
【2026年9月最新】育成就労制度とは?技能実習との違いを比較表で行政書士が解説
更新日:2026年9月1日 外国人雇用|就労ビザ|技能実習|育成就労
行政書士法人塩永事務所
はじめに
2024年6月21日に公布された改正法(技能実習法を改組する「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」)により、技能実習制度を発展的に解消し、新たな在留資格制度である育成就労制度を創設することがすでに決まっています。
施行日は2027年4月1日です。これに向けて、2026年に入ってから制度の細部を定める公式資料が相次いで公表されており、企業が押さえておくべき内容もかなり具体化してきました。
- 2026年1月23日:受入れ対象分野・受入れ上限人数などを定める「分野別運用方針」を閣議決定
- 2026年2月20日:育成就労制度運用要領を公表(同年4月6日に一部改正)
- 2026年4月15日:監理支援機関の許可に関する施行日前申請の受付開始
- 2026年9月1日:育成就労計画の認定に関する施行日前申請の受付開始
本記事では、企業の外国人材受入れ担当者の方に向けて、育成就労制度の全体像と技能実習制度との違いを、直近の公式情報に基づき比較表つきで整理します。
なお、本記事は2026年8月末時点で公表されている出入国在留管理庁等の公式資料に基づいて作成しています。制度の詳細は今後の省令・告示によって変更される可能性があるため、実際の受入れにあたっては最新の公式情報もあわせてご確認ください。
育成就労制度とは?
育成就労制度は、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材確保が困難な分野において、原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成し、あわせて人材を確保することを目的とする制度です。
技能実習制度が建前上「技能移転による国際貢献」を目的としていたのに対し、育成就労制度では人材育成と人材確保が制度の目的として正面から位置付けられている点が最大の違いです。
制度開始後も、技能実習が即座に消滅するわけではありません。2027年4月1日より前に技能実習計画の認定を受けている実習生については、経過措置により技能実習の継続が可能とされています。具体的には、技能実習1号・2号は2号修了まで、技能実習3号は3号修了まで実習を続けることができ、2号から3号への移行についても一定の要件のもとで認められる見込みです。
また、特定技能制度がなくなるわけでもありません。育成就労は3年間で特定技能1号水準の技能・日本語能力を修得させ、その後特定技能1号へ移行させることを前提に設計された制度であり、特定技能はむしろ育成就労の「出口」として引き続き重要な位置を占めます。
技能実習と育成就労の違い【比較表】
| 比較項目 | 技能実習制度 | 育成就労制度 |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 国際貢献(技能移転)が建前 | 人材育成・人材確保が目的 |
| 特定技能との関係 | 制度上の連続性は限定的 | 特定技能1号への移行を前提に設計 |
| 受入れ対象分野 | 91職種168作業 | 分野別運用方針で定める産業分野・業務区分(17分野程度) |
| 受入れ上限 | 設定なし | 分野ごとに上限人数を設定(令和11年3月末までで約42.6万人) |
| 転籍(職場変更) | 原則不可 | 一定要件のもと、本人意向による転籍が可能 |
| 転籍制限期間 | - | 分野ごとに1年または2年(分野別運用方針で確定) |
| 日本語能力要件 | 入国時に原則なし | 就労開始前におおむねA1相当(JLPT N5目安)、特定技能1号移行時にA2相当(JLPT N4目安) |
| 監理機関 | 監理団体 | 監理支援機関(許可制・外部監査人の設置義務化) |
| 保護・監督機関 | 外国人技能実習機構(OTIT) | 外国人育成就労機構(転籍支援・相談援助も担う) |
制度の目的が「国際貢献」から「人材育成・人材確保」へ変わる
技能実習制度は、日本で修得した技能等を母国へ移転し国際貢献につなげることを制度の建前としてきました。しかし実態としては人手不足対応の役割を担ってきたことから、制度目的と運用実態の乖離が長年指摘されてきました。
育成就労制度では、この乖離を解消する形で人材育成・人材確保が制度目的として明確化されています。企業側には、これまで以上に「受け入れて終わり」ではなく、育成を通じて特定技能1号へつなげ、将来的な戦力として定着してもらうことを見据えた受入れ計画が求められます。
受入れ対象分野は特定技能とほぼ一致(新たに3分野が追加)
2026年1月23日に閣議決定された分野別運用方針により、育成就労の対象分野が正式に確定しました。介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、宿泊、鉄道、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業などに加え、新たにリネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野が追加され、合計で17分野程度となる見込みです。
受入れ上限についても、育成就労は令和11年3月末までで約42万6,200人、特定技能とあわせた合計では約123万1,900人という枠組みが示されています。技能実習制度には受入れ上限の定めがなかったため、これは大きな変更点です。
自社の業務が対象分野・業務区分に含まれるかどうかは、分野を所管する省庁の詳細な運用方針を確認する必要があります。特定技能の対象分野に入っていても、そのまま自動的に育成就労の対象になるとは限らない点に注意が必要です。
一定の条件を満たせば、本人意向による転籍が可能になる
技能実習制度では、やむを得ない事情がある場合を除き、本人都合による転籍は原則として認められていませんでした。この点は実習生保護の観点から長く課題視されてきました。
育成就労制度では、やむを得ない事情による転籍に加え、本人の意向による転籍も一定の要件を満たせば認められます。分野別運用方針では、転籍制限期間(同一の受入れ機関のもとで就労する必要がある期間)が分野ごとに定められており、介護・建設・工業製品製造業・造船舶用工業・自動車整備・飲食料品製造業・外食業・資源循環などは2年、ビルクリーニング・リネンサプライ・宿泊・鉄道・物流倉庫・農業・漁業・林業・木材産業などは1年とする方向性が示されています。
このほか、転籍先は技能・日本語能力の育成実績等に照らして適正な機関であることが必要で、転籍先での業務区分は転籍元と同一でなければなりません。また、本人意向による転籍者の人数は、転籍先における育成就労外国人全体の一定割合(原則3分の1以内、指定区域外への転籍では6分の1以内)に収める必要があるなど、無制限に転籍が広がらないような制度設計になっています。
企業にとっては、単に転職リスクが高まるというだけでなく、賃金水準・労働環境・教育体制・生活支援を含め、外国人材から「選ばれる職場」であり続けられるかが、これまで以上に定着の鍵を握ります。
日本語能力の要件がこれまで以上に明確になる
育成就労制度では、日本語能力の段階的な向上が制度上明確に位置付けられています。公表資料によれば、就労開始前までに「日本語教育の参照枠」のA1相当(JLPT N5相当の目安)の試験合格または相当講習の受講、特定技能1号への移行時にはA2相当(JLPT N4相当の目安)の試験合格が基本とされています。分野によってはこれより高い水準が求められる場合もあるため、分野別の要件確認が必要です。
企業には、採用時点の日本語能力だけでなく、入国後・就労後を通じた計画的な日本語学習支援が求められます。受験機会の確保や学習時間への配慮など、企業側の支援体制の充実がこれまで以上に問われることになります。
監理・支援体制が厳格化される
受入れを支える機関の枠組みも大きく見直されます。従来の監理団体は「監理支援機関」へ改められ、許可要件として外部監査人の設置が求められるなど、独立性・中立性を高める方向で制度設計されています。
また、外国人技能実習機構(OTIT)に代わり、外国人育成就労機構が設立される予定です。この新機構は、従来の監督・保護機能に加え、育成就労外国人の転籍支援や特定技能1号外国人への相談援助業務も担うこととされています。監理支援機関の許可に関する施行日前申請は2026年4月15日から、育成就労計画の認定に関する施行日前申請は2026年9月1日から、それぞれ受付が始まっています。
企業が今から準備しておきたいこと
育成就労制度の施行は2027年4月1日ですが、準備は2026年のうちから段階的に始まっています。
まず重要なのは、自社の業務が育成就労の対象分野・業務区分に含まれるかどうかの確認です。分野別運用方針は確定していますが、業務区分の詳細な該当性は所管省庁の情報とあわせて確認する必要があります。
次に、監理団体を利用している企業であれば、その監理団体が監理支援機関としての許可申請を進めているかの確認も欠かせません。監理支援機関としての許可がなければ、施行後の育成就労の監理を行うことができないためです。
そして、日本語教育・生活支援・キャリアパスの提示など、外国人材の定着を左右する受入れ体制の見直しも重要です。転籍が制度上認められる以上、待遇や職場環境の改善は、単なる法令対応にとどまらず人材確保の実務上の課題として位置付ける必要があります。
よくある質問
Q1.育成就労制度はいつから始まりますか? A.2027年4月1日に施行される予定です。
Q2.今の技能実習制度は、すぐになくなるのですか? A.いいえ。2027年4月1日より前に技能実習計画の認定を受けている実習生等については、経過措置により技能実習の継続が可能です。技能実習制度は移行期間を経て段階的に終了していきます。
Q3.育成就労が始まると、特定技能制度はなくなりますか? A.なくなりません。育成就労制度は特定技能1号への移行を前提に設計された制度であり、特定技能制度自体は引き続き存続します。廃止されるのは技能実習制度です。
Q4.育成就労では自由に転職できますか? A.いいえ、無条件に自由な転職ができる制度ではありません。本人意向による転籍は認められますが、分野ごとに定められた転籍制限期間(1年または2年)の経過、技能・日本語能力の水準、転籍先の適正性、転籍者数の割合制限など、複数の要件を満たす必要があります。
まとめ
育成就労制度は、技能実習制度をそのまま引き継ぐものではなく、人材育成と人材確保を正面から目的に据えた新しい制度です。2026年に入り、対象分野・受入れ上限・転籍制限期間・日本語要件などの詳細が相次いで公表され、制度の輪郭はかなり明確になってきました。
企業としては、「受け入れて終わり」ではなく、3年間で育成し特定技能1号への移行や定着まで見据えた受入れ体制の構築が求められます。2027年4月1日の施行まで残りわずかとなった今、自社が対象分野に含まれるか、監理団体・監理支援機関の対応状況はどうか、日本語支援や職場環境の整備をどう進めるかを、早めに確認しておくことが今後の外国人材の採用・定着において重要になるでしょう。
制度の詳細は今後も省令・告示等により変更される可能性があります。自社の受入れ計画への影響について具体的にご相談されたい場合は、行政書士法人塩永事務所までお気軽にお問い合わせください。
