
飲食店の外国人採用が変わった|N1留学生なら「接客」で働ける?特定活動46号の要件を2026年最新版で解説
「今アルバイトしている外国人留学生を、卒業後もそのまま正社員として採用したい」
飲食店では、このような採用ニーズが珍しくありません。
日本の大学に通いながら飲食店で接客を経験し、卒業後も同じ店舗で働きたいと考える外国人留学生もいます。
しかし、外国人が日本でフルタイム勤務するためには、原則として、従事する仕事内容に対応した在留資格が必要です。
従来、一般的な飲食店のホールスタッフや接客業務は、専門的・技術的な業務として認められにくく、外国人留学生が大学を卒業したからといって、そのまま「接客スタッフ」として就職することは簡単ではありませんでした。
そこで重要になるのが、**在留資格「特定活動(告示第46号)」**です。
この制度は、いわゆる「N1特定活動」などと呼ばれることがあります。
一定の要件を満たした外国人について、日本語を使った円滑な意思疎通を必要とする幅広い業務への就労を認める制度であり、飲食店における接客業務も対象になり得ます。
ただし、
「N1を持っていれば、誰でも飲食店で働ける」
という制度ではありません。
外国人本人の学歴・日本語能力だけでなく、勤務先、雇用条件、実際に担当する仕事内容などを総合的に確認する必要があります。
この記事では、2026年現在の「特定活動(告示46号)」について、飲食店で外国人留学生を採用する場合に押さえておきたいポイントを整理します。
1.そもそも「N1特定活動」とは?
正式には、**在留資格「特定活動(告示第46号)」**です。
「N1特定活動」という名称は実務上よく使われますが、正式な在留資格名ではありません。
告示第46号は、日本の大学等を卒業・修了した外国人が、日本語能力を生かしながら、日本国内の企業等で幅広い業務に従事することを想定した制度です。
現在の制度では、単に通訳・翻訳だけを担当するのではなく、日本語による円滑な意思疎通を必要とする業務であれば、一定の条件のもとで接客などを含む業務に従事することが可能です。
つまり、飲食店においても、
- 来店したお客様への接客
- 外国人のお客様への対応
- 日本語を使った店舗でのコミュニケーション
- 商品・サービスの説明
- 店舗運営に関係する業務
などを組み合わせた働き方が可能になります。
一方で、厨房作業や皿洗いなどの単純作業だけを担当する働き方を、告示46号で自由に認めているわけではありません。
ここは非常に重要なポイントです。
2.なぜ飲食店の接客が問題になっていたのか?
外国人留学生が大学を卒業して日本で就職する場合、代表的な在留資格として「技術・人文知識・国際業務」があります。
しかし、この在留資格で認められるのは、原則として専門的な知識・技術等を必要とする業務です。
そのため、一般的な飲食店での
- ホールでの接客
- 配膳
- 片付け
- 洗い場
- 厨房補助
などを中心とする仕事は、「技術・人文知識・国際業務」で就労することが難しいケースがあります。
例えば、外国人のお客様が多い飲食店で、外国語メニューの翻訳や通訳などを担当するのであれば、「技術・人文知識・国際業務」に該当する可能性があります。
しかし、
「ホールスタッフとして日本人のお客様に注文を聞き、料理を運ぶ」
という仕事だけでは、同在留資格の対象となる専門的業務として認められにくいのが基本です。
そこで、外国人留学生の日本国内での就職先を広げる制度として設けられたのが、告示第46号です。
3.「特定活動46号」は2019年にスタート
特定活動告示第46号は、外国人留学生の日本国内での就職を促進するために設けられた制度です。
現在も出入国在留管理庁が留学生の就職支援制度として案内しています。
この制度の大きな特徴は、従来の「技術・人文知識・国際業務」だけでは対応しにくかった、日本語によるコミュニケーションを伴う幅広い業務にも就労の可能性が広がったことです。
そのため、飲食店・小売店・ホテルなど、外国人材の接客力や日本語能力を活用したい業種にとって重要な制度となっています。
4.2024年の制度改正にも注意
「N1特定活動」を説明する際、2019年の制度創設だけで説明を終わらせると、現在の制度を正確に反映できません。
2024年2月29日には、特定活動(告示第46号)に関する法務省告示が改正され、対象者の範囲が拡大されました。
現在は、一定の要件を満たす日本の大学・大学院等の卒業者に加え、一定の短期大学、高等専門学校、さらに外国人留学生キャリア形成促進プログラムとして認定された専修学校の専門課程等を修了して高度専門士の称号を得た者なども対象となっています。
したがって、
「N1特定活動=日本の4年制大学卒業者だけの制度」
と考えるのも現在では正確ではありません。
5.飲食店で働く場合、N1なら何でもできるわけではない
ここが最も誤解されやすいところです。
特定活動(告示46号)は、単純に「N1を持っている外国人に単純労働を認める制度」ではありません。
告示46号では、対象となる外国人が、指定された日本の公私の機関との契約に基づき、常勤職員として業務に従事することが前提となります。
また、日本語を用いた円滑な意思疎通を必要とする業務であること、本人の学修成果等を活用するものと認められること、日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を受けることなど、複数の要件があります。
そのため、
「N1だからホールスタッフとして雇える」
という考え方ではなく、
「告示46号の要件を満たす外国人が、要件に合致する業務内容・雇用条件で働く」
と理解することが重要です。
6.日本語能力の要件は「N1」または「BJT480点以上」
代表的な日本語能力の要件として、
- 日本語能力試験(JLPT)N1
- BJTビジネス日本語能力テスト480点以上
のいずれかを証明する必要があります。
ただし、日本語能力試験N1やBJTだけがすべてではありません。
例えば、一定の要件を満たす日本語専攻者については、別途の扱いがあります。
そのため、採用予定者については、単純に「N1を持っているか」だけを見るのではなく、どの学校を卒業したのか、何を専攻・修了したのか、日本語能力をどのように証明できるのかを確認する必要があります。
7.飲食店の接客スタッフとして働くことはできる?
結論からいえば、要件を満たせば可能です。
例えば、飲食店で次のような業務を組み合わせるケースが考えられます。
具体例
- 来店客への接客・注文対応
- 外国人客への商品・メニュー説明
- 日本語を使った接客
- 外国語を活用した顧客対応
- 店舗スタッフとのコミュニケーション
- 店舗運営に付随する業務
このように、日本語を用いた円滑な意思疎通を必要とする業務として位置付けられる場合、告示46号の対象となる可能性があります。
一方、
- 洗い場だけ
- 清掃だけ
- 厨房補助だけ
- 配膳だけ
といった業務を単独で担当させるケースについては、告示46号の趣旨・要件との関係で慎重な検討が必要です。
「接客もするが、実際にはほぼ洗い場」という雇用形態では問題になる可能性があります。
したがって、在留資格申請では、実際の業務内容を具体的に整理することが重要です。
8.「技人国」と「特定活動46号」はどう違う?
飲食店で外国人を採用する場合、両者を混同しないことが大切です。
技術・人文知識・国際業務
専門的な知識・技術を必要とする業務が中心です。
例えば、
- 通訳・翻訳
- 外国人顧客対応
- 海外マーケティング
- 企画
- 管理・事務
などです。
飲食店であっても、仕事内容が専門的業務であれば対象となる可能性があります。
ただし、一般的なホール接客や厨房作業そのものを自由にできる在留資格ではありません。
特定活動(告示46号)
日本の大学等の卒業者等で、一定の日本語能力などの要件を満たす外国人について、日本語による円滑な意思疎通を必要とする幅広い業務への就労を認める制度です。
そのため、飲食店の接客スタッフという採用ニーズと相性がよいケースがあります。
9.外国人留学生を卒業後もアルバイト先で採用できる?
ここは飲食店経営者から特に相談が多いポイントです。
例えば、
大学在学中から当店でアルバイトをしている外国人留学生がいる。
日本語も非常に上手で、卒業後も正社員として働いてほしい。
このようなケースです。
その外国人が告示46号の対象となる学歴・日本語能力等の要件を満たし、さらに実際の仕事内容や雇用条件が告示46号の要件に適合するのであれば、卒業後に「留学」から「特定活動」へ在留資格を変更して就職することが検討できます。
つまり、
「留学」→「特定活動(告示46号)」
という在留資格変更が選択肢になります。
ただし、卒業すれば自動的に変更できるわけではありません。
在留資格変更許可申請を行い、出入国在留管理庁による審査を受ける必要があります。
10.採用する飲食店側にも確認すべきポイントがある
外国人本人だけが条件を満たしていればよい、というわけではありません。
採用企業側についても、勤務先や契約、業務内容などが確認されます。
特に重要なのが、
① 常勤職員としての雇用であること
告示46号は、指定された機関との契約に基づいて常勤職員として働くことが前提となっています。
したがって、卒業後も「アルバイト」として働かせるための制度ではありません。
② 給与水準
日本人が同じ仕事をする場合に受ける報酬と同等額以上であることが求められます。
③ 実際の業務内容
「接客」「通訳」「外国人顧客対応」など、告示46号の趣旨に合った業務内容になっているかを確認する必要があります。
申請書類上だけ仕事内容を整えて、実際には洗い場や清掃などの業務だけをさせる、といった運用は避けなければなりません。
11.2026年現在、申請書類にも変更がある
2026年4月15日以降の申請からは、特定活動(告示46号)の申請について、追加の添付書類が必要となっています。
例えば、一定の対象者について学位記・学位授与証明書や、高度専門士の称号を証明する書類などが求められています。日本語能力についても、N1またはBJT480点以上を証明する書類などが必要とされています。
このため、古い解説記事や2019年当時の情報だけを参考にして申請準備をするのはおすすめできません。
2026年現在の出入国在留管理庁の最新案内・提出書類を確認して準備することが重要です。
12.飲食店が外国人留学生を採用するときの実務上のポイント
特定活動46号を検討する場合は、採用前に次の項目を確認しておくとよいでしょう。
外国人本人について
- 日本の大学等を卒業・修了しているか
- 対象となる学校・課程に該当するか
- N1またはBJT480点以上など、日本語能力の要件を満たしているか
- 専攻・修得内容と就職先の業務との関係を確認できるか
- 現在の在留資格が「留学」か
- 卒業予定・卒業済みであるか
飲食店・会社について
- 常勤雇用であるか
- 日本人と同等以上の報酬となっているか
- 雇用契約の内容が適切か
- 実際の業務内容が告示46号に適合しているか
- 接客・日本語によるコミュニケーションを必要とする業務が含まれているか
- 会社・店舗の事業内容を説明できる資料が準備できるか
13.「N1だから採用できる」ではなく「仕事内容」が重要
特定活動46号を理解するうえで、最も大切なのはここです。
N1=飲食店で働ける
ではありません。
正しくは、
一定の学歴・修了要件や日本語能力等を満たす外国人が、告示46号の対象となる雇用条件・業務内容で、常勤職員として働く場合に利用できる可能性がある
という制度です。
そのため、外国人本人の経歴だけを確認するのではなく、「その人に実際にどのような仕事をしてもらうのか」まで具体的に設計することが重要です。
14.飲食店にとって「留学生を卒業後も採用できる」という選択肢が広がった
飲食業界では、人手不足への対応だけでなく、すでに店舗で働いている外国人留学生を「戦力」として育成したいというニーズも増えています。
例えば、
「大学在学中からアルバイトとして勤務」
↓
「接客や店舗業務を経験」
↓
「卒業後に正社員として採用」
↓
「外国人顧客への対応や日本語での接客も担当」
というキャリアを設計できれば、外国人材にとっても企業側にとってもメリットがあります。
特定活動(告示46号)は、こうした**「日本で学んだ外国人を、そのまま日本企業の人材として活用する」**ための選択肢の一つです。
ただし、制度上認められる範囲には明確な条件があります。
「N1を持っているから大丈夫」と判断するのではなく、本人の学歴・日本語能力・雇用条件・具体的な職務内容をセットで確認することが重要です。
まとめ
飲食店で外国人留学生を卒業後も正社員として採用したい場合、以前は一般的なホール接客を中心とした就労が難しいケースが多くありました。
現在は、一定の要件を満たす外国人について、**特定活動(告示第46号)**を利用して、日本語による円滑な意思疎通を必要とする業務に従事できる可能性があります。飲食店の接客業務も、その具体的な業務内容によっては対象となり得ます。
一方で、
- N1を取得している
- 日本の大学を卒業した
- 飲食店でアルバイトしていた
というだけで、必ず特定活動46号が取得できるわけではありません。
「誰を採用するか」だけではなく、「どのような雇用契約で、実際に何の仕事をしてもらうのか」まで確認することがポイントです。
なお、2024年の制度改正によって対象者の範囲が拡大され、2026年4月以降は申請時の提出書類にも変更があります。最新の要件・必要書類については、必ず出入国在留管理庁の最新情報を確認してください。
