
完全ガイド【2026年最新版】
新商品開発・新技術研究・教育目的でお酒を試作したい。
通常の製造免許では難しいケースも、試験製造免許という選択肢があります。
酒税法の要件・申請手続き・通常免許との違いを
行政書士がわかりやすく解説します。
酒類を製造するためには、酒税法第7条に基づき、製造しようとする品目ごと・製造場ごとに、その所在地を管轄する税務署長から製造免許を受けなければなりません(無免許製造は酒税法違反)。
この酒類製造免許の中に、「試験製造免許」と呼ばれる特別な区分があります。免許交付時に「試験のために製造する酒類に限る」という条件が付与された製造免許であり、酒税法第7条第3項に根拠を持ちます。
試験製造免許は、通常の製造免許では適用される最低製造数量基準(法定製造数量)が適用されません。そのため、少量での試作・研究・新商品開発を行いたい場合に活用できる重要な免許区分です。
ただし、製造できる数量は「試験の目的に応じた必要最小限度の数量」に制限されます(酒税法基本通達第11条)。
通常の酒類製造免許では、たとえばビールであれば年間60キロリットル、清酒でも60キロリットルといった法定最低製造数量をクリアしなければ申請できません。
この数量は一般的な中小企業や個人にとって非常に高いハードルです。
試験製造免許はこの最低製造数量基準が免除され、少量の試作でも申請が可能です。
ただし、あくまでも「試験・研究・開発」のための免許であり、試験製造した酒類を自由に販売することはできません。
酒税法基本通達および国税庁の取扱いにより、以下のいずれかに該当する場合に試験製造免許が付与されます。
既存の酒類製造者が新しいブランドの酒類を開発したい場合、飲食業者が自社オリジナルのお酒を試作したい場合、農業者が自ら栽培した農産物でお酒を製造・研究したい場合などがこれに該当します。
試作・試験のための免許であり、本格的な販売を目指す場合は通常の製造免許への切り替えが必要です。
地方公共団体に対しては、通常の酒類製造免許は原則として付与されませんが、試験製造免許に限って付与されます(酒税法基本通達第7条第4項)。
地域の特産酒類の研究・開発を公的機関が行う場面での活用事例があります。
| 試験製造免許 | 通常の製造免許 | |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 酒税法第7条第3項 | 酒税法第7条第1項 |
| 最低製造数量基準 | 適用されない (必要最小限の数量に限定) |
適用される (例:ビール60kL/年、清酒60kL/年) |
| 免許の条件 | 「試験のために製造する 酒類に限る」との条件付き |
条件なし(一部例外あり) |
| 製造数量 | 試験目的に応じた 必要最小限度の数量 |
申請書記載の見込数量 の範囲内 |
| 製造した酒類の販売 | 原則として販売不可 (試験目的の範囲内に限定) |
販売可能 (別途販売免許が必要) |
| 製造免許に期限 | 付される(試験期間に応じた期限) | 通常は期限なし (初回は期限付の場合あり) |
| 登録免許税 | 1件あたり30,000円 | 1件あたり150,000円 |
| 審査の難易度 | 比較的柔軟(数量基準なし) | 高い(数量・設備・技術を厳格審査) |
| 主な対象者 | 大学・研究機関・企業の開発部門・ 既存製造者の新品目開発 |
本格的な酒類製造事業者 |
試験製造免許はあくまでも「試験・研究・開発」のための免許です。
試験製造した酒類を商業目的で販売することは、免許条件違反となる可能性があります。本格的な販売を行うためには、通常の製造免許(および酒類販売業免許)を別途取得する必要があります。
試験製造から通常製造への移行を見据えた申請設計が重要です。
試験製造免許の申請にあたっては、酒税法第10条に規定する拒否要件に該当しないことが必要です。
最低製造数量基準は免除されますが、以下の4つの要件は通常免許と同様に審査されます。
清酒や単式蒸留焼酎など一部の品目では、通常免許の取得に「需給調整要件(その地域の需給バランスに問題がないこと)」が課されており、実質的に新規参入が難しい品目があります。
試験製造免許には需給調整要件が適用されません。このため、通常免許では新規取得が困難な清酒・単式蒸留焼酎等についても、試験・研究・開発目的であれば申請できる可能性があります。
申請に必要な書類は申請者の状況(個人・法人・既存製造者等)によって異なります。以下は代表的なものです。所轄税務署で事前に確認することをおすすめします。
| 書類名 | 内容・注意点 | 区分 |
|---|---|---|
| 酒類製造免許申請書 | 国税庁所定書式。試験製造目的・製造する酒類の品目・製造場所・製造数量を記載 | 必須 |
| 製造免許申請書次葉1〜6 | 申請者・製造場・製造方法・技術者・設備・収支計画等に関する詳細情報を記載する附属書類群 | 必須 |
| 試験研究・開発計画書(目的説明書) | 何のために試験製造を行うか、どのような試験・研究・開発を行うかを具体的に記載。試験製造免許では特に重要な書類 | 必須 |
| 製造場の平面図・設備図 | 製造場の構造・設備の配置を示す図面。試験製造に必要な設備が備わっていることを示す | 必須 |
| 製造設備の概要・仕様書 | タンク・発酵設備・ろ過設備等の仕様・容量・材質等 | 必須 |
| 技術者(製造責任者)の経歴書・資格証明書 | 試験製造を行う技術者の酒類製造に関する技術的能力を証明する経歴書・資格・研修受講証明等 | 必須 |
| 登記事項証明書(法人の場合) | 発行から3ヶ月以内のもの。目的欄の確認も行われる | 法人のみ |
| 定款の写し(法人の場合) | 事業目的に酒類製造関連の記載があることが望ましい | 法人のみ |
| 住民票の写し(個人の場合) | 申請者本人のもの(令和3年1月から住民票の写しの添付が不要となった経緯があるが、現在の取扱いは事前確認推奨) | 個人のみ |
| 納税証明書(国税・地方税) | 滞納がないことの証明 | 必須 |
| 収支計画書(試験期間中の見込み) | 試験製造期間中の収支の見込みを記載 | 必須 |
| 試験製造期間・製造数量の計画 | 試験の目的に応じた必要最小限度の製造数量・期間を明記 | 重要 |
| 食品衛生法上の許可書(または申請予定の確認書類) | 製造場は税務署への申請とは別に、保健所での食品衛生法上の「酒類製造業許可」も必要 | 別途必要 |
酒類を製造するためには、①税務署への「酒類製造免許」申請(酒税法)と②保健所への「酒類製造業許可」申請(食品衛生法)の両方が必要です。試験製造免許の場合も例外ではありません。保健所での審査では製造施設・設備が都道府県知事が定めた基準に適合するかが確認されます。
「自分のケースで試験製造免許は取れる?」
目的・品目・設備の状況をお聞きして、申請可能性と必要な準備をお伝えします。構想段階からご相談ください。
通常の酒類製造免許の登録免許税は1件あたり15万円です。
試験製造免許は3万円と、通常免許の5分の1のコストで取得できます。
試験・研究・開発段階での費用負担を抑えながら酒類製造を始められる点が、試験製造免許の大きなメリットの一つです。
まず、試験製造免許の対象となるケースに該当するかを確認します。「何のために・どの品目の酒類を・どのくらいの数量・どこで試験製造するか」を整理することが出発点です。
申請者(個人・法人役員)が人的要件・経営基礎要件を満たしているかもこの段階で確認します。
国税・地方税の滞納がある場合は申請前に解消が必要です。
製造場所を確保し、試験製造に必要な設備(発酵タンク・計量器・ろ過設備等)を準備します。
保健所への「酒類製造業許可」(食品衛生法)の申請も並行して進めることが重要です。
保健所での施設確認・設備審査を経て許可が下りるまで時間がかかるため、税務署への申請と同時に動き始めるのが得策です。
申請製造場を管轄する税務署(熊本の場合は管轄税務署の酒類指導官)に事前相談を行います。試験製造の目的・品目・期間・数量・技術者の経歴等を説明し、申請に向けた確認事項・必要書類・注意点を確認します。
事前相談を行うことで、書類の不備による差し戻しリスクを大きく下げることができます。
塩永事務所では事前相談への同行・代行も対応しています。
酒類製造免許申請書・次葉1〜6・試験研究計画書・製造場平面図・設備概要書・技術者経歴書・納税証明書等を準備し、製造場所在地の所轄税務署に提出します。
申請はいつでも行うことができ、受付順に審査が行われます(e-Taxによる電子申請も可能)。
試験製造免許は審査が国税局長限りで処理可能とされており、比較的柔軟な審査が期待できます。
税務署から国税局へ上申され、審査が行われます。審査期間の目安は申請受理から約4ヶ月です。
審査中に書類の補正(追加資料提出・来署など)を求められることがあります。
補正対応を迅速に行うことで審査の遅延を防げます。塩永事務所では補正対応もフルサポートします。
審査が完了し許可が下りると、税務署から書面で通知されます。
免許通知書の交付を受ける際に、登録免許税3万円を収入印紙または現金で納付します。
免許取得後、製造開始前に税務署への届出が必要な場合があります。
また、製造した酒類に対する酒税の申告・納付義務が生じます。
試験製造免許を取得した後も、酒税法上のさまざまな義務が課されます。
- 酒税の申告・納付:製造した酒類を製造場から移出したときに酒税の納税義務が発生します。試験製造であっても同様です
- 製造数量の記帳・帳簿管理:製造数量・移出数量等を帳簿に記録し、税務署からの確認に備える義務があります
- 免許条件の遵守:「試験のために製造する酒類に限る」という免許条件を守ること。条件違反は免許取消の対象となります
- 免許期限の管理:試験製造免許には期限が付されます。期限内に試験を完了するか、必要であれば期限延長の申請を行う必要があります
- 変更事項の届出:製造場の移転・製造品目の変更・技術者の変更等は届出または新規申請が必要
- 3年間製造しない場合の取消:免許を受けた後3年以上酒類を製造しない場合は免許取消の対象となります
試験製造を経て本格的に酒類を製造・販売したい場合は、通常の酒類製造免許の取得(新規申請または試験製造免許からの切り替え)が必要です。この場合、通常免許の最低製造数量基準・需給調整要件が適用されます。試験製造から本格製造への移行を見据えて、早めに計画を立てておくことが重要です。
塩永事務所では通常製造免許への移行もサポートします。
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試験・研究・開発の目的が不明確・曖昧:「なぜ試験製造が必要か」「どのような試験を行うか」の説明が不十分な場合、試験製造免許の要件(上記5ケースのいずれか)に当てはまらないと判断されることがあります
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技術的能力の立証不足:製造する品目の酒類について、申請者または技術者に十分な知識・経験・技術がないと判断された場合
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製造設備が不十分:試験製造に必要な最低限の設備が整っていない、または図面・仕様書の記載が不明確な場合
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国税・地方税の滞納:申請時点で滞納がある場合は人的要件・経営基礎要件を満たさず不許可となります
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免許条件違反(試験目的外の製造・販売):取得後に「試験のために製造する酒類に限る」という条件を破り、販売目的での製造を行うと免許取消の対象になります
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保健所の許可を取得せずに製造を開始:食品衛生法上の酒類製造業許可なしに製造を行うと、食品衛生法違反となります
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初回相談は無料。構想段階からお気軽にどうぞ。
