
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?最大9,000万円の大型補助金を認定支援機関が徹底解説
行政書士法人塩永事務所(認定経営革新等支援機関)
中小企業の設備投資や新分野への挑戦を強力に後押しする新制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」が、2026年度からスタートしました。これまで多くの経営者様に活用いただいてきた「新事業進出補助金」と「ものづくり補助金」が統合・再編された制度で、最大9,000万円という規模の大きさが最大の特徴です。
当事務所は中小企業庁認定の「認定経営革新等支援機関」として、日々多くの事業者様の補助金申請・事業計画策定をサポートしております。本記事では、実務の現場で押さえておくべきポイントを中心に、本補助金の全体像を分かりやすく整理いたします。
1. 制度の概要と統合の背景
本補助金は、中小企業等が取り組む技術的な革新性のある製品・サービス開発、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、そして海外市場開拓に向けた設備投資等を支援するための制度です。
これまで別々の制度として運用されてきた「新事業進出補助金」と「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」が一本化されたことで、申請者にとっては窓口が分かりやすくなった一方、補助上限額・対象経費・審査要件などは旧制度から大きく刷新されています。公式にも旧制度とは別の補助金と位置づけられているため、過去に申請経験がある方も、最新の公募要領を必ず確認する必要があります。
主な変更点は以下のとおりです。
- グローバル枠の補助上限が、旧ものづくり補助金の海外市場開拓類型(最大3,000万円)から最大7,000万円(賃上げ特例適用で9,000万円)へ大幅に引き上げられた
- 基本的な賃上げ要件に加えて、より高い賃上げを行う事業者向けに上限額を引き上げる「賃上げ特例」が体系化された
- 最低賃金水準の労働者比率が高い事業者向けに補助率を引き上げる「地域別最低賃金引上げ特例」が新設された
- 中東情勢の影響を受けている事業者を優先的に採択する方針が示された
2. 3つの申請枠と補助上限額
本補助金は、事業者の目的に応じて次の3つの枠から1つを選んで申請する仕組みです。
| 枠 | 主な対象 | 補助上限(賃上げ特例適用時) | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 自社の技術力等を活かした革新的な新製品・新サービスの開発 | 2,500万円(3,500万円) | 中小1/2、小規模・再生事業者2/3 |
| 新事業進出枠 | 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出 | 7,000万円(9,000万円) | 中小1/2 |
| グローバル枠 | 海外市場開拓に向けた国内輸出体制の強化 | 7,000万円(9,000万円) | 中小2/3 |
革新的新製品・サービス枠
自社技術を活かして顧客に新たな価値を提供する製品・サービス開発を支援する枠です。単なる機械・システムの導入にとどまり新製品・新サービス開発を伴わないものや、同業他社ですでに広く普及している製品・サービスの開発、既存の生産プロセスの改善にとどまる取組は対象外となる点に注意が必要です。補助下限は100万円で、必須経費は機械装置・システム構築費です。
新事業進出枠
既存事業と異なる新市場、または高付加価値な事業への進出を支援する枠です。ここでいう「新規性」は、日本初・世界初である必要はなく、あくまで申請する事業者自身にとって新しい取組であれば足ります。ただし、単に既存製品の生産量を増やす、過去に扱っていた製品を再度製造する、既存製品の商圏を変えるだけといった取組は対象外です。補助下限は750万円で、機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが必須経費となります。なお、設立後1年に満たない事業者は本枠を利用できません。
グローバル枠
自社製品を活用した新たな海外販路開拓のための、国内における輸出体制強化を支援する枠です。取引先主導ではなく、自発的な海外展開の取組であることが求められます。補助率が中小企業者2/3と他枠より高く、海外旅費や通訳・翻訳費も対象経費に含まれるのが特徴です。
3. 補助対象者と対象外となる主なケース
補助対象となるのは、日本国内に本社および補助事業実施場所を持つ中小企業者、小規模企業者・小規模事業者、一定規模以下の特定事業者、要件を満たすNPO法人、農事組合法人などです。
一方で、以下のようなケースは対象外となりますので、申請前によくご確認ください。
- 申請時点で常時雇用する従業員が0名の事業者(役員のみでは不可)
- 設立・創業後1年に満たない事業者(新事業進出枠のみ)
- みなし大企業に該当する事業者
- 直近3年の課税所得平均が15億円を超える中小企業者
- 医療法人、認定NPO法人、政治団体、宗教団体
- 国内に本社・実施場所を持たない海外企業やその子会社
また、申請締切日から遡って16か月以内に、事業再構築補助金やものづくり補助金など関連する補助金の交付候補者となった事業者や、交付決定を受けて事業実施中の事業者も対象外となります。加えて、過去3年間にこれらの補助金で交付決定を2回以上受けている場合も申請できません。ご自身の過去の採択・交付決定履歴は必ず事前に確認する必要があります。
親会社と子会社、代表者や住所が同じ法人などの「みなし同一事業者」については、1回の公募につき1申請までという制限もありますので、グループ会社での申請を検討されている場合はご相談ください。
4. 補助事業に求められる要件
補助事業終了後3〜5年の事業計画において、すべての申請者が満たすべき基本要件が6つ定められています。
- 付加価値額要件:事業者全体の付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均成長率を4.0%以上とすること
- 賃上げ要件:一人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上とし、交付申請までに従業員へ表明すること(未達の場合は返還義務あり)
- 事業場内最低賃金水準要件:地域別最低賃金より30円以上高い水準を毎年維持すること(未達の場合は返還義務あり)
- ワークライフバランス要件:一般事業主行動計画を策定し公表すること
- 子育て等に関する職場環境整備要件:ライフデザインサービスの活用、家事代行・ベビーシッターサービスの活用、既存の子育て支援制度の周知のいずれかを実施すること
- 金融機関要件:金融機関から資金提供を受ける場合は確認書の提出が必要
これらに加えて、より高い賃上げを行う事業者向けの「賃上げ特例」(給与支給総額を合計6.0%以上、最低賃金を合計50円以上引き上げ)と、「地域別最低賃金引上げ特例」という2つの特例要件があり、適用を受けると補助上限額や補助率が引き上げられます。ただし特例の適用を受けたにもかかわらず目標を達成できなかった場合は、引き上げ分の全額返還が求められる点には十分な注意が必要です。
5. 補助対象となる経費
対象経費は、機械装置・システム構築費、建物費(新事業進出枠・グローバル枠のみ)、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費、そしてグローバル枠特有の海外旅費・通訳翻訳費です。技術導入費や外注費、専門家経費などにはそれぞれ補助対象経費総額に対する上限割合が設定されています。
なお、交付決定日より前に発注・契約・支払を行った経費は一切対象になりません。事前着手は認められていないため、採択を待たずに発注してしまうと補助対象外となってしまいます。この点は毎年多くの事業者様が誤解しやすいポイントですので、特にご注意ください。
6. 審査における加点・減点項目
書面審査では、事業の実現可能性や政策面での評価に加え、細かな加点・減点項目が設けられています。第1回公募では当初14項目だった加点項目が、公募要領の改訂により17項目に拡充されました。パートナーシップ構築宣言、くるみん認定、健康経営優良法人、経営革新計画、事業継続力強化計画、DX認定など、事前に取得・登録しておくことで加点につながる制度が多数あります。加点項目の中には認定取得までに一定の期間を要するものも多いため、事業計画の検討と並行して早めに準備を進めることが採択可能性を高める鍵になります。
一方、減点項目としては、加点要件未達、過剰投資、事業化の進捗不足、補助金の複数回利用、補助要件未達の5項目が挙げられており、特に加点要件未達と過剰投資は大幅な減点要素とされています。
7. 申請スケジュールと必要な準備
第1回公募は、公募開始後、申請受付、応募締切という流れで進み、採択発表は応募締切から数か月後を予定しています。申請は電子申請システムのみで受け付けられ、郵送や持参、FAXでの提出はできません。
申請にあたっては、次のような準備が必要です。
- GビズIDプライムアカウントの取得:発行までに1週間程度かかるため、未取得の方は早めに申請してください
- 一般事業主行動計画の公表:「両立支援のひろば」への公表手続きには1〜2週間程度かかります
- 事業計画書の作成:申請者ご自身による作成が必須で、第三者への全面的な作成委任は認められません。発覚した場合、不採択や採択取消の対象となります
- 金融機関による確認書:融資を利用する場合に必要です
事業計画書は申請者自身が作成するものですが、認定経営革新等支援機関などの専門家から、内容のブラッシュアップについて助言を受けることは差し支えないとされています。
8. 認定経営革新等支援機関としてサポートできること
本補助金は、補助上限額が大きい分、事業計画に求められる説得力や、多岐にわたる要件・加点項目への対応が採択のカギを握ります。特に次のような点では、専門家の関与が有効です。
- 事業計画が「新市場性」「高付加価値性」などの審査基準に沿った内容になっているかの確認
- 賃上げ要件・最低賃金要件など、返還義務が生じるリスクのある数値目標の設計
- 加点項目のうち、自社が取得可能なものの洗い出しとスケジュール管理
- 対象経費・対象外経費の切り分けや、事前着手による失格リスクの回避
当事務所では、認定経営革新等支援機関として、事業計画のブラッシュアップから交付申請、実績報告に至るまで一貫してサポートしております。「自社がどの枠に該当するか分からない」「賃上げ要件を満たせるか不安」といったご相談も歓迎しております。まずはお気軽にお問い合わせください。
行政書士法人塩永事務所 認定経営革新等支援機関
※本記事の内容は執筆時点の公募要領等に基づくものです。公募要領は改訂されることがありますので、実際の申請にあたっては必ず事務局が公開する最新の公募要領をご確認ください。
