
行政書士法人塩永事務所
本記事は2026年10月6日時点で、熊本県が公表している「手引き」「Q&A」「定額補助申請マニュアル」(いずれも10月1日〜5日付)に基づいて作成しています。制度は随時更新されるため、申請前に必ず県の最新情報をご確認ください。
はじめに
令和8年熊本地震(発災日:令和8年7月28日)で被災した事業者の施設・設備の復旧を支援するため、熊本県が国の制度を活用して創設したのが**「くまもと事業者再出発支援補助金」**です。10月1日から第1次の申請受付が始まりました。
この補助金は、補助率が高く上限額も大きい一方、申請書類が多く、要件によっては「認定経営革新等支援機関」の確認が必須になります。この記事では制度の全体像と、認定経営革新等支援機関が関わる部分を詳しく解説します。
1. 制度の目的と基本的な考え方
事業用に使っていた施設・設備を、その所有者が復旧するための補助金です。国と県が経費の一部を支援し、事業の再建と被災地域の早期復興を目指します。
押さえておきたい基本ルールは次のとおりです。
- 被災したことの証明(被害写真、市町村が発行する被災(罹災)証明書など)が必要です。
- 原則として、施設は登記されているもの、設備は資産計上されているものが対象です。
- 復旧は修理(修繕)が原則です。ただし次の場合は入替・建替も認められます。
- 設備が修理不能と認められる場合
- 施設が「全壊」または「大規模半壊」と判定された場合
- 見積書の比較で、入替・建替のほうが修理費より安いと認められる場合
- 従前より規模を拡張した建替や、高機能の設備への入替も可能です。ただし**補助対象経費の上限は、原状回復に必要な額(修理費や同等設備・同等建物の費用)**となります。
2. 補助対象者・補助率・上限額
熊本県内に事業所を有する事業者が対象で、区分ごとに補助率と上限額が異なります。
| 区分 | 補助対象者 | 補助率 | 1事業者あたり上限額 |
|---|---|---|---|
| ① 中小企業者等 | 小規模事業者・個人事業主を含む(みなし大企業・みなし中堅企業は除く) | 3/4 | 3億円 |
| ② 中堅企業・みなし中堅企業 | 資本金または出資金10億円未満(みなし大企業は除く) | 1/2 | 3億円 |
| ③ 多重被災事業者 | ①②のうち一定の要件を満たす事業者 | 5億円まで定額(10/10)。5億円を超える部分は①②に準ずる | 15億円 |
| ④ 特定被災事業者 | ①②のうち一定の要件を満たす事業者 | ①②に準ずる | 15億円 |
補助金額は「補助対象経費(税抜き)×補助率」で計算し、千円未満は切り捨てです。
対象外となる主な事業者は、みなし大企業、農林水産業(一次産業)を営む事業者、一般社団・財団法人、医療法人、NPO法人、社会福祉法人、学校法人、宗教法人、性風俗関連特殊営業を営む者、熊本県税に未納がある者などです。農林水産業協同組合(商工業を営む者)は別途の要件を満たせば対象になります。
事業者規模は、発災時・交付申請時・補助事業完了時のすべての時点で要件を満たしている必要があります。
3. 補助対象となる経費・ならない経費
対象となる経費
- 施設:店舗、事務所、工場、倉庫など事業用建物の修繕費・建替費
- 設備:機械装置など事業用設備の修理費・入替費(購入)
- 車両:被災前に所有していた事業専用の車両の修理費・入替費(要件は別紙「車両の取扱い」を参照)
- 復旧に付随する処分費、撤去費、据付費、運搬費、地盤改良費など(単独で行う場合は対象外)
対象とならない経費(一例)
- 住宅用建物(店舗兼住宅は、面積按分で事業用部分のみ対象)
- 土地の測量・造成、かさ上げ、土地の購入費
- 商品・在庫・原材料、消耗品、ソフトウェア
- 汎用性のある備品・什器(テーブル、イス、食器、陳列棚など)
- 賃貸目的の設備・車両(レンタカーなど)
- 租税公課、保険料、保守費用、清掃・消毒費
- 官公庁への手続きに係る費用(申請代行に係る費用)
- 自社で復旧する場合の人件費
- 仮設店舗など仮復旧の費用、逸失利益などの間接被害
保険金や共済金を受け取る場合は、復旧費用から差し引いた額が補助対象経費になります。請求できる保険金があるのに請求しない物件は、補助対象外です。
4. 申請の流れと主なスケジュール
- 受付開始:令和8年10月1日(木)から第1次申請。その後は毎月、期間を区切って受け付ける予定です(詳細な申請期間は県ホームページで案内されます)。
- 申請回数:原則1回です。施設と設備に分けるなど分割する場合は、原則2回までです。
- 申請単位:事業所単位ではなく事業者単位です。複数の事業所分は合算して申請します。
- 提出方法:郵送または持参。書類は同じものを2部作成し、1部は控えとして保管します。
- 補助対象期間:原則は交付決定日以降の経費です。特例として、発災日(7月28日)以降であれば、交付決定前に復旧した経費も対象になります(被害状況が写真や書類で確認できる場合に限ります)。
- 見積書:1件100万円(税込)以上の工事は2者以上から取得します。既に復旧済みの場合などは、理由書を添えて1者見積もりも可能です。
- 実績報告:事業完了・支払完了から15日以内(または県が指定する日のいずれか早い日)に提出します。
- 支払い:原則は確定後の精算払いです。要件を満たせば、1回限りの概算払いを請求できます。
- 確定から入金まで:実績報告の審査終了後、おおむね2か月程度とされています。
5. 【重要】認定経営革新等支援機関が関わる場面
ここからが本記事の中心です。
5-1. 認定経営革新等支援機関とは
認定経営革新等支援機関(認定支援機関)とは、中小企業の経営課題に対して専門的な支援を行う者として、国(中小企業庁)から認定を受けた機関です。税理士、公認会計士、中小企業診断士、弁護士、行政書士などの専門家のほか、金融機関や商工会・商工会議所も認定を受けています。
5-2. この補助金で「確認」が必要になるケース
この補助金で認定支援機関の確認が求められるのは、定額補助(補助率10/10・5億円まで)を受ける「多重被災事業者」のうち、特定の要件で申請する場合です。
多重被災事業者になるには、次の①〜⑤をすべて満たす必要があります。
- 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者であること
- 過去10か年度以内の激甚指定災害(熊本県では平成28年熊本地震、令和2年7月豪雨、令和7年8月豪雨)で被災し、かつ、その復旧・復興に向けた国等の支援を活用していること
- 次のア・イのいずれかに該当すること
- ア:過去の災害の発生以降、売上高が20%以上減少している復興途上の事業者
- イ:令和8年熊本地震の発生時に厳しい債務状況にあり、交付申請時に経営再建等に取り組み、かつ、認定経営革新等支援機関に事業計画等の確認を受けている事業者
- 過去の災害からの復旧・復興のための債務を抱えており、都道府県知事が認めた事業者
- 令和8年熊本地震で施設または設備が被災し、その復旧を行おうとする事業者
認定支援機関が必要になるのは、要件③のイで申請する場合です。要件③のアの売上減少で満たせる事業者は、認定支援機関の確認は要件になりません。どちらで申請できるかは、売上の推移や債務の状況を整理しないと判断できません。この見極めが専門家の腕の見せどころです。
5-3. 要件③イで提出する書類
要件③イで申請する場合は、次の書類をすべて提出します。いずれも様式は県ホームページに掲載されています。
- 企業再建計画(県所定の様式)
- 認定経営革新等支援機関による「企業再建計画(事業計画)の確認書」
- 金融機関による「企業再建計画の確認書」
認定支援機関は、復旧内容が経営環境等を踏まえた適正な規模になっているかを確認します。金融機関は、計画の実効性を確認します。
なお、認定支援機関と金融機関が同一である場合は、その機関が企業再建計画の策定を支援したうえで、双方の確認書を発行することも可能とされています。
5-4. 認定支援機関に相談するメリット
- 「多重被災事業者」の要件①〜⑤を、証拠書類と照らして漏れなく整理できます。
- 要件③のアとイのどちらで申請するのが適切か、事前に判断できます。
- 復旧規模と事業計画の整合性を検討し、根拠のある企業再建計画を作れます。
- 金融機関との確認書の調整も含め、手戻りを減らせます。
※認定支援機関の確認を受けたからといって、交付が約束されるわけではありません。交付決定は県の審査によります。
6. 補助金を受けるための要件(事業継続計画と保険加入)
補助対象となる施設・設備については、次の2点が求められます。いずれも実績報告時に確認されます。
- 事業継続計画(BCP)の策定
県のホームページに「熊本県版事業継続計画(BCP)シート」が掲載されています。事業者独自のBCPや、国の認定を受けた事業継続力強化計画でも構いません。 - 自然災害(風水害を含む)を補償する損害保険・共済への加入
補助対象の施設・設備の再調達価額に対して、中小企業者等は付保割合30%以上、中堅企業は40%以上が必要です。小規模事業者は加入推奨(義務ではありません)です。新価(再調達価額)型の保険・共済が求められます。
7. 申請前に知っておきたい注意点
- 他の補助金との重複はできません。同一の施設・設備の復旧に、他の国・県の補助金は併用できません。国の「小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)」を検討する場合も、対象経費の切り分けが必要です。
- 交付決定は支払いの約束ではなく、増額もできません。実績報告で経費が減れば減額されます。
- **補助金で復旧した施設・設備は「処分制限財産」**になります。一定期間は、目的外使用、譲渡、貸付、取壊し、廃棄などに県の承認が必要です。
- 帳簿・証拠書類は、事業完了年度の終了後10年間保存する必要があります。
- 交付決定を受けた事業者の名称・所在地は、県のホームページで公表されます。
- 不正や虚偽の報告があった場合は、交付取消しと返還を命じられます。
- 被災(罹災)証明書が取得できない場合は、理由書や、建築士・専門業者による証明書で代替できる場合があります。
- 登記・資産計上がない資産も、台帳証明や契約書などで被災前の所有と事業利用を証明できれば、対象になる場合があります。
8. よくあるご質問
Q. 交付決定前に工事を始めてしまいましたが、対象になりますか?
A. 発災日(令和8年7月28日)以降に行った復旧であれば、被災状況が写真や書類で確認でき、復旧内容が適正であれば対象になる可能性があります。発注書、契約書、請求書なども保管してください。
Q. 申請書類の作成を専門家に頼んだ費用は補助対象になりますか?
A. 官公庁への手続きに係る費用(申請代行に係る費用)は、補助対象外とされています。
Q. 過去の災害で補助金を使って復旧した設備も対象になりますか?
A. 令和8年熊本地震で被災していれば活用可能です。ただし、過去の補助金で復旧した施設・設備を取り壊したり廃棄したりする場合は、財産処分の手続が必要になることがあります。
Q. 申請の相談窓口はどこですか?
A. 受付センター(096-284-7660)のほか、お近くの商工会議所・商工会でも申請書の作成支援を行っています。
9. 当事務所のサポート
行政書士法人塩永事務所は、認定経営革新等支援機関(認定番号:【ここに認定番号を記載】)として、被災事業者の皆様の再出発を支援しています。
- 補助対象者区分(中小企業者等・中堅企業・多重被災事業者・特定被災事業者)の判定
- 多重被災事業者の要件確認と、要件③のア・イのどちらで申請するかの検討
- 企業再建計画の策定支援、認定経営革新等支援機関としての確認書の作成
- 交付申請書類一式の作成支援、必要書類の整理
- 実績報告、財産管理に関するご相談
「自社が対象になるか分からない」「書類が多くて何から手をつければよいか分からない」という段階でも構いません。まずはお問い合わせください。
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