
日本の離婚を取り巻く環境は、近年大きな転換期を迎えています。2024年5月に成立した民法改正(「父母の離婚後等の子の養育に関する見直し」)により、2026年4月1日からは、離婚後においても父母双方を親権者とする「選択的共同親権」が導入され、従来の単独親権に加えて新たな選択肢が認められることとなりました。これに加え、経済状況の変動や家族観・ライフスタイルの多様化により、離婚に対する社会的な受け止め方や実務上の対応は、質的な変化の途上にあります。
本稿では、2026年1月時点で把握可能な最新統計(主として厚生労働省「人口動態統計」令和6年(2024年)確定値)を基礎として、日本における離婚動向の概況を整理するとともに、今後の法改正を見据えた離婚協議書(とりわけ公正証書による作成)の重要性について、行政書士法人塩永事務所の専門的視点から解説します。
1. 2026年時点における日本の離婚動向の概況
離婚件数・離婚率の推移
厚生労働省「人口動態統計」(2024年確定値)によれば、2024年の離婚件数は18万5,895組で、前年から2,081組増加しています。人口1,000人あたりの離婚率は1.55で、前年の1.52からわずかに上昇しています。離婚件数は、2002年の約29万組をピークとして長期的には減少傾向にあるものの、近年は減少ペースが鈍化し、2023年から2024年にかけては微増へと転じている状況です。
同年の婚姻件数は48万5,063組であり、単純に離婚件数との比率を算出すると約38.3%となります(「おおよそ3~4組に1組が離婚している」というイメージに相当)。もっとも、これは同一年に結婚した夫婦のうちどれだけが離婚したかを示す「離婚率」ではなく、長年にわたる婚姻関係の累積的な結果を反映した比率である点に留意が必要です。いずれにせよ、離婚は現代日本社会において、例外的な出来事ではなく、一定程度「構造として定着した現象」と評価できます。
熟年離婚の増加傾向
婚姻期間20年以上の、いわゆる「熟年離婚」が全体に占める割合は上昇傾向にあり、2022年時点では23.5%と、統計開始(1947年)以降で過去最高を記録し、全体の約4組に1組に迫る水準となっています。2024年のデータにおいても、同居期間20年以上の離婚件数は約4万組前後で推移しており、高止まりの状態が続いています。
この背景には、平均寿命の延伸に伴う「老後期間」の長期化、子どもの独立後に夫婦関係を見直す動き、さらには年金分割制度の定着などが挙げられます。これらの要因により、シニア世代が老後の生活設計を再構築する一手段として離婚を選択するケースが増加していると考えられます。
改正民法(共同親権導入)への関心の高まり
2026年4月施行の改正民法により、離婚後の親権については、従来の単独親権に加え、父母双方が親権を共同行使する「共同親権」を選択できるようになります。協議離婚の場合は父母の合意により、調停・裁判離婚の場合は家庭裁判所が「子の利益」を最優先に考慮して、単独親権と共同親権のいずれかを判断します。なお、配偶者暴力(DV)や児童虐待のおそれがある場合など、子の安全確保が最優先されるべき事案では、単独親権が原則とされます。
こうした制度変更を見据え、離婚前の段階で、親権の帰属、監護の分担、面会交流の方法・頻度などについて、より具体的かつ詳細に取り決めるケースが増加しており、離婚協議の内容も従来以上に高度化・複雑化する傾向にあります。
2. 離婚率の背景にある要因(2026年の視点)
法改正による意識変化
改正民法による共同親権制度の導入は、離婚を単に「夫婦関係の解消」として捉えるのではなく、「離婚後も続く親子関係をいかに維持・構築していくか」という視点を社会全体に強く意識させる契機となっています。共同親権を選択する場合、父母双方が子の養育に関する重要事項について協力し、合意形成を図ることが前提となるため、離婚前の段階での丁寧な事前協議の重要性が一層高まっています。
経済環境と個人の自立
物価上昇や将来不安など、家計を取り巻く環境は厳しさを増す一方で、共働き世帯の増加や女性の就業継続率の向上により、配偶者に依存しない経済的自立が現実的な選択肢となるケースが増えています。その結果、経済的理由から離婚を断念せざるを得なかった状況から、一定の生活基盤を前提に「関係の見直し」を選択しやすい環境が整いつつあるといえます。
情報環境の変化
インターネットやSNS、オンライン相談サービスの普及により、離婚手続きや関連制度に関する情報へのアクセスは格段に容易になりました。これにより、離婚に関する心理的・社会的ハードルは相対的に低下し、専門家への相談や制度の活用を前提とした「準備された離婚」が増加している側面も見受けられます。
3. 離婚協議書の役割と重要性 ― なぜ「今」作成が重要なのか
日本における離婚の約9割は協議離婚によって行われています。しかし、2026年以降の「共同親権」が選択肢となる時代においては、口頭での約束や簡易なメモ程度の合意では、将来の紛争リスクが高まるおそれがあります。特に、次のような点から、離婚協議書の作成および公正証書化は、今後ますます不可欠な手続きとなっていきます。
親権・監護に関する事項の明確化
共同親権を選択する場合には、どちらが主たる監護者となるのか、日常の養育・教育に関する決定をどのようなルールで行うのか、面会交流の頻度・方法・連絡手段などを、できる限り具体的に定めておく必要があります。これらの取り決めが不十分な場合、離婚後に解釈の相違や期待のズレが顕在化し、家庭裁判所での調整や紛争解決手続を要する事態に発展する可能性があります。
養育費の履行確保
養育費の不払い・滞納は、依然として大きな社会的課題です。離婚協議書を公正証書として作成し、「強制執行認諾文言」を付すことで、支払いが滞った場合に、改めて訴訟を提起することなく、直ちに給与や預金などに対する強制執行手続をとることが可能となります。これにより、養育費の履行確保に関する実効性は大幅に高まります。
財産分与・年金分割の適正な合意
不動産、退職金、預貯金、株式等の金融資産、さらには厚生年金の分割など、離婚に伴う財産分与の対象は多岐にわたり、その評価や分配方法は複雑になりがちです。専門家の関与のもと、法的な位置づけや税務上の影響も踏まえて正確に書面化しておくことで、将来の解釈争いや追加請求を未然に防ぐことができます。
改正民法施行前に成立する離婚であっても、子の利益を最優先に考えた取り決めを、書面として明確に残しておくことは、父母双方および子どもにとっての将来的な安心につながります。
4. 行政書士法人塩永事務所のサポート体制
行政書士法人塩永事務所では、改正民法による共同親権制度の導入を踏まえ、次のようなサポートを提供しています。
- 個別事情に配慮した離婚協議書の作成: 画一的な定型文にとどまらず、ペットの飼育、子どもの教育費負担、将来の取り決めの見直し方法など、各ご家庭の実情や価値観を反映した条項をご提案します。
- 公正証書作成手続の一括サポート: 公証人との事前調整、文案の整理・修正、必要書類の確認、公証役場への嘱託手続まで、一連の流れを通してサポートし、ご依頼者の負担軽減を図ります。
- 共同親権・単独親権の特徴を踏まえた実務的アドバイス: ご家族の状況(子の年齢、居住環境、就労状況、DVの有無など)を踏まえ、共同親権・単独親権それぞれのメリット・留意点を整理し、現実的かつ紛争予防的な合意内容の検討をお手伝いします。
5. まとめ
2026年の日本は、共同親権制度の導入により、離婚制度そのものが大きな転換点を迎えます。このような制度変更の時期だからこそ、その場の感情に流された口頭合意にとどまらず、法的根拠と将来の紛争予防の観点を踏まえた書面(特に公正証書による離婚協議書)を整えておくことが、父母双方と子どもの将来の安心を守るうえで極めて重要です。
行政書士法人塩永事務所は、離婚という人生の大きな節目において、プライバシー保護を最優先としつつ、冷静かつ丁寧なサポートを提供することをお約束します。
お問い合わせ先 行政書士法人塩永事務所 〒862-0950 熊本市中央区水前寺1-9-6 電話:096-385-9002 メール:info@shionagaoffice.jp
