
熊本で運送業(緑ナンバー)を始める|一般貨物自動車運送事業 許可申請ガイド【2026年10月版】
行政書士法人塩永事務所(熊本/認定経営革新等支援機関) 最終確認:2026年10月24日
熊本県では、半導体関連企業の集積に伴う輸送需要の増加を見込み、物流拠点を新設する動きが広がっています。一方、トラック運送の許可制度は2025年から2026年にかけて大きく変わり、2028年6月までには「許可の5年更新制」と「適正原価」も始まる見込みです。本稿は、熊本で一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)の許可を目指す方に向けて、九州運輸局の公示基準と最新の法改正を整理したものです。
1. 一般貨物自動車運送事業とは
他人の需要に応じ、有償で、トラックなど(三輪以上の軽自動車と二輪を除く)を使って貨物を運ぶ事業のうち、荷主が特定の1社に限られないものです。荷主が特定の1社なら「特定貨物自動車運送事業」、軽自動車で行う場合は届出制の「貨物軽自動車運送事業」(黒ナンバー)になります。
申請書は営業所の所在地を管轄する運輸支局に提出します。熊本県内は熊本運輸支局(熊本市東区東町4丁目14-35、TEL 096-369-3155)です。審査と許可は九州運輸局が行います。窓口情報は九州運輸局の手引(令和元年11月版)に基づくため、提出前に最新の案内をご確認ください。
2. 申請から運輸開始までの流れ
- 計画・準備:営業所、車庫、休憩・睡眠施設、車両、運行管理者・整備管理者・運転者、資金を整えます。物件は、都市計画法・建築基準法・消防法・農地法などに適合するか契約前に確認します。
- 申請書の提出:熊本運輸支局へ提出します。九州運輸局の手引では、九州運輸局長宛て1部、運輸支局用1部、申請者控え1部が必要です。
- 法令試験:受験者は1申請につき1名です(詳細は第4章)。
- 審査:九州運輸局の標準処理期間は3〜5か月です(令和7年8月1日改正)。書類の補正や申請内容の変更にかかる期間は含まれません。
- 許可・運輸開始準備:登録免許税(12万円)の納付、許可書交付と指導講習を経て、運行管理者・整備管理者の選任届、社会保険等への加入、車両登録、運輸開始前の報告、運輸開始届、運賃料金設定届を行います。許可後1年以内に運輸を開始する条件が付されます。
3. 許可の要件(九州運輸局の公示基準)
営業所:使用権原があること、関係法令に抵触しないこと、規模が適切で必要な備品があることが求められます。
車両:営業所ごと・種別ごとに5両以上が必要です(けん引車と被けん引車の一対は1両)。購入またはリースなどの使用権原を示し、輸送する貨物に適した車両にします。
車庫:営業所への併設が原則です。併設できない場合は、九州運輸局の公示で営業所から直線5km以内、営業所が政令指定都市(熊本市など)にあるときは10km以内とされています。そのほか次の条件があります。
- 前面道路が車両制限令に適合すること(原則、道路幅員証明書で確認)
- 車両と境界、車両相互の間隔を50cm以上確保し、計画車両をすべて収容できること
- 他の用途と明確に区画されていること
- 1両あたりの必要面積の目安は、2t以下15㎡、2tロング20㎡、7.5t以下28㎡、7.5t超38㎡です(手引)。
休憩・睡眠施設:営業所または車庫への併設が原則です。睡眠施設は、同時に睡眠する人1人あたり2.5㎡以上が必要です。
運行管理・整備管理:車両数に応じた員数の常勤の運行管理者と整備管理者を確保する計画が必要です。運転者を確保し、勤務割・乗務割が国土交通省告示(平成13年第1365号)に適合する計画にします。点呼体制、事故防止の教育、アルコール検知器の配備計画も審査されます。
資金計画:事業開始に要する「所要資金」を積算し、その全額以上を自己資金で用意します。自己資金は申請日から許可日まで常時確保が必要で、預貯金残高証明書で示します(提出日は運輸局の通知に従います)。所要資金の内訳は次のとおりです。
- 車両費(購入は取得価格、分割は頭金と1年分の割賦金、リースは1年分のリース料)
- 土地・建物費(賃借は1年分の賃借料)
- 機械器具・備品費
- 運転資金(人件費[社会保険料を含む]・燃料油脂費・車両修繕費・タイヤ費の各6か月分)
- 自賠責・任意保険料と諸税(各1年分)
金額は計画次第で変わるため、一律の目安は示せません。任意保険は、対人が無制限、対物が1事故200万円以上であることが条件です。
法令遵守:健康保険・厚生年金・労災・雇用の各保険に加入します。許可取消しから5年を経過しない者などは欠格事由に当たります。申請日前6か月(悪質な違反は1年)以内に使用停止以上の処分を受けていないことも必要です。
4. 法令試験
- 受験者:1申請につき1名です。法人は、許可後に事業へ専従する常勤役員(設立法人は就任予定者)が受験します。
- 実施:隔月で、初回は原則として申請受理の翌月以降です。不合格の場合、翌々月に1回だけ再受験でき、再不合格は却下となります(取下げは可能)。
- 形式:○×式と語群選択式で30問、50分、8割以上で合格です。条文集は配付されますが、持込みはできません。
- 会場:通知書の様式では福岡市の九州運輸局(福岡合同庁舎)です。
- 出題範囲:貨物自動車運送事業法と関係省令、道路運送法、道路運送車両法、道路交通法、労働基準法、改善基準告示、労働安全衛生法、独占禁止法、取適法(旧下請法)など13の法令等です。
5. 押さえておきたい最新の法改正
2025年4月1日施行(令和6年法律第23号):真荷主との運送契約時の書面交付義務、元請による実運送体制管理簿の作成・保存、委託先の健全な事業運営に資する取組(努力義務)が始まりました。一定規模の利用運送を行う事業者には、運送利用管理規程の作成と運送利用管理者の選任も義務づけられています。
2026年4月1日施行(トラック適正化二法、令和7年法律第60・61号):
- 違法な「白トラ」に運送を委託した荷主等も処罰対象になりました(100万円以下の罰金)。
- 元請として引き受ける場合、再委託は2次までとする努力義務が課されました。
- 書面交付義務などが貨物利用運送事業者にも適用されました。
なお2026年1月1日には、取適法(旧下請法)の対象に特定運送委託が加わっています。
今後(2028年6月までに施行予定):
- 許可に5年ごとの更新制が入ります。許可基準に「法令を遵守して事業を遂行することが見込まれること」が加わり、輸送の安全確保、社会保険料の納付、適正原価の収受などに違反すると更新されません。
- 国土交通大臣が定める「適正原価」を下回る運賃・料金が制限され、標準的運賃は廃止されます。
- 労働者の適切な処遇を確保する措置も義務になります。
報道によれば、国土交通大臣は10月13日に適正原価制度の段階的な導入を検討していると述べています。新規参入の事業計画も、適正原価を前提にした収支で組むのが安全です。
6. 許可後の手続と継続義務
- 運輸開始前:運行管理者・整備管理者の選任届、社会保険等への加入、運輸開始前の報告、運輸開始届を行います。
- 巡回指導:運輸開始届の1〜3か月後に、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関(各県のトラック協会)の指導員による巡回指導があります。改善が見込まれない場合は運輸支局の監査に進みます。
- 事業計画の変更:営業所・車庫・休憩睡眠施設の位置や収容能力の変更は認可または届出、増減車は事前の届出が必要です。
- 毎年の報告:事業報告書(事業年度経過後100日以内)などを提出します。
- 記録管理:点呼記録、運転日報、整備記録、労働時間管理を日常的に整えておきます。
7. 認定経営革新等支援機関としてのサポート
認定経営革新等支援機関は、税務・金融・財務の専門知識と中小企業支援の実務経験を備えた機関を国が認定する制度で、5年ごとの更新制です。当事務所は認定経営革新等支援機関として、許可申請の書類作成にとどまらず、事業が軌道に乗るまでの経営面を支援します。
- 事業計画・資金計画:所要資金の積算、3か年の収支計画、車両のリースと購入の比較を行います。
- 許可後の資金調達:申請に必要な自己資金とは別に、運転資金や車両投資の調達計画を金融機関向けに整えます。
- 補助金・税制・融資:認定支援機関の関与が要件となる制度の活用を相談できます。熊本県の「トラック物流持続的発展支援事業補助金」(上限300万円、第2弾は10月13日受付開始)は、10月1日時点で県内に本社または営業所を置き事業を営む事業者が対象です。許可取得直後の事業者が対象になるかは、公募要領で確認します。
- 更新制・適正原価への備え:原価の把握、運賃交渉の資料づくり、社会保険や労務体制の整備を支援します(社会保険労務士・税理士とも連携)。
- 事業の譲受:既存許可の譲渡譲受は、新規許可(3〜5か月)より標準処理期間が短い場合があります(地方運輸局長権限は1〜3か月)。新規許可と比較して検討します。
8. よくある質問
Q. 許可までの期間は? 標準処理期間は3〜5か月です。補正期間や法令試験の再受験で延びることがあります。
Q. 最低車両台数は? 営業所ごと・種別ごとに5両以上です。軽自動車は含まれません。
Q. 自己資金はいくら必要? 所要資金の積算額が基準で、全額を自己資金で確保します。車両の購入・リース、施設の賃借・取得によって大きく変わります。
Q. 個人事業主でも申請できますか? できます。この場合は申請者本人が法令試験を受け、法人と同じ基準を満たす必要があります。
Q. 車庫は営業所と離れていてもよいですか? 併設が原則です。離れる場合は直線距離の上限(熊本市の営業所なら10km)に加え、点呼を確実に行える体制が必要です。
9. お問い合わせ
初回相談は無料です(対面・オンライン)。
- 電話:096-385-9002(平日9:00〜18:00)
- メール:info@shionagaoffice.jp
- X:@shionagaoffice
※本稿は2026年10月24日時点の公示・公表資料に基づく一般的な情報です。基準は改正されることがあるため、申請前に最新の公示をご確認ください。
