者・認定対象事業者のどちらに該当するのか確認したい
- 制度施行に向けた必要な行政手続きを整理したい
- 外国人従事者の日本版DBS対応について確認したい
- 外国人従事者の在留資格との関係を確認したい
- 外国人の採用・在留資格変更・更新について相談したい
- 事業者として準備すべき書類や体制を整理したい
なお、犯罪事実確認は国の制度に基づいて行われるものであり、行政書士が独自に犯罪歴を照会・取得するものではありません。
また、解雇の有効性その他の労働法上の判断については、弁護士等の専門家への相談が必要となる場合があります。
14.まとめ|日本版DBSは施行前の準備が重要
こども性暴力防止法は、2026年12月25日に施行されます。
2026年8月現在、こども家庭庁から具体的なガイドライン、Q&A、準備ガイド、研修教材、各種ひな型等が公表されており、事業者が具体的な準備を進める段階となっています。
日本版DBSについて、特に押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 施行日は2026年12月25日
- すべての事業者が同じ義務を負うわけではない
- 義務対象事業者と認定事業者等を区別する必要がある
- 犯罪事実確認の対象は一定の「特定性犯罪」
- 罰金刑も一定期間内であれば確認対象となる
- 拘禁刑等は20年、執行猶予・罰金は10年が基本的な確認期間
- 犯罪事実確認の期限は、事業者・従事者の区分によって異なる
- 犯罪事実確認の結果だけを理由に自動的に解雇される制度ではない
- 外国人従事者も制度の対象となり得る
- 外国籍者の犯罪事実確認は標準で1~2か月程度とされている
- 日本版DBSと外国の無犯罪証明書・在留資格審査は別制度
- 日本版DBSは犯罪事実確認だけでなく、研修・安全確保・情報管理等を含む制度である
特に外国人を雇用している教育・保育関連事業者では、日本版DBSへの対応と在留資格の確認を別々に行いながら、全体として整合性のある雇用管理体制を構築することが重要です。
制度の内容は今後も運用上の情報が更新される可能性があります。事業者の方は、こども家庭庁が公表する最新の法令、ガイドライン、Q&A等を確認しながら準備を進めることをおすすめします。
行政書士法人塩永事務所では、日本版DBSに関連する行政手続、外国人雇用、在留資格等について、事業者の状況を確認したうえで必要な手続きを整理し、サポートいたします。
日本版DBSへの対応についてお困りの事業者様は、行政書士法人塩永事務所までご相談ください。
