
外国人雇用で押さえるべき在留資格実務の重要ポイント
行政書士法人塩永事務所
外国人雇用の実務では、採用時の在留資格確認だけでなく、更新、変更、転職、退職、社会保険、税務対応まで一連で適正に管理することが重要です。とくに近年は、在留資格審査において就労実態や納付状況、届出の適正性がより重視される傾向があり、企業側の管理体制が問われやすくなっています。
以下では、企業担当者様が実務上とくに押さえておきたい項目を、2026年10月時点の制度情報に基づいて整理します。
📌 更新変更
1.在留期間更新、在留資格変更および申請時の注意点
在留期間更新許可申請は、現在の在留資格のまま在留期間を延ばす手続です。これに対し、在留資格変更許可申請は、活動内容や身分関係の変化に応じて在留資格そのものを切り替える手続です。たとえば、留学から技術・人文知識・国際業務へ移る場合や、技能実習や特定活動から別の就労資格へ移る場合は、変更申請の要否を慎重に確認する必要があります。
申請時の注意点として重要なのは、在留期間満了直前ではなく、余裕をもって準備することです。出入国在留管理庁も、特例期間に入る前に許可を受けることが望ましい旨を案内しており、申請が遅れると生活や就労に支障が出るおそれがあります。
また、2026年10月1日から在留許可手数料が改定されています。出入国在留管理庁は、在留資格変更許可、在留期間更新許可、永住許可の各手数料額の改定を公表しています。窓口申請では、結果受領時に案内された金額分の収入印紙を事前購入して持参する取扱いが案内されています。オンライン申請についても、2026年10月1日以降の受付分に新しい手数料体系が適用され、決済方法も収入印紙ではなく所定の方法による納付となります。
企業実務では、次の点を特に確認すべきです。
- 職務内容が在留資格の範囲に合っているか
- 雇用契約書と実際の業務が一致しているか
- 転職歴や離職期間の説明ができるか
- 税、年金、社会保険の納付状況に問題がないか
- 所属機関変更や住居地変更などの届出漏れがないか
更新や変更は、単なる形式審査ではありません。現在の就労実態が在留資格に適合しているかが見られるため、書類だけを整えても、実態に齟齬があれば不許可リスクがあります。
🌾 農業実務
2.農業分野において認められる業務の範囲と注意事項
農業分野で外国人材を受け入れる場合は、どの在留資格で、どの業務に従事させるのかを明確に切り分ける必要があります。とくに特定技能では、農林水産省が農業分野の制度概要やQ&Aを公表しており、分野特有の基準も設けられています。農業分野は、特定技能制度の対象分野であり、2026年10月時点でも制度運用が継続しています。
農業分野で注意すべきなのは、認められる業務の中心が農作業そのものにあることです。耕種農業や畜産農業に関する作業に従事することが前提であり、これに付随する関連業務の範囲を超えて、実質的に別業種の業務へ常態的に従事させることは適切ではありません。実務では、収穫、栽培管理、飼養管理、出荷準備などの主たる業務と、付随的な清掃、資材整理、軽微な運搬などを区別して管理する必要があります。
注意事項としては、次の点が重要です。
| 項目 | 実務上の注意 |
|---|---|
| 業務内容 | 主たる業務との整合確認 |
| 配置転換 | 分野外業務の常態化回避 |
| 雇用契約 | 賃金や労働条件の明確化 |
| 季節変動 | 閑散期の業務配分確認 |
| 支援体制 | 相談対応と生活支援整備 |
農業は繁閑差が大きいため、忙しい時期だけ農業、暇な時期は別事業へ回すという運用は、在留資格との関係で問題になりやすい場面があります。現場都合で配置する前に、在留資格上許容される範囲かを確認することが欠かせません。
🔁 二号移行
3.特定技能1号から2号への移行要件および申請実務
2026年10月時点では、特定技能2号の対象分野は拡大されており、農業分野も2号対象分野です。出入国在留管理庁と農林水産省の公表情報でも、農業分野が2号受入れ対象であることが確認できます。
特定技能1号から2号へ移行するには、一般に、分野ごとに求められる熟練した技能水準を満たすことと、必要書類をそろえて在留資格変更許可申請を行うことが必要です。1号は通算在留期間に上限がある一方、2号は更新制での在留が予定されており、企業にとっても長期雇用につなげやすい制度です。
もっとも、在留期限までに2号申請の準備が間に合わない場合があります。この点について出入国在留管理庁は、2号移行準備のための特定活動6月就労可の制度を案内しています。これは、合理的な理由により在留期間満了日までに2号申請が困難な場合に、移行準備のため一定期間就労しながら手続きを進めることを可能にするものです。
申請実務では、次の流れで整理すると進めやすくなります。
| 段階 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 要件確認 | 分野適合と技能水準確認 |
| 書類整備 | 雇用契約と証明資料整理 |
| 期限管理 | 満了日前の申請計画作成 |
| 間に合わない場合 | 特定活動活用を検討 |
| 許可後管理 | 業務内容と処遇の維持 |
1号から2号への移行は、単なる更新ではなく、より高い技能評価を前提とする切替えです。現場経験が長いだけでは足りず、分野ごとの要件と提出書類を正確に確認する必要があります。
📄 届出管理
4.転職・退職・一時帰国に伴う届出や手続き
外国人本人が転職や退職をした場合、在留資格によっては、所属機関に関する届出が必要になります。企業側も、退職後に在留資格のまま長期間放置されていないか、転職先が決まるまでの期間に問題がないかを把握しておくことが重要です。届出義務違反や活動実態の欠如は、その後の更新や変更審査で不利に働くことがあります。
一時帰国については、通常は再入国許可制度やみなし再入国許可の範囲で処理されることが多い一方、長期間の不在や退職後の帰国が絡む場合には、在留継続の実態や今後の活動計画が問題となることがあります。とくに、退職したまま相当期間活動していない場合は、更新時に説明を求められる可能性があります。
企業実務では、次の管理が重要です。
- 採用時に届出義務を本人へ説明する
- 退職時に必要手続を案内する
- 一時帰国の予定期間を把握する
- 再入国後の就労予定を確認する
- 転職支援時に在留資格との適合を確認する
💴 納付影響
5.税金・年金・社会保険の未納等が在留資格の審査に与える影響
この点は、実務上とても重要です。出入国在留管理庁の公表資料では、社会保険料の未納がある場合には在留諸申請が不許可になる場合があることが明記されています。とくに在留期間更新や在留資格変更では、保険料の納付状況が確認されるとされています。
税金、年金、健康保険などの未納は、単に金銭面の問題ではなく、日本の公的義務を適切に履行しているかという観点から審査に影響します。会社側で社会保険加入対象者を未加入のままにしていた場合や、本人が国民健康保険、国民年金、住民税を滞納している場合は、更新や変更時に不利益が生じる可能性があります。
企業としては、次の点を定期確認すべきです。
| 確認項目 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 住民税 | 課税と納付の状況確認 |
| 年金 | 加入区分と納付確認 |
| 健康保険 | 適正加入と控除確認 |
| 雇用契約 | 社保加入条件との一致 |
| 証明書 | 納税証明等の事前取得 |
更新直前になって未納が判明すると、是正に時間がかかります。したがって、申請前確認ではなく、雇用継続中の定期管理が重要です。
⚠️ 取消防止
6.在留資格取消しや不法就労を防ぐために知っておくべき事項
在留資格取消しや不法就労は、本人だけでなく、受入れ企業にも重大な影響を及ぼします。不法就労助長と評価されるような事態は、採用継続や今後の外国人雇用にも悪影響を及ぼしかねません。
防止のために重要なのは、次の三点です。
- 在留カードの内容確認を採用時だけで終わらせない
- 実際の業務が許可範囲を超えていないか継続確認する
- 離職後や転職時の放置を避ける
とくに注意したいのは、在留資格上認められた活動と違う仕事をさせることです。たとえば、許可された専門的業務ではなく単純作業中心で運用している場合や、分野外業務を常態化させている場合は、更新や変更時に問題となるおそれがあります。また、届出漏れや納付不備が重なると、全体として在留状況の適正性に疑義が生じやすくなります。
🆕 制度改正
7.2026年10月時点の制度改正と今後の留意点
2026年10月時点で、まず押さえるべき改正は、2026年10月1日施行の在留許可手数料改定です。更新、変更、永住の各申請で影響があるため、企業担当者や本人への事前案内が必要です。オンライン申請を利用する場合も、従来と同じ感覚で準備すると混乱しやすいため、申請受付日ベースでどの手数料体系が適用されるかを確認する必要があります。
次に、特定技能制度では、出入国在留管理庁が2027年4月1日施行予定の1号特定技能外国人への支援体制要件の改正を公表しています。2026年10月時点では将来施行予定の情報ですが、受入れ企業や登録支援機関にとっては、支援体制の見直し準備が必要になる可能性があります。
また、特定技能制度と育成就労制度の分野別運用方針に向けた作業も進められており、今後は業務区分や転職範囲、育成から就労への接続に関する実務の見直しが進むことが予想されます。したがって、2026年10月時点では、現行制度の運用を正確に押さえつつ、今後の制度接続にも備えることが重要です。これは現時点での公表資料からみた実務上の見通しです。
✅ まとめ
外国人雇用の実務では、在留資格の種類だけを見て判断するのでは足りません。更新、変更、業務範囲、届出、社会保険、納税、退職後対応まで一体で管理することが、適正な雇用継続の前提です。とくに2026年10月以降は、手数料改定や特定技能制度の運用変化も踏まえ、これまで以上に丁寧な実務対応が求められます。
行政書士法人塩永事務所では、在留期間更新、在留資格変更、特定技能、各種届出、企業の外国人雇用管理体制の整備まで、実務に即して支援しております。制度を誤って理解したまま運用すると、後の更新や変更で大きな支障が生じることがあります。早めの確認と体制整備をおすすめします。
