
こども性暴力防止法と日本版DBSの位置づけ
こども性暴力防止法は、学校、保育所、認定こども園、学習塾、放課後児童クラブ等、子どもと継続的に接する教育・保育等事業者に対し、従事者の性犯罪歴等の有無を確認することを義務付ける制度です。
この制度は、日本版DBSの中核をなす仕組みであり、施行後は、
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事業者の申請に基づき
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こども家庭庁が法務省へ照会を行い
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確認結果を「犯罪事実確認書」として事業者に交付
する流れが想定されています。
「戸籍電子証明書提供用識別符号」とは何か
戸籍電子証明書提供用識別符号とは、戸籍(または除籍)情報とひも付けて発行される16桁の数字コードで、行政機関がオンラインで戸籍情報を取得するための認証情報です。
この識別符号を利用することで、
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紙の戸籍謄本・除籍謄本の提出が不要となり
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戸籍情報が行政機関間で直接連携され
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事業者が戸籍証明書を収集・保管する必要がなくなる
という制度設計が予定されています。
犯罪事実確認においては、従事者本人が取得した識別符号を申請情報として用いることで、こども家庭庁が戸籍情報を直接確認する仕組みとなります。
識別符号の取得方法とオンライン化の状況
識別符号の取得方法としては、以下の二つのルートが想定されています。
① マイナポータルによるオンライン取得(原則・推奨)
電算化された戸籍・除籍については、マイナポータルを利用したオンライン取得が可能となる方向でシステム整備が進められています。
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手数料:無料(予定)
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必要なもの
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マイナンバーカード
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署名用電子証明書の暗証番号
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対応スマートフォン、またはICカードリーダー付きPC
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申請は従事者本人に限られ、代理申請は想定されていません。そのため、各従事者が自ら識別符号を取得し、事業者に提供する運用が前提となります。
② 市区町村窓口での申請
以下の場合には、本籍地を管轄する市区町村窓口での申請が必要となります。
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マイナンバーカードを所持していない場合
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電子化されていない除籍が含まれる場合
特に、未電算化の除籍については、施行後も窓口取得が必要となる見込みであり、郵送や窓口対応による時間的ロスを考慮したスケジュール管理が重要です。
実務上の最大ポイント
「識別符号の取得」だけでは手続は始まらない
識別符号は、あくまで**犯罪事実確認申請を行うための前提情報(鍵)**にすぎません。
従事者が識別符号を取得しただけでは、犯罪事実確認は一切開始されません。
第2段階:事業者によるシステム登録と申請
犯罪事実確認を進めるためには、事業者が以下の対応を行う必要があります。
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こども家庭庁が運用する日本版DBS関連システムへの登録
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法人の場合、GビズID等の法人認証を前提としたアカウント管理が想定
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従事者ごとに
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氏名、生年月日等の本人情報
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戸籍電子証明書提供用識別符号
を正確に登録
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「犯罪事実確認書」の交付申請を完了させる
この事業者による登録・申請が完了して初めて、こども家庭庁から法務省への照会が行われます。
「取得」と「登録」の役割分担を正確に理解する
従事者側の役割
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戸籍電子証明書提供用識別符号を取得する
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氏名・生年月日等とともに、識別符号を事業者へ提供
(または、システム上で自身の情報を入力)
※この時点では、犯罪事実確認はまだ完了していません。
事業者側の役割
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従事者情報と識別符号をシステム上でひも付けて登録
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こども家庭庁へ犯罪事実確認書の交付申請を行う
※この申請がなければ、確認結果は交付されません。
従事者・事業者が押さえるべき実務上の注意点
本籍地の正確な把握
戸籍は住民票所在地ではなく本籍地で管理されます。本籍地が不明な場合は、住民票の附票等により事前確認を行い、
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オンライン取得が可能か
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窓口手続が必要か
を早期に判断することが重要です。
時間管理と採用スケジュール
識別符号の取得から、
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従事者→事業者への情報提供
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事業者によるシステム登録・申請
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行政機関による照会・回答
までには一定の期間を要します。
特に窓口申請や郵送対応が含まれる場合、リードタイムは長期化します。
業務開始日までに犯罪事実確認書が交付されるよう、採用フロー全体を見据えたスケジュール設計が不可欠です。
外国籍従事者への対応
日本の戸籍制度の対象外となる外国籍従事者については、
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在留カード
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住民票
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旅券(パスポート)
等による本人特定情報を用い、戸籍に代わる確認方法が採用される見込みです。
具体的な提出書類や運用は、今後示されるガイドラインに従う必要があるため、外国籍人材を多く雇用する事業者は、早期の体制整備が求められます。
行政書士法人塩永事務所による実務支援のご案内
日本版DBSに基づく犯罪事実確認は、
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従事者
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事業者
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行政機関
の役割分担を前提とした、複数段階・複数主体による手続です。そのため、
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どこまでを従事者に任せるのか
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事業者として何を管理・確認すべきか
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採用・契約フローとどう連動させるか
といった運用設計が、実務上の大きな課題となります。
行政書士法人塩永事務所では、
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識別符号取得に関する案内文・同意書の作成
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社内規程・チェックリストの整備
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こども家庭庁システムへの登録・運用フロー構築支援
などを通じ、犯罪事実確認が円滑に完了するまでの実務体制構築を総合的にサポートしています。
制度開始前の準備段階からのご相談も可能ですので、不安や疑問がある場合は、早めに行政書士法人塩永事務所へご相談されることをお勧めします。
096-385-9002
info@shionagaoffice.jp
