
遺産分割協議書の作成と財産の名義変更手続き完全ガイド **行政書士法人塩永事務所** ## はじめに 相続が発生した際、遺産分割協議書の作成と各種財産の名義変更手続きは、相続人にとって避けて通れない重要な手続きです。しかし、これらの手続きは複雑で専門的な知識が必要となります。適切な手続きを行わないと、後々のトラブルの原因となったり、不利益を被る可能性があります。 行政書士法人塩永事務所では、豊富な実績と専門知識を活かして、遺産分割協議書の作成から各種財産の名義変更まで、相続手続きを総合的にサポートいたします。 ## 1. 遺産分割協議書の基礎知識 ### 遺産分割協議書とは 遺産分割協議書は、相続人全員が遺産の分割方法について合意した内容を書面化したものです。相続手続きの中核となる重要な書類であり、各種名義変更手続きの際に必要となります。 ### 遺産分割協議書が必要な場面 1. **不動産の相続登記** 2. **銀行預金の解約・名義変更** 3. **株式・有価証券の名義変更** 4. **自動車の名義変更** 5. **生命保険金の請求** 6. **相続税の申告** ### 遺産分割協議書の法的効力 – 相続人全員の署名・押印により成立 – 相続人間の合意を明確化 – 第三者への対抗要件 – 後日の紛争防止 ## 2. 遺産分割協議書作成の前提条件 ### 必要な準備作業 1. **相続人の確定** – 戸籍謄本の取得 – 相続関係説明図の作成 – 相続人の住民票の取得 2. **相続財産の調査・確定** – 不動産の調査(登記事項証明書、固定資産評価証明書) – 預貯金の調査(残高証明書、取引履歴) – 有価証券の調査(残高報告書) – 負債の調査(借入金、未払金等) – 生命保険の調査 3. **相続放棄・限定承認の検討** – 相続開始から3か月以内の判断 – 家庭裁判所への申述 ### 遺産分割の方法 1. **現物分割** – 財産をそのまま分ける方法 – 最も一般的な方法 2. **代償分割** – 特定の相続人が財産を取得し、他の相続人に金銭を支払う方法 – 不動産を分割できない場合等に利用 3. **換価分割** – 財産を売却して現金化し、その代金を分割する方法 – 分割が困難な財産がある場合に利用 ## 3. 遺産分割協議書の作成方法 ### 記載すべき基本事項 1. **表題** – 「遺産分割協議書」と明記 2. **被相続人の情報** – 氏名、最後の住所、本籍地 – 生年月日、死亡年月日 3. **相続人の情報** – 全相続人の氏名、住所、生年月日 – 被相続人との続柄 4. **協議の合意** – 相続人全員で協議したことの確認 – 分割方法に合意したことの明記 ### 財産別の記載方法 1. **不動産** – 所在地、地番、地目、地積 – 建物の家屋番号、種類、構造、床面積 – 登記事項証明書の記載と完全一致させる 2. **預貯金** – 金融機関名、支店名、口座番号 – 預金の種類、口座名義人 – 残高または分割方法 3. **株式・有価証券** – 証券会社名、口座番号 – 銘柄、株数 – 分割方法 4. **動産** – 自動車(車種、登録番号等) – 貴金属、美術品等 – 家財道具 5. **債務** – 借入先、借入残高 – 負担する相続人の明記 ### 重要な記載事項 1. **相続人の署名・押印** – 相続人全員の自筆署名 – 実印での押印 2. **印鑑証明書の添付** – 全相続人の印鑑証明書 – 作成日から3か月以内のもの 3. **日付の記載** – 協議が成立した日付 – 全相続人が同一の日付で署名 ## 4. 不動産の名義変更(相続登記) ### 相続登記の義務化 令和6年4月1日から相続登記が義務化されました。相続開始から3年以内に登記申請を行わないと、10万円以下の過料が課される可能性があります。 ### 必要書類 1. **基本書類** – 登記申請書 – 遺産分割協議書 – 印鑑証明書(全相続人分) – 相続関係説明図 2. **戸籍関係書類** – 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 – 相続人全員の戸籍謄本 – 相続人の住民票 3. **不動産関係書類** – 登記事項証明書 – 固定資産評価証明書 ### 登記手続きの流れ 1. **事前準備** – 必要書類の収集 – 登記申請書の作成 – 登録免許税の計算 2. **申請手続き** – 法務局への申請 – 書類の審査 – 登記完了 3. **登記完了後** – 登記事項証明書の取得 – 権利証(登記識別情報)の受領 ### 登録免許税 – 税率:固定資産評価額の0.4% – 軽減措置:令和7年3月31日まで0.1%(一定の条件を満たす場合) ## 5. 預貯金の名義変更・解約手続き ### 手続きの流れ 1. **相続の発生を銀行に連絡** – 口座の凍結 – 必要書類の案内 2. **書類の準備・提出** – 遺産分割協議書 – 印鑑証明書 – 戸籍関係書類 – 通帳・キャッシュカード 3. **手続きの完了** – 預金の解約または名義変更 – 相続人への分配 ### 金融機関別の特徴 – **都市銀行**:手続きが標準化されている – **地方銀行**:地域密着型のサービス – **信用金庫・信用組合**:個別対応が柔軟 – **ゆうちょ銀行**:全国統一の手続き ### 注意点 – 相続開始から10年を経過すると「休眠預金」となる可能性 – 定期預金の中途解約は利息の減額あり – 外貨預金は為替変動のリスクあり ## 6. 株式・有価証券の名義変更 ### 上場株式の場合 1. **証券会社での手続き** – 相続手続き依頼書の提出 – 必要書類の提出 – 口座の開設または移管 2. **必要書類** – 遺産分割協議書 – 印鑑証明書 – 戸籍関係書類 – 株式取引口座開設に関する書類 ### 非上場株式の場合 1. **発行会社での手続き** – 株主名簿の名義変更 – 株券の発行(株券発行会社の場合) 2. **注意点** – 譲渡制限株式の場合は取締役会の承認が必要 – 評価が困難な場合は専門家による評価が必要 ## 7. 自動車の名義変更 ### 普通自動車の場合 1. **手続き場所** – 運輸支局または自動車検査登録事務所 2. **必要書類** – 遺産分割協議書 – 印鑑証明書 – 戸籍謄本 – 車検証 – 自動車税申告書 ### 軽自動車の場合 1. **手続き場所** – 軽自動車検査協会 2. **必要書類** – 遺産分割協議書 – 戸籍謄本 – 車検証 – 自動車取得税申告書 ## 8. 生命保険金の請求 ### 生命保険金の相続性 – 受益者が指定されている場合:受益者の固有の権利 – 受益者が指定されていない場合:相続財産として扱われる ### 請求手続き 1. **保険会社への連絡** – 死亡の連絡 – 必要書類の確認 2. **書類の準備・提出** – 死亡保険金請求書 – 死亡診断書 – 保険証券 – 戸籍謄本 3. **保険金の受取り** – 指定口座への振込み – 税務上の取り扱い確認 ## 9. 当事務所のサービス内容 ### 遺産分割協議書作成支援 1. **相続調査** – 相続人の調査・確定 – 相続財産の調査・評価 – 相続関係説明図の作成 2. **協議書作成** – 分割方法の提案 – 協議書の起案・作成 – 法的チェック 3. **署名・押印の調整** – 相続人間の調整 – 署名・押印の取りまとめ – 完成品の交付 ### 名義変更手続き支援 1. **不動産登記** – 司法書士との連携 – 必要書類の準備 – 登記申請のサポート 2. **預貯金の手続き** – 各金融機関との調整 – 必要書類の準備 – 手続きの代行 3. **その他の名義変更** – 株式・有価証券 – 自動車 – 生命保険 ### 総合的なサポート – 相続税申告(税理士との連携) – 準確定申告のサポート – 遺産整理業務の代行 ## 10. 料金体系 ### 遺産分割協議書作成 – **基本料金**:10万円~20万円 – **相続人追加**:1人につき1万円 – **複雑事案加算**:事案に応じて ### 名義変更手続き – **不動産登記**:10万円~(司法書士費用別途) – **預貯金手続き**:1行につき3万円~ – **株式・有価証券**:5万円~ – **自動車**:3万円~ ### 総合パック – **基本パック**:30万円~(協議書作成+主要な名義変更) – **フルサポート**:50万円~(全手続き込み) ## 11. 手続きの流れとスケジュール ### 標準的なスケジュール 1. **初回相談**(1週間) – 相続状況の確認 – 必要手続きの説明 – 見積もりの提示 2. **調査・準備期間**(2-4週間) – 戸籍等の取得 – 財産調査 – 相続関係説明図の作成 3. **協議書作成**(2-3週間) – 分割案の検討 – 協議書の起案 – 相続人間の調整 4. **署名・押印**(1-2週間) – 最終確認 – 署名・押印の取りまとめ – 印鑑証明書の取得 5. **名義変更手続き**(1-3か月) – 各種手続きの実行 – 進捗状況の報告 – 手続き完了の確認 ## 12. よくある問題と解決策 ### よくある問題 1. **相続人の一部が協力しない** – 説得・調整を試みる – 調停・審判の検討 2. **遺産の評価で意見が分かれる** – 専門家による評価 – 複数の評価方法の検討 3. **遺産分割協議書に不備がある** – 法的チェックの実施 – 必要に応じて作り直し 4. **手続きが複雑で時間がかかる** – 専門家による代行 – 効率的な手続き進行 ### 解決策のポイント – 早期の専門家への相談 – 相続人間の十分な話し合い – 適切な書類の準備 – 法的な観点からの検討 ## 13. 注意すべき法改正 ### 相続登記の義務化(令和6年4月1日施行) – 相続開始から3年以内の登記申請義務 – 正当な理由なく登記しない場合の過料 ### 相続土地国庫帰属制度(令和5年4月27日施行) – 相続した土地を国に帰属させる制度 – 一定の要件を満たす必要あり ### 遺産分割に関する新制度 – 遺産分割協議の期間制限(検討中) – 相続人の確定に関する新制度 ## 14. 税務上の注意点 ### 相続税の申告 – 基礎控除:3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数 – 申告期限:相続開始から10か月以内 – 小規模宅地等の特例の適用 ### 準確定申告 – 被相続人の所得税の申告 – 相続開始から4か月以内 – 医療費控除等の適用 ### 贈与税の注意点 – 相続時精算課税制度の適用 – 教育資金の一括贈与の特例 – 結婚・子育て資金の一括贈与の特例 ## おわりに 相続手続きは複雑で専門的な知識が必要な分野です。特に遺産分割協議書の作成と各種財産の名義変更は、相続手続きの中核をなす重要な手続きです。適切な手続きを行うことで、相続人間のトラブルを防ぎ、スムーズな相続を実現できます。 行政書士法人塩永事務所では、相続分野の専門家として、豊富な経験と知識を活かして、お客様の相続手続きを全面的にサポートいたします。相続でお困りの際は、お気軽にご相談ください。 — **行政書士法人塩永事務所** 相続手続きの専門家として、皆様の大切な財産の継承をサポートいたします。 **初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。**