
行政書士法人 塩永事務所 — 許認可申請 / 酒類製造免許
リキュール製造免許の取得手続きガイド
——申請要件・必要書類・流れを完全解説——
担当:代表 行政書士 塩永 健太郎 熊本市中央区水前寺 2026年3月更新
クラフトリキュール、梅酒、果実リキュールなどを商業目的で製造・販売するには、酒税法第7条に基づく「リキュール製造免許」(酒類製造免許の一品目)が必要です。 無免許で酒類を製造した場合は酒税法違反となり、10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
本ガイドでは、リキュール製造免許の法的な位置づけ・取得要件・必要書類・申請の流れを、実務の観点から体系的に解説いたします。
1 リキュール製造免許とは
1-1 酒税法上の定義
混成酒類の区分:
- 合成清酒
- みりん
- 甘味果実酒
- リキュール
- 粉末酒
- 雑酒
リキュールは、酒税法第3条および関係政令において、概ね次のように定義されています。
- 酒類と糖類その他の物品(果実・草根木皮・香味料等を含む)を原料とした酒類であること
- 政令で定める方法により算出したエキス分が2度以上であること
- 他の品目(甘味果実酒・みりん等)に該当しないもの
一般的な梅酒・杏酒・果実系リキュール・ハーブ系リキュールなどがリキュールに該当します。 一方、ブドウを主原料とするワイン等は「果実酒」品目であり、原料・製法により品目が変わるため、事前の区分確認が重要です。
1-2 免許は「品目ごと」「製造場ごと」
酒類製造免許は、次の単位で付与されます。
- 品目ごと(例:リキュール、果実酒、ビール 等)
- 製造場ごと(製造場の所在地単位)
そのため、同一法人であっても、
- 別の品目を製造する場合
- 別の場所に製造場を設ける場合
には、それぞれについて免許が必要となります。
製造場内での直売: 製造場で自ら製造した酒類を、その製造場内で直接消費者に販売する場合は、原則として別途の酒類販売業免許は不要です。
製造場外での販売: 卸売・小売・通信販売等、製造場外で販売する場合には、
- 一般酒類小売業免許
- 通信販売酒類小売業免許 など、別途販売免許が必要となります。
1-3 主要基準(2026年時点)
- 最低製造数量: 年間 6 kL(リキュール・甘味果実酒等)
- 登録免許税: 15万円(品目1件・製造場1箇所あたり)
- 標準処理期間: 約4ヶ月(書類受付〜免許通知書交付)
- 申請窓口: 製造場所在地を管轄する税務署
- 根拠法令: 酒税法第7条(製造免許)、第10条(欠格事由)
1-4 清酒・ビールとの比較
- 清酒・ビール: 最低製造数量 原則 60 kL/年
- リキュール: 最低製造数量 6 kL/年
リキュールは清酒・ビールと比べて最低製造数量が小さく、クラフト事業者や新規参入者にとって比較的取り組みやすい品目です。 ただし、申請後1年間に6 kL以上を製造する具体的かつ合理的な根拠(製造計画書)が示せない場合、免許は付与されません。
1-5 構造改革特別区域の特例
構造改革特別区域(いわゆる「特区」)において、地域の特産物(農産物・水産物等)を原料として酒類を製造する場合、一定の要件のもとで、
- リキュールの最低製造数量が 1 kL/年 に緩和される制度
が設けられています。
ただし、
- 特区の指定状況
- 対象となる原料・事業者の要件
- 自治体ごとの運用
など、個別の確認が必要となりますので、計画地が特区に該当する可能性がある場合は、自治体および税務署への事前確認が不可欠です。
2 免許取得の要件と欠格事由(酒税法第10条)
酒税法第10条は、一定の要件に該当する場合、税務署長は酒類製造免許を付与しないことができると定めています。 申請前に、以下の要件を満たしているかを慎重に確認する必要があります。
2-1 人的要件
次のいずれかに該当する場合は、免許取得ができません。
- 過去に酒類製造・販売業免許を取り消されてから3年未満
- 禁錮以上の刑の執行を終わった日から3年未満
- 酒税法・国税犯則法等の違反により罰金刑を受けてから3年未満
- 未成年者(その法定代理人が欠格事由に該当する場合を含む)
- 成年被後見人・被保佐人
法人の場合は、役員全員が審査対象となります。
2-2 場所的要件
製造場が次のような場合は、不適格と判断されます。
- 酒場・料理店等と同一の場所である場合
- 建築基準法・都市計画法・消防法・食品衛生法等の関係法令に違反している建物である場合
- 用途地域が製造業に適さない地域(住居系地域等)である場合
用途地域や建築確認、消防設備の要件は、物件選定の初期段階で確認すべき重要事項です。
2-3 経営基礎要件
次のような場合は、経営基礎要件を満たさないと判断される可能性があります。
- 国税または地方税の滞納がある場合
- 銀行取引停止処分を受けてから1年未満の場合
- 繰越損失が資本等の額を上回っている場合
- 酒類製造に必要な資金・施設・設備が不足している場合
設立直後の法人の場合、決算実績がないため、
- 事業計画書
- 資金調達計画
- 自己資金の状況
などで、経営基盤の妥当性を丁寧に説明することが求められます。
2-4 需給調整要件
酒税の保全および酒類の需給均衡を維持する観点から、免許を付与することが適当でないと判断される場合です。 リキュールは、現状では比較的規制が緩やかな品目とされており、需給調整のみを理由とする不許可は多くないとされていますが、制度上は審査対象となります。
2-5 技術・設備要件
- 製造責任者が、リキュール製造に必要な知識・経験を有していること
- 製造量に見合った設備(浸漬槽・濾過設備・充填設備・貯蔵タンク等)が整備されていること
- 設備図面・工程図・製造計画書の内容に整合性があること
製造責任者の経歴書や、設備一覧・工程図は、審査において特に重視される書類です。
2-6 重要な特例(酒税法第7条第2項)
すでに他の酒類製造免許(例:蒸留酒等)を受けている者が、 同一製造場において自己が製造した蒸留酒等を原料としてリキュールを製造する場合、
- 法定最低製造数量(6 kL/年)が適用されない特例
が認められています。 この特例を活用することで、少量からの試験製造や新商品の開発がしやすくなるケースがあります。
3 申請の流れ(全7ステップ)
① 事前準備・要件確認
- 製造品目: どのようなリキュール(梅酒、果実系、ハーブ系等)を製造するか
- 製造場: 用途地域・建築基準・消防法・食品衛生法上の適合性
- 製造規模: 年間製造数量(6 kL以上の根拠)
- 設備計画: 製造設備・貯蔵設備・品質管理設備
- 資金計画・事業計画: 投資額・資金調達方法・収支見通し
この段階での整理が不十分だと、後の審査で補正が多発する原因となります。
② 税務署(酒類指導官)への事前相談
申請書提出前に、製造場を管轄する税務署の酒類指導官に事前相談を行うことが強く推奨されます。
- 製造方法・設備内容
- 年間製造見込数量の妥当性
- 必要書類・スケジュール感
などについて事前に確認することで、申請後の差し戻し・大幅な補正を防ぐことができます。
③ 保健所での食品衛生法手続き
酒税法上の製造免許とは別に、食品衛生法に基づく食品営業許可(酒類製造業等)が必要です。
- 施設完成後に保健所へ申請
- 現地検査を受検
- 許可証の交付
その後、許可証の写しを酒類製造免許申請書類に添付します。
④ 必要書類の収集・申請書作成
- 酒類製造免許申請書(所定様式)
- 次葉1〜6(品目・設備・工程・販売計画・技術者経歴等)
- 製造計画書(年間数量・仕込計画・原料使用量等)
- 品質管理計画書
- 製造場の平面図・配置図・工程図
国税庁所定様式に限らず、同等の内容を満たす独自様式での提出が認められる場合もありますが、実務上は所定様式に準拠することが一般的です。
⑤ 所轄税務署へ申請書提出
- 提出先:製造場所在地を管轄する税務署(酒類指導担当)
- 提出方法:窓口持参(平日8:30〜17:00)、郵送、時間外収受箱 等
- 受理後:受付印の押された控えが返却されます。
⑥ 書類審査・現地調査
- 書類審査: 計画の実現可能性・法令適合性・整合性の確認
- 現地調査: 製造場の構造・設備・保管状況等の確認
- 補正・追加資料: 必要に応じて説明資料や補正書類の提出を求められます
標準処理期間は約4ヶ月ですが、補正が多い場合は6ヶ月以上かかることもあります。
⑦ 免許通知書交付・登録免許税の納付
- 審査に通過すると、酒類製造免許通知書が交付されます。
- 品目1件あたり登録免許税15万円を納付することで免許が確定します。
- その後、製造開始届を提出し、実際の製造を開始します。
4 必要書類一覧(主なもの)
- 酒類製造免許申請書(所定様式)
- 次葉1〜6(品目・設備・工程・販売計画・技術者経歴 等)
- 製造計画書(数量・原料・工程)
- 品質管理計画書
- 製造場の平面図・配置図・工程図
- 土地・建物の登記事項証明書
- 賃貸借契約書(賃借の場合)
- 住民票(個人/役員全員)
- 本籍地市区町村発行の身分証明書
- 法人登記事項証明書・定款(法人)
- 決算書3期分(法人)/確定申告書(個人)
- 事業資金の証明(通帳写し等)
- 国税・地方税の納税証明書(一般に「その3の3」)
- 食品衛生法上の許可証の写し
- 水質検査成績書(井戸水使用時)
- 酒税担保提供承諾書(任意様式)
重要ポイント:
- 身分証明書は「本籍地の市区町村が発行する身分証明書」であり、運転免許証ではありません。
- 製造方法は「1仕込あたりの配合・工程」まで具体的に記載することが求められます。
- 次葉については、国税庁所定様式と同等の内容が網羅されていれば、独自様式も認められる場合があります。
5 免許取得後の継続的義務
- 製造開始届の提出: 製造開始前に税務署へ届出
- 酒税の申告・納付: 移出(出荷)した月の翌月末日までに申告・納付
- 製造数量等の報告: 毎月または年度単位での報告書提出、帳簿管理の適正化
- 変更・廃止の届出: 製造場・設備・責任者・品目等に変更が生じた場合
- 酒類の表示義務: 品目・アルコール分・内容量・製造者名・製造場所在地等の表示(酒類業組合法・食品表示法・景品表示法との整合性)
6 よくあるご質問(Q&A)
Q. 自宅を製造場にできますか? A. 可能なケースもありますが、用途地域・建物構造・消防法・食品衛生法の基準をすべて満たす必要があります。住居系地域では製造業が制限される場合が多く、製造スペースと生活スペースの明確な区分も求められます。
Q. 会社設立と同時に免許申請できますか? A. 可能です。ただし、経営基礎要件(繰越損失が資本等を上回らないこと等)の説明が必要です。決算書がないため、事業計画書・資金証明等で補完することになります。
Q. リキュールと果実酒は同じ免許ですか? A. 異なります。原料・製法により品目が変わるため、両方を製造する場合は品目ごとに免許が必要です(登録免許税もそれぞれ15万円)。事前に税務署の酒類指導官と品目区分を確認することが重要です。
Q. なぜ取得まで約4ヶ月かかるのですか? A. 書類審査・現地調査・国税局への照会・補正対応など、複数の工程を経るためです。書類の精度が高く、補正が少ないほど、処理期間が短縮される傾向にあります。
行政書士法人 塩永事務所 事務所情報
行政書士法人 塩永事務所 代表 行政書士 塩永 健太郎
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リキュール製造免許の申請は、 要件確認・書類作成・税務署対応・保健所手続き・補正対応まで、多くの専門的な工程を伴います。 当事務所では、初期相談から免許取得後の運用まで一貫してサポートしており、熊本県内はもちろん、全国からのご相談にも対応しております。
