
風俗営業・無店舗型性風俗特殊営業の最新法規制と許可・届出申請の実務|行政書士法人塩永事務所による専門解説
はじめに
風俗営業および性風俗関連特殊営業は、**「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(以下「風営法」)**を中心として、都道府県条例、建築・消防関係法令、労働・雇用関係法令、広告規制等の複数の法令・規制によって管理されています。
キャバクラ、クラブ、ホストクラブ等の接待飲食店と、デリバリーヘルス等の無店舗型性風俗特殊営業は、いずれも「風俗」という名称で括られることがありますが、法律上の営業区分、必要となる手続、場所的規制、営業開始までの手続は大きく異なります。
特に近年は、いわゆる悪質ホストクラブ問題を背景とする2025年の風営法改正、性風俗店におけるスカウトバック規制の強化、広告宣伝に関する規制、オンライン集客の普及、個人事業主・フリーランスとの取引適正化など、事業者が確認すべき事項が増えています。
2025年5月に成立・公布された改正風営法は、2025年11月28日までに全ての規定が施行されました。接待飲食営業に関する禁止行為の追加、性風俗店によるスカウトバックの禁止、無許可営業等の罰則強化、許可に係る欠格事由の追加などが盛り込まれています。
本稿では、2026年8月現在の制度を前提として、風俗営業と無店舗型性風俗特殊営業の法的区分、許可・届出手続、物件確認、営業開始後のコンプライアンスについて、実務上重要なポイントを整理します。
1.まず確認すべき「営業区分」
風営法では、営業形態によって必要な手続が異なります。
1.1 風俗営業
風俗営業は、風営法第2条第1項において大きく5種類に区分されています。
1号営業
客の接待をして、客に遊興または飲食をさせる営業です。
一般に、キャバクラ、クラブ、ホストクラブ、接待を伴うスナック等が典型例となります。
2号営業
一定の照度以下で飲食をさせる営業です。
3号営業
区画された客室等を設け、客に飲食をさせる営業です。
4号営業
まあじゃん屋、ぱちんこ屋等、客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業です。
5号営業
ゲームセンター等、一定の遊技設備を設けて客に遊技をさせる営業です。
したがって、「風俗営業1号~5号」という区分は、デリヘル等の性風俗関連特殊営業の区分とは別の制度です。警視庁も現在の営業区分をこのように整理しています。
2.無店舗型性風俗特殊営業とは
無店舗型性風俗特殊営業は、風営法第2条第7項に規定されています。
代表的なものが、いわゆるデリバリーヘルス等の派遣型ファッションヘルスです。
2.1 無店舗型性風俗特殊営業1号
風営法上、無店舗型性風俗特殊営業1号は、
人の住居または人の宿泊の用に供する施設において、異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供し、その役務を行う者を客の依頼を受けて派遣する営業
と定義されています。
したがって、いわゆるデリバリーヘルス等は、原則としてこの1号営業に該当するかどうかを営業実態から判断する必要があります。
2.2 無店舗型性風俗特殊営業2号
無店舗型性風俗特殊営業2号は、電話その他の方法で客の依頼を受け、性的好奇心をそそる写真・映像その他政令で定める物品を販売・貸付けし、配達する営業です。
一般に「アダルトビデオ等通信販売営業」と説明される類型です。
したがって、元原稿にある「アダルトグッズ販売=無店舗型性風俗特殊営業2号」と一括りにする表現は適切ではありません。販売する物品、営業形態、店舗の有無等を踏まえて、風営法上の該当性を個別に判断する必要があります。
なお、店舗を設けて性的好奇心をそそる物品を販売する営業は、別途「店舗型性風俗特殊営業」の規定が問題となります。
3.2025年風営法改正と2026年現在の重要ポイント
3.1 悪質ホストクラブ対策を中心とする法改正
2025年5月、悪質ホストクラブ問題等を背景として風営法改正法が成立・公布されました。
警察庁によれば、改正法では、接待飲食営業について、
- 料金に関する虚偽説明
- 客の恋愛感情等につけ込んだ飲食等の要求
- 客が注文していない飲食等の提供
- 威迫による注文・料金支払等の要求
- 料金支払等のために売春、性風俗店勤務、AV出演等を要求する行為
などについて規制が強化されています。
したがって、ホストクラブ等の新規許可・営業継続においては、単に「店舗の図面が風営法上適合しているか」だけでなく、料金システム、接客方法、顧客への説明、従業者教育等を含めた営業管理体制が重要になります。
3.2 許可の欠格事由も強化
2025年改正では、風俗営業の許可に関する不許可事由も追加されています。
例えば、
- 親会社等が許可取消処分を受けた法人との関係
- 警察による立入調査後に処分逃れのため許可証を返納した者
- 暴力的不法行為等を行うおそれのある者が事業活動について支配的影響力を有する場合
などが問題となります。
そのため、法人による新規営業では、代表者だけでなく、役員、実質的な支配関係、関係法人等を含めた事前確認が従来以上に重要です。
3.3 無許可営業等の罰則強化
2025年改正では、風俗営業の無許可営業等について、法定刑が引き上げられました。
警察庁の改正概要によれば、対象となる無許可営業等について、従来の「2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金又は併科」から、**「5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金又は併科」**へと引き上げられています。法人に対する罰金についても強化されています。
したがって、「とりあえず営業を開始して、後から許可を取得する」という考え方は極めて危険です。
4.性風俗店におけるスカウトバック規制
2025年改正では、性風俗関連特殊営業について、いわゆるスカウトバックに対する規制も強化されました。
性風俗店の営業者が、異性の客に接触する役務を提供する業務に従事しようとする者の紹介を受け、その紹介の対価としてスカウト等に金銭等を提供する行為は禁止されています。
そのため、デリバリーヘルス等では、
- キャストの採用経路
- スカウト・紹介者との契約
- 紹介料・報酬の支払先
- 求人広告会社等への支払
- 紹介行為と報酬の関係
を明確に管理する必要があります。
特に「紹介料」「広告費」「採用コンサルティング費」等の名目であっても、実質的に規制対象となる可能性があるため、契約書・請求書・支払記録を含めた実態確認が重要です。
5.無店舗型性風俗特殊営業は「許可」ではなく「届出」
デリバリーヘルス等の無店舗型性風俗特殊営業について、重要なポイントがあります。
これは風俗営業のような「許可制」ではなく、原則として公安委員会への営業開始届出制度です。
風営法第31条の2により、営業の本拠となる事務所の所在地を管轄する公安委員会に届出書を提出することとされています。届出書には、営業者の氏名・名称、広告・宣伝で使用する呼称、事務所所在地、営業種別、客の依頼を受ける方法等を記載します。
5.1 営業開始届出の期限
無店舗型性風俗特殊営業の営業開始届出は、営業を開始しようとする日の10日前までに提出する必要があります。
これは風営法施行規則第52条に明記されています。
したがって、「届出を出した当日から営業できる」という理解は誤りです。
6.無店舗型性風俗特殊営業の実務上の必要書類
都道府県警察によって運用上の確認事項や提出方法が異なるため、最終的には営業地を管轄する警察署への確認が必要です。
一般的には、次のような書類が問題となります。
- 無店舗型性風俗特殊営業営業開始届出書
- 営業の方法を記載した書類
- 事務所の使用権原を証明する書類
- 賃貸借契約書の写し等
- 使用承諾書等
- 事務所の平面図
- 住民票等
- 法人の場合の定款・法人登記事項証明書
- 役員関係書類
- 待機所を設ける場合の使用権原関係書類・平面図等
例えば警視庁の現在の案内でも、無店舗型性風俗特殊営業について、営業開始届出書、営業方法を記載した書類、事務所の使用権原を疎明する書類、住民票、法人の場合の定款・法人登記事項証明書等が案内されています。派遣型ファッションヘルスについては事務所の平面図、待機所を設ける場合には待機所関係書類も必要とされています。
7.「営業方法」の整理が実務上の重要ポイント
無店舗型性風俗特殊営業では、単に届出書を提出すればよいわけではありません。
営業の方法を記載した書類において、実際の営業形態を正確に整理することが重要です。
例えば、
- 顧客からの依頼受付方法
- 電話・ウェブサイト等の利用方法
- 営業上使用する呼称
- 事務所所在地
- 派遣方法
- サービス提供場所
- 受付・配車の方法
- 待機所の有無
- 広告・宣伝の方法
- 営業に使用する設備等
について、実際の営業実態との整合性を確保する必要があります。
風営法では、届出事項や営業方法に関する規定が設けられており、警察庁も無店舗型性風俗特殊営業の届出について、営業者単位で届出を行うこと、複数の呼称を使用する場合にはそれらを届出対象とすることなどを示しています。
8.事務所・待機所の物件確認
無店舗型性風俗特殊営業では、営業の本拠となる事務所が重要です。
特に賃貸物件を利用する場合には、
「風営法上の無店舗型性風俗特殊営業の事務所として使用できるのか」
を、契約前に確認することが重要です。
賃貸借契約上の用途制限や管理規約、オーナーの承諾等に問題がある場合、風営法上の届出以前に事業運営そのものが困難になる可能性があります。
警視庁の案内でも、事務所について「使用について権原を有することを疎明する書類」の提出が必要とされ、使用承諾書、賃貸借契約書の写し、建物登記事項証明書等が例示されています。
したがって、物件については、
- 物件所在地の規制確認
- 賃貸借契約の用途確認
- 管理規約の確認
- 所有者・管理会社への事前確認
- 使用権原を証明する書類の準備
を順番に進めることが重要です。
9.風俗営業許可申請の実務
キャバクラ、クラブ、ホストクラブ等の接待飲食店を営業する場合、営業実態が風俗営業1号に該当するのであれば、原則として都道府県公安委員会の許可が必要です。
9.1 主な確認事項
人的要件
風営法第4条に定める欠格事由等について確認します。
2025年改正により欠格事由も追加されているため、現在は単純に代表者だけを確認するのではなく、法人の役員、関係法人、実質的支配関係等についても確認することが重要です。
場所的要件
営業所所在地について、風営法および都道府県条例に基づく営業制限地域・保護対象施設等の規制を確認します。
「学校から200m以内なら全国一律に不可」といった単純な説明は正確ではありません。
営業できる地域・保護対象施設・距離等は、都道府県条例や営業類型によって異なるため、営業予定地ごとの個別確認が必要です。
構造・設備要件
営業所について、風営法施行規則等に定める構造・設備基準への適合性を確認します。
また、営業形態によって、
- 客室の床面積
- 客室の見通し
- 照明設備
- 音響・振動設備
- 仕切り等
- 営業所全体の構造
などを確認する必要があります。
なお、元原稿にあった「1号営業では客室照度が10ルクスを超えること」「3号営業では5㎡以上」といった説明は、営業類型を取り違えている部分があるため、そのまま掲載することは適切ではありません。
現在の法令・施行規則では営業類型ごとに基準が定められており、例えば風俗営業2号については客室床面積や照度等の基準が規定されています。
10.風俗営業許可申請の一般的な流れ
実務上は、概ね次のような流れで進めます。
① 営業形態の確定
最初に、予定しているサービスが風俗営業の何号に該当するのか、あるいは深夜酒類提供飲食店営業その他の別制度に該当するのかを確認します。
② 物件の事前調査
契約前に、
- 用途地域
- 条例による営業制限
- 保護対象施設
- 建物用途
- 賃貸借契約
- 管理規約
- 構造・設備
等を確認します。
③ 警察署との事前確認
営業所を管轄する警察署の担当部署と、営業形態・場所・構造等について確認します。
④ 図面・書類作成
平面図、求積図、照明・音響関係図面、申請書、人的要件関係書類等を準備します。
⑤ 許可申請
必要書類を整えて、営業所所在地を管轄する警察署を経由して公安委員会へ申請します。
⑥ 営業所の確認・審査
申請内容と実際の営業所の構造・設備等について確認が行われます。
⑦ 許可
審査を経て許可を受けた後、法令上営業開始が可能となります。
審査期間は全国一律ではありません。例えば東京都では、2025年11月28日作成の審査基準において、風俗営業許可について「55日以内を目安」としていますが、個別事情等によって変動するとされています。
したがって、「全国一律で1~2か月」と断定するのではなく、営業地を管轄する公安委員会の審査基準・標準処理期間を確認することが適切です。
11.広告・SNS・ウェブサイトのコンプライアンス
風俗関連事業では、ウェブサイト、SNS、求人サイト、広告媒体等を利用した集客が一般化しています。
しかし、広告については、
- 風営法
- 青少年保護関係法令・条例
- 各都道府県条例
- 広告媒体側の掲載基準
- 景品表示法その他の関連法令
などを踏まえて確認する必要があります。
特に重要なのは、「届出書に広告媒体を全部書けば、それ以外の広告は禁止される」という単純な制度ではないという点です。
無店舗型性風俗特殊営業については、風営法第31条の2の2に広告宣伝に関する規定が設けられており、届出をした営業者等による広告宣伝について一定の規制があります。
したがって、
- 届出上の営業内容
- 実際のサービス
- ウェブサイトの表示
- SNS投稿
- 広告媒体の表現
- 求人広告
が相互に矛盾しないよう、継続的に管理することが重要です。
12.キャスト・個人事業主との契約とフリーランス法
デリバリーヘルス等で、キャストを個人事業主として業務委託する場合には、風営法だけでなく、**特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(いわゆるフリーランス法)**の適用関係も確認する必要があります。
同法では、対象となるフリーランスに業務委託を行う場合、取引条件を直ちに書面または電磁的方法で明示することなどが求められています。公正取引委員会は、業務内容、報酬額、支払期日等を明示すべき事項として案内しています。
また、対象となる事業者については、報酬支払、禁止行為、ハラスメント対策、育児・介護等との両立への配慮、中途解除等に関する義務なども問題となります。
ただし、キャストだから当然にフリーランス法の対象になるわけではありません。
実際の契約関係、従業員該当性、発注者・受託者の事業規模等を確認したうえで適用関係を判断する必要があります。
13.営業開始後の変更届出にも注意
許可・届出を取得した後も、手続は終了ではありません。
営業所、事務所、法人、代表者、役員、営業方法等について変更が生じた場合、変更内容によって、
- 変更届出
- 許可証の書換え
- 構造設備の変更承認
- 廃止届出
- その他の公安委員会への手続
が必要になることがあります。
無店舗型性風俗特殊営業については、営業開始後の変更・廃止についても届出制度が設けられており、施行規則第53条により変更・廃止の届出について10日以内の提出が定められています。
そのため、元原稿の「許可・届出後はすべて10日以内に変更届」という一律の表現は避け、変更内容ごとに必要な手続と期限を確認することが適切です。
14.行政書士に依頼する実務上のメリット
風俗営業許可や無店舗型性風俗特殊営業の届出では、単に申請書へ必要事項を記入するだけではなく、
- 営業形態の法的分類
- 物件の事前調査
- 場所的規制の確認
- 欠格事由の確認
- 図面作成
- 必要書類の収集
- 営業方法の整理
- 警察署との事前協議
- 変更手続の管理
- 営業開始後のコンプライアンス
などを総合的に検討する必要があります。
特に、物件を契約してから「この場所では営業できない」と判明するケースは、開業準備における大きなリスクです。
そのため、物件契約前に法令・条例・建物用途・契約内容等を確認することが重要です。
15.行政書士法人塩永事務所のサポート
行政書士法人塩永事務所では、熊本市を拠点として、各種許認可・行政手続について相談・サポートを行っています。
風俗営業関係については、営業形態を確認したうえで、
- 風俗営業許可申請
- 無店舗型性風俗特殊営業の営業開始届出
- 営業所・事務所の事前確認
- 必要書類の作成・収集サポート
- 図面・営業方法の整理
- 警察署との事前協議
- 営業開始後の変更手続
- 継続的なコンプライアンス対応
などについて、個別の営業実態に応じた対応を検討します。
また、2025年改正風営法によって、ホストクラブ等の接待飲食営業だけでなく、性風俗関連特殊営業についてもスカウトバック規制等が強化されています。
したがって、これから開業する場合だけでなく、既に営業している事業者についても、現在の契約・広告・採用・営業方法が現行法令に適合しているかを点検することが重要です。
16.まとめ
2026年現在、風俗営業・性風俗関連特殊営業を取り巻く法規制は、従来以上にコンプライアンスを重視する方向へ進んでいます。
特に重要なのは、次の点です。
- 風俗営業と性風俗関連特殊営業を法律上きちんと区別する
- デリバリーヘルス等は原則として無店舗型性風俗特殊営業1号の該当性を検討する
- 無店舗型性風俗特殊営業は「許可」ではなく「届出」である
- 営業開始届出は原則として開始日の10日前までに提出する
- 営業の本拠となる事務所の使用権原を事前に確認する
- 営業内容と広告・ウェブサイト・SNSの表示を一致させる
- 2025年改正によるスカウトバック規制等を確認する
- ホストクラブ等では料金説明・接客方法等について新たな規制を確認する
- 個人事業主・フリーランスとの業務委託についてはフリーランス法の適用関係を確認する
- 開業後の変更についても、内容に応じた届出・承認等を適切に行う
風俗関連事業では、営業形態のわずかな違いによって適用される法令や手続が変わる場合があります。
そのため、「デリヘルだからこの届出」「ホストクラブだからこの許可」と形式的に判断するのではなく、実際のサービス内容、営業場所、顧客への提供方法、広告方法、従業者との契約関係等を総合的に確認することが重要です。
行政書士法人塩永事務所では、熊本市を拠点に、許認可・行政手続について相談を受け付けています。
お問い合わせ
行政書士法人塩永事務所
〒862-0950
熊本市中央区水前寺1-9-6
電話:096-385-9002
メール:info@shionagaoffice.jp
