
不動産業界の皆様へ
近時の法制度動向と行政手続き・コンプライアンス対応の重要性
― 空き家対策・相続土地国庫帰属制度・こども性暴力防止法を中心に ―
近年、不動産業界を取り巻く法制度は、空き家問題の深刻化や相続未登記の解消、子どもに関わる事業の安全確保といった社会的要請を背景に、段階的に整備・運用強化が進められています。
これらは特定の年を境に急激に変化するものではなく、複数の制度改正が積み重なり、実務対応の高度化とコンプライアンス強化が求められている状況にあります。
とりわけ、
- 空き家対策
- 相続土地国庫帰属制度
- こども性暴力防止法(いわゆる日本版DBS)
の3分野は、不動産の仲介・管理・利活用に直接関係する重要領域です。
以下、最新の制度運用を踏まえ、実務上のポイントを整理いたします。
1.空き家対策の運用強化と利活用実務
■ 制度の現状
空家等対策の推進に関する特別措置法は、2023年改正により「管理不全空家等」が新設され、従来の「特定空家等」に至る前段階から自治体による指導・勧告が可能となりました。
この結果、
- 早期是正の促進
- 固定資産税の住宅用地特例解除(勧告時)
といった実効的な措置が講じられています。
熊本県内においても、各自治体が判断基準を整備し、巡回・指導の運用が進められています。
■ 所有者調査と対応実務
相続未了や登記未整備により、所有者の特定が困難なケースは依然として多く、
- 戸籍・除籍・改製原戸籍の収集
- 戸籍附票・住民票による住所追跡
- 相続関係図の作成
といった専門的調査が必要となります。
行政書士は、これらの資料収集・整理および
- 自治体からの通知への対応支援
- 意見書等の作成補助
といった形で、実務を支援します。
※なお、強制執行や訴訟対応が必要な場合は、弁護士の関与領域となります。
■ 空き家の利活用と用途変更
空き家対策は除却だけでなく、利活用が重要視されています。
代表例として、
- 民泊(住宅宿泊事業法)
- 福祉施設
- 店舗・宿泊施設
などへの転用が挙げられます。
これらには、
- 建築基準法上の用途変更
- 開発許可
- 各種届出
といった複合的な手続きが関係し、
- 建築士(建築確認・用途判断)
- 行政書士(許認可・書類作成)
などの専門家連携が不可欠です。
行政書士は、手続整理・書類作成・行政対応支援の面で実務を担います。
2.相続制度の変化と負動産対応
■ 相続登記義務化
2024年施行の相続登記義務化により、不動産の名義未整理は是正が求められています。
なお、
所有権移転登記の申請は司法書士の業務であり、行政書士は行うことができません。
■ 相続土地国庫帰属制度の現状
相続土地国庫帰属制度は2023年に開始され、現在は実務上の利用が徐々に広がっています。
本制度は、一定の要件を満たす場合に、負担金を納付することで土地を国へ帰属させる仕組みです。
対象となるのは、
- 売却困難な土地
- 管理負担が大きい不動産
など、いわゆる「負動産」です。
■ 申請実務と士業の役割分担
本制度の申請に関しては、
- 申請主体:原則として本人(または法定代理人)
- 書類作成支援:弁護士・司法書士・行政書士
とされており、特定士業の独占業務ではありません。
行政書士は、
- 要件整理
- 添付書類の収集
- 申請書類の作成
を中心に関与します。
一方、
- 相続登記 → 司法書士
- 紛争対応 → 弁護士
といった役割分担が前提となります。
■ 不動産業者との連携実務
現場では、
「売れない土地をどうするか」という相談が増加しており、
- 売却
- 活用
- 国庫帰属
といった複数の選択肢を組み合わせた提案が求められています。
このような対応において、士業との連携は実務上重要性を増しています。
3.日本版DBSによる賃貸・管理実務への影響
2026年施行予定のこども性暴力防止法(日本版DBS)は、子どもと接する事業者に対し、性犯罪歴確認等の体制整備を求める制度です。
■ 不動産実務への影響
特に、
- 学習塾
- 学童保育
- スポーツクラブ
などのテナントにおいては、
- 認定取得の有無
- 体制整備状況
が、賃貸判断や物件選定の一要素となる可能性があります。
■ 行政書士の関与
行政書士は、
- 認定申請に関する書類作成支援
- 体制整備に関する手続支援
などの分野で関与が想定されます。
※ただし、制度運用の詳細は今後の政省令等により具体化されるため、最新情報の確認が重要です。
4.行政書士法とコンプライアンス対応
行政書士法においては、官公署提出書類の作成を業として行うことは、原則として行政書士または他の法令に基づく資格者に限定されています。
このため、不動産業者が、
- 届出書類の作成
- 許可申請書の作成
について報酬を得て業務として行う場合には、法令上の制約に留意する必要があります。
■ 実務上の対応
コンプライアンスの観点からは、
- 許認可・届出書類の作成 → 行政書士等へ委託
- 登記 → 司法書士
- 紛争対応 → 弁護士
といった適切な役割分担が重要となります。
まとめ
近時の法制度の変化は、不動産業界に対し、
「取引に付随する行政手続きの高度化」と
「専門家との連携による適正対応」
を求めるものとなっています。
特に、空き家・相続・負動産といった分野では、単独での対応が難しいケースも多く、
不動産業者と各士業との連携体制の構築が、実務上の重要課題となっています。
お問い合わせ
行政書士法人 塩永事務所
(認定経営革新等支援機関・登録支援機関)
熊本市中央区水前寺1-9-6
TEL:096-385-9002
空き家対策、相続、許認可手続きについて、実務に即した支援を行っております。
必要に応じて、司法書士・弁護士等と連携し対応いたします。
