
貸切バス事業者安全性評価認定制度とは?申請手続きの流れと注意点を行政書士が解説
熊本の貸切バス事業者様へ|行政書士法人塩永事務所
「SAFETY BUS(セーフティバス)」マークをバスの車体に貼っている貸切バスを見かけたことはありませんか。あのマークは、貸切バス事業者安全性評価認定制度の認定を受けた事業者だけが掲げられる、安全性の証です。
この記事では、同制度の目的から申請条件、審査の内容、手続きの流れ、取消しとなるケースまでを整理します。
1. 制度の目的と、2025年度からの大きな変更点
貸切バス事業者安全性評価認定制度は、貸切バス事業者からの申請に基づいて安全性や安全確保に向けた取組状況を評価・認定し、公表する制度で、2011年度から行われています。 実施主体は日本バス協会です。バス協会の会員でない事業者も対象になります。
認定を受けると、国土交通省と日本バス協会のホームページで公表され、車体へのマーク貼付や自社ホームページ、名刺への表示ができます。 旅行会社や団体のお客様が事業者を選ぶ際の、わかりやすい目印になります。
近年、制度は大きく見直されました。2024年度から行政処分に対する減点が強化され、2025年度からは審査内容が充実し、評価レベルが3段階から5段階に引き上げられました。 現在は一ツ星から五ツ星までの5種類です。2025年度の更新認定では、制度開始以来初めて四ツ星の事業者が誕生しています。
「前に取得したから大丈夫」ではなく、新基準で改めて準備し直す必要がある制度になっています。
2. 申請できる事業者の条件
この制度は任意で、法人単位で評価・認定されます。申請には、次の条件をすべて満たす必要があります(いずれも貸切バス事業に関するものです)。
- 事業許可取得後3年以上が経過していること
- 安全性に対する取組状況の法令遵守事項に違反がないこと
- 過去2年間に、有責の第一当事者となる死者を生じた事故がないこと
- 過去1年間に、有責の第一当事者となる重傷者を生じた事故がないこと
- 過去1年間に、有責の第一当事者となる10人以上の負傷者を生じた事故(負傷の程度が著しい場合)がないこと
- 過去1年間に、有責の第一当事者となる転覆等の事故、または悪質な法令違反による運行等がないこと
- 過去1年間に、1営業所1回当たり50日車を超える行政処分を受けていないこと
- 過去の認定取消しによる欠格期間に該当していないこと
(出典:国土交通省「貸切バス事業者安全性評価認定制度」の概要(2025年4月1日))
ここで注意したいのは、申請後であっても、有責の第一当事者となる事故などが確定した場合は、失格として審査中止や取消しの対象になるという点です。申請書を出して終わりではなく、審査期間中も安全管理を維持する必要があります。
3. 何を審査されるのか
審査は、日本バス協会による書類審査と訪問審査で行われ、学識経験者、有識者、国土交通省、日本バス協会で構成される認定委員会が認定事業者を決定します。 評価項目は3つです。
| 評価項目 | 内容 |
|---|---|
| Ⅰ. 安全性に対する取組状況 | 法令遵守事項(違反がないことが必須)と上位事項。配点は合計55点 |
| Ⅱ. 事故及び行政処分の状況 | 事故10点、行政処分10点の計20点 |
| Ⅲ. 運輸安全マネジメント取組状況 | 25点 |
認定には、評価点数の合計が60点以上であることに加え、各項目で基準点を超えることが必要です。法令遵守事項で違反が確認された場合は、失格として審査中止となります。
各項目の見られ方は次のとおりです。
Ⅰ. 安全性に対する取組状況
運行管理者に所定の講習を受けさせているか、アルコールチェッカーを使った厳正な点呼を行っているか、ドライブレコーダーを導入して教育・指導を行っているかなどが審査されます。日常の運行管理の実態がそのまま問われます
Ⅱ. 事故及び行政処分の状況
行政処分は、累積点数を配点の10点から差し引いた残りが点数になり、累積点数が配点を超えた場合は超過分も減点されます。 過去に処分歴のある事業者は、ここで点数が伸びにくくなります。
Ⅲ. 運輸安全マネジメント
PDCAサイクルによる安全管理体制の継続的改善と、輸送の安全に関する情報の公表が適切に行われているかが見られます。安全管理規程の整備、年次の見直しの記録、安全情報の公表(ホームページなど)の準備が必要です。
4. 手続きの流れ(標準的なステップ)
実際の書式や受付時期は年度によって異なるため、必ず日本バス協会の最新の案内を確認してください。標準的な流れは次のとおりです。
STEP1:申請条件の確認
過去2年分の事故状況、過去1年分の行政処分歴、営業所ごとの処分日車数を整理し、条件を満たしているか確認します。
STEP2:自己点検と書類の準備
評価項目ごとに、点呼記録、運行管理者の講習受講履歴、ドライブレコーダーの運用・指導記録、安全管理規程、PDCAの実施記録、安全情報の公表状況など、根拠資料を揃えます。
STEP3:日本バス協会への申請
申請書と添付資料を提出し、申請料を納付します。なお、認定取消しや審査中止となった場合でも、申請料は返金されません。
STEP4:書類審査・訪問審査
書類の審査後、訪問審査(現地確認)が行われます。書類上の整備だけでなく、記録が実際の運用と一致しているかが確認されます。
STEP5:認定委員会での審議・認定
委員会で審議され、基準を満たせば認定となります。2025年度は、新規認定が9月25日開催の委員会、更新申請事業者の認定が12月開催の委員会という日程でした。 新基準で認定された事業者には新しいセーフティバスマークが交付されます。
STEP6:認定後の運用と更新
認定後は、事故や行政処分の発生を日本バス協会へ適切に報告する義務があります。更新時には、評価結果に応じて星の数が決まります。
5. 認定が取り消されるケース
認定後に次の事由が起きると、認定取消しとなり、一定期間は再申請ができなくなります。
- 不正申請等が確認された場合:3年間
- 認定期間内に、有責の死者を生じた事故が発生した場合:2年間
- 有責の重傷者を生じた事故、または10人以上の負傷者を生じた事故(負傷の程度が著しい場合)が発生した場合:1年間
- 死亡事故、重傷事故、転覆等の事故、悪質違反による運行等の発生や、30日車以上の行政処分等を受けたにもかかわらず、故意に30日以内に日本バス協会へ報告しなかった場合:2年間
- 1営業所1回当たり50日車を超える行政処分を受けた場合:1年間
- 一ツ星認定事業者が、同じ有効期間内に同じ営業所で、30日車以上50日車以下の行政処分等(警告を含む)を2回受けた場合:1年間
また、認定取消しとなった事業者は、取消日から約1週間、日本バス協会のホームページで公表されます。 取消しは事業の信用にも関わるため、**「報告期限(30日以内)を守る社内ルール」**を整えておくことが大切です。
6. 取得・更新にあたって押さえたいポイント
- 日々の記録が点数になる:点呼、運転者教育、ドライブレコーダー活用の記録は、その場しのぎで整えにくい資料です。日常業務の中で記録を残す仕組みづくりが近道です。
- 行政処分の状況を把握しておく:処分歴は申請可否と点数の両方に影響します。営業所ごとの日車数の整理は早めに行ってください。
- 運輸安全マネジメントは「回している証拠」が重要:規程があるだけでなく、PDCAを回した記録と、安全情報の公表がセットで求められます。
- 更新時期を逆算してスケジュールを組む:最新の受付時期は日本バス協会の案内で確認し、書類整備には余裕を持って着手してください。
- 旅行会社・団体営業への活用:認定を取得したら、ホームページ、会社案内、見積書、名刺などでの表示を検討しましょう。
7. 行政書士に相談するメリット
この制度の申請は、申請書の作成だけでなく、根拠資料の整理と、社内の運用の見直しが中心になります。行政書士にご相談いただくと、次のような場面でお役に立てます。
- 申請条件を満たしているかの事前確認
- 提出書類の整理・作成支援
- 安全管理規程など、社内規程類の整備
- 更新スケジュールの管理と、書類整備の優先順位づけ
貸切バス事業の許可、変更届、各種届出と合わせてご相談いただくこともできます。熊本県内で貸切バス事業を営まれている事業者様、これから認定取得を目指す事業者様は、お気軽にお問い合わせください。
行政書士法人塩永事務所
【ご注意】 本記事は2025年4月1日付の国土交通省公表資料などを基にした一般的な解説です。申請料、申請受付期間、提出書類の様式、評価基準の詳細(星の判定点数を含む)は変更される場合があります。実際の申請にあたっては、必ず日本バス協会の最新情報をご確認ください。
