
不動産業界向け 法改正情報 — 2026年(令和8年)版
空き家対策・相続土地・こどもDBS——
2026年、不動産実務を変える3つの法制度と行政書士連携
行政書士法人 塩永事務所|熊本市中央区水前寺
空き家対策特別措置法
空き家対策特別措置法は2023年12月に改正施行され、従来の「特定空家」に加えて「管理不全空家」という新たな類型が創設されました。管理不全空家に指定されると、固定資産税の住宅用地特例(課税標準が1/6または1/3に軽減される措置)が取り消され、税負担が最大6倍になる可能性があります。さらに、指定から勧告・命令・行政代執行への移行要件が整備されたことで、自治体が動くまでの手順が明確化され、執行事例が増加傾向にあります。
行政代執行に至る前段階では、自治体による所有者の特定・通知・指導が行われます。相続未登記の物件では、戸籍・除籍・住民票を辿る所有者調査が必要となり、これは行政書士が得意とする業務領域です(弁護士等、他士業も対応可)。また、自治体からの勧告・命令通知への対応文書作成や、解体・修繕工事前に必要な届出手続きも、行政書士がサポートできます。
不動産業者としては、管理委託を受けている物件や仲介予定物件が「管理不全空家」に該当しないか、早期に確認しておくことが重要です。
空き家を収益物件に転換する際、最も手続きが複雑になるのが用途変更を伴う転用です。たとえば戸建て住宅を簡易宿所(旅館業法の許可対象)や住宅宿泊事業(民泊新法の届出対象)として活用する場合、次のような手続きが重複して発生します。
① 建築基準法上の用途変更確認申請(延床100㎡超の場合)
② 旅館業法または住宅宿泊事業法に基づく許可・届出
③ 消防法に基づく防火対象物使用開始届出
④ 地域によっては開発許可(市街化調整区域等)
障害者グループホームや認知症対応型共同生活介護(グループホーム)への転用では、さらに障害福祉サービス事業者の指定申請や介護保険事業者指定申請が加わります。これらは行政書士の主要業務領域であり、不動産業者が行政書士を「法務パートナー」として活用することで、案件の法的実現可能性を事前に確認したうえで顧客に提案できます。
相続土地国庫帰属制度
相続土地国庫帰属制度は2023年4月27日に施行され、相続または遺贈によって取得した土地を、一定要件のもとで国庫に帰属させることができます。申請先は土地所在地を管轄する法務局(本局のみ)で、審査手数料は1筆あたり1万4,000円。承認後は原則20万円(宅地・農地・森林等の種別・面積により加算あり)の負担金を30日以内に納付する必要があります。審査の標準処理期間は約8か月〜1年程度で、必ず承認されるわけではありません。
法務省の統計(2024年6月末時点)では、申請件数2,348件・帰属件数564件と、制度は着実に利用が進んでいます。2026年はさらに実務認知度が高まり、相談件数が増加する年と見込まれます。
申請書類の作成代行が業として認められているのは、弁護士・司法書士・行政書士の3士業です(法務省公表)。「行政書士の独占業務」という表現は誤りであり、正確には「3士業が代行できる業務」です。
それぞれの役割は以下のとおりです。
司法書士:相続登記(所有権移転登記)は司法書士の独占業務。国庫帰属申請の前提として相続登記が未了の場合、司法書士への依頼が必須です。
行政書士:申請書・添付書類の作成代行。遺産分割協議書の作成も対応可(争いがない場合)。登記申請は不可。
弁護士:相続人間に争いがある場合の対応や、すべての書類作成・法的助言が可能。
以下の土地は却下または不承認となります。顧客からの相談段階で不動産業者が把握しておくと、見当違いの期待を持たせずに済みます。
✗ 建物が存在する土地(事前に解体が必要)
✗ 担保権(抵当権等)が設定されている土地
✗ 他人が使用・賃借している土地
✗ 境界が不明な土地(測量・確定が必要)
✗ 土壌汚染・埋設物がある土地
✗ 崖地等、管理に過分な費用を要する土地
日本版DBS(こどもDBS)
「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(通称:こどもDBS法)が2025年4月に施行されました。同法は段階的に適用対象を拡大しており、2026年度中には学習塾・スポーツクラブ・音楽教室・学童保育等の民間事業者にも義務的なDBS確認(性犯罪歴照会)が順次適用される見通しです。対象となる事業者は、子どもに接する従業員・業務委託者について性犯罪歴の確認を義務付けられます。
子ども向け施設を誘致する商業ビル・複合施設の運営者にとって、テナントとなる事業者が法令に基づくDBS確認体制を整備しているかが、新たな入居審査の視点となります。体制未整備の事業者を入居させた場合、施設全体のコンプライアンスイメージに影響するリスクがあるためです。
行政書士は、子ども向けサービス事業者が法定のDBS確認体制を構築するための内部規程整備・届出手続きをサポートできます。テナントに対しこうした支援を紹介できる不動産業者は、信頼性の高いパートナーとして評価されます。
行政書士法・コンプライアンス
行政書士法第19条は、行政書士でない者が業として官公署提出書類を作成することを禁止しており、違反には1年以下の懲役または100万円以下の罰金(同法21条)が科されます。「業として」の認定は、反復継続性と営利性によって広く判断されます。
不動産業者が仲介手数料とは別名目で対価を受け取りながら作成すると問題になり得る書類の例:
・農地法4条・5条許可申請書(農地転用)
・開発許可申請書
・自動車保管場所証明申請書(車庫証明)
・理由書・使用承諾書等の添付書類
・建設業許可・宅建業免許の更新申請書類
コンプライアンス遵守と業務効率化を両立する方法として、農地転用・開発許可・各種許認可手続きを外部の行政書士事務所に完全委託する体制が広がっています。委託することで法的リスクを排除しつつ、不動産業者は仲介・販売・管理というコア業務に集中できます。顧問契約または案件ごとの業務提携という形で、自社の業務フローに組み込むことが実践的な選択肢です。
かつて不動産業界で「事務作業」として処理されてきた行政手続きは、法改正の積み重ねによって、今や法的リスクを左右する専門業務となっています。2026年はその転換が実務の現場で顕在化する年です。
空き家・相続土地・許認可・コンプライアンスなど、不動産業務に関わる行政手続きでお困りの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。司法書士・税理士・建築士等との連携ネットワークを活かし、ワンストップでサポートいたします。
行政書士法人 塩永事務所
📍 熊本市中央区水前寺1-9-6
📞 096-385-9002
