
不動産業界の皆様へ:2026年法改正で変わる行政手続きとコンプライアンスの重要性
不動産業界は、2026年(令和8年)を境に、行政手続きの高度化とコンプライアンス強化という大きな転換点を迎えています。特に 「空き家対策」「相続土地国庫帰属」「こども性暴力防止法(日本版DBS)」 の3つの領域では、行政書士をはじめとする専門家との連携が、実務上ほぼ必須のテーマになりつつあります。
これらの制度・法改正は、所有者不明土地の発生抑制、空き家の適正管理・有効活用、子どもの安全確保を目的としており、不動産の「仲介・管理・開発・再生」のあらゆる場面に直接的な影響を及ぼします。
行政書士は、許認可・届出・理由書作成などの行政手続きに精通した専門家として、法的リスクの低減、顧客満足度の向上、円滑な取引の実現に重要な役割を果たします。
以下、2026年時点の法令・公表統計・運用状況を踏まえ、特に押さえておきたい4つのポイントを整理します。
- 空き家対策特別措置法の運用強化と用途変更ニーズの加速
全国的な空き家問題の深刻化を受け、2023年12月13日施行の改正空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特別措置法)により、自治体の権限と運用が大幅に強化されました。熊本県内(熊本市を含む各市町村)でも、空き家の実態調査や所有者への働きかけが一層進み、「放置すれば特定空家等になり得る段階」からの早期介入が制度的に位置付けられています。
管理不全空家等の新設と指導・勧告の強化:
改正法では、「放置すれば特定空家等となるおそれのある空き家」を「管理不全空家等」として新たに位置付け、自治体が所有者に対して指導・勧告を行えるようになりました。勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例(小規模住宅用地で課税標準6分の1など)が解除され、実質的な税負担が大幅に増加する可能性があります。これにより、特定空家等に指定される前の段階から、所有者に対策を促す仕組みが整えられています。
行政代執行の円滑化と所有者特定調査の増加:
特定空家等に対する是正命令や、最終的な強制解体(行政代執行)・略式代執行が想定される案件では、所有者・相続人の特定のために、戸籍・住民票・登記事項証明書等を用いた複雑な調査が必要となります。こうした調査や、自治体からの通知への対応、意見書・報告書の作成などは、行政手続きの専門家である行政書士が関与することで、手続きの正確性とスピードを確保しやすくなります。
「負動産」から収益物件への転用支援:
空き家を民泊施設、福祉施設、飲食店、賃貸住宅などへ用途変更する場合、都市計画法に基づく開発許可、建築基準法に基づく建築確認、旅館業法・福祉関連法令に基づく許認可など、複数の法令が関わります。特に市街化調整区域内の既存建物については、地域活性化や観光振興、集落維持を目的とした用途変更が、一定の条件のもとで柔軟に認められる運用が広がりつつあります。
不動産業者様が顧客から受ける「この用途変更は法的に可能か」「どの許可・届出が必要か」といった相談に対し、行政書士が法令調査・書類作成・手続き支援を行うことで、いわゆる「負動産」を計画的に収益物件へ転換する戦略を後押しできます。
熊本県内でも、管理不全空家等の判断基準の明確化や巡回調査の強化が進んでおり、早期の専門家関与が税負担の増加防止と物件価値維持の鍵となります。
- 相続土地国庫帰属制度の定着と「負動産」処理の実務化
2024年4月の相続登記義務化に続き、2023年4月27日に開始した相続土地国庫帰属制度は、2026年現在、実務レベルで本格的に活用される段階に入っています。 売却や管理が困難な田畑・山林・利用価値の乏しい宅地など、いわゆる「負動産」を抱える顧客からの相談は、不動産の現場でも確実に増加しています。
制度の概要と最新の運用状況:
相続又は遺贈により土地を取得した相続人が、一定の要件を満たす場合に、審査手数料と負担金を納付して、その土地を国庫に帰属させることができる制度です。法務省が公表している統計(令和8年2月28日現在の速報値)によれば、申請件数は5,140件、帰属件数は2,542件となっており、制度開始以降、利用件数は着実に増加しています。
一方で、建物が存する土地、境界が不明な土地、土壌汚染がある土地、権利関係に争いがある土地などは、却下・不承認の対象となり得るため、事前の要件確認が極めて重要です。審査期間は、統計上おおむね申請から8ヶ月〜1年程度を要するケースが多いとされています。
申請書等の作成支援と専門家の役割:
相続土地国庫帰属制度の承認申請は、原則として申請者本人が行いますが、申請書および添付書類の作成については、法務省が「弁護士・司法書士・行政書士等の専門家の活用」を想定しており、実務上もこれらの士業が書類作成や事前調査を担うケースが増えています。
特に、相続登記が未了の場合には、所有権移転登記は司法書士の独占業務となる一方で、行政書士は、現地状況の聴取・整理、境界や利用状況に関する説明資料の作成、申請に必要な添付書類の収集・作成など、行政手続き面でのサポートを行います。不動産業者様と行政書士・司法書士が連携することで、「売れない・管理できない土地」の出口戦略を、ワンストップで提示しやすくなります。
負担金は原則として1筆あたり20万円が基準とされており、地目や面積、立地等により増額される場合があります。 顧客にとっては決して小さくない負担ですが、長期的な固定資産税や管理コスト、将来の相続トラブル等を考慮すると、選択肢の一つとして検討する価値が高い制度です。
- 「日本版DBS(こども性暴力防止法)」施行に伴う賃貸・管理実務の変化
2026年12月25日施行予定の「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(通称:こども性暴力防止法、日本版DBS)は、子どもと接する事業者に対し、性犯罪歴の確認や再発防止措置を義務付ける新たな枠組みです。不動産業界に対して直接の義務を課す法律ではありませんが、テナント選定・施設誘致・物件ブランディングに大きな影響を与えることが想定されます。
テナント審査の新たな判断基準:
学習塾、学童保育、スポーツクラブ、習い事教室、児童向け福祉施設など、子どもを対象とするサービスを提供する事業者がテナントとして入居する場合、その事業者が「義務の対象となる学校・保育施設」か、「任意認定を受ける民間教育保育等事業者」か、そして性犯罪歴確認制度に適切に対応しているかが、オーナー・管理会社にとって重要なチェックポイントとなります。
保護者の視点からは、「日本版DBSに基づく認定を受け、性犯罪歴確認や研修・相談体制を整備している事業者」が入居している物件であることが、安心・安全の象徴となり得ます。その結果、物件のブランド価値や入居ニーズにも影響が及ぶ可能性があります。
認定手続き・体制整備に関するコンサルティング支援:
日本版DBSでは、単に性犯罪歴を確認するだけでなく、児童対象性暴力を防止するための内部規程の整備、従事者研修、相談窓口の設置、情報管理体制の構築など、総合的な「安全確保措置」が求められます。これらを自力で整備することが難しい事業者に対し、行政書士が認定申請書類の作成支援や、必要な規程・マニュアルの整備支援を行うことで、制度に適合した事業運営を後押しすることができます。
不動産の賃貸・管理の現場では、「日本版DBSに対応した事業者を優先的に誘致する」「テナント募集の段階で認定取得状況を確認する」といった運用が、今後のスタンダードとなる可能性があります。その際、行政書士との事前相談は、コンプライアンス上のリスク回避と、物件価値向上の両面で有効です。
- 行政書士法改正によるコンプライアンス徹底の要請
2026年前後の行政書士法改正では、いわゆる「無資格者による有償の書類作成・代理行為」に対する規制・罰則が強化される方向性が示されており、官公署に提出する書類の作成を業として行うことができるのは、原則として行政書士(および他の法律で認められた士業)に限られるという原則が、より明確に打ち出されています。
「事務手数料」名目等による実質的な無資格業務のリスク:
不動産業者が、仲介手数料とは別に「届出代行料」「理由書作成料」「コンサルティング料」などの名目で報酬を受け取り、農地転用許可申請(農地法4条・5条)、開発許可申請、用途変更に伴う各種申請、車庫証明申請などの官公署提出書類を作成・提出している場合、その内容によっては行政書士法違反に該当するおそれがあります。
これまでもグレーゾーンとされてきた実務ですが、法改正により、無資格業務や名義貸しに対する取締りが強化されることが見込まれます。
不動産会社としては、「どこまでが自社で行える説明・事務作業で、どこからが行政書士等の独占業務に当たるのか」を明確に線引きし、社内ルールやマニュアルを整備することが重要です。
プロフェッショナル分業の加速:
コンプライアンス遵守と業務効率化の両立のためには、 ・不動産業者:物件調査、価格査定、マーケティング、契約実務、顧客対応 ・行政書士:許認可・届出・理由書作成、官公署との折衝、制度変更への対応 といった形で、プロフェッショナル同士の分業体制を構築することが有効です。
農地転用、開発許可、用途変更、各種営業許可・届出などの専門性の高い業務を外部の行政書士に委託することで、法的リスクを低減しつつ、顧客に対して「法令に適合した安心・安全な取引」を提供することができます。
結果として、トラブル防止だけでなく、顧客からの信頼向上にもつながります。
結び:信頼できるパートナーとしての行政書士
これまで「付随的な事務作業」と見なされがちだった行政手続きは、相続土地国庫帰属制度や空き家対策特別措置法、日本版DBS、行政書士法改正などの流れの中で、今や 法的リスクを回避し、物件価値と顧客満足度を高めるための中核的な専門業務 へと位置付けが変わりつつあります。
・空き家の適正管理と「負動産」からの脱却 ・相続土地国庫帰属制度を活用した出口戦略の構築 ・日本版DBSに対応した安全・安心なテナント誘致 ・行政書士法改正を踏まえたコンプライアンス体制の再構築
これらはいずれも、不動産業者様だけでは完結しにくいテーマであり、行政書士との継続的なパートナーシップが、今後の競争力と信頼性を左右するといっても過言ではありません。
空き家対策、負動産処分、施設誘致、複雑な許認可・届出手続き、コンプライアンス体制の見直しなどでご不安やお困りごとがありましたら、ぜひ当事務所にご相談ください。
認定経営革新等支援機関・登録支援機関としての知見を活かし、必要に応じて司法書士・弁護士等とも連携しながら、実務に即した最適な解決策をご提案いたします。
【お問い合わせ先】 行政書士法人 塩永事務所 (認定経営革新等支援機関・登録支援機関)
熊本市中央区水前寺1-9-6 電話:096-385-9002
