
一般貨物自動車運送事業の許可申請手続き
【2026年対応版・最新実務ガイド】
1 一般貨物自動車運送事業とは
一般貨物自動車運送事業とは、営業用貨物自動車(いわゆる緑ナンバー)を使用して、荷主からの依頼に基づき貨物を有償で運送する事業をいいます。
この事業を営むためには、事前に国土交通大臣の許可(実務上は地方運輸局長による許可)を受ける必要があります。
根拠法令は
貨物自動車運送事業法です。
許可権者は、営業所の所在地を管轄する地方運輸局長となります。
主な対象事業者
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一般貨物運送会社
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引越運送事業者
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企業間物流(BtoB配送)事業者
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地域配送・区域配送事業者
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路線貨物運送事業者
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宅配・物流事業者
なお、軽自動車のみを使用する
**貨物軽自動車運送事業(いわゆる黒ナンバー)**は、許可ではなく届出制度であり、要件や手続きが大きく異なります。
2 許可取得までの基本的な流れ
(標準的な期間:概ね3〜6か月)
① 事前準備(最重要フェーズ)
一般貨物運送事業の許可審査では、申請前の準備が極めて重要です。
主な準備事項は以下のとおりです。
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営業所の確保
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車庫(駐車場)の確保
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事業計画・収支計画の策定
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運行管理体制の構築
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役員の欠格事由の確認
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自己資金の確保および証明書類の準備
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車両の確保(購入またはリース)
この段階で要件を満たしていない場合、申請後の補正では対応できないことも多く、事前設計の完成度が許可取得の可否を大きく左右します。
② 許可申請書の提出
必要書類を作成し、営業所所在地を管轄する地方運輸局へ申請します。
主な提出書類
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一般貨物自動車運送事業許可申請書
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事業計画書
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資金計画書
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残高証明書
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役員履歴書
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運行管理者資格証の写し
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整備管理者選任予定証明
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車両確保書類
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営業所・車庫関係書類
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法令試験受験申込書
提出先(例)
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関東運輸局
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中部運輸局
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近畿運輸局
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九州運輸局 など
③ 法令試験(役員受験)
許可申請後、申請者は法令試験を受験する必要があります。
受験者
法人:常勤役員1名
個人事業:事業主本人
出題される主な法令
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貨物自動車運送事業法
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道路運送法
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道路交通法
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労働基準法
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自動車事故報告規則 など
合格率は概ね30〜40%程度とされており、事前の学習が必要です。
④ 審査
申請書提出および法令試験合格後、地方運輸局による審査が行われます。
標準審査期間
概ね 3〜6か月
主な審査項目
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事業計画の実現可能性
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資金計画の妥当性
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自己資金の充足状況
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営業所・車庫の法令適合性
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労務管理体制
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法令遵守体制(コンプライアンス)
審査の過程で、追加資料提出や補正指示が行われることもあります。
⑤ 許可取得後の手続き
許可を取得しても、すぐに営業を開始できるわけではありません。
営業開始までに以下の手続きを行います。
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運輸開始届の提出
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運行管理者選任届
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整備管理者選任届
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車両登録(緑ナンバー取得)
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運賃料金設定届出
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標準運送約款の設定
なお、許可取得後1年以内に事業を開始しない場合、許可が失効する可能性があります。
3 許可取得の主な要件(2026年実務基準)
① 人的要件
運行管理者
営業所ごとに配置が必要です。
目安
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車両29台まで:1名以上
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30台ごとに1名追加
国家資格(運行管理者資格者証)が必要です。
整備管理者
以下のいずれかが必要です。
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自動車整備士資格(2級以上など)
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実務経験2年以上+整備管理者講習修了
役員の欠格事由
以下に該当する場合、許可は受けられません。
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禁錮以上の刑の執行終了から5年未満
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許可取消処分から5年未満
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破産手続開始決定を受け復権していない者
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暴力団関係者
② 施設要件
営業所
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適法な用途地域
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事務所機能を有する
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使用権限(賃貸契約等)がある
車庫(駐車場)
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原則として営業所から 直線距離2km以内
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保有車両すべてを収容可能
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出入口・前面道路の安全性確保
休憩・睡眠施設
長距離運行が想定される場合は、ドライバー用の休憩施設が必要です。
③ 車両要件
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最低 5台以上(軽自動車を除く)
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貨物自動車として登録可能
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使用権限(所有・リース等)が確認できる
④ 資金要件
資金計画は審査の重要項目です。
一般的には、以下の費用を賄える資金が必要とされます。
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車両取得費
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車庫・営業所費用
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人件費
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保険料
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燃料費
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3か月程度の運転資金
※具体的な必要資金額は事業規模によって異なります。
金融機関融資を予定する場合は、融資契約書等による資金確定性が求められることがあります。
4 近年の制度運用のポイント
近年、トラック運送業界では、労働環境改善や取引適正化の観点から制度運用が強化されています。
主なポイントは次のとおりです。
運送契約の適正化
荷主との契約において
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運賃
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待機料
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附帯作業費
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支払条件
などを明確にすることが求められています。
労働時間管理の強化
いわゆる「物流2024年問題」への対応として
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時間外労働の上限規制
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拘束時間管理
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点呼記録
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デジタコ等による運行管理
などの体制整備が重要になっています。
下請運送事業者との契約管理
協力会社や下請事業者を利用する場合も
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書面契約
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適正運賃の支払い
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法令遵守の確認
などが求められます。
5 許可取得後の主な義務
許可取得後は、以下の義務が課されます。
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事業報告書提出(決算後100日以内)
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事故報告
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巡回指導・監査対応
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変更届出(役員・営業所・車庫・車両など)
監査では、次の書類が重点的に確認されます。
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点呼記録簿
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運転日報
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労働時間管理帳簿
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車両整備記録
6 よくある質問
Q 許可取得までの期間は?
通常は 3〜6か月程度が目安です。
申請内容や地域により前後します。
Q 個人でも取得できますか?
可能です。
ただし、法人と同様の要件を満たす必要があります。
Q 車両は中古でも問題ありませんか?
問題ありません。
ただし、整備体制や使用権限の確認が必要です。
Q 法令試験は難しいですか?
法令条文の理解が必要なため、事前の対策が重要です。
まとめ
一般貨物自動車運送事業の許可申請では、
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資金計画の妥当性
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営業所・車庫の適法性
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人員体制(運行管理者・整備管理者)
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法令試験合格
-
労務・コンプライアンス体制
などが総合的に審査されます。
トラック運送業界では制度運用が年々厳格化しており、事前の準備と適切な事業計画の策定が許可取得の重要なポイントとなります。
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