
建設業の経営事項審査(経審)を徹底解説|P点・X・Y・Z・Wを理解して公共工事の受注力を高める
熊本の認定経営革新等支援機関・行政書士法人塩永事務所
建設業者が公共工事への入札参加を目指す場合、避けて通れないのが**経営事項審査(経審)**です。
「経審を受ければ公共工事を受注できる」
と考えている会社もありますが、実際にはそう単純ではありません。
経営事項審査では、会社の完成工事高、財務内容、技術者、元請実績、社会性、建設機械、担い手育成など、会社経営に関するさまざまな項目が点数化されます。
そして、その結果として算出される**総合評定値(P点)**は、公共工事の入札参加資格審査において重要な客観的評価の一つとなります。
つまり経審は、単なる「行政手続」ではありません。
建設会社の経営状態・技術力・社会的取組を数字で評価し、公共工事市場における競争力を左右する重要な経営指標です。
特に2026年7月1日以降の申請からは、W点(社会性等)の評価内容も改正されています。
本記事では、熊本県内の建設業者を中心に、経営事項審査について、
- 経審とは何か
- P点はどのように決まるのか
- X・Y・Z・Wとは何か
- P点を上げるには何をすればよいのか
- 技術者・元請工事はどう評価されるのか
- 財務内容はどこを見られるのか
- W点で何が評価されるのか
- 2026年7月1日改正のポイント
- 経審でよくある失敗
- 経審と経営改善をどう結び付けるか
- 行政書士・認定経営革新等支援機関に何を依頼できるのか
まで、詳しく解説します。
1.経営事項審査(経審)とは?
経営事項審査とは、建設業者の経営規模、経営状況、技術力、社会性などを客観的に評価する制度です。
建設業法第27条の23に基づく制度で、公共工事の発注者が建設業者を評価する際の重要な資料となります。
経営事項審査は大きく、
経営状況分析(Y)
と
経営規模等評価(X・Z・W)
に分かれます。
さらに、これらを合わせて、
総合評定値(P)
が算出されます。
国土交通省の資料では、P点は次の算式で算出されます。
P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W
つまり、
- X1=完成工事高
- X2=自己資本額・利益
- Y=経営状況
- Z=技術力
- W=社会性等
という5つの要素から会社の総合的な評価が算出されます。
2.「経審を受ける=公共工事を受注できる」ではない
ここは非常に重要です。
経審を受けたからといって、それだけで公共工事を受注できるわけではありません。
一般的には、
建設業許可
↓
決算変更届
↓
経営状況分析(Y)
↓
経営規模等評価申請(X・Z・W)
↓
総合評定値(P)の請求
↓
入札参加資格審査
↓
発注者ごとの格付・順位付け
↓
公共工事への入札
という流れになります。
さらに、国、熊本県、熊本市、各市町村など、発注者ごとに入札参加資格審査や格付制度が異なります。
そのため、
「P点を上げること」だけを目的にするのではなく、「どの発注者の、どの工事を受注したいのか」から逆算することが重要です。
3.P点を構成するX・Y・Z・Wとは?
経審を理解するためには、まずX・Y・Z・Wを理解する必要があります。
X1=完成工事高
X1では、基本的に業種別の完成工事高が評価されます。
例えば、
- 土木一式
- 建築一式
- 電気
- 管
- 舗装
- 水道施設
- 解体
など、許可業種ごとに完成工事高が評価されます。
ここで重要なのは、
会社全体の売上が大きければ、それだけで希望業種のX1が高くなるわけではない
という点です。
例えば、電気工事業の売上を伸ばしたい会社が、実際には建築関連工事を中心に売上を計上している場合、単純に会社全体の売上だけを見ても、電気工事業の評価向上には直結しません。
したがって、
「どの業種で公共工事を取りたいのか」
を決め、その業種の完成工事高を意識する必要があります。
4.X2=自己資本額と利益
X2では、
- 自己資本額
- 利払前税引前償却前利益
などが評価対象となります。
簡単に言えば、
会社にどれだけ財務的な体力があるか
を見る項目です。
特に建設業では、売上高だけを追いかけるのではなく、
利益を残し、自己資本を積み上げる経営
が重要になります。
売上が10億円あっても利益がほとんど残らない会社と、売上5億円でも安定して利益を確保している会社では、財務面の評価は異なります。
したがって経審対策は、
「売上を増やす」
だけではありません。
粗利益を確保する、適正な工事単価を設定する、赤字工事を減らす、借入金を適切に管理する、内部留保を増やす
といった経営改善が重要になります。
5.Y=経営状況分析は非常に重要
Yは、会社の財務内容を評価する部分です。
経営状況分析では、
- 純支払利息比率
- 負債回転期間
- 総資本売上総利益率
- 売上高経常利益率
- 自己資本対固定資産比率
- 自己資本比率
- 営業キャッシュ・フロー
- 利益剰余金
などが評価対象となります。
つまり、
「いくら売ったか」だけではなく、「どれだけ利益を残したか」「借入金に依存していないか」「資金繰りは健全か」などが見られる
ということです。
6.経審対策は「決算直前」では遅い
経審でよくある誤解が、
「経審の申請前に何か対策すればいい」
という考え方です。
しかし、経審では決算書等に基づく評価が行われるため、決算直前になって急に数字を作ることはできません。
本当に重要なのは、
次回の経審を見据えて、1年前、2年前から経営改善を進めること
です。
例えば、
- 利益率改善
- 借入金管理
- 自己資本の充実
- 技術者の確保
- 資格取得
- CCUSへの対応
- 建退共
- 企業年金等
- 防災協定
- 建設機械の保有
- ISO等の取得
- 若手技術者育成
- 働き方改革
などを計画的に進めることが重要です。
7.Z=技術力は「技術者」と「元請実績」
Zは、
技術職員数(業種別)
と
元請完成工事高(業種別)
などを評価します。
Zのウェイトは25%で、P点においてX1と並ぶ大きな割合を占めています。
したがって、
技術者をどう確保するか
は経審対策として極めて重要です。
8.技術者の資格管理が重要
技術者については、
「資格を持っている人が会社にいる」
だけでは十分とは限りません。
経審では、適切な技術職員として評価されるための要件や、申請時点で確認すべき資料があります。
そのため、
- 技術者名簿
- 資格証
- 実務経験
- 雇用関係
- 常勤性
- 対応する許可業種
- CPD
- CCUS
- 技術者の配置
などを日頃から整理しておく必要があります。
9.元請完成工事高も重要
Zでは、元請完成工事高も評価されます。
同じ完成工事高でも、
元請として受注した工事なのか、下請として受注した工事なのか
によって経審上の意味が異なります。
公共工事への参入を強化したい会社であれば、
「売上を増やす」
だけでなく、
元請としてどのような工事を受注していくか
という営業戦略も重要になります。
10.W=社会性等は「積み重ね型」の経審対策
Wは「その他の審査項目(社会性等)」です。
現在のWでは、
- 担い手の育成・確保
- 営業継続
- 防災活動
- 法令遵守
- 建設業の経理
- 研究開発
- 建設機械
- ISO等
といった項目が評価されます。
ここは、会社が日頃からどのような経営をしているのかが表れやすい部分です。
11.2026年7月1日から経審が改正
2026年7月1日以降の経営事項審査申請から、W点について重要な変更が行われています。
主な変更は次の3点です。
①「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」を新設
新たに、
「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無
が評価項目として追加されました。
加点は5点です。
ただし、単に宣言すれば無条件に加点されるというものではなく、審査基準日、宣言書、誓約書などの要件を確認する必要があります。
12.CCUS関係の評価も見直し
建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置についても配点が見直されています。
2026年7月1日以降は、
- 民間工事を含む全ての建設工事:10点
- 全ての公共工事:5点
という評価に見直されています。
したがって、
CCUSを単なる現場管理の仕組みとしてではなく、経審を含めた会社経営の評価項目として考える
ことが重要です。
13.建設機械の評価対象が拡大
2026年7月1日以降は、W7「建設機械の保有状況」において、
不整地運搬車
および
アスファルト・フィニッシャ
が加点対象に追加されました。
建設機械の保有台数に応じた評価は最大15点です。
ただし、
「経審の点数を上げるためだけに機械を買う」
という考え方は適切ではありません。
実際の受注工事、施工体制、維持管理費、減価償却、資金繰りなどを含めて判断する必要があります。
14.社会保険未加入によるW点の減点項目が削除
2026年7月1日以降の経審では、
- 雇用保険
- 健康保険
- 厚生年金
の未加入によるW点の減点項目が削除されています。
これは、2020年10月以降、建設業許可の要件に社会保険加入が位置付けられ、2025年10月以降は許可を保有する建設業者について社会保険加入が前提となることを踏まえたものです。
ただし、
「経審から社会保険の確認がなくなったから、社会保険は重要ではない」
という意味ではありません。
建設業許可、雇用管理、労務管理等において社会保険は依然として重要です。
15.2026年改正後のP点の構造
現在のP点の基本的な構造は、
P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W
です。
つまり、
| 評価項目 | 内容 | ウェイト |
|---|---|---|
| X1 | 完成工事高 | 25% |
| X2 | 自己資本・利益 | 15% |
| Y | 経営状況 | 20% |
| Z | 技術力・元請実績 | 25% |
| W | 社会性等 | 15% |
となっています。
ここから分かることは、
「W点だけ頑張ればP点が大幅に上がる」という制度ではない
ということです。
P点を本格的に改善するには、
売上・利益・財務・技術者・元請実績・社会性
を総合的に改善する必要があります。
16.P点を上げたい建設会社が最初にやるべきこと
まず、現在の経審結果通知書を確認します。
そして、
STEP1 現在のP点を確認
現在のP点だけではなく、
- X1
- X2
- Y
- Z
- W
を確認します。
STEP2 弱点を発見
例えば、
「X1は高いがYが低い」
「売上はあるが利益率が低い」
「技術者が少なくZが伸びない」
「W点で取れる加点を取り切れていない」
などの問題を確認します。
STEP3 目標P点を設定
例えば、
「現在P点780点→850点」
「土木でP点を上げる」
「熊本県の○○ランクを目指す」
など、具体的な目標を設定します。
STEP4 逆算して経営改善
目標から逆算して、
- 完成工事高
- 利益
- 技術者
- 元請工事
- CCUS
- 建退共
- 防災
- 建設機械
- ISO
- 経理体制
などを整理します。
17.経審は「点数取りゲーム」ではない
経審対策で最も重要なのは、
点数だけを追いかけないこと
です。
例えば、
「P点を10点上げるために高額な設備を購入する」
ことが会社にとって本当に有利なのか。
あるいは、
「利益率を改善してY点を上げる」
方が長期的に会社にとって有利なのか。
これは会社ごとに異なります。
経審は会社経営の結果を数字に反映する制度です。
したがって、
経審対策=経営改善
と考えることが重要です。
18.認定経営革新等支援機関だからこそできる経審支援
行政書士法人塩永事務所は、建設業許可・経審申請だけを行う行政書士事務所ではありません。
認定経営革新等支援機関として、建設会社の経営改善・事業計画・資金調達等も含めた支援を重視しています。
経審では、
「申請書を作って提出する」
だけではなく、
その会社が今後どのように成長していくのか
という視点が重要です。
例えば、
① 経審結果の分析
現在の、
- X1
- X2
- Y
- Z
- W
- P点
を確認します。
② 弱点分析
「どこがP点を下げているのか」を確認します。
③ 目標設定
希望する公共工事、業種、地域、格付等を考慮して目標を設定します。
④ 経営改善計画
- 売上
- 粗利益
- 営業利益
- 借入
- 自己資本
- 技術者
- 元請比率
などを総合的に検討します。
⑤ W点対策
- 建退共
- 退職金制度
- 法定外労災
- 若年技術者育成
- CPD等の取組
- CCUS
- 建設技能者を大切にする企業の自主宣言
- 防災活動
- 建設機械
- ISO
など、該当する加点項目を確認します。
⑥ 経審申請
必要書類を整理し、経営規模等評価申請、総合評定値請求等をサポートします。
⑦ 入札参加資格申請
必要に応じて、国・熊本県・熊本市・各市町村等の入札参加資格申請についても検討します。
19.経審でよくある失敗
失敗① 決算が終わってから相談する
決算が終わってからでは、できる対策が限定されます。
決算前から相談することが重要です。
失敗② 売上だけを増やそうとする
売上が増えても利益が残らなければ、会社の財務体質が改善するとは限りません。
「売上」だけではなく、
利益率・キャッシュフロー・自己資本
まで見る必要があります。
失敗③ 技術者の資格情報を整理していない
資格証や実務経験、雇用関係などの管理が不十分だと、せっかくの技術力を適切に評価できない可能性があります。
失敗④ W点の加点項目を知らない
W点には複数の評価項目があります。
「知らなかったため加点を受けられなかった」
というケースを防ぐため、早めにチェックすることが重要です。
失敗⑤ 経審と入札参加資格を別々に考える
最終目的が公共工事の受注であるなら、
経審→P点→入札参加資格→格付→入札
まで一連の流れとして考える必要があります。
20.「P点を何点にすればよいのか?」という質問について
これは非常によくある質問です。
しかし、
「P点○○点なら公共工事が取れる」
と一律に言うことはできません。
なぜなら、
- 国
- 熊本県
- 熊本市
- 各市町村
- 発注機関
- 工事種別
- 工事規模
- 地域
- 入札方式
などによって評価方法や参加条件が異なるからです。
そのため、
「P点を上げる」ことよりも、「どの工事を受注したいか」から逆算すること
が重要です。
21.経審は会社の「健康診断」でもある
経審の結果を見ると、その会社の経営上の課題が見えてきます。
例えば、
売上は大きいが利益が少ない
→ 収益構造の改善が必要
借入金が多い
→ 財務体質の改善が必要
技術者が少ない
→ 採用・資格取得・人材育成が必要
元請実績が少ない
→ 営業戦略の見直しが必要
W点が低い
→ 社会性・担い手育成・防災等の取組を確認
というように、
経審の点数は会社経営を客観的に見直すきっかけ
にもなります。
22.行政書士法人塩永事務所の経審サポート
行政書士法人塩永事務所では、熊本県内の建設業者を中心に、経営事項審査について総合的なサポートを行っています。
主なサポート内容
経審事前診断
現在の経審結果を確認し、
- X1
- X2
- Y
- Z
- W
- P
を分析します。
必要書類の整理
決算書、工事関係資料、技術者関係資料、社会性等の加点資料などを確認します。
経営規模等評価申請
X・Z・Wに関する申請をサポートします。
総合評定値請求
経営状況分析結果と経営規模等評価を踏まえ、P点の取得をサポートします。
P点改善相談
「次回の経審でP点を上げたい」という建設会社について、現在の弱点を分析します。
経営改善支援
認定経営革新等支援機関として、
- 事業計画
- 経営改善
- 資金繰り
- 金融機関対応
- 補助金
- 融資
- 財務改善
などについても、会社の状況に応じて検討します。
23.経審の報酬・料金について
経審は会社ごとに、
- 許可業種
- 申請業種数
- 決算内容
- 技術者数
- 工事実績
- W点の加点項目
- 法人規模
- 必要書類の量
- 入札参加資格申請の有無
などが異なります。
そのため、単純な一律料金ではなく、
会社の規模・申請内容を確認した上で個別にお見積り
とするのが適切です。
また、
「経審申請のみ」
と
「経審+P点分析+経営改善+入札参加資格申請」
では、業務内容が大きく異なります。
行政書士法人塩永事務所では、事前ヒアリングの上、必要な業務を整理してお見積りします。
24.経審を受ける建設会社は、決算前からご相談ください
経審は、申請書を作るだけの手続ではありません。
本当に重要なのは、
「次回の経審で、どのような会社になっているか」
です。
特に、
- 公共工事を増やしたい
- P点を上げたい
- 熊本県の入札で有利になりたい
- 熊本市の公共工事を受注したい
- 土木・建築・電気・管・舗装など特定業種を強化したい
- 技術者を増やしたい
- 財務内容を改善したい
- W点を取り切れているか確認したい
- 経審と経営改善を一体的に考えたい
という建設会社は、早めの対策をおすすめします。
25.まとめ|経審は「申請」ではなく「経営戦略」
経営事項審査は、
X1=完成工事高
X2=自己資本・利益
Y=経営状況
Z=技術力・元請実績
W=社会性等
を総合的に評価し、
P点=総合評定値
として数値化する制度です。
そして2026年7月1日以降は、W点について、
- 建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度の評価
- CCUS関係の配点見直し
- 建設機械の評価対象拡大
- 社会保険未加入による減点項目の削除
などの改正が行われています。
今後の経審対策では、
「申請直前に書類を集める」
のではなく、
「決算・人材・技術者・元請実績・財務・社会性を日常的に管理する」
ことが重要です。
熊本の建設業者の経審・P点対策は行政書士法人塩永事務所へ
行政書士法人塩永事務所は、認定経営革新等支援機関として、建設業許可から経営事項審査、入札参加資格、経営改善、資金調達まで、建設会社の経営を総合的にサポートします。
単なる「経審申請代行」ではなく、
「現在のP点を分析する」
↓
「どこを改善すべきか確認する」
↓
「目標とする公共工事を明確にする」
↓
「財務・技術者・工事実績・W点を改善する」
↓
「経審を申請する」
↓
「入札参加資格・公共工事受注につなげる」
という一連の流れを重視しています。
熊本県内の建設業者はもちろん、全国の建設会社からのオンライン相談にも対応しています。
「今のP点で大丈夫なのか?」
「次回の経審でP点を上げたい」
「熊本県・熊本市の公共工事を増やしたい」
「経審のW点をもっと取れないか?」
「決算前に何をすればいいのか?」
という場合は、ぜひ一度ご相談ください。
行政書士法人塩永事務所
熊本市中央区水前寺
JR新水前寺駅徒歩約3分
TEL:096-385-9002
E-mail:info@shionagaoffice.jp
初回相談無料・全国オンライン対応・郵送・メールによる手続対応
建設業許可、経営事項審査、入札参加資格、経営改善、補助金・融資支援まで、建設会社の成長段階に応じて総合的にサポートします。
※経営事項審査の評価方法、必要書類、申請時期、加点要件等は、許可行政庁・発注者・審査基準日・申請時期等によって異なる場合があります。実際の申請では、最新の国土交通省・各地方整備局・都道府県等の公表資料を確認する必要があります。
