
FIP移行認定申請と併せて蓄電池を設置する場合の手続き
〜事前確認制度の導入で審査期間が短縮へ/実務で注意すべきポイントを行政書士が解説〜
FIT制度からFIP制度への移行が進む中、 「市場価格の高い時間帯に売電したい」「蓄電池を併設して出力制御リスクを抑えつつ収益を最大化したい」 というご相談が増えています。
もっとも、FIP移行認定と蓄電池設置の変更認定は別個の手続であり、従来は
- まずFIT→FIP移行認定を取得
- その後、蓄電池設置の変更認定申請を別途提出
という二段階となるため、全体の審査期間が長期化しやすいという課題がありました。
この課題を踏まえ、資源エネルギー庁は2025年8月12日付で方針を公表し、2025年9月1日から運用を変更し、 FIP移行認定申請の際に、蓄電池設置に係る変更認定申請書類を「参考書類」として電子申請システムから添付できる仕組みを導入しました。
これにより、FIP移行認定の審査と並行して蓄電池設置内容の事前確認が行われ、後続の変更認定審査の迅速化が期待されるとされています。
■ 新制度のポイント
- FIP移行認定申請と蓄電池の変更認定申請が「一本化」されたわけではない
- 依然として、蓄電池設置については正式な変更認定申請が別途必要です。
- 今回導入されたのは「事前確認制度」
- FIP移行認定申請時に蓄電池関係書類を参考書類として添付すると、 経済産業局において、FIP移行審査と並行して蓄電池設置内容の事前確認が行われます。
- FIP認定後に正式な変更認定申請が必ず必要
- FIP移行認定申請の認定日(=発電量調整供給契約の開始日)以降に、 蓄電池設置に係る変更認定申請を行う必要があります。
- 参考資料と正式申請の内容が一致しているほど審査が早い
- 参考書類と正式な変更認定申請の内容が異なる場合、 追加の審査期間が必要となる旨が明示されています。
- 事前確認の対象は「蓄電池設置に係る変更」に限定
- 発電設備の設置場所変更など、蓄電池以外の変更を含む変更認定申請書を参考書類として添付することはできません。
■ 手続きの流れ(2025年9月以降の標準的なパターン)
01 FIP移行認定申請の提出
- 既存のFIT認定からFIP認定へ移行するためのFIP移行認定申請を、再エネ電子申請システムから行います。
- FIP移行認定申請については、従来どおり申請期限日に左右されず随時申請が可能です。
02 蓄電池の参考書類を添付
FIP移行認定申請時に、次の書類を参考書類として添付します。
- 蓄電池設置に係る変更認定申請書(様式第2の2 等)
- 単線結線図
- 蓄電池の設置位置が示された設備配置図(太陽光モジュール等の配置図)
- 蓄電池の仕様書
これらは、後に行う正式な変更認定申請でも使用する書類であり、 事前確認の対象となるため、設計段階での記載不備や図面の齟齬があると、結果的に審査期間が延びるリスクがあります。
03 行政による事前確認
- 経済産業局において、FIP移行認定に係る審査と並行して、添付された蓄電池設置書類の内容について事前確認が行われます。
- この運用により、蓄電池設置の変更認定審査の一部が前倒しされる形となり、トータルの手続期間の短縮が図られます。
04 FIP認定の取得
- FIP移行認定申請が認定されると、発電量調整供給契約の開始日がFIP認定日となります。
05 正式な変更認定申請の提出
- FIP認定日(発電量調整供給契約開始日)以降に、 蓄電池設置に係る変更認定申請を正式に提出します。
- この際、事前確認の対象となった参考書類(補正指示があった場合は補正後のもの)と申請内容が一致していれば、 変更認定審査が相対的に迅速化されるとされています。
■ FIP移行認定申請時に添付する「参考書類」
参考書類として添付できる主な資料は次の4点です。
- 蓄電池設置に係る変更認定申請書
- 単線結線図
- 蓄電池の設置位置を示した設備配置図(太陽光モジュール等の配置図)
- 蓄電池の仕様書
これらは、正式な変更認定申請時にも使用する書類であり、 申請内容および参考書類に不備がある場合には、認定が行えず申請の取下げとなる可能性がある旨も注意喚起されています。
■ 正式な変更認定申請は必ず必要
今回の運用変更は、あくまで蓄電池設置に係る変更認定申請の審査を前倒しするための「事前確認制度」です。
したがって、
- FIP認定後には必ず蓄電池設置に係る変更認定申請を行う必要があり、 これを行わずに蓄電池を設置・運用することはできません。
また、正式申請時に参考書類として提出した内容から変更がある場合には、 追加審査が必要となり、審査期間が延びる可能性があることが明記されています。
■ 事前確認の対象となる変更/ならない変更
対象となる変更(蓄電池設置に係る変更のみ)
事前確認の対象となるのは、蓄電池設置に係る変更に限られます。
例:
- 蓄電池の新設
- 蓄電池の容量変更
- 蓄電池の設置位置変更 など
対象外(参考書類として添付できないもの)
次のような変更を含む変更認定申請書は、参考書類として添付することはできません。
- 発電設備の設置場所変更
- 太陽光モジュールの仕様変更
- PCSの変更
- その他、蓄電池以外の事業計画変更
これらを行う場合は、従来どおり、別途変更認定申請を行う必要があります。
■ 申請期限の考え方
● FIP移行認定申請
- 蓄電池設置に係る書類を参考書類として添付する場合のFIP移行認定申請についても、 通常のFIP移行認定申請と同様、申請期限日によらず申請が可能です。
● 蓄電池の正式な変更認定申請
- 蓄電池設置に係る変更認定申請については、 通常の変更認定申請と同様、申請を行う年度の申請期限日が適用されます。
- 地上設置太陽光(10kW以上)等については、毎年度「再エネ特措法に基づく認定の申請にかかる期限日について(お知らせ)」で示される期限に従う必要があります。
■ 従来どおりの申請方法も選択可能
今回の事前確認制度を利用せず、従来どおりの手続きを選択することも可能です。
すなわち、
- FIP移行認定に係る認定通知書を受領してから
- 発電量調整供給契約が開始されるまでの間
に、蓄電池設置に係る変更認定申請を行う方法です。
ただし、この場合、当該変更は従前のFIT認定の変更として扱われるため、
- PCSよりパネル側に蓄電池を設置する場合には、当該認定に適用される調達価格が変更となる場合があるとされています。
案件ごとに調達価格・基準価格への影響が異なるため、 設計段階で制度上の影響を十分に確認しておくことが重要です。
■ 手続きのポイント(実務上の注意点)
- FIP移行と蓄電池導入を同時に進める場合、参考書類の精度が審査期間を左右する
- 記載要領・添付書類の不足・図面の不整合などがあると、事前確認・正式審査ともに遅延要因となります。
- 設計変更が起きると事前確認の前提が崩れ、追加審査が必要になる
- 参考書類と正式申請の内容が異なる場合、追加審査期間が必要となるため、 設計の固まっていない段階での参考書類提出には慎重な判断が求められます。
- 系統連系契約・発電量調整供給契約との整合性を必ず確認
- FIP移行認定日=発電量調整供給契約開始日であることを踏まえ、 蓄電池設置のタイミング・系統側制約・出力制御ルールとの関係を整理しておく必要があります。
- 年度の変更認定申請期限を見落とすと、蓄電池設置が翌年度扱いになる可能性
- 投資計画・工事スケジュールと申請期限日の整合を事前に確認しておくことが不可欠です。
■ 行政書士法人塩永事務所へのご相談が増えている理由
FIP移行と蓄電池導入は、
- 再エネ特措法に基づく認定制度
- FIP制度の仕組み(参照価格・基準価格・プレミアム)
- 系統連系・出力制御
- 調達価格・基準価格の変更要件
- 電子申請システムの運用
などが複合的に絡むため、事業者だけで判断するには負担の大きい領域です。
特に、次のようなケースでご相談が増えています。
- 自社の蓄電池設置が事前確認制度の対象となるか判断したい
- 設計会社から提出された単線結線図・配置図が制度要件を満たしているか確認したい
- PCS構成や接続位置によってFIT/FIPの調達価格にどのような影響が出るか不安
- FIP移行と蓄電池導入を同時に進めたいが、申請スケジュール管理に自信がない
- 参考書類と正式申請書類の整合性を確保し、審査期間をできるだけ短縮したい
■ まずは案件の状況をお知らせください
蓄電池の容量、設置位置、PCS構成、既存FIT認定の内容、FIP移行予定時期、系統連系条件など、 案件ごとに最適な進め方・申請タイミングは異なります。
- 「自社案件が新制度の事前確認を使った方がよいのか」
- 「従来方式の方がリスクが少ないのか」
といった判断も含めて、個別案件ベースで整理することが、結果的に審査期間と調達価格の両面で有利になることが多いです。
必要であれば、あなたの案件条件を箇条書きで教えてくれれば、 その前提に合わせて「どの申請パターンが現実的か」を一緒に組み立てていきましょう。
