
太陽光パネルの処分に係る産業廃棄物収集運搬業・処分業の許可制度について
第1 はじめに
再生可能エネルギー特別措置法に基づく固定価格買取制度(FIT制度)の導入以降、太陽光発電設備の設置件数は急速に増加した。同制度の開始から10年以上が経過した現在、設備の耐用年数(一般に20年から30年程度とされる)の到来に伴い、使用済み太陽光パネルの排出量は今後段階的に増加し、環境省の試算によれば2030年代後半以降には年間最大約50万トン規模に達する可能性があるとされている。
使用済み太陽光パネルは、家庭系一般廃棄物として処理し得るものではなく、事業活動に伴い排出される場合、原則として廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)上の産業廃棄物(ガラスくず、金属くず等)に該当し、同法に基づく規制の対象となる。当該廃棄物の収集運搬又は処分を業として行おうとする者は、廃棄物処理法第14条の定めるところにより、それぞれ都道府県知事(政令で定める市の区域内にあっては、当該市の長。以下同じ。)の許可を受けなければならない。
本稿では、認定経営革新等支援機関である行政書士法人塩永事務所が、太陽光パネルの処分に係る産業廃棄物収集運搬業許可及び産業廃棄物処分業許可の制度概要並びに関連するリサイクル法制の動向について解説する。
第2 排出事業者の責任
廃棄物処理法第3条第1項は、事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない旨を規定する(排出事業者責任の原則)。排出事業者が処理を第三者に委託する場合であっても、同法第12条第5項及び同条第6項並びに廃棄物処理法施行令第6条の2に定める委託基準に従い、当該処理を業として行う許可を有する者に委託しなければならない。
また、委託に際しては、廃棄物処理法第12条の3の規定により、産業廃棄物管理票(いわゆるマニフェスト)を交付し、その写しを保存する義務を負う。
無許可の者に処理を委託した場合、又は委託基準に違反した場合には、委託した排出事業者自身が同法に基づく措置命令、許可取消し等の行政処分、又は同法第25条以下に定める罰則の対象となり得る点に留意を要する。
第3 産業廃棄物収集運搬業許可
太陽光パネルを発電設備の設置場所から中間処理施設又はリサイクル施設まで運搬する事業を業として行う場合、廃棄物処理法第14条第1項に基づく産業廃棄物収集運搬業許可を要する。
1 許可の対象となる行為の例
- 撤去された太陽光パネルの発電所からの回収
- 解体工事業者から中間処理施設への運搬
- 中間処理施設からリサイクル施設への運搬
2 主たる許可要件
同法第14条第5項各号に定める欠格要件に該当しないことを前提として、以下の要件を満たす必要がある。
- 都道府県等が実施する産業廃棄物収集運搬業に関する講習会の修了(公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター等が実施する講習の受講が実務上求められる)
- 収集運搬に供する車両・容器等の構造が飛散・流出等を防止し得るものであること
- 事業を的確かつ継続的に行うに足りる経理的基礎を有すること
- 事業の用に供する施設及び申請者の能力が廃棄物処理法施行規則に定める基準に適合すること
積込みを行う区域と荷卸しを行う区域とが異なる都道府県等にまたがる場合は、当該収集運搬に係る各区域を管轄するそれぞれの都道府県知事等の許可を要する(いわゆる「積み地」「卸し地」双方における許可取得)。
第4 産業廃棄物処分業許可
太陽光パネルの破砕、選別その他の中間処理又は再資源化を業として行う場合は、廃棄物処理法第14条第6項に基づく産業廃棄物処分業許可を要する。処分業許可は収集運搬業許可と比較して審査事項が多く、施設に係る技術上の基準がより厳格に定められている。
主たる審査事項
- 中間処理施設の構造及び規模並びに廃棄物処理法施行規則に定める技術上の基準への適合性
- 破砕・選別設備の性能
- 保管施設に係る基準(保管上限、飛散・流出・地下浸透・悪臭発散の防止措置等)
- 生活環境保全上の配慮(騒音、振動、粉じん、排水対策等)
- 事業を的確かつ継続的に行うに足りる技術的能力及び経理的基礎
第5 有害物質を含有する製品への対応
太陽光パネルの一部の製品には、鉛、セレン、カドミウム等の有害物質が含有される場合がある。これらを不適正に破砕・埋立て等した場合、土壌汚染対策法及び水質汚濁防止法等の関係法令に抵触する事態を招く可能性があり、処理施設においては、含有物質の事前把握及びこれに応じた適切な中間処理・保管上の措置が求められる。取り扱う廃棄物の性状によっては、既存の許可品目への追加申請又は施設基準の追加的な適合が必要となる場合がある。
第6 リサイクルに関する新たな法制度の動向
前記のとおり、使用済み太陽光パネルの排出量の急増が見込まれる中、政府は令和8年(2026年)4月3日、「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律案」を閣議決定した。同法律案の概要は次のとおりである。
- 一定量以上の太陽光パネルを処分する事業者を「多量事業用太陽電池廃棄者」として定義し、国が定める基準に従った再資源化を義務付けるものとしている
- 対象は、ガラスを用いた板状の太陽電池モジュールであって一定の重量以上のものとされている
- 対象事業者に対し、廃棄に係る実施計画の国への届出義務を課し、当該計画の受理後30日間は原則として廃棄を制限するものとしている(全量を再資源化する場合又は国の認定を受けた再資源化事業者に委託する場合は、当該制限期間を短縮する旨の規定が置かれている)
- 再資源化を行う処理事業者に係る国の認定制度を新設する内容を含む
同法律案は、本稿執筆時点(令和8年8月)において国会における審議前又は審議中の段階にあり、いまだ成立には至っていない。関係者の見通しによれば、施行時期は早くとも令和9年(2027年)末頃になるものとされている。現段階で義務化の対象として想定されているのは主として大規模な発電事業者(いわゆるメガソーラー事業者)であり、住宅用の太陽光発電設備については直接の義務対象とはされていないが、将来的な対象範囲の拡大の可能性は否定されない。
なお、同法律案が成立・施行された場合であっても、廃棄物処理法に基づく産業廃棄物収集運搬業許可及び産業廃棄物処分業許可の制度自体が廃止されるものではなく、新法制は既存の廃棄物処理法制に上乗せする形での規律強化及び再資源化促進を目的とするものと位置付けられている。処理業者、発電事業者及び解体工事業者は、今後の国会審議の経過及び施行スケジュールについて継続的な情報収集を要する。
第7 許可取得における留意事項
産業廃棄物収集運搬業許可及び産業廃棄物処分業許可は、申請書の提出のみをもって取得し得るものではなく、都道府県等ごとに定める審査基準に従い、添付書類、財務要件、施設基準、法人の定款所定の事業目的、車両・設備の登記事項等について詳細な審査が行われる。また、許可取得後においても、5年ごとの更新許可申請(廃棄物処理法第14条第2項)のほか、役員等の変更届出、事業範囲の変更許可申請、積替え保管を行う場合の許可申請等、継続的な手続対応を要する。
新規参入を検討する事業者においては、事業計画策定の段階から専門家に相談することにより、許可取得までの期間の短縮及び申請書類の不備による補正対応リスクの軽減が期待できる。
第8 当事務所によるサポート
行政書士法人塩永事務所は、認定経営革新等支援機関として、産業廃棄物収集運搬業許可及び産業廃棄物処分業許可をはじめ、建設業許可、古物商許可、貨物自動車運送事業許可等の各種許認可申請につき、多数の実績を有している。
太陽光パネルの大量廃棄時代の到来を見据え、リサイクル関連事業への新規参入を検討する事業者は増加傾向にある。もっとも、産業廃棄物処理業に係る規制は厳格であり、かつ都道府県等ごとに運用上の相違が存するため、正確な法令知識及び実務経験を要する分野である。
当事務所は、事業計画策定の段階から許可取得、更新・変更届出に至るまで一貫した支援を行っている。太陽光パネルの処分又はリサイクル事業への参入を検討される事業者、産業廃棄物収集運搬業許可・産業廃棄物処分業許可の取得を希望される事業者は、当事務所までご相談いただきたい。前記新法律案の国会審議及び施行時期の動向を踏まえた最適な対応につき、支援いたす所存である。
096-385-9002 / info@shionagaoffice.jp
