
熊本県の盛土規制法とは?規制区域・許可申請・届出・工事完了まで行政書士がわかりやすく解説
近年、土地の造成や盛土に関する規制が大きく変わっています。
「宅地を造成するわけではないから、許可は必要ないだろう」
「農地や山林への盛土なら宅地造成には当たらないのでは?」
「残土を一時的に置くだけなら問題ないのでは?」
このような判断は、現在では注意が必要です。
令和5年5月26日に「宅地造成及び特定盛土等規制法」、いわゆる盛土規制法が施行され、宅地・農地・森林など土地の用途にかかわらず、危険な盛土等を幅広く規制する制度へと変わりました。
熊本県では、令和7年(2025年)4月1日から盛土規制法の運用が開始され、県内の土地は原則として「宅地造成等工事規制区域」または「特定盛土等規制区域」等に指定されています。なお、熊本市内については熊本市が規制区域の指定・運用を行っています。
本記事では、熊本県で土地の造成、盛土、切土、土砂の仮置きなどを検討されている方に向けて、盛土規制法のポイントを行政書士法人塩永事務所がわかりやすく解説します。
1.盛土規制法で何が変わったのか?
従来の「宅地造成等規制法(旧宅造法)」では、主として宅地造成に伴う災害を防止することを目的として、市街地や市街地予定地などが規制の中心となっていました。
しかし、盛土による災害は、宅地だけで発生するものではありません。
農地、森林、資材置場、駐車場、太陽光発電施設など、さまざまな土地で盛土が行われる可能性があります。
そこで盛土規制法では、土地の利用目的にかかわらず、災害を引き起こすおそれのある盛土等を包括的に規制する仕組みに改められました。
特に重要なのが、次の2つの規制区域です。
① 宅地造成等工事規制区域
市街地や集落、その周辺など、盛土等によって災害が発生した場合に、人家等に被害を及ぼす可能性が大きい区域です。
旧宅造法の「宅地造成工事規制区域」に相当する区域ですが、規制対象は宅地造成だけではありません。
宅地造成、特定盛土等、土石の堆積などが規制対象となります。
② 特定盛土等規制区域
地形などの条件から、盛土等によって災害が発生した場合に、周辺の市街地や居住者などの生命・身体に危害を生じさせるおそれが特に大きい区域です。
こちらは、森林、農地、平地部なども含めて広く指定される可能性があります。
つまり、盛土規制法では、
「宅地造成ではないから盛土規制法の対象外」
とは限りません。
農地の造成、資材置場の造成、駐車場の造成、残土処分場、建設発生土の仮置きなども、一定規模を超えると規制対象となります。熊本県も、これらを具体的な対象例として案内しています。
2.熊本県の規制区域はどうなっている?
熊本県では、令和7年4月1日から盛土規制法に基づく規制区域の指定・運用が開始されています。
県が所管する区域については、県内全域が「宅地造成等工事規制区域」または「特定盛土等規制区域」に指定されています。
ただし、熊本市については熊本市が規制区域の指定・運用を行っています。
そのため、熊本県内で土地の造成等を計画する場合は、まず対象地がどちらの規制区域に該当するのかを確認することが重要です。
熊本県では、詳細な規制区域図や市町村単位の区域図、KMLデータなども公開されています。
3.どのような工事が盛土規制法の対象になる?
盛土規制法では、従来の宅地造成だけでなく、さまざまな盛土・切土等が規制対象となります。
例えば、次のようなケースです。
- 住宅建築のための宅地造成
- 駐車場を造成するための盛土・切土
- 資材置場を造成するための盛土・切土
- 太陽光発電施設の設置に伴う造成
- 農地の造成
- 山林等での盛土
- 残土処分場への盛土
- 建設発生土の仮置き
- ストックヤード等での土石の一時的な堆積
熊本県も、宅地造成だけでなく、太陽光発電・資材置場・駐車場の造成、農地の造成、残土処分場、自社所有地への盛土、建設発生土のストックヤード等を対象例として示しています。
4.「許可」が必要になる盛土・切土の規模
規制区域内で一定規模以上の盛土等を行う場合、事前に許可または届出が必要になります。
宅地造成等工事規制区域の場合
代表的な許可対象は、次のような工事です。
盛土・切土
- 盛土によって高さ1mを超える崖を生じるもの
- 切土によって高さ2mを超える崖を生じるもの
- 盛土と切土を同時に行い、高さ2mを超える崖を生じるもの
- 崖を生じない場合でも、盛土の高さが2mを超えるもの
- 盛土または切土を行う土地の面積が500㎡を超えるもの
また、一時的な土石の堆積についても、
- 堆積の高さが2mを超え、かつ面積が300㎡を超えるもの
- 堆積の面積が500㎡を超えるもの
などは許可の対象となります。
特定盛土等規制区域の場合
特定盛土等規制区域では、一定規模を超える工事について、規模に応じて「届出」または「許可」が必要になります。
比較的小規模なものについては届出の対象となり、さらに大規模なものについては許可が必要となる仕組みです。
例えば、特定盛土等規制区域では、盛土・切土について、
- 盛土で高さ1mを超える崖
- 切土で高さ2mを超える崖
- 盛土と切土を同時に行い高さ2mを超える崖
- 盛土の高さが2mを超えるもの
- 盛土・切土の面積が500㎡を超えるもの
などが届出対象となる一方、より大規模な工事では許可が必要となります。
なお、具体的な許可・届出の要否は、規制区域、工事内容、規模、土地の状況、熊本県・熊本市の取扱い等によって変わる場合があります。
「500㎡だから大丈夫」と面積だけで判断するのではなく、高さや崖の有無、盛土と切土の組み合わせなどを含めて確認することが重要です。
5.盛土規制法の許可を受けるための主な条件
盛土規制法の許可を受けるためには、単に申請書を提出すればよいというものではありません。
主なポイントとして、次のような事項が確認されます。
土地所有者等の同意
工事区域について、土地所有者等の同意が必要となる場合があります。
周辺住民への周知
工事の内容について、説明会の開催など、周辺地域の住民への周知が求められます。
安全性に関する技術基準への適合
盛土の安定性、擁壁、排水施設、崖面の保護など、災害を防止するための技術的基準に適合する必要があります。
工事主の資力・信用
工事を安全に実施するために必要な資力や信用があることも確認されます。
施工者の能力
工事を適切に施工できる能力を有していることも重要です。
つまり、盛土規制法の許可申請では、書類を作成して提出するだけでなく、土地・造成計画・安全対策・関係者の同意・周辺住民への周知などを総合的に整理する必要があります。
6.許可を取ったら終わり、ではありません
盛土規制法では、許可取得後の工事についても厳格な管理が行われます。
代表的なものが、
- 標識の掲示
- 定期報告
- 中間検査
- 完了検査
です。
特に一定規模以上の工事では、施工状況について3か月ごとの定期報告が必要となる場合があります。
また、工事の途中でなければ確認できない工程については中間検査が行われ、工事完了後には完了検査を受けることになります。
盛土規制法は、
「許可を取ること」だけを目的とした制度ではなく、「安全な盛土等を施工し、その状態を維持すること」までを含めた制度
と考えることが重要です。
7.盛土を行った土地の所有者にも責任があります
盛土規制法では、盛土等が行われた土地について、土地所有者等が安全な状態を維持する責務を負うことが明確化されています。
さらに、災害防止のため必要がある場合には、土地所有者だけでなく、実際に盛土等を行った原因行為者に対しても、是正措置等の命令が行われる場合があります。
したがって、
「自分で盛土したわけではないから関係ない」
「以前の所有者が造成した土地だから知らない」
という考え方では、問題が解決しない可能性があります。
土地を購入する際にも、過去の盛土や造成の状況について確認することが重要です。
8.無許可・命令違反には重い罰則があります
盛土規制法では、無許可で盛土等を行った場合や、安全基準に違反した場合、是正命令等に従わない場合などについて、罰則が設けられています。
国土交通省によれば、最大で3年以下の懲役、1,000万円以下の罰金、法人については3億円以下の罰金という重い罰則があります。
そのため、工事を始めてから「許可が必要だった」と判明することは避けなければなりません。
造成・盛土を計画した段階で、事前に許可・届出の必要性を確認することが大切です。
9.盛土規制法の許可申請から工事完了までの流れ
一般的な流れは次のとおりです。
STEP1 工事計画・規制区域の確認
まず、対象土地が「宅地造成等工事規制区域」なのか「特定盛土等規制区域」なのかを確認します。
そのうえで、盛土・切土の高さ、面積、崖の有無、土石の堆積の規模などを確認し、許可または届出が必要かを判断します。
STEP2 許可申請前の準備
必要に応じて、
- 土地所有者等の同意
- 周辺住民への事前周知
- 設計・造成計画の確認
- 排水・擁壁等の安全対策
- 必要書類の作成
などを行います。
STEP3 許可申請・許可
許可が必要な場合、所管行政庁へ申請します。
技術的基準等への適合が確認されたうえで許可を受けます。
STEP4 工事着手
工事現場には必要な標識を掲示します。
また、工事の規模等に応じて、定期報告や中間検査を受けます。
STEP5 工事完了
工事が完了したら、完了検査を受けます。
安全基準に適合していることが確認されることにより、手続きが完了します。
10.熊本で盛土・造成を行うなら、まず「規制区域の確認」を
盛土規制法について最も重要なのは、工事に着手する前に確認することです。
特に熊本県では、令和7年4月1日から盛土規制法の運用が始まっています。これまで「宅地造成ではないから大丈夫」と考えていた農地、山林、資材置場、駐車場などについても、盛土等の規模によっては許可・届出が必要になる可能性があります。
また、建築物の確認申請を行う場合にも、盛土規制法への適合性が確認されることがあります。熊本県では、令和7年4月1日以降の建築確認申請について、盛土規制法関係の自己申告シートを添付する取扱いも示されています。
「この程度の盛土なら許可はいらないだろう」と自己判断せず、計画段階で専門家に相談することをおすすめします。
熊本の盛土規制法に関するご相談は行政書士法人塩永事務所へ
盛土規制法の許可・届出は、工事の内容や土地の規模、規制区域によって必要となる手続きが異なります。
行政書士法人塩永事務所では、熊本県内で盛土・造成等を検討されている事業者様、土地所有者様からのご相談について、許可・届出の必要性の確認、行政庁との事前相談、申請書類の作成・提出など、行政手続きのサポートを行っています。
また、盛土・切土の安全性や構造計算、設計などについては、必要に応じて土地家屋調査士、測量士、建築士、土木・造成関係の専門家等との連携も重要になります。
「自分の土地は盛土規制法の対象なのか?」
「許可と届出のどちらが必要なのか?」
「農地や山林に盛土をしたいが問題ないか?」
「駐車場や資材置場を造成したい」
「残土・建設発生土を一時的に置きたい」
「許可申請に必要な書類がわからない」
このような場合は、工事に着手する前にご相談ください。
盛土規制法は、着工後ではなく「計画段階」での確認が重要です。
熊本県・熊本市で盛土、切土、造成、土石の堆積等をお考えの方は、行政書士法人塩永事務所までお気軽にご相談ください。
