
令和6年度処遇改善加算の改定と対応策
1. 処遇改善加算の一本化と加算率の引き上げ
令和6年度の報酬改定により、障害福祉事業所の処遇改善加算は従来の3種類(処遇/特定/ベア)から一本化され、加算率が引き上げられました。この変更により、福祉・介護職員の待遇改善がより進むことが期待されます。
2. 処遇改善加算の基本ルール
- 受領額より1円でも多く職員へ賃金として還元する必要あり
- 福祉・介護職員以外にも一部職員への還元が可能
- 派遣職員・出向者・業務委託職員にも還元可
- 代表役員には分配不可
- 労働対価以外の名目(例:住宅手当)での還元不可
- 12ヶ月以内に賃金改善を実施
- 賃金改善の最終期限は入金月の翌月(翌年6月末)まで
- 賃金改善額が加算額を下回った場合、加算額の返還義務あり
- 追加的な一時金・賞与等の支給により返還を回避可能
3. 加算区分と加算率
加算種類 | 賃金体系整備・研修 | 月額賃金改善 | 資格・勤務年数昇給 | 年額440万以上(1人) | 介護福祉士配置 |
---|---|---|---|---|---|
新加算I | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
新加算II | ○ | ○ | ○ | ○ | ー |
新加算III | ○ | ○ | ○ | ー | ー |
新加算IV | ○ | ○ | ー | ー | ー |
4. 実地指導に向けた対応ポイント
- 現在の賃金改善状況を確認し、新制度への適応を計画的に実施
- 受領額の管理と適正な支給方法を徹底
- IV以上の加算を受ける場合、月次賃金改善の管理を強化
5. 賃金改善の具体的な方法
1. 現行維持の場合:月次賃金改善の工夫
- IV加算額の半分以上を「基本給」または「毎月の手当」で改善
- サービス提供月の翌々月に改善実施
- 手当の新設により改善額を明確化
2. 上位加算を狙う場合:キャリアパス要件の整理
- 経験・資格・その他仕組みによる昇給制度の整備
- 「〇〇円〜〇〇円」と昇給額に幅を持たせる
- 法人独自の成績評価基準を導入
- 昇給時期の明確化と労基への届出
3. ベア加算未取得の場合:月次賃金改善の管理
- 前年度実績に基づく見込み額設定
- 3分の2を超える賃金改善を徹底
- 計画書では改善額を「〇〇円〜〇〇円」と幅を持たせる
6. 令和6年度の特別措置
- 前倒し賃上げ:令和7年度分の一部を令和6年度に繰り越し可能
- 新加算Vの選択肢:現行加算率を維持しつつ報酬改定による加算率の引き上げ適用
- 猶予措置:
- キャリアパス要件は令和6年度中の対応で加算算定可
- IV加算額の半額以上の月次改善は令和6年度は未実施でも猶予
- 職場環境要件は令和7年度から該当項目が増加
7. まとめと今後の対応
令和6年度の処遇改善加算制度の改定により、加算額の上昇と同時に月次賃金改善の義務が強化されました。事業所の賃金体系の見直しや管理方法の適正化が求められます。
- 組織体制の見直しと賃金改善の適正化が重要
- 社会保障費の増額分も考慮し、月次改善計画を策定
- 制度変更を活かし、業務効率化と組織の強化を推進
令和6年度の改定に適応し、適正な運用を行うことで、職員の処遇改善と組織の持続的成長を実現しましょう。