
2026年行政書士法改正が監理団体の在留資格申請業務に与える影響について
はじめに
監理団体の皆さまにおかれましては、日頃より技能実習制度(今後開始予定の育成就労制度を含む)の運用・管理にご尽力されていることと存じます。そのなかで、在留資格に関する申請書類の作成・提出手続について、現在どのような体制・方法をとっておられるでしょうか。
- 例: 「設立当初から一貫してこのやり方で運用している」 「実習生や受入企業から申請代行費用は受け取っていない」 「あくまで監理業務の一環として行っているだけなので問題はないはずだ」
もし、このような認識に基づいて従前どおりの実務を継続している場合、2026年の行政書士法改正の趣旨を踏まえると、改めて法的リスクを検証すべき局面にきている可能性があります。
本稿では、監理団体の在留資格申請実務において留意すべきポイントを整理し、とくに「無償での申請代行」を巡る法的な考え方について、改正後の行政書士法の枠組みも踏まえながら解説します。
行政書士法第19条の規定内容
行政書士法第19条は、概ね次の行為を禁止しています。
行政書士でない者は、他人の依頼を受けて報酬を得て、官公署に提出する書類を作成してはならない。
ここでいう「行政書士の業務」とは、 他人の依頼を受けて、官公署(出入国在留管理局を含む)に提出する書類を作成し、またはその提出を代理する行為 を指します。技能実習生・育成就労者・その他外国人労働者に関する在留資格申請は、典型的にこの対象となり得る業務です。
多くの監理団体では、 「報酬を受け取っていなければ違法にはならない」 という理解が少なからず見受けられますが、法令上の「報酬」の解釈は、必ずしも金銭の直接的な授受に限られるものではなく、その点に十分な注意が必要です。
「報酬」の法的解釈と実務上の留意点
法律上の「報酬」とは、名目や支払い方法の形式にかかわらず、実質的に当該業務の対価と評価し得る経済的利益があれば該当し得ると理解されています。ここでは、監理団体において特に問題となりやすい典型例を整理します。
ケース1:監理費に内包された申請業務
状況の一例: 監理団体が受入企業から毎月「監理費」を受領している場合、その明細書等に在留資格申請業務が明記されていなくても、実務上は継続的・一体的に申請書類を作成しており、その行為が監理業務の一部として当然視されているケースがあります。
このような場合、監理費の一部が事実上、在留資格申請書類の作成・提出に対する対価であると評価され、「報酬を得て」行う業務に該当すると判断される可能性がある点に留意が必要です。
ケース2:他サービスとの抱き合わせ・条件付け
状況の一例: 「在留資格申請代行は無料」としつつ、
- 特定の保険商品への加入
- 教材・備品等の購入
- システム利用料の支払い などを事実上の条件としているような場合です。
形式上は「申請代行は無償」とされていても、これらの支払いが申請代行業務と密接に結びついていると評価されれば、実質的な対価(報酬)と判断されるリスクがあります。
ケース3:組織的・反復的な申請書作成(無償であっても)
状況の一例: 善意から、申請書の大部分を監理団体職員が作成し、実習生・受入企業には署名・押印のみを求める運用を行っているケースがあります。これを、組織として反復・継続的に行っている場合、
- 金銭的な対価を直接受け取っていなくても
- 監理団体の業務として事実上組み込まれていると評価され得ることから
「業として」他人の官公署提出書類を作成しているとみなされる可能性が指摘されています。
2026年の行政書士法改正では、こうした「実質的に業として行われている行為」に対する監視・取締りの強化が図られる方向性が示されており、従来以上に慎重な運用が求められると考えられます。
背景にある制度改正・環境変化
この問題が従来にも増して注目されている背景には、次のような流れがあります。
制度の適正化と専門性の重視
制度の高度化・デジタル化に伴い、在留資格申請手続においても、専門的知見と法令遵守が強く求められています。2026年の行政書士法改正は、専門職としての行政書士に一定の独占的役割を明確化する趣旨を含んでおり、非行政書士による書類作成・申請関与については、より厳格な運用が想定されます。
コンプライアンスリスクの顕在化
行政書士法違反が問題となった場合、
- 行政書士法違反による刑事罰
- 監理団体としての許可取消・業務停止等の行政処分
- 取引先企業・関係機関・送り出し機関等からの信用失墜
といった、事業継続に直接的な影響を及ぼし得る結果につながるおそれがあります。改正法の施行に伴い、当局による実務運用・指導の厳格化も見込まれるため、従来の慣行がそのまま許容されるとは限りません。
育成就労制度への移行と権利保護の強化
新たな育成就労制度では、外国人材の権利保護と適正な手続保障が一層重視される方向性が示されています。不適切な書類作成や、本人の理解や意思確認を欠いた形での手続関与は、制度全体の信頼性を損なう行為として、監督官庁から厳しく指摘される可能性があります。
今後監理団体に求められる対応
長年にわたり、監理団体が実務上担ってきた在留資格申請に関する関与のあり方について、2026年の行政書士法改正を契機として、法的な整理と実務フローの見直しを行うべき時期にきているといえます。
- 自団体の実務の棚卸し: どの範囲までを「サポート」とし、どこからを行政書士の専門業務に委ねるべきかを明確化すること。
- 契約書・案内文書の見直し: 監理費・各種料金の内訳やサービス内容の説明において、在留資格申請業務との関係が誤解を生まないよう、表現を精査すること。
- 行政書士との適切な連携体制の構築: 外部の行政書士・行政書士法人との間で、役割分担と責任範囲を明確にしたうえで、継続的に連携できる体制を準備すること。
次回は、監理団体が検討すべき具体的な対応策や、行政書士との適切かつ実務的な業務連携の構築方法について、より踏み込んだ解説を行う予定です。
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