
【2026年最新】育成就労制度とは?技能実習との違いを比較表で行政書士が解説
更新日:2026年8月28日
-
カテゴリ:外国人雇用 / 就労ビザ / 技能実習 / 育成就労
はじめに
2024年6月21日に技能実習制度の見直しを含む改正法が公布され、これまでの技能実習制度を発展的に解消する形で、新たに「育成就労制度」が開始されることが決定しています。
育成就労制度の開始日は2027年4月1日とされており、今後、企業側の外国人材受入れ体制にも一部見直しが求められます。
これまでの技能実習制度は、建前上「国際貢献のための技能移転」を目的とする制度でした。しかし、新しい育成就労制度では、「人材育成」と「人材確保」が制度の目的として明確に位置付けられています。
企業にとっては、単なる制度名の変更ではなく、外国人材受入れの目的や運用の方向性を抜本的に見直す重要な改正となります。
【この記事を書いた人】
行政書士法人塩永事務所
外国人雇用・就労ビザ・国際業務専門行政書士
※本記事は、2026年時点で公表されている最新の公式資料および法令に基づいて作成しています。
目次
-
育成就労制度とは?
-
技能実習と育成就労の違い【比較表】
-
制度の目的が「国際貢献」から「人材育成・人材確保」へ
-
受入れ対象分野は特定技能と原則一致
-
一定条件を満たせば、本人意向による転籍が可能に
-
日本語能力の要件がより明確に
-
監理・支援体制の厳格化
-
企業が今から準備しておくべきこと
-
よくある質問(Q&A)
-
まとめ
育成就労制度とは?
育成就労制度は、生産性向上や国内人材確保の取組を行ってもなお人材確保が困難な産業分野において、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成し、人材を確保する制度です。
従来の技能実習のように「母国への技能移転」を前面に出すのではなく、日本国内での就労・育成を通じて「将来的な即戦力・戦力となる人材を確保する制度」へと転換されました。
あわせて押さえておきたいのは、育成就労制度が始まっても、現在の技能実習生が直ちに育成就労へ切り替わるわけではないという点です。
-
経過措置:2027年4月1日時点で既に来日している技能実習生や、同年3月31日までに来日する技能実習生については、引き続き技能実習制度のもとで実習を継続できます。
-
特定技能との関係:特定技能制度がなくなるわけではありません。育成就労制度は3年間の育成を経て「特定技能1号」へのスムーズな移行を見据えた仕組みとして位置付けられています。
-
入国期限:施行日前に技能実習計画認定および在留資格認定証明書(COE)の交付を受けた方は、2027年6月30日までに入国する必要があります。
技能実習と育成就労の違い【比較表】
| 比較項目 | 技能実習制度 | 育成就労制度 |
| 制度の目的 | 国際貢献(技能移転)が建前 | 人材育成・人材確保 |
| 制度の位置付け | 国際貢献を目的とする人材育成 | 特定技能1号への移行を見据えた育成・就労 |
| 受入れ対象 | 技能実習の対象職種・作業 | 特定産業分野の設定分野に限定(育成になじまない分野は対象外) |
| 転籍(職場変更) | 原則不可(やむを得ない事情を除く) | 一定要件を満たせば本人意向の転籍が可能 |
| 日本語能力 | 入国時の要件は原則なし | 就労開始前A1相当、特定技能1号移行時A2相当が基本 |
| 監理機関 | 監理団体 | 監理支援機関 |
| 監督・支援機構 | 外国人技能実習機構 | 外国人育成就労機構(転籍支援等も担当) |
制度の目的が「国際貢献」から「人材育成・人材確保」へ変わる
技能実習制度では、制度の建前として「日本で修得した技能等を母国へ移転し、国際貢献につなげること」が中心に据えられていました。そのため、現場で実際には人手不足対応として機能していても、制度目的と実態との間にギャップがあると指摘されてきました。
これに対し、育成就労制度では「人材育成と人材確保」が正面から目的に掲げられました。
企業としては、「一定期間受け入れて終了」ではなく、将来的に特定技能1号へ移行し、自社の戦力として定着してもらうことまで見据えた制度設計が求められます。
受入れ対象分野は特定技能と原則一致
技能実習制度では受入れ対象が「職種・作業」ごとに細かく定められていたため、技能実習で受け入れていた業務から特定技能へスムーズに移行しにくいケースがありました。
育成就労制度は、3年間の就労を通じて特定技能1号水準へ育てることを前提としているため、受入れ対象分野が特定技能制度と原則一致する方向で設計されています。
ただし、特定技能の対象分野がそのまま全て育成就労の対象になるわけではなく、就労を通じた育成になじまない業務・分野は対象外となる可能性があります。今後の分野別運用方針の注視が必要です。
一定の条件を満たせば、本人意向による転籍が可能になる
技能実習制度では、やむを得ない事情がある場合を除き、本人都合による転籍(転職)は原則認められていませんでした。
育成就労制度では、やむを得ない事情による転籍に加え、一定の要件を満たすことで「本人意向による転籍」が解禁されます。
本人意向による転籍の主な要件(想定)
-
就労期間:同一機関での就労期間が分野ごとに1年〜2年の範囲で設定される予定
-
技能・日本語能力:分野ごとにA1〜A2相当の試験合格等が必要
-
手続き・適正性:転籍先の適正性や正当な手続きを経ていること
誰でも自由に転職できるわけではなく、一定の育成と定着を前提とした上で柔軟性が増す仕組みです。
企業側にとっては、「せっかく育てた人材の離職リスク」を防ぐためにも、適正な賃金水準、良好な労働環境、丁寧な日本語教育支援など、「選ばれる職場づくり」がより一層重要になります。
日本語能力の要件がこれまで以上に明確になる
育成就労制度では、日本語能力の向上・段階的習得が制度上の重要要素となっています。
-
就労開始前:A1相当以上の日本語試験合格、または相当講習の受講
-
特定技能1号移行時:A2相当以上の日本語試験合格が基本(当分の間は相当講習の受講でも可とする経過措置あり)
企業側には、採用時の日本語力チェックだけでなく、入国後・就労後の計画的な日本語学習支援が求められます。検定受験機会の確保や学習時間の配慮、外部講座の活用など、組織的なサポート体制を整えましょう。
監理・支援体制が厳格化される
育成就労制度に伴い、外国人材を支える監理・監督組織の仕組みも一新されます。
-
監理支援機関への移行:従来の「監理団体」は「監理支援機関」となり、外部監査人の設置など中立性・独立性の確保が厳しく求められます。
-
外国人育成就労機構の設立:従来の外国人技能実習機構に代わり設立され、監督・保護機能に加えて外国人本人の転籍支援や特定技能1号への相談援助業務も担います。
法令遵守(コンプライアンス)の徹底と外国人本人の人権保護・生活支援体制の確立が、企業側に強く問われることになります。
企業が今から準備しておきたいこと
2027年4月1日の制度開始に向けて、企業が今から取り組むべきポイントは以下の通りです。
-
自社業務が対象分野に含まれるか確認
特定技能の対象分野であっても、育成就労の対象となるか分野別運用方針を随時チェックする。
-
日本語・育成計画の見直し
3年間で特定技能1号水準へ引き上げるための育成カリキュラムや日本語学習支援スキームを策定する。
-
社内環境・労働条件の整備
転籍リスクに備え、長期的に働きたいと思える賃金体系や職場環境、相談窓口の体制を整える。
よくある質問(Q&A)
Q1. 育成就労制度はいつから始まりますか?
A. 2027年4月1日に開始される予定です。
Q2. 現在の技能実習制度は、すぐになくなりますか?
A. いいえ。2027年3月31日までに認定された技能実習計画や、施行日時点で実習中の技能実習生については、経過措置により引き続き技能実習制度のもとで継続可能です。
Q3. 育成就労が始まると、特定技能制度はなくなりますか?
A. なくなりません。育成就労は「特定技能1号」への移行を前提とした育成制度であるため、特定技能制度は存続します。将来的に廃止・統合されていくのは技能実習制度です。
Q4. 育成就労生は自由になんでも転職できますか?
A. 自由無制限に転職できるわけではありません。同一機関での一定期間の就労、技能・日本語試験の合格、転籍先の適正性など、法的な要件を満たした場合に限り、本人意向による転籍が認められます。
まとめ
育成就労制度は、これまでの技能実習制度を単に受け継ぐものではなく、「人材育成と人材確保」を目的として再構築された新しい制度です。
特定技能との連動、本人意向による転籍、明確な日本語要件、監理・支援体制の厳格化など、企業側にも大きな意識改革と準備が求められます。
制度開始の2027年4月までには準備期間があります。「選ばれる企業」となり、外国人材を自社の強固な戦力として定着させるためにも、今から社内体制の整備を進めていきましょう。
外国人材の受入れ・ビザ申請・運用に関するご相談やご不明点がございましたら、行政書士法人塩永事務所までお気軽にお問い合わせください。
