
外資系株式会社の設立と外為法対応の手続き|行政書士法人塩永事務所
外国法人や外国人が日本で株式会社を設立する場合は、会社法・商業登記法に基づく設立手続きと、外為法に基づく対内直接投資の手続きの両方が必要になることがあります。さらに、外国人が日本で経営に従事する場合は、**在留資格(経営・管理)**も別に問題になります。
この記事では、外資系株式会社の設立の流れと、外為法対応の手続きを順を追って解説します。
1. 全体像:3つの手続きを並行して管理する
| 区分 | 主な内容 | 関係する主な専門家・提出先 |
|---|---|---|
| ① 会社設立 | 定款作成・認証、出資の払込み、設立登記 | 行政書士(定款作成・認証手続き)、公証役場、司法書士(登記)、法務局 |
| ② 外為法対応 | 業種該当性の検討、事前届出、事後報告、照会 | 行政書士、日本銀行(経由)、財務省・事業所管省庁 |
| ③ 在留資格 | 外国人が日本で経営に従事する場合の「経営・管理」など | 出入国在留管理庁 |
3つは別の手続きですが、スケジュールは連動します。特に事前届出が必要な場合は、その審査が終わるまで出資の払込みなどを進められないため、設立スケジュール全体の起点になります。
なお、設立登記の申請は司法書士の業務です。当事務所では、定款作成、公証役場での認証手続き、外為法対応を中心に行い、登記は提携の司法書士と連携して進めます。
2. 設立前に決めること
最初に次の事項を固めます。外為法の検討にも、そのまま使う情報です。
- 株主(発起人):外国法人か外国人個人か、持株比率、上位株主・実質的支配者
- 事業内容:実際に行う事業。製品・サービス、工程、取引先まで具体的に整理します
- 商号・本店所在地・事業目的
- 資本金の額:外国人が経営に従事する場合は、在留資格の基準にも関わります(後述)
- 役員の構成:取締役の人数、代表取締役、国籍・居住地
- 決算期、払込みの方法・時期
事業内容は、外為法の指定業種に当たるかを判断する中心材料です。 登記の事業目的の文言と、実際に行う事業の内容が一致しているかも、この段階で確認します。
3. 外為法対応:判断と手続きの詳細
3-1. 外国投資家に該当するかを確認する
外為法の届出・報告義務を負う「外国投資家」には、外国法人や非居住者の個人のほか、外国投資家が一定割合以上を出資する日本法人なども含まれます。出資者の属性と上位の支配関係を確認し、法令上の定義に当てはめます。
3-2. 会社設立時の出資は「対内直接投資等」になりうる
外国投資家が設立する会社の株式を引き受ける行為は、非上場会社の株式取得として、対内直接投資等の手続きの対象になりえます。どの類型に当たるかは、投資家の属性・投資の種類・投資先の事業で決まります。
3-3. 指定業種かどうかで分かれる手続き
事前届出が必要になるのは、外国投資家が事前届出対象業種を営む日本企業に株式取得などの投資を行う場合です。この場合は投資の実行前に審査付きの事前届出が義務付けられ、審査は原則として30日間の投資禁止期間内に行われます。指定業種は告示で約180業種が定められており、そのうち国の安全等を損なうおそれが大きいものは「コア業種」とされています。
| 投資先の事業 | 原則的な手続き |
|---|---|
| 指定業種に該当する | 投資実行前の事前届出(審査あり)。実行後の報告も必要 |
| 指定業種に該当しない | 事前届出は不要。投資の類型によっては事後報告が必要 |
免除制度について注意が必要です。 事前届出免除制度は、一定の基準を守ることを前提に、上場株式等の取得時の事前届出を免除し、事後報告で足りるとする制度です。会社の新設や非上場会社の株式取得では、原則として免除制度を前提にできません
3-4. 手続きの詳細
ステップ1 業種該当性の検討
定款案、事業計画書、製品・サービスの資料、工程、取引先などから、事業ごとに指定業種・コア業種への該当性を検討します。定款の事業目的だけで判断せず、実際の事業を確認します。結果は検討書にまとめます。
ステップ2 判断が難しい場合の照会
告示の文言に当たるか判断できない場合は、行政機関への照会を検討します。受付範囲や様式は変わりうるため、最新の公表情報を確認し、疑問点を具体化した照会書を作成します。
ステップ3 事前届出(必要な場合)
事前届出書と添付資料(投資家の情報、株主構成、投資内容、事業内容、投資後の経営関与の説明など)を作成します。届出・報告は、日本銀行を経由して財務大臣と事業所管大臣に提出します。
ステップ4 審査期間の管理
受理後は原則30日間の待機期間があり、審査の状況により短縮または延長され、合計で最長5か月までとなります。追加質問があれば、事業内容、製品・技術、資本関係、経営関与について、届出書と整合する回答を作成します。待機期間中は、出資の払込みなど投資の実行を行いません。
ステップ5 投資の実行(設立手続きの進行)
審査の結果を確認したうえで、設立手続きを進めます。
ステップ6 事後報告・実行報告
事前届出が必要な場合は、取引の完了後45日以内に、日本銀行経由で財務大臣と事業所管大臣へ報告します。指定業種以外を営む企業への一定の対内直接投資も、投資後の報告が求められます。報告の要否・期限は類型ごとに異なるため、実行日と投資の類型を確認して特定します。
3-5. 設立のどの時点で届出をするか
事前届出が必要な場合、定款認証や出資の払込みより前に届出を行うことを基本に設計します。どの時点を「投資の実行」とみるかは、投資の類型や日本銀行・所管省庁の取扱いによって整理が分かれうるため、案件ごとに確認し、安全側でスケジュールを組みます。
4. 会社設立の手続き(会社法・登記)
外国人が設立する場合も、基本の流れは、定款の作成、公証人の認証、出資金の払込み、設立登記です。外国人・外国法人の場合は、次の書類・手続きで特有の対応が必要になります。
4-1. 役員・居住要件
代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合でも、設立登記・就任登記は受理される取扱いになっています(平成27年3月16日民商第29号通知)。国籍による制限もありません。ただし、代表取締役が日本に居住して経営に従事する場合は、在留資格が別に必要です(後述)。
4-2. 署名証明書(サイン証明書)
設立登記では、発起人や設立時取締役の印鑑証明書が必要です。日本に住所のない外国人は、その代わりに署名証明書を提出できますが、本国の官憲(本国の公証人や日本にある領事など)が発行したものである必要があります。取得に時間がかかることがあるため、早めに準備します。外国語の書類には日本語訳を付けます。
4-3. 外国法人が発起人となる場合の書類
外国法人が発起人になる場合は、現地の登記事項証明書に相当する書類、代表者の資格を示す書類、代表者の署名証明、それらの日本語訳などが必要です。必要書類は国や案件によって異なるため、公証役場・法務局の取扱いを事前に確認します。
4-4. 定款認証
株式会社の設立では、公証人による定款認証が必要です。発起人が個人か法人かを問わず、実質的支配者となるべき者の申告書も必要です。外国法人が出資する場合は、実質的支配者の特定に、上位の株主構成の確認が必要になります。
4-5. 出資金の払込み
発起設立では、発起人が定めた払込取扱機関に出資金を払い込みます。払込取扱機関には、内国銀行の本支店や外国銀行の日本国内支店が含まれますが、外国銀行の海外本支店は含まれません。払込みの口座の用意は外国人の設立で課題になりやすいため、設立の初期に方法を決めます。外為法の事前届出が必要な場合は、待機期間が終了するまで払込みを行わないことに注意します。
4-6. 設立登記と設立後の手続き
払込み後、司法書士が設立登記を申請します。登記完了後は、登記事項証明書の取得、税務署・都道府県・市区町村への届出、社会保険の手続き、銀行口座の開設などを進めます。
5. 外国人が経営に従事する場合:在留資格「経営・管理」
外国法人が出資するだけで、代表者が海外に居住したまま経営する場合には、在留資格は問題になりません。外国人が日本に在留して経営に従事する場合は、在留資格の要否を確認します。
2025年10月16日施行の改正で、「経営・管理」の許可基準が大きく見直されました。資本金等の額が3,000万円以上に引き上げられ、1名以上の常勤職員の雇用、日本語能力、経営経験、専門家による事業計画の確認なども新たに求められます。改正前から在留していた方には経過措置があり、施行から3年以内の更新申請では、一定の条件のもとで旧基準で取得した方にも許可が検討されます。
資本金の額は、外為法上の判断(投資額)や設立コストにも直結するため、設立前の段階で在留資格の基準を確認したうえで決めます。 常勤職員の要件の詳細(対象となる在留資格など)や経過措置の適用は、出入国在留管理庁の最新の公表資料で確認します。
6. 例:台湾法人が日本法人の株式90%を出資して設立する場合
- 台湾法人の属性、上位株主、実質的支配者を確認する(外国投資家の該当性、実質的支配者の申告)
- 設立する法人の事業内容を整理し、指定業種・コア業種への該当性を検討する
- 指定業種に該当する場合は、事前届出書を作成して日本銀行経由で提出する。待機期間は払込みを行わない
- 並行して、定款案、署名証明書(または相当書類)と日本語訳、払込みの口座を準備する
- 届出の結果を確認し、定款認証、払込み、設立登記を行う
- 設立後、事後報告・実行報告の要否と期限を確認し、期限内に提出する
出資比率が90%であることだけで、事前届出が確定するわけではありません。 事業内容が指定業種に該当するかで判断が分かれます。また、外国法人が過半数を出資する日本法人は、それ自体が外国投資家に該当しうるため、設立後の増資、株式の譲渡、他社への投資、役員選任、事業目的の変更の際にも、外為法上の確認が必要です。
7. 設立後の注意点
- 追加出資・増資・株式の取得・譲渡は、そのたびに外為法上の要否を確認します。
- 事業目的を追加・変更する場合は、指定業種への該当性を再確認します。
- 外為法の見直しが進んでいます。2026年6月5日に公布された改正法では、間接投資規制の導入、リスク軽減措置の明確化、日本版CFIUS(対日外国投資委員会)の設置などが盛り込まれ、施行日は、一部を除き公布から1年以内に政令で定められます。投資の時点で適用される法令・告示・様式を必ず確認します。
8. 当事務所のサポート
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外為法対応 | 業種該当性の検討・検討書作成、事前届出書・事後報告書の作成支援、告示解釈照会書の作成、審査中の追加質問への対応 |
| 会社設立 | 定款の作成、公証役場での認証手続き、必要書類の整理(登記は提携司法書士と連携) |
| 全体管理 | 外為法の審査期間、署名証明書の取得、払込み、登記を含む設立スケジュールの管理 |
| 在留資格 | 在留資格の要否の確認と、関係する専門家・手続きとの調整(案件に応じて) |
初回のご相談では、次の情報をお知らせください。必要な手続きを整理しやすくなります。
- 出資者の国・地域、外国法人か個人か、出資比率
- 日本法人の事業内容(製品・サービス、工程、取引先)
- 資本金の予定額、設立・出資の予定時期
- 代表者の居住地と、在留資格の有無
行政書士法人塩永事務所は、熊本を拠点に、国内外の企業による日本での事業展開を支援します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件の結論を示すものではありません。実際の手続きは、投資の内容と、投資時点で適用される法令・告示・様式に基づいて判断します。
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