
一般貨物自動車運送事業の許可申請ガイド【2026年10月版】
行政書士法人塩永事務所
1. 一般貨物自動車運送事業とは
他人の需要に応じて、有償で、トラックなどの事業用自動車(緑ナンバー)により貨物を運送する事業です(貨物自動車運送事業法第2条)。営業所を管轄する地方運輸局長(運輸支局経由)の許可が必要です。
軽自動車や二輪のみで行う「貨物軽自動車運送事業」(届出制・黒ナンバー)や、特定の荷主のみを対象とする「特定貨物自動車運送事業」とは別の制度です。
2. 最新の法改正動向(重要)
① 2025年4月1日施行分(2024年公布の改正)
運送契約時の書面交付義務、元請事業者の実運送体制管理簿の作成、軽貨物事業者への安全管理者選任義務や事故報告などが整備されました。許可申請の事業計画にも、適正な契約・取引体制の記載が求められる場面が増えています。
② トラック適正化二法(2025年6月4日成立、6月11日公布)
「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」と「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」で構成されます。主な内容は次のとおりです。
- 許可の5年更新制の導入
- 国土交通大臣が定める適正原価を下回る運賃・料金の制限
- 運送の再委託(委託次数)を2次請けまでに制限(努力義務)
- 無許可の「白トラ」への運送委託の禁止強化(違反には100万円以下の罰金)
- 荷主等への是正指導
- ドライバーへの適正な賃金支払いなど、労働者処遇の確保
施行時期は段階的です。
- 2026年4月1日施行:委託次数の制限、白トラに係る荷主等への対応、書面交付義務等の利用運送事業者への適用
- 公布から3年以内(2028年6月まで)に施行:許可基準の追加、許可更新制度、適正原価の遵守義務、労働者処遇確保義務。更新の審査は経過措置(約2年)を経て開始され、5年程度で一巡する見通しです
許可基準には、車両・人員の確保、過労運転防止などの輸送の安全、車庫の管理、社会保険料の納付といった事業を適確に遂行する能力が含まれます。新規許可を取る場合も、許可後に更新審査を受ける前提で、体制を整えておく必要があります。
※更新制や適正原価の具体的な施行日・運用は、政省令や運輸局の公示で変わる可能性があります。申請前に必ず管轄運輸局の最新情報をご確認ください。
3. 申請から運輸開始までの流れ
- 事前準備:事業計画の策定、営業所・車庫・休憩睡眠施設の確保、運行管理者・整備管理者・運転者の確保計画、資金計画
- 申請書の提出:営業所を設ける都道府県の運輸支局へ提出
- 法令試験:申請者(法人は常勤役員)が受験。30問中8割以上で合格、1申請につき2回まで
- 審査:標準処理期間は3〜5か月(補正期間を除く)。書類不備があれば補正を求められます
- 許可処分・登録免許税12万円の納付
- 許可後の手続き:運行管理者・整備管理者の選任、車両の登録(緑ナンバー)、運賃料金設定届、運輸開始前の確認報告、運輸開始届
- 運輸開始:許可日から1年以内(運輸局の案内による)に開始しない場合、許可に影響します
4. 許可の主な要件
人的要件
- 常勤の運行管理者(運行管理者資格者証が必要)。車両数に応じて員数が増えます
- 整備管理者:実務経験2年以上、または整備士資格(3級以上)を有し、選任前研修を修了していること
- 車両数・事業計画に応じた運転者を常に確保できること(採用予定者を含む)
- 役員等が欠格事由に該当しないこと(懲役・禁錮刑や許可取消から5年未満の者、暴力団関係者など)
施設要件
- 営業所:使用権原があること(賃貸借は概ね契約期間2年以上など)、都市計画法・農地法・建築基準法等に抵触しないこと
- 車庫:全車両を収容でき、前面道路の幅員が車両に適合していること。営業所に併設できない場合は、常時密接に連絡できる体制と点呼の確実な実施体制が必要です
- 休憩・睡眠施設:原則として営業所または車庫に併設し、睡眠施設が必要な場合は1人当たり2.5㎡以上
車両要件
- 営業所ごとに事業用自動車5両以上(霊きゅう運送などの例外あり)。けん引車と被けん引車は合わせて1両と数えます
- 車両の大きさ・構造が運ぶ貨物に適し、使用権原(所有・リース)の裏付けがあること
資金要件
- 所要資金(車両費、施設費、運転者の人件費、燃料・保険・租税等)を見積もり、申請時から許可後まで自己資金で確保できること
- 預金残高証明書などで裏付けます。過少な見積もりは不許可の原因になります
法令遵守・事業遂行能力
- 法令試験への合格
- 社会保険料の支払能力、損害賠償の支払能力、労働時間・休息に関する基準(改善基準告示、2024年4月から時間外労働の上限規制)に沿った勤務割・乗務割
5. 書類作成のポイント
- 事業計画書:運行ルート、荷物の種類、収支見込みを現実的に記載します。標準的な運賃や、2026年4月以降の取引ルール(書面交付、委託次数)を踏まえた根拠を示してください
- 資金計画書:事業計画・車両台数・人員数と金額が一致するように整えます
- 整合性:車両台数と運行管理者数、営業所・車庫の適法性、勤務割と運転者数など、書類全体の整合が審査で重視されます
- 法令試験対策:貨物自動車運送事業法、道路運送車両法、道路交通法、労働基準法等から出題されます。条文集は試験当日に運輸局から配布されるため、持ち込みはできません。過去問での演習が有効です
6. 許可取得後の継続義務
- 事業報告書:事業年度経過後100日以内に提出
- 事業実績報告書:運輸局の定める期限に提出
- 変更届・認可:営業所・車庫の変更、車両数の増減、役員・管理者の変更などは、内容に応じて届出または認可が必要です
- 巡回指導・監査:点呼記録、運転日報、整備記録、労働時間管理が確認されます
- 更新制への備え:今後は法令遵守状況(社会保険料の納付や運行管理など)が更新時に問われるため、日頃の記録管理が重要です
7. よくある質問
Q. 許可までの期間は? 標準処理期間は3〜5か月(補正期間を除く)。法令試験の実施時期や補正により延びます。
Q. 最低車両台数は? 営業所ごとに5両以上です。軽自動車は対象外です。
Q. 個人事業主でも申請できますか? 可能です。法人と同じ要件を満たす必要があります。
Q. 法令試験に落ちたら? 1申請につき2回まで受験できますが、不合格が続くと却下や取下げとなります。
8. 当事務所のサポート
初期相談、事業計画・資金計画の作成支援、申請書類の作成・提出、許可後の各種届出、更新制を見据えた体制づくりの支援を行っています。
お問い合わせ:電話 096-385-9002(平日9:00〜18:00)/メール info@shionagaoffice.jp
