
建設業の経営事項審査(経審)とは?P点・X1・X2・Y・Z・Wを行政書士が徹底解説
熊本の建設会社が公共工事を受注するために知っておきたい「経審」のすべて
公共工事への入札参加を考えている建設会社にとって、避けて通れないのが**経営事項審査(経審)**です。
「経審を受けないと公共工事を受注できないの?」
「P点って何?」
「P点を上げるには、売上を増やせばいいの?」
「技術者を増やすと何点上がる?」
「経審対策は決算が終わってからでは遅い?」
こうしたご相談は、熊本県内の建設業者からも多く寄せられます。
経営事項審査は単なる「申請手続」ではありません。
完成工事高、自己資本、利益、技術者、元請実績、CPD、建設機械、社会性、財務内容などを総合的に点数化し、公共工事の入札参加資格等の基礎となる重要な制度です。
そして、その中心となる数字が**「総合評定値(P点)」**です。
1.経営事項審査(経審)とは?
経営事項審査とは、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者について、経営規模、技術力、経営状況、社会性などを客観的に数値化する制度です。
国土交通省も、公共工事を直接請け負おうとする建設業者について、経営事項審査を受ける必要がある制度として説明しています。
簡単にいうと、
「この建設会社は、どのくらいの規模があり、どのくらいの技術力があり、経営状態がどうで、社会的な取組をどの程度行っている会社なのか」
を一定のルールで点数化する制度です。
ただし、
経審のP点=そのまま入札の順位
ではありません。
公共工事の入札では、経審による客観点に加えて、発注者ごとの主観点やその他の参加資格等を組み合わせて、最終的な格付け・順位付けが行われます。
2.P点とは何か?
経審を理解するうえで最も重要なのがP点です。
P点の正式名称は、
「総合評定値(P)」
です。
経営事項審査では、
- X1
- X2
- Y
- Z
- W
という5つの評点を算出し、それらを一定の割合で組み合わせてP点を計算します。
現在の基本的な算式は、
P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W
です。
つまり、
| 評点 | 主な評価内容 | P点へのウエイト |
|---|---|---|
| X1 | 完成工事高 | 25% |
| X2 | 自己資本額・利益 | 15% |
| Y | 経営状況・財務内容 | 20% |
| Z | 技術力・元請完成工事高 | 25% |
| W | 社会性等 | 15% |
となります。
ここが非常に重要です。
P点は「売上だけ」で決まらない
例えば、
「売上高が大きい会社だからP点も高い」
とは限りません。
完成工事高が大きくても、
- 技術者が少ない
- 元請実績が少ない
- 自己資本が弱い
- 利益が少ない
- 財務内容が悪い
- 社会性等の加点要素が少ない
といった場合には、P点が伸びないことがあります。
逆に、売上規模がそれほど大きくなくても、技術者、元請実績、財務、CPD、建設機械等を適切に整えている会社は、効率的にP点を高められる場合があります。
3.X1とは?――完成工事高を評価
X1は、基本的に業種別の完成工事高を評価する項目です。
例えば、
- 土木一式
- 建築一式
- 電気
- 管
- 舗装
- とび・土工
- 塗装
- 防水
- 解体
など、業種ごとに評価されます。
ここで注意したいのは、
会社全体の売上高=そのままX1になるわけではない
ということです。
経審では、どの工事がどの業種に該当するのか、完成工事高として適切に計上されているかを確認する必要があります。
したがって、
「売上を増やせばP点が上がる」
という単純な話ではありません。
どの業種にどの程度の完成工事高があるのかという点が重要です。
4.X2とは?――自己資本と利益を評価
X2では、主として、
- 自己資本額
- 利払前税引前償却前利益の額
が評価されます。
簡単にいうと、
「会社の財務的な規模と利益をどの程度確保しているか」
を見る項目です。
そのため、
「売上は大きいけれど、利益がほとんど出ていない」
「借入金が多く、自己資本が薄い」
という会社では、X2を伸ばすことが難しい場合があります。
経審対策では、単純な節税だけを考えるのではなく、
公共工事を取りに行く会社として、どのような決算書を作るのか
という視点が重要になります。
5.Y点とは?――会社の「経営状況」を評価
Y点は、経営状況分析によって算出される評点です。
ここは非常に重要です。
Y点では、財務諸表を基礎として、会社の財務状態を分析します。
代表的な評価項目として、
- 純支払利息比率
- 負債回転期間
- 総資本売上総利益率
- 売上高経常利益率
- 自己資本対固定資産比率
- 自己資本比率
- 営業キャッシュ・フロー
- 利益剰余金
などがあります。
つまりY点は、
「この会社の財務体質は健全なのか?」
を見る部分です。
6.Y点は行政書士だけでは完結しない
Y点については、行政書士が単独で自由に点数を決めることはできません。
まず、
登録経営状況分析機関
に経営状況分析を申請します。
そこでY点が算出され、その後、経営規模等評価を受け、最終的にP点が算出されます。
流れとしては、
決算終了
↓
事業年度終了変更届
↓
経営状況分析申請
↓
Y点確定
↓
経営規模等評価申請
↓
X・Z・W評価
↓
P点(総合評定値)
という流れになります。
7.Z点とは?――「技術力」を評価
Z点は、経審対策の中でも非常に重要です。
主に、
①技術職員数
②元請完成工事高
が評価されます。
つまり、
「どんな技術者が何人いるのか」
「その技術者がどの業種に対応しているのか」
「元請としてどの程度の工事を施工しているのか」
という点が重要になります。
Z点のP点へのウエイトは25%です。
これはX1と並んで、5項目の中で最大のウエイトです。
8.技術者の「資格」が重要
技術者については、単純に人数だけを増やせばよいわけではありません。
例えば、
- 1級施工管理技士
- 2級施工管理技士
- 技術士
- 建築士
- 電気主任技術者
- 電気工事士
- その他の資格
など、資格区分や業種との対応関係を確認する必要があります。
さらに、技術者として経審上認められるためには、単に資格証があるだけでは足りず、常勤性などの確認が必要となる場合があります。
そのため、
「資格者を雇ったから来年の経審で必ず点数が上がる」
とは限りません。
9.Z点対策では「CPD」も重要
近年の経審では、技術者の継続的な能力向上も重要になっています。
CPDとは、
Continuing Professional Development
の略で、技術者が継続的に知識・技能を向上させるための取組です。
経審では、CPD単位を取得した技術者について、一定の要件のもとで評価されます。
そのため、
資格を取ったら終わり
ではなく、
資格+継続教育+実務経験
という管理が重要になっています。
10.W点とは?――「社会性等」を評価
W点は「その他の審査項目(社会性等)」です。
ここは非常に多くの会社が見落としやすい部分です。
Wでは、例えば、
- 建設業の営業継続
- 防災活動への貢献
- 法令遵守
- 建設業経理
- 研究開発
- 建設機械の保有
- ISO等
- 若年技術者・技能者の育成
- 就業履歴の蓄積に関する取組
- その他の社会性に関する取組
などが評価対象となります。
そして、2026年7月1日からW点が大きく改正されました。
11.2026年7月から経審が改正された
2026年7月1日から、経営事項審査の制度が改正されています。
熊本県も2026年7月1日申請受付分から改正制度を適用しています。
主な改正は、
①社会保険加入状況の減点項目を削除
従来は、
- 雇用保険
- 健康保険
- 厚生年金
の加入状況について、W点で減点される仕組みがありました。
2026年7月改正では、この社会保険加入に関する減点項目が削除されています。
ただし、
「社会保険に入らなくてもいい」という意味ではありません。
建設業者として社会保険加入義務がある場合には、当然ながら適切な加入・法令遵守が必要です。
12.「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」が加点対象に
2026年7月改正では、
「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」
の宣言状況が新たな加点項目として設けられました。
熊本県の案内では、W点について5点の加点項目とされています。
これは今後の経審対策として見逃せないポイントです。
13.建設機械の保有も重要
建設機械についてもW点で評価されます。
例えば対象となる建設機械について、
「会社が実際にどの機械を保有・使用しているのか」
を確認する必要があります。
2026年7月改正では、対象となる機械に、
- 不整地運搬車
- アスファルト・フィニッシャ
が追加されています。
したがって、建設機械を保有している会社は、
「機械を持っているだけ」ではなく、経審上評価できる状態になっているか
を確認することが重要です。
14.就業履歴の蓄積に関する評価も変更
2026年7月改正では、
建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置
についても配点が見直されています。
熊本県の案内では、
- 民間工事を含む全ての建設工事:15点→10点
- 全ての公共工事:10点→5点
へ変更されています。
経審は、
「毎年同じ書類を出せばいい制度」ではありません。
制度改正に合わせて、毎年チェックする必要があります。
15.P点は何点あればいい?
ここは非常に多い質問です。
しかし、
「P点○○点なら公共工事を受注できる」
という一律の基準はありません。
なぜなら、入札参加資格や格付けは、
- 発注者
- 工事種別
- 工事規模
- 地域
- 業種
- 客観点
- 主観点
- その他の参加資格
などによって変わるからです。
例えば、
P点800点の会社
と
P点1,000点の会社
では、一般的には後者の方が高い評価を受ける可能性があります。
しかし、
「P点1,000点なら必ずAランク」
という単純な関係ではありません。
16.「P点を上げる」ために何をすればいい?
経審対策では、次の5つを総合的に検討します。
①完成工事高を適切に確保する
X1対策です。
重要なのは、
「売上を増やす」だけではなく、どの業種の完成工事高を増やすのか
という視点です。
②利益・自己資本を改善する
X2対策です。
例えば、
- 赤字を減らす
- 利益率を改善する
- 債務超過を避ける
- 自己資本を厚くする
といった経営改善が重要になります。
③財務体質を改善する
Y点対策です。
特に、
「節税すれば必ず経審に有利」
とは限らない点に注意が必要です。
税金を減らすために利益を極端に圧縮すると、経審上の利益評価に影響する場合があります。
したがって、
税務上の最適化
と
経審上の評価
を両方考える必要があります。
税理士と行政書士が連携して事前に検討することが理想的です。
17.④技術者を戦略的に確保する
Z点対策です。
単純な人数ではなく、
どの業種の技術者が必要なのか
を考えます。
例えば、
土木工事のP点を上げたいのに、建築系の資格者ばかり増やしても、期待した効果が得られない場合があります。
そのため、
「自社が今後どの業種の公共工事を取りたいのか」
↓
「そのためにどの資格者が必要なのか」
↓
「採用・資格取得・CPDをどうするか」
という逆算が重要です。
18.⑤W点の加点項目を取りこぼさない
W点は、経審対策の中で比較的取り組みやすい項目があります。
例えば、
- 建設機械
- ISO
- CPD
- 若年技術者・技能者
- 防災協定等
- 建設業経理
- 技能者育成
- 就業履歴
- 自主宣言制度
などです。
もちろん、すべての会社がすべて取得できるわけではありません。
重要なのは、
「自社で取得可能な加点項目を事前に洗い出すこと」
です。
19.経審は「決算後」に始めると遅い
ここが実務上、非常に重要です。
経審の結果は、決算書や完成工事高、技術者、社会性等を基礎として決まります。
したがって、
決算が終わってから「P点を上げたい」と言っても、できることには限界があります。
例えば、
「今年は利益をどうするか」
「技術者を採用するか」
「資格取得をどうするか」
「CPDをどうするか」
「建設機械を導入するか」
「ISOを取得するか」
「どの業種の工事を増やすか」
などは、決算前から考える必要があります。
20.経審の年間スケジュール
一般的には、
STEP1 決算
↓
STEP2 決算変更届
↓
STEP3 経営状況分析
↓
STEP4 経営規模等評価申請
↓
STEP5 P点通知
↓
STEP6 入札参加資格申請・指名願
という流れになります。
熊本県では2026年度について、審査基準日は2025年10月1日から2026年9月30日までの決算が対象となっています。受付期間は原則として各月1日から20日までと案内されています。
また、熊本県では電子申請も利用できます。
21.熊本県の建設業者は特に注意
熊本県知事許可の建設業者については、熊本県が経審を実施します。
一方、国土交通大臣許可の場合は九州地方整備局が審査を行います。
したがって、
「熊本県内の会社だから全部熊本県に経審を申請する」
とは限りません。
許可行政庁を確認する必要があります。
22.熊本県では電子申請にも対応
現在の熊本県の経審では、
建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)
を利用した電子申請が可能です。
熊本県は2026年度の経審について、電子申請を基本とし、電子申請が困難な場合には郵送による書面申請も受け付けるとしています。
行政書士に依頼することで、
- 必要書類の整理
- 決算変更届の確認
- 経営状況分析
- 経審申請書作成
- 技術職員の確認
- CPD確認
- 建設機械確認
- W点資料確認
- 電子申請
- 補正対応
- P点確認
まで一連の流れを管理することができます。
23.P点を上げるなら「経審診断」が重要
当事務所では、単に経審申請書を作成するだけではなく、
「なぜこのP点になったのか」
を分析することが重要だと考えています。
例えば、
現状
P点:850点
↓
分析
X1:○点
X2:○点
Y:○点
Z:○点
W:○点
↓
改善案
「技術者1名の資格取得」
「CPD取得」
「建設機械の評価対象確認」
「自主宣言制度の活用」
「利益率改善」
「元請工事比率改善」
↓
翌年度
P点:900点を目標
というように、
「P点を経営目標として管理する」
という考え方です。
24.P点対策は「公共工事戦略」とセットで考える
経審は単独で考えるより、
建設業許可
↓
経審
↓
P点
↓
入札参加資格
↓
格付
↓
公共工事受注
という一連の流れで考えることが重要です。
さらに、
経審対策=会社経営改善
という側面もあります。
利益を確保する。
自己資本を厚くする。
技術者を育成する。
資格者を増やす。
建設機械を整備する。
社会性を高める。
法令遵守を徹底する。
これらは、公共工事の入札対策だけではなく、建設会社そのものの経営基盤強化につながります。
25.行政書士法人塩永事務所の「経審・P点対策」
熊本県の建設会社の皆様へ。
行政書士法人塩永事務所では、
建設業許可+決算変更届+経営状況分析+経営事項審査+入札参加資格
を一連の業務としてサポートします。
特に重要なのは、
「申請書を作って提出するだけの経審」ではなく、「P点を意識した経審」
です。
対応可能な業務
- 建設業許可申請
- 業種追加
- 更新
- 決算変更届
- 経営事項審査
- 経営状況分析申請サポート
- 経営規模等評価申請
- 総合評定値(P点)請求
- 技術職員・資格確認
- CPD確認
- 建設機械加点確認
- W点加点項目の確認
- 入札参加資格申請
- 指名願
- 公共工事参入に向けた事前診断
- P点改善計画
- 建設会社の経営改善支援
26.「P点を上げたい」という会社は、まず現状分析を
経審では、
「とにかく売上を増やす」
ではなく、
X1・X2・Y・Z・Wのどこが弱いのか
を確認することがスタートです。
例えば、
| 評点 | 現状 | 改善方向 |
|---|---|---|
| X1 | 完成工事高が少ない | 対象業種の受注・完成工事高を検討 |
| X2 | 利益・自己資本が弱い | 財務改善 |
| Y | 財務体質が弱い | 借入・利益率・資産構成等を改善 |
| Z | 技術者が少ない | 資格者・技術者育成 |
| W | 加点項目が少ない | CPD・建機・社会性等を確認 |
この分析を行うことで、
「あと何をすればP点が上がるのか」
が見えてきます。
27.経審は「行政書士に丸投げ」するだけではもったいない
経審は行政書士に依頼できます。
しかし、会社側も、
「今年のP点はいくつだったのか」
だけではなく、
「なぜこの点数なのか」
を理解することをおすすめします。
P点は、
会社の規模
+財務
+技術力
+社会性
を数値化したものです。
だからこそ、P点を経営指標の一つとして活用することができます。
28.まとめ|熊本の建設会社は「経審申請」から「P点戦略」へ
経営事項審査は、公共工事を目指す建設会社にとって非常に重要な制度です。
特に、
P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W
という仕組みを理解することが重要です。
P点を構成する、
- X1=完成工事高
- X2=自己資本・利益
- Y=経営状況
- Z=技術力
- W=社会性等
の5項目を分析し、
「どこを伸ばせばP点が上がるのか」
を考えることが、経審対策の基本です。
さらに、2026年7月からW点を中心とした制度改正が行われていますので、古い経審対策ではなく、2026年7月改正後の制度を前提とした対策が必要です。
熊本県の建設会社で、
「経審を受けたい」
「P点を上げたい」
「公共工事の受注を増やしたい」
「今のP点が適正なのか診断してほしい」
という場合は、決算終了後ではなく、できるだけ早い段階でご相談ください。
行政書士法人塩永事務所では、熊本県の建設業者を対象に、建設業許可から経審、P点対策、入札参加資格申請まで一貫してサポートしています。
まずは現在の経審結果通知書、決算書、技術職員の資格状況などを確認し、
「現在のP点」→「P点が低い原因」→「改善可能な項目」→「次回経審に向けた対策」
まで整理することをおすすめします。
行政書士法人塩永事務所
熊本県熊本市|熊本県内対応・全国対応
建設業許可・経営事項審査・入札参加資格申請・公共工事参入支援
