
不動産業界の皆様へ:2026年法改正で変わる「行政手続き」とコンプライアンスの重要性
不動産業界を取り巻く法制度・行政実務の環境は、2026年(令和8年)を一つの節目として大きく変容します。 とりわけ 「空き家対策」「相続土地」「日本版DBS(こどもDBS)」 は、不動産実務と行政手続きが密接に交錯する分野であり、今後は行政書士との連携が事業継続・リスク管理のうえで不可欠なテーマとなります。
なぜ今、不動産業における行政書士の役割が再定義されているのか。 その背景と実務への影響を、4つのポイントから整理します。
1. 空き家対策特別措置法の運用強化と「用途変更」ニーズの加速
全国的な空き家の増加を受け、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家対策特別措置法)は、各自治体での運用が年々厳格化しています。熊本県内でも、「特定空家等」の認定基準や勧告・命令に至る運用が見直され、是正指導から行政代執行に至るケースを想定した実務対応が求められています。
行政代執行・所有者調査への専門的対応
・倒壊等の危険性が高い空き家については、自治体による是正命令や、最終的には行政代執行(強制解体)に至る可能性があります。 ・その前提として、所有者・相続人を特定するための戸籍・住民票・登記事項証明書等を用いた複雑な調査が必要となり、これらは「行政手続きの専門家」である行政書士が日常的に担っている領域です。 ・不動産業者が単独で対応するには負担が大きく、行政書士との協働による調査・書類作成・自治体対応が実務上のスタンダードになりつつあります。
「負動産」を収益物件へ転換するための許認可・届出支援
・空き家を民泊(簡易宿所・旅館業)、サービス付き高齢者向け住宅、障がい福祉サービス事業所等へ用途変更する場合、都市計画法上の開発許可、建築基準法に基づく建築確認、旅館業法・各種福祉関連法令に基づく許認可など、多数の行政手続きが発生します。 ・用途地域・建ぺい率・容積率・接道要件・駐車場台数など、法令適合性の事前検証を行わずに事業化を進めると、後から「使えない物件」となり、トラブルや損失の原因となりかねません。 ・このため、不動産業者からの「この計画は法的に問題ないか」「どの許可・届出が必要か」といった相談窓口として、行政書士の役割が一層重要になっています。
2. 相続土地国庫帰属制度の定着と「負動産」処分スキーム
2024年の相続登記義務化により、相続登記の未了状態を放置することは、罰則を含めたリスクを伴う時代となりました。これに続き、2023年にスタートした 「相続土地国庫帰属制度」 は、2026年前後には実務レベルで広く活用されることが見込まれています。
「売れない土地」を国に引き取ってもらうための専門手続き
・山林・農地・利用価値の乏しい地方の宅地など、「固定資産税だけがかかる負動産」を手放したいというニーズは、相続の場面で急増しています。 ・相続土地国庫帰属制度を利用して国に土地を引き取ってもらうには、法務局への申請書類作成、現地状況の確認、境界・管理状況に関する詳細な説明など、専門的な要件を満たす必要があります。 ・これらの申請書類の作成は行政書士の独占業務に該当し、不動産仲介だけでは完結しない「負動産」問題を、行政書士とのワンストップ体制で解決する事例が増えています。
不動産実務との連携ポイント
・売却困難な土地について、 「売却」か「保有」か「国庫帰属」か、どの選択肢が妥当かを検討する際、不動産業者と行政書士が連携してシミュレーションを行うことで、顧客にとって最適な出口戦略を提示しやすくなります。 ・相続開始前の生前対策(共有解消、地目変更、境界確定など)も含め、早期に行政書士を交えたスキーム設計を行うことで、将来の「負動産化」を未然に防ぐことが可能です。
3. 「日本版DBS」施行による賃貸・管理実務への波及
2026年12月までに施行予定の 「日本版DBS(こども性暴力防止法に基づく性犯罪歴確認制度)」 は、教育・保育関連事業者だけでなく、不動産の賃貸・管理実務にも間接的な影響を及ぼします。
正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」で、子どもと接する職務に就く者の性犯罪歴を国の仕組みで確認する制度です。
テナント審査における新たなチェック項目
・学習塾、学童保育、認可外保育施設、習い事教室など、子ども向けサービスを提供する事業者がテナントとして入居する場合、その事業者が「義務対象」か「認定対象」のいずれに該当するか、また日本版DBSの認定を受けているかどうかが、オーナー・管理会社の判断材料となります。 ・保護者の視点からは、「日本版DBSの認定を受けている事業者が入居している物件」であることが、安心・安全の重要な指標となり、不動産のブランド価値にも影響し得ます。
認定取得・体制整備に関するコンサルティングニーズ
・日本版DBSでは、単に性犯罪歴を確認するだけでなく、 – 犯罪事実確認体制の整備 – こどもの様子の早期把握の仕組み – 相談窓口の設置 – 性暴力発生時の対応規程の整備 – 従事者研修の実施 – 犯罪事実確認記録の厳格な情報管理 など、複数の「安全確保措置」が求められます。 ・これらの規程・体制整備は、事業者単独では難しいケースが多く、行政書士が申請書類の作成から内部規程の整備までを一体的にサポートすることで、「安心・安全なテナント誘致」を支える役割を担います。 ・不動産オーナー・管理会社としても、「日本版DBSに対応した事業者」を積極的に誘致することで、物件の付加価値向上やリスク低減につなげることができます。
4. 行政書士法改正とコンプライアンス徹底の要請
今回の行政書士法改正では、「無資格者による報酬を得ての書類作成・代理行為」に対する罰則が強化され、いわゆる「名義貸し」や実質的な無資格業務が、これまで以上に厳しく取り締まられる方向性が明確になりました。
「事務手数料」名目での実質的な無資格業務のリスク
・不動産業者が、仲介手数料とは別に「届出代行料」「理由書作成料」等の名目で報酬を受け取り、農地転用許可申請、開発許可申請、車庫証明申請などの書類を作成・提出している場合、内容によっては行政書士法違反に該当する可能性があります。 ・これまでもグレーゾーンとされてきた実務ですが、法改正により、行政・警察による取締りが強化されることが想定され、事業者側のコンプライアンス体制の見直しが急務となっています。
プロフェッショナルによる分業体制へのシフト
・農地転用(農地法4条・5条許可)、都市計画法に基づく開発許可、各種営業許可・届出などは、法令解釈・行政実務に精通した専門家による対応が求められる分野です。 ・不動産業者が自社で抱え込むのではなく、行政書士と明確に役割分担を行い、 – 不動産業者:物件調査・マーケティング・契約実務 – 行政書士:許認可・届出・理由書作成・官公庁対応 という形でプロフェッショナルの分業を進めることが、コンプライアンス遵守と業務効率化の両面で有効です。 ・結果として、法的リスクを低減しつつ、顧客に対して「法令に適合した安心な取引」を提供できる体制づくりにつながります。
結び:行政書士は「付随業務」から「戦略的パートナー」へ
これまで不動産業界では、各種届出や許認可に関する事務作業は「付随業務」「おまけのサービス」として扱われがちでした。 しかし、2026年を見据えた法改正・制度変更の流れの中で、これらは今や 法的リスクを回避し、物件価値と顧客満足度を高めるための「専門業務」 として再定義されています。
・空き家を「負動産」から「収益物件」へ転換するスキームづくり ・売却困難な相続土地の出口戦略としての国庫帰属制度の活用 ・日本版DBSに対応した安全・安心なテナント誘致 ・行政書士法改正を踏まえたコンプライアンス体制の構築
これらはいずれも、不動産業者単独では完結しにくいテーマであり、行政書士との継続的なパートナーシップが、今後の競争力を左右するといっても過言ではありません。
法改正への対応や、複雑な許認可・届出手続き、コンプライアンス体制の見直し等でお困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。
【お問い合わせ先】 行政書士法人 塩永事務所 (認定経営革新等支援機関・登録支援機関) 熊本市中央区水前寺1-9-6 電話:096-385-9002
