
不動産業界の皆様へ
2026年に向けて強化される行政手続きとコンプライアンス対応
不動産業界は、2026年を迎えるにあたり、行政手続きの複雑化とコンプライアンス対応の高度化という大きな転換点にあります。特に、空き家対策、相続土地国庫帰属制度、こども性暴力防止法(日本版DBS)の3分野は、仲介・管理・開発・再生の各業務に直接影響を及ぼす重要領域です。
これらの制度は、所有者不明土地の抑制、空き家の適正管理と有効活用、子どもの安全確保を目的としており、不動産実務においては、行政書士をはじめとする専門家との連携が不可欠となっています。
以下、2026年時点で不動産業界が押さえるべき4つの論点を整理します。
1. 空き家対策特別措置法の運用強化と用途変更実務
空き家対策特別措置法は、2023年の改正施行以降、自治体の運用が一段と厳格化しています。とりわけ「管理不全空家等」の制度が整備されたことで、特定空家等に至る前の段階から、行政による指導・勧告が行われやすくなりました。
勧告を受けた場合、固定資産税の住宅用地特例が外れる可能性があり、所有者にとっては税負担の増加につながります。したがって、不動産事業者にとっても、空き家の放置を前提とした提案ではなく、早期の利活用提案が求められます。
空き家を民泊、福祉施設、飲食店、賃貸住宅等へ転用する場合には、用途変更、建築確認、開発許可、都市計画法上の制限確認など、複数の行政手続きが必要です。特に市街化調整区域では、既存建築物の活用や区域制度の適用可否が事業成立の可否を左右します。
行政書士は、法適合性の確認、申請書類の作成、行政機関との調整支援を通じて、空き家を収益化可能な資産へ転換する実務を支える役割を担います。
2. 相続土地国庫帰属制度の定着と負動産処理
相続土地国庫帰属制度は、相続又は遺贈により取得した土地を、一定の要件のもとで国庫に帰属させることを可能とする制度です。制度自体は2023年4月に開始しており、2026年現在は実務上の認知と活用が進みつつあります。
この制度は、売却困難な土地や、管理負担が重い土地を抱える相続人にとって有効な選択肢です。ただし、建物のある土地、境界に争いのある土地、土壌汚染のおそれがある土地などは、承認を受けられない場合があります。また、負担金の納付も必要となるため、費用対効果の見極めが不可欠です。
不動産実務では、相続登記を担う司法書士と、申請書類や添付書類の作成支援を行う行政書士の役割分担が重要です。仲介現場においては、「売れない土地」「管理できない土地」への対応策として、相続土地国庫帰属制度を含む総合的な提案力が求められています。
3. 日本版DBS施行と賃貸・管理実務への影響
こども性暴力防止法、通称日本版DBSは、学校設置者等および民間教育保育等事業者に対し、子どもと接する業務に従事する者の性犯罪歴確認や防止措置を求める制度です。施行は2026年度中が予定されており、教育、保育、学童、スポーツ、児童向けサービスに関わる事業者の実務に大きな影響を与えます。
不動産の賃貸・管理業務においても、学習塾、学童保育、児童向け施設等の入居審査で、事業者が制度対応を整えているかどうかが、重要な判断要素となります。安全性や信頼性を重視する貸主にとっては、認定取得済み事業者を誘致することが、物件価値の向上にもつながります。
制度対応には、申請書類の整備、体制構築、従事者への周知、相談窓口の設置、記録管理など、継続的な運用が必要です。行政書士は、認定申請や内部体制整備に関する書類作成支援を通じて、事業者の法令対応を後押しします。
4. 行政書士法改正と適法な業務分担
行政書士法の改正により、無資格者による官公署提出書類の作成や、実質的な申請書類作成行為に対するコンプライアンス意識が一層求められています。不動産業界においても、許認可関連業務を適法に分業する体制整備が重要です。
農地転用、開発許可、用途変更、車庫証明などの手続きは、名目のいかんを問わず、書類作成や申請代行に該当する場合、慎重な整理が必要です。不動産業者が自社対応を拡大しすぎると、法令違反のリスクを抱えることになります。
したがって、これらの業務は行政書士へ適切に委託し、事業者は本来の仲介・管理・提案業務に注力する体制が望まれます。適法な分業は、法的リスクの回避だけでなく、顧客への説明責任の明確化にもつながります。
まとめ
2026年以降、不動産業界に求められるのは、単なる物件取引の仲介ではなく、法制度を踏まえた総合的な提案力です。空き家対策、相続土地の整理、子どもの安全に関する制度対応、そして許認可業務の適正運用は、いずれも経営上の重要論点となっています。
これまで付随業務とみなされてきた行政手続きは、今や不動産取引の安全性、顧客満足度、事業継続性を支える中核的な実務です。
法改正への対応や複雑な許認可手続きでお困りの際は、行政書士法人塩永事務所までご相談ください。
