誰かが亡くなると相続が開始し、故人を被相続人、遺族のうち相続する権利のある方を相続人と言います。

相続手続きのことでお困りの方へ

誰しもが一生のうちに一度か二度は必ず経験する「相続」は、そう何度もあるものではなく、相続は人によっても違います。何度も経験することではないので、相続の手続きでが進まず気持ちが落ち着かないということもあり、場合によっては、家族間に問題が発生したり、争いに発展したりすることもあるかもしれません。

相続は、誰かが亡くなると開始されますが、大事なご家族の死を悼みながらも手続きを進めなくてはいけません。
お通夜、葬儀、告別式、納骨、初七日、四十九日など法事は続きますし、心の整理もつけなくてはなりません。

相続とは

相続は法令上は、亡くなった方(被相続人)の財産上の一切の権利義務を法律で定められた相続人が、当然にかつ包括的に承継することをいいます。

亡くなった方の財産である不動産(土地、建物)、預貯金、有価証券、美術品、骨董品、債券、個人事業主のとしての資産・事業用財産・設備、売掛金や負債(債務、買掛金)などを相続人が引き継ぐことをいいます。

故人の財産の所有者が決まっていないと色々と不都合が生じます。円満かつ円滑な相続が理想であると考えています。

相続の開始とは

相続は、被相続人(故人)の死亡と同時に開始されます。
亡くなった瞬間に、被相続人の財産は法定相続人や遺言書で指定された者に承継されるのです。ご家族を亡くされて心の整理がつかないと思いますが、相続は待ったなしで開始されます。

被相続人と相続人とは

亡くなった方を「被相続人」、財産を引き継ぐご遺族を「相続人」といいます。相続人は、法律上決まっていますので法定相続人とも言います。一つの相続には、被相続人は一人で、相続人は複数に上ることもあります。法定相続人がいない場合もあり、相続人0名という相続もあります。

相続には相続人が被相続人よりも先に亡くなっているケースでは「代襲相続」が発生することがあり、相続手続きの最中に相続人が亡くなり新たな相続が開始する「数次相続」もあり、これが相続をややこしくすることもあるのです。

法定相続人と法定相続割合

民法では相続人と相続割合が定められています。「法定相続人」と「法定相続割合」といいます。相続においては財産の所有者が誰なのかは重要で法定相続割合も決められているのです。

法定相続人とその順位

第一順位 直系卑属(子や孫など)※代襲相続あり。制限はない。
第二順位 直系尊属(父母や祖父母など)
第三順位 兄弟姉妹 ※代襲相続あり。ただし、再代襲相続はない。甥・姪まで。
配偶者(法律上の婚姻関係にあるもの)はいつでも相続人になる。

第一順位直系卑属の例

夫婦、子供三人の家族で、夫が亡くなり、相続人は妻と子供3名の合計4名
法定相続割合は妻が2分の1、子供が2分の1を3人で分ける。

第一順位直系卑属に代襲相続がある例

夫婦、子供三人の家族で、夫が亡くなり、相続人は妻と子供3名の合計4名で法定相続割合は妻が2分の1、子供が2分の1を3人で分けます。子供のうち長男が夫よりも先に亡くなっていて、長男の子(夫から見ると孫)が相続することになりことを「代襲相続」といいます。長男の分を他の兄弟姉妹で分けるのではなく、長男の子が代襲相続することとなり、長男に子供がいないのであれば、代襲相続は発生せず、他の兄弟姉妹が相続分の2分の1を分け合うことになります

夫婦、子供はなく、夫の両親が健在の家族で、夫が亡くなり、相続人は妻と夫の父母の合計3名の場合は、法定相続割合は妻が3分の2、夫の父母が3分の1を2人で分けます。

第三順位兄弟姉妹の例

夫婦、子供はなく、夫の両親もすでに他界しており、夫の兄弟姉妹が3名の家族で、夫が亡くなり、相続人は妻と夫の兄弟姉妹3名の合計4名の場合は、法定相続割合は妻が4分の3、夫の兄弟姉妹が4分の1を3人で分けます。

第三順位兄弟姉妹に代襲相続がある例

夫婦、子供はなく、夫の両親もすでに他界しており、夫の兄弟姉妹が3名の家族で、夫が亡くなり、相続人は妻と夫の兄弟姉妹3名の合計4名の場合は、法定相続割合は妻が4分の3、夫の兄弟姉妹が4分の1を3人で分けます。
だだし、兄弟姉妹のうち夫の弟が夫よりも先に亡くなっていて、弟の子(夫から見ると甥・姪)が相続することになりました。これを「代襲相続」といいます。弟の分を他の兄弟姉妹で分けるのではなく、弟の子が代襲相続することとなります。弟に子供がいなかったのであれば、代襲相続は発生せず、他の兄弟姉妹が相続分の4分の1を分け合うことになります。

相続財産とは

相続が開始した時点の被相続人の財産で、遺産とも言います。
具体的には、不動産(土地、建物)、預貯金、有価証券、美術品、骨董品、債券、個人事業主のとしての資産・事業用財産・設備、売掛金や負債(債務、買掛金)などが相続財産です。その他、形のあるものだけではなく、法律上の権利関係が発生するもの(賃借権、財産的損害賠償請求権、慰謝料請求権など)も相続財産となります。被相続人の一身専属の権利は相続財産となりません。また、被相続人の死亡によって発生する権利で、被相続人に属しない権利として、死亡退職金と生命保険金があります。

死亡退職金と生命保険の死亡保険金などは相続税の計算に当たってはみなし相続財産として算入されます、

なお、死亡退職金は被相続人の死亡により勤務先の会社などの規程などにより支払われるもので、受取人が決められていますから、その受取人固有の財産となり遺産分割の対象となりません。

生命保険金も同様で、受取人が指定されていれば、受取人固有の財産となります。
一方で、貯蓄型の生命保険で、受取人が被相続人となっていた場合には、相続人が受取人の地位を承継するので相続財産として遺産分割の対象となります

相続財産の分け方(遺産分割の方法)

相続財産の分け方には大きく分けて3つあります。

(優先)遺言書による遺産分割方法の指定・相続分の指定
(第2の方法)相続人全員での遺産分割協議
(第3の方法)家庭裁判所での調停・審判

遺言書があれば、遺言書の内容が優先されます。
遺言書は被相続人の最終意思なのですから、優先されるのは当然のことだと思います。
また、遺言書があれば相続人も最大限尊重してくれるでしょう。
なお、相続人全員の合意があれば遺言書の内容とは別の方法で、遺産分割をすることも可能です。

遺言書がなければ、相続人全員で話し合いをしなくてはなりません。
これを遺産分割協議と言います。
この協議は、一気にハードルが上がります。
まずは、相続人全員が合意しなくてはならないということです。
全員が一堂に顔を合わせて話し合いをすることまでは求めていませんが、全員が遺産分割の内容に合意しなくてはなりません。
遠方(県外・海外)に住んでいる方も話し合いに来ないまでも、最終的には合意してもらい遺産分割協議書に署名捺印してもらわなくてはいけません。
また、未成年者がいれば法定代理人または特別代理人、認知症の方がいたら成年後見人、行方不明者がいたら不在者財産管理人を交えて遺産分割協議をしなくてはならず、他の相続人の意向はほとんど通らなくなる可能性があります。
なぜなら代理人は相続人の権利を守るために協議に加わるからです。

遺産分割協議が不調に終わると、家庭裁判所での調停・審判に移行します。
調停の段階で解決すればいいですが、裁判になれば関係性が完全に壊れてしまうことになると思います。

相続が争いになるケース

様々なケースが想定されます。

  • 財産が多いとか少ないは関係ない。
  • 家族が仲がいいから大丈夫と思って対策なし
  • 相続人の事情
  • 遺言書がなく、相続財産の分け方が決まっていない
  • 遺言書の内容が不公平

財産が多いとか少ないは関係ありません

相続財産が多いとか少ないということが問題になっているわけではありません。令和5年度の家庭裁判所で争われている遺産分割事件のほとんどが遺産の価額5,000万円以下となっていて、けして大金持ちが争っているわけではありません。
遺産の価額5,000万円というのは、土地や建物があり、預貯金があればそのくらいの評価になります。

遺産の価額1,000万円以下で争っている事例も全体の約35%あり、中には100万円程の遺産を巡り裁判をしている例もあります。

相続争いは、お金が人を狂わせる側面もあり、感情の問題も大きく絡みます。相続争いは深刻になる可能性があるのです。

家族が仲がいいから大丈夫

相続相談を受ける中で「あの人がこんなことを言ってくるとは思わなかった」、「お金を目に前にして、人が変わった」と言った話を何度も聞いています。

家族と言えども、お金や感情の問題がぶつかる相続は、争いの火種があるのです。

例えば、故人の晩年の介護や看護を献身的に続けてきた長女が、遺産分割協議において、女性で既に嫁いでいるから、何も財産を取得させないと、他の男兄弟から言われたら、どうでしょう?
決して、財産が目的で親の介護・看護をしていたわけではないのでしょうが、全く何もしなかった他の兄弟が財産を取得して、長女の献身的な働きが全く考慮されなければ、長女としても面白くないかもしれませんね。
そこに、積年の恨みつらみが出てくるのも相続なのです。

特に兄弟姉妹の相続争いは泥沼の様相をみせます。

遺言書がなく、相続財産の分け方が決まっていない

遺言書があるとないのとでは、相続手続きは大きく変わってきます。
相続財産の分割方法で最優先されるのは「遺言書」です。
遺言書は、被相続人(故人)の最終意思で、法的な拘束力があります。
また、ご家族も亡くなったご家族の最終意思であるというならば、最大限に尊重することでしょう。
しかし、遺言書がなければ、相続人(ご遺族)は白紙の状態から話し合いをしなくてはなりません。
相続の話合いは、家族と言えどもお金にまつわることなので、なかなか言い出せなかったり、遠慮したり、または強引な人に不快感を覚えたり、怒りを感じたりといろいろな感情が芽生えるものです。
そんな状況が続くと、やがて相続が争いになってしまうのです。

遺言書の内容が不公平

せっかく書いた遺言書が原因で争いになることもあります。できれば遺言書は公平なほうがいい。
特に最近は権利意識が高くなっていますから、相続権がある人達は相続について主張することも多い。
ただ、遺言書は完ぺきに公平な内容にすることは難しく、相続争いを回避するための遺言書も万能ではないということです。家族には自分の財産がもとで争ってほしくないということを日ごろから家族に伝えておくことも大事ですし、遺言書に「付言事項」として記載しておくことも大事だと思います。

子供・兄弟・親戚が多い

家族、子供、兄弟や親戚が多いというのは、とてもいい事だと思います。
しかし、相続はお金と人間関係が大きくかかわってきます。
相続人は様々な事情を抱えていることは既に述べた通りですが、そうなると相続人が増えれば増えるほどそういった事情が絡み合って、大変な問題を引き起こしてしまうこととなるのです。
相続においては、家族、子供、兄弟や親戚が多いことはリスクとなりえる可能性があるのです。

相続争いを回避する方法

相続争いを回避する最大の方法は遺言書を書くことです。
遺言書は、遺言者(故人)の最終意思です。
故人の築いた財産を誰にどのようにして分割したいのかと言った法的拘束力を示す方法です。

ご家族も故人の最終意思ですから最大限に尊重することと思います。
相続においてお金の話をすることはいくら家族同士でもスムーズにいかない可能性はあります。
そんな時に遺言書があれば内容を確認するだけ、もしくは最小限の話合いで、相続手続きが可能になります。
自分の遺した財産で、ご家族が争うなんてことがあったら本末転倒ではないでしょうか。
財産は家族を幸せにするものであり、不幸にするものではないのですから。

子供や孫などが大変な思いをすることがある

今現在も起きていることですが、最初の相続が始まった時点で、相続問題が解決していなかったことから、子供や孫の代で裁判をしているケースもあります。

相続は、相続人が亡くなると次々に相続が続くことになります。
数次相続と言います。数次相続により相続人の数が大変な数に上ることもあります。
30年前の相続をほったらかしにしていたために、相続人が67名に膨らみ話し合いができず、親戚同士が裁判で争ったということもありました。

何よりも父母や祖父母が築いたせっかくの財産が有効活用されずに、争いの種となっていることが残念でなりません。

相続人の相続権を最低保障する制度「遺留分」

相続には相続人の最低限度の相続権を保障する「遺留分」というのがあります。
遺留分は、遺言書があり遺言書で遺産の分割方法が指定されていたものの、あまりにも不公平で家族の生活がたちいかなくなるケースを救済するためにあるものです。

例えば、故人が「全ての財産を愛人に遺贈する」と遺言書に書いていたとしたら、相続人である配偶者や子供たちが生活する術を失ってしまうことがあるかもしれません。

そんな時に相続人の権利を保障する制度として「遺留分」が法律上、認められているのです。

ただし、遺留分は全財産が認められるわけではありません。
遺留分は・・・
配偶者および直系卑属(子や孫など)が含まれる場合には相続財産の2分の1
直系尊属のみの場合には相続財産の3分の1
兄弟姉妹には遺留分はなし
となっています。

遺言書を書く際には「遺留分」に配慮する必要もあります。

遺留分は全財産には及ばないのです。
先に挙げた事例の通り「愛人に全ての財産を遺贈する※」なんていうことがあって配偶者や子供は半分しか財産を取り戻せないのです。
こういった遺言書を書くということはよっぽどの事情があるかもしれませんが、お勧めできません。

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