
不動産業界における法制度の最新動向と実務対応(2026年時点)
― 空き家対策・相続土地国庫帰属制度・こども性暴力防止法を中心に ―
近年、日本の不動産分野においては、空き家の増加、相続未登記問題、低利用不動産の拡大といった構造的課題を背景に、関連法制度の整備および運用強化が進められています。
これらの制度は単一の改正によって急激に変化したものではなく、複数の法改正および制度導入が段階的に実施された結果として、現在の実務環境が形成されています。
特に、不動産の仲介・管理・利活用・再生に関与する事業者にとっては、以下の3領域における制度理解と対応が不可欠です。
- 空き家対策
- 相続土地国庫帰属制度
- こども性暴力防止法(日本版DBS)
本稿では、2026年時点の制度運用を踏まえ、不動産実務に与える影響および専門家連携の必要性について整理します。
1.空き家対策の制度強化と実務への影響
1-1.法改正の概要
空家等対策の推進に関する特別措置法は、2023年改正により「管理不全空家等」の概念が新設されました。
これにより、従来の「特定空家等」に至る前段階から、自治体による指導・勧告が可能となり、空き家の早期是正を促す制度設計へと転換されています。
また、勧告を受けた場合には、固定資産税における住宅用地特例の適用が解除されることにより、所有者に対する経済的インセンティブの調整も図られています。
1-2.所有者調査と行政対応
空き家問題の実務では、相続未了等に起因する所有者不明・連絡不能事案が依然として多く見られます。
このようなケースでは、
- 戸籍・除籍・改製原戸籍の収集
- 戸籍附票等による住所履歴の追跡
- 相続関係図の作成
といった法的資料の収集・分析が必要となります。
行政書士は、これらの資料収集および整理、並びに自治体対応に必要な書類作成を通じて、不動産事業者および所有者の実務を支援します。
1-3.空き家の利活用と用途変更
空き家対策は除却のみならず、利活用の観点からも重要性が増しています。
代表的な活用形態としては、
- 民泊(住宅宿泊事業法に基づく届出)
- 福祉施設
- 商業用途への転用
などが挙げられます。
これらの実現には、
- 建築基準法上の用途変更
- 開発許可
- 各種行政届出
といった複数の制度への対応が必要となり、単一の専門領域では完結しないケースが一般的です。
行政書士は、建築士等との連携を前提として、許認可手続きおよび書類作成の面から実務を支えます。
2.相続制度の変化と負動産問題への対応
2-1.相続登記義務化
2024年施行の相続登記義務化により、不動産の相続登記は法的義務となりました。
なお、所有権移転登記の申請は司法書士の業務であり、行政書士はこれを行うことができません。
この点は、業務範囲の理解において重要です。
2-2.相続土地国庫帰属制度の実務運用
相続土地国庫帰属制度は2023年に施行され、2026年時点では実務上の利用が一定程度進んでいます。
本制度は、一定の要件を満たす土地について、負担金を納付することで国への帰属を認める仕組みです。
対象となるのは、
- 売却困難な土地
- 維持管理コストが過大な不動産
など、いわゆる「負動産」です。
2-3.申請手続きと専門家の関与
本制度における申請は原則として本人が行いますが、
申請書および添付書類の作成支援については、
- 弁護士
- 司法書士
- 行政書士
が対応可能とされています。
したがって、特定士業の独占業務ではありません。
行政書士は、主として書類作成および手続整理の面から関与します。
2-4.不動産業務との関係
近年の実務では、売却を前提としない不動産相談が増加しており、
- 売却
- 利活用
- 国庫帰属
といった複数の選択肢を踏まえた提案が求められています。
このような背景から、士業との連携は実務上不可欠となっています。
3.こども性暴力防止法(日本版DBS)の影響
2026年施行予定のこども性暴力防止法は、子どもと接する事業者に対し、性犯罪歴確認等の措置を求める制度です。
3-1.不動産実務への影響
特に、以下の用途のテナントにおいて影響が想定されます。
- 学習塾
- 学童保育
- スポーツクラブ
これらの事業者については、
- 認定取得の有無
- 内部体制の整備状況
が、賃貸判断やテナント選定の一要素となる可能性があります。
3-2.行政書士の役割
行政書士は、
- 認定申請に係る書類作成
- 体制整備に関する手続支援
といった分野で関与が想定されます。
ただし、制度の詳細は施行に向けて順次具体化されるため、最新の制度情報の確認が必要です。
4.行政書士法とコンプライアンス対応
行政書士法においては、官公署に提出する書類の作成を業として行うことは、原則として行政書士または他の法令に基づく資格者に限定されています。
このため、不動産業者が報酬を得て許認可書類等を作成する場合には、法令上の制約に留意する必要があります。
4-1.実務上の留意点
コンプライアンス確保の観点からは、以下の役割分担が重要です。
- 許認可・届出書類作成:行政書士等
- 登記手続き:司法書士
- 紛争対応:弁護士
これにより、法的リスクの低減と業務の適正化が図られます。
まとめ
不動産分野における近時の法制度の変化は、
行政手続きの高度化と、専門家連携の必要性の増大
という形で実務に影響を及ぼしています。
空き家問題、相続、負動産対応といった分野においては、単独での対応が困難なケースも多く、
不動産事業者と各士業との適切な連携体制の構築が、今後の実務において重要な要素となります。
お問い合わせ
行政書士法人 塩永事務所
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TEL:096-385-9002
空き家対策、相続、許認可手続きに関するご相談について、実務に即した支援を行っております。必要に応じて他士業と連携し対応いたします。
