
外国人(外国法人)による会社設立完全ガイド
日本銀行への届出・必要書類・申請手続きを徹底解説
【行政書士法人塩永事務所監修】
はじめに
日本市場への進出を目指す海外起業家や法人の中には、「日本で新しいビジネスを展開したい」「日本で会社を設立し、経営を行いたい」と考える方も少なくありません。
外国人や外国法人であっても、一定の条件を満たせば日本人と同様の手続きで会社を設立できます。ただし、必要書類や在留資格、資本金の払込み方法などには外国人特有の条件があり、日本人のケースよりも手続きの難易度は高めです。
本記事では、行政書士法人塩永事務所が、外国人(外国法人)による日本法人設立の流れ、日本銀行への届出、必要書類、在留資格取得の手順を実務経験に基づいて詳しく解説します。
当事務所は熊本を拠点に全国対応で、会社設立から経営・管理ビザまでワンストップでサポートしています。
ご相談は無料です。まずはお電話(096-385-9002)またはメール(info@shionagaoffice.jp)へお気軽にご連絡ください。
1. 外国人(外国法人)は日本で会社を設立できるか
外国人も、日本人と同様に日本で会社を設立することが可能です。違法でない限り、事業内容にも原則制限はありません。
ただし、設立後に経営活動を行うには、経営・管理などの在留資格が必要です。
設立時の法的手続きにおいては、以下のような日本人とは異なる法的要件が発生します。
- 外国人が代表取締役・出資者である場合の資本金払込み方法
- 日本銀行経由での届出義務
- サイン証明書などの特別書類の準備
これらの条件をしっかりと理解したうえで手続きを進めていけば、スムーズに会社を設立できます。
2. 株式会社設立の2つの方法
株式会社を設立するには、以下の2つの方法があります。
| 項目 | 発起設立 | 募集設立 |
|---|---|---|
| 概要 | 発起人自身が全株式を引き受ける | 発起人以外からも出資を募る |
| 発起人数 | 1人でも可能 | 外部投資家を募集 |
| 特徴 | 手続きが簡便・小規模会社向き | 手続きが複雑・大規模資本向き |
| 決定方法 | 発起人の協議で決定 | 創立総会で決定 |
| 手続き | ・定款の作成<br>・検査役の選任・調査<br>・出資<br>・設立時役員等の選任<br>・設立手続の調査<br>・設立登記 | ・定款の作成<br>・検査役の選任・調査<br>・募集、出資<br>・創立総会の開催<br>・設立登記 |
多くの外国人・外国法人は、手続きが簡便な発起設立を選択します。
3. 代表取締役が非居住者でも会社設立は可能
制度の変更
以前は「代表取締役の1人が日本在住であること」が条件でしたが、2015年3月16日以降は、代表者や出資者が非居住者でも法人設立が可能になりました。
ただし、外国為替及び外国貿易法(外為法)の規定により、日本銀行経由で財務大臣および事業所管大臣への届出義務があります。
これは「国内直接投資」として扱われ、日本の安全保障や公共秩序を脅かす恐れがないかを審査するための制度です。
非居住者が法人設立する際の注意点
【国籍や事業内容によって、事前に日本銀行への届出が必要となるケースがある】
基本的に届出は登記申請後に行いますが、国籍や事業の性質によっては事前届出を求められる場合があります。会社設立のスケジュールにも影響するため、登記申請前にあらかじめ確認しておきましょう。
【外国銀行の海外支店の口座では資本金の払込みはできない】
発起人の銀行口座が国外にある場合、以下の3つの方法で資本金の払込みが可能になります。
- 日本で銀行口座を開設する
- 協力者の国内口座を使う
- 外国にある内国銀行の海外支店を利用する
届出や手続きなどは複雑な内容も多いため、行政書士などの専門家に相談しながら進めていくと安心です。
4. 日本銀行経由での届出と外為法上の要件
国内直接投資としての扱い
非居住者や外国法人が日本法人を設立する場合、外為法上の**「国内直接投資」**に該当します。
「国内直接投資」とは:
- 海外から日本への直接投資を指す
- 日本経済の成長を促すため、高度な人材や技術、資金を呼び込むことを目的としている
- 日本の安全保障を脅かす恐れがないかを審査するため、届出が義務付けられている
届出の種類
以下の2種類の届出が必要となります。
- 事前届出:国籍・事業内容により設立前に求められるケースあり
- 事後報告:登記完了日から45日以内に提出(一般的なケース)
提出先
日本銀行(経由して財務大臣・事業所管大臣へ送付)
届出書類
「株式、持分、議決権若しくは議決権行使等権限の取得又は株式への一任運用に関する届出書」:3通
罰則規定
外為法では実効性を確保するため、厳しい罰則規定を設けています。
届出義務を怠った場合や虚偽報告を行った場合:
- 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する
- 6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する
なお、事前届出をしなかった場合には、**「会社の設立のために取得した株式の全部、または一部の処分などを命じられる」**こともあるため、十分注意しましょう。
5. 外国人(外国法人)による会社設立の流れ
(1) 基本事項の決定
まずは、会社の基本事項を決めます。
- 商号(会社名)
- 本店所在地
- 事業目的
- 資本金額
- 発起人・役員構成
同じ所在地に同一の商号がないことを確認しましょう。資本金や本店所在地は、原則自由に決められます。
(2) 定款の作成と認証
定款(会社の規則やルール)を作成し、公証人役場で認証を受けます。
定款の必須記載事項(記載がない場合、定款は無効):
- 会社名(商号)
- 本店所在地
- 事業目的
- 資本金
- 発起人の氏名・住所
- 発行可能株式数
公証費用:
- 認証手数料:約3〜5万円(資本金額により変動)
- 印紙代:4万円(電子定款の場合は不要)
- 謄本手数料:約2,000円
定款は電子定款を作成し、オンラインで認証申請を行うことも可能です。この場合、収入印紙代4万円が不要となります。
(3) 実印の作成
法務局で設立登記の申請をする際には、会社の実印が必要となります。
作成する印鑑:
- 代表取締役印(法人代表印)
- 角印
- 銀行印
会社の実印は専門業者に依頼して作成します。重要な書類に押印することが多いため、管理には十分注意しましょう。
(4) 資本金の払込み
発起人が定めた銀行口座に資本金を振り込みます。
非居住者の場合の払込み方法:
- 日本国内の銀行口座を開設して払込む
- 協力者の国内口座を利用する
- 外国にある内国銀行の海外支店を利用する
注意:外国銀行の海外支店の口座では資本金の払込みはできません。
資本金を証明する書類として、設立登記の申請時に以下が必要となるため、大切に保管しておきましょう。
- 通帳の表紙
- 通帳の1ページ目(個人情報欄)
- 資本金の払込みが記載されている欄
資本金があまりにも少額の場合、銀行や取引先からの信用を得られず、会社経営に影響を及ぼす可能性があるため要注意です。
(5) 設立登記申請
必要書類を揃えて、本店所在地を管轄する法務局に設立登記の申請を行います。
不備がなければ約7〜10日で登記が完了し、会社が成立します。
なお、登記申請は専門の行政書士などに代行依頼することも可能です。
(6) 関係機関への届出
登記完了後、以下の関係機関へそれぞれ法人設立届出書を提出します。
| 届出先 | 提出書類 |
|---|---|
| 税務署 | ・法人設立届出書<br>・青色申告の承認申請書<br>・給与支払事務所の開設届出書<br>・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 |
| 都道府県税事務所・市区町村 | ・法人設立届出書 |
| 年金事務所 | ・健康保険・厚生年金保険の新規適用届<br>・被保険者資格取得届<br>・健康保険・国民年金の被扶養者届 |
| 労働基準監督署 | ・労働保険の適用事業報告書<br>・保険関係成立届<br>・概算保険料申告書 |
| ハローワーク | ・雇用保険の適用事業所設置届<br>・被保険者資格取得届 |
(7) 許認可の取得
事業内容によっては、各種許可が必要です。
許認可が必要な主な業種:
- 旅行業
- 飲食業
- 古物商
- 建設業
- 人材派遣業
- など
認可を取得せずに事業を開始すると法律違反になってしまうため、速やかに手続きを行いましょう。
6. 外国人経営者に必要な在留資格
外国人が日本で会社を経営する場合、「経営・管理」ビザもしくは永住・定住などの在留資格が必要です。
取得できる主な在留資格
- **【居住資格】**永住者、定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等
- **【活動資格】**経営・管理、高度専門職(1号ハ・2号)
一般的には、在留資格**「経営・管理」**を取得して会社の経営を行います。
なお、**上記の在留資格以外で経営業務を行い、報酬を受け取った場合は「不法就労」**となります。
経営・管理ビザの主要要件
【日本国内に独立した事業所があること】
- 自宅とは明確に独立していること
- 法人名義で契約していること
- 賃貸借契約書にて使用目的を「事業用」としていること
- 事業所として機能するだけの物的・人的設備が確保されていること
- バーチャルオフィス・マンスリーマンションは不可
【常勤職員2名以上、または資本金500万円以上】
- 資本金500万円以上を用意する場合、「誰がどのように拠出したのか」を証明する必要がある
- パート、派遣、請負社員は常勤職員としてカウントされない
【事業の適正性・安定性・継続性を示せること】
- 具体的な内容を示した事業計画書の作成・提出が必須
- 収支計画、市場分析、事業の実現可能性を明確に示す必要がある
7. 登記・ビザ申請に必要な書類
登記申請に必要な書類
- 登記申請書(会社の基本事項を記載、外国語の場合は日本語訳を添付)
- 定款
- 資本金払込証明書
- 就任承諾書
- 印鑑証明書またはサイン証明書(発行3ヶ月以内)
- 会社実印・印鑑届出書
※サイン証明書について:
- 印鑑証明書を持たない外国人は、サイン証明書を用意
- 本国の役所・公証役場・在日大使館等で取得可能
- 登記申請時に使用できるのは**「発行から3ヶ月以内」**
経営・管理ビザ申請に必要な書類
【本人の書類】
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 証明写真(縦4cm×横3cm)
- 返信用封筒
- パスポートのコピー
- 在留カード(日本にいる場合)
- 大学の卒業証明書(任意・審査で有利)
- 日本語能力試験合格証(任意・審査で有利)
【会社の書類】
- 登記事項証明書
- 事業計画書
- 損益計画表
- 定款のコピー
- 年間投資額説明書
- 株主名簿
- 役員報酬に関する株主総会議事録
- 会社名義の銀行通帳のコピー
- 設立時取締役選任及び本店所在地決議書のコピー
- 就任承諾書のコピー
- 会社概要書
- 会社の写真(ビル外観、オフィス内、フロア別案内板など)
- オフィスの建物賃貸借契約書のコピー
- 給与支払事務所等の開設届出書のコピー(税務署受付印あり)
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書のコピー(税務署受付印あり)
- 法人設立届出書(税務署受付印あり)
- 青色申告の承認申請書(税務署受付印あり)
- 法人(設立時)の事業概況書(税務署受付印あり)
【飲食店を開業する場合】
- 飲食店営業許可のコピー(全ページ)
- 飲食店のメニューのコピー(全部)
どんな書類が必要なのかは、事業内容や状況によって異なり、追加で書類が必要となるケースもあります。
8. 設立費用の目安
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款認証印紙代 | 4万円(電子定款なら不要) | 不要 |
| 認証手数料 | 3〜5万円(資本金額により変動) | 不要 |
| 登録免許税 | 15万円〜または資本金×0.7%(高い方) | 6万円〜または資本金×0.7%(高い方) |
| 謄本手数料 | 約2,000円 | 不要 |
| 法定費用概算 | 約25万円〜 | 約10万円〜 |
これらの会社設立費用に加えて、以下も必要です。
- 資本金(経営・管理ビザ取得には500万円以上推奨)
- 事業を開始する環境を整えるための費用(オフィス賃貸、設備購入など)
専門家に依頼する場合、10〜15万円程度の報酬が一般的です。
9. 日本法人設立のメリット
日本企業・金融機関からの信用力が高まる
海外法人が日本に進出する場合、大きく分けて3つのパターンがあります。
【駐在所】
- 会社ではないため、登記や納税申告などが不要
- 単体での契約など、ビジネス活動が一切できない
【支店】
- 設立コストの負担が軽い
- 社会的な信頼性が弱い
【日本法人】
- 設立登記の費用や手続きが高額
- 日本での本格的な事業活動が可能
- 日本国内の取引企業から高い信頼を得られる
日本法人を設立した場合、複雑な条件や手続きを経て設立したことで、日本でのビジネスの実現性や信頼性が高く評価されます。他の形態と比べると、金融機関からの融資も受けやすくなります。
倒産時も親会社は原則として負債を負わない
日本法人が倒産した場合、親会社は負債を原則負いません。
「海外にある本社とある程度切り離して、日本で本格的に事業を行いたい」「経営に関する迅速な判断や事業の範囲を拡大したい」という場合には、日本国内で経営に関する意思決定ができるため、日本子会社を設立するメリットといえます。
成長分野での市場機会が豊富
日本のGDP(国内総生産)は世界第3位で、さらなる成長が見込まれます。
市場機会が豊富な分野:
- 医薬品業界:少子高齢化社会が加速する日本では、今後も需要が高い
- IT・テクノロジー分野:DX推進で需要拡大
- 観光業:インバウンド需要の回復
- 未上陸の商品やサービス:日本人の好みに合った新しいビジネスを開拓するチャンス
インフラ・人材基盤が整備されており、安定した経営環境が得られる
日本はインフラがしっかりと整備されているため、充実した環境でビジネスを展開できます。
さらに、日本人をスタッフとして採用するケースが一般的ですが、まじめで仕事熱心な国民性から、早期の段階で即戦力として期待できる点も魅力的です。
10. 設立時の注意点と専門家活用
主な注意点
【外為法届出を怠ると設立後に行政処分の可能性あり】
届出義務を怠った場合、厳しい罰則が科されるだけでなく、株式の処分を命じられることもあります。必ず期限内(登記完了日から45日以内)に届出を行いましょう。
【外国口座からの資本金払込みは不可】
外国銀行の海外支店の口座では資本金の払込みができません。必ず日本国内の銀行口座、協力者の国内口座、または外国にある内国銀行の海外支店を利用してください。
【経営・管理ビザは審査基準が厳格】
事業計画書の不備による不許可も多発しています。以下の点に特に注意が必要です。
- 事業の実現可能性を具体的に示す
- 収支計画の整合性を確保する
- 事業所の独立性を証明する
- 資本金の出所を明確にする
【許認可が必要な業種を未申請のまま開業すると罰則対象】
事業内容によっては各種許可が必要です。認可を取得せずに事業を開始すると法律違反になるため、速やかに手続きを行いましょう。
専門家活用のメリット
行政書士法人塩永事務所では、会社設立手続きからビザ申請まで一括対応。
当事務所のサポート内容:
- 会社設立手続きの代行
- 外為法届出の作成・提出
- 英文書類の和訳
- 事業計画書作成支援
- 経営・管理ビザ申請代行
- 許認可申請サポート
専門家に依頼するメリット:
【難しい案件の経験が豊富】
- ビザ申請の経験が豊富なため、不許可のリスクを回避しやすい
- 万が一の場合も、アフターフォローが受けられる
【最新情報に詳しい】
- 書類集めや申請までの流れなど、最新情報に詳しいため安心してお任せできる
【無駄な時間や労力を省ける】
- 膨大な書類集めや届出に出向く時間など、無駄な時間や精神的ストレスを避け、スムーズに手続きを進められる
個人でビザ取得が難しいと感じた場合は、ビザ申請経験が豊富な行政書士に相談するのがおすすめです。
まとめ
外国人(外国法人)による日本法人設立は、以下のような多岐にわたる専門手続きが必要です。
- 日本銀行への届出(登記完了日から45日以内)
- 定款認証・登記申請
- 在留資格の取得(経営・管理ビザなど)
- 関係機関への届出(税務署、年金事務所など)
- 許認可の取得(必要に応じて)
一つでも不備があれば、登記不受理やビザ不許可のリスクがあります。
複雑な制度を確実に進めるためには、経験豊富な行政書士のサポートが最も効果的です。
行政書士法人塩永事務所へのご相談
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