
就労ビザ(技能)の新規取得手続きの流れとポイント
外国人が日本で調理師、建築技術者、パイロットなどの専門的技能を活かして働くためには、「技能」の在留資格を取得する必要があります。
この「技能」ビザは、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人を対象としており、他の就労ビザとは異なる独自の要件が設定されています。
本記事では、技能ビザの新規取得を検討されている方に向けて、具体的な手続きの流れと押さえるべき重要なポイントを詳しく解説します。
このページの目次
- 技能ビザとは
- 技能ビザの対象となる職種
- 技能ビザの取得要件
- 申請手続きの流れ
- 必要書類
- 審査期間と結果通知
- 不許可となる主なケース
- 事務所紹介
技能ビザとは
「技能」の在留資格は、産業上の特殊な分野において熟練した技能を必要とする業務に従事する外国人のための就労ビザです。
入管法別表第一の二に定められており、日本国内では確保が困難な特殊技能を持つ外国人材を受け入れることを目的としています。
この在留資格の特徴は、学歴要件ではなく「実務経験年数」が重視される点です。一般的に、該当分野での一定年数以上の実務経験が求められ、その技能が真に熟練したものであることを証明する必要があります。
技能ビザの対象となる職種
技能ビザで認められる主な職種は以下の通りです。
調理師 外国料理の調理師が代表例です。中華料理、フランス料理、イタリア料理、タイ料理、インド料理など、特定国の料理に関する専門的な調理技能を持つ方が対象となります。日本料理の調理師は原則として対象外ですが、海外での日本料理普及に貢献した実績がある場合など例外的に認められるケースもあります。
建築技術者 外国特有の建築様式や建築技術に関する専門的知識と技能を有する技術者が対象です。例えば、中東の伝統的建築技法、ヨーロッパの古典建築修復技術など、日本では習得困難な特殊技能を持つ方が該当します。
パイロット 航空機の操縦士として、適切な資格と豊富な飛行経験を有する方が対象となります。航空法に基づく技能証明や計器飛行証明の取得が前提となります。
その他の職種
- 貴金属・宝石・毛皮加工の技能者
- 動物の調教師
- 石油・地熱等の掘削調査技術者
- ワインソムリエ
- スポーツ指導者(特定分野)
- 製品検査の専門家
これらの職種に共通するのは、「産業上の特殊分野」であり「熟練を要する技能」という点です。
技能ビザの取得要件
技能ビザを取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。
実務経験年数の要件
最も重要な要件が実務経験です。職種によって必要な経験年数は異なりますが、一般的な基準は以下の通りです。
- 外国料理の調理師:10年以上の実務経験(タイ料理人については5年以上)
- 建築技術者:10年以上の実務経験
- パイロット:250時間以上の飛行経歴
- 貴金属等加工:10年以上の実務経験
- 動物調教師:10年以上の実務経験
- ソムリエ:5年以上の実務経験とコンクール受賞歴等
実務経験には、専門学校や大学等での当該技能習得期間を含めることができる場合もありますが、実際の職業経験が中心となります。
日本人と同等以上の報酬
技能ビザで就労する外国人の報酬は、同等の業務に従事する日本人と同等額以上でなければなりません。これは外国人労働者の保護と、日本人労働市場への悪影響防止の観点から定められています。
受入機関の安定性・継続性
雇用する企業や団体が安定的に事業を継続できる状況にあることも審査されます。新規開業の場合は事業計画の実現可能性、既存企業の場合は経営状況や業績が確認されます。
素行要件
申請者本人に犯罪歴や入管法違反歴がないことも重要です。過去の日本滞在中の法令遵守状況もチェックされます。
申請手続きの流れ
技能ビザの新規取得手続きは、申請者が現在どこにいるかによって手続きが異なります。
パターン1:海外から呼び寄せる場合(在留資格認定証明書交付申請)
- 事前準備・書類収集
- 雇用契約書の締結
- 実務経験を証明する書類の収集
- 会社側の受入体制整備
- 在留資格認定証明書交付申請
- 日本国内の受入企業または代理人(行政書士等)が地方出入国在留管理局に申請
- 申請から結果通知まで通常1~3ヶ月
- 認定証明書の送付
- 許可された場合、認定証明書が交付される
- これを海外にいる本人に国際郵便等で送付
- 査証(ビザ)申請
- 本人が現地の在外日本大使館・領事館で査証申請
- 認定証明書を提示することで査証発給がスムーズに
- 来日・在留カード交付
- 査証を得て来日
- 空港で上陸審査を受け、在留カードが交付される
パターン2:既に日本にいる場合(在留資格変更許可申請)
留学生や他の在留資格で滞在中の外国人が技能ビザへ変更する場合です。
- 雇用先の決定と契約締結
- 地方出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請
- 審査(通常2週間~1ヶ月程度)
- 許可通知と在留カード受領
パターン3:短期滞在から変更する場合
原則として短期滞在からの在留資格変更は認められませんが、やむを得ない特別な事情がある場合に限り例外的に許可されることがあります。
必要書類
技能ビザ申請に必要な主な書類は以下の通りです。
申請人(外国人本人)が準備する書類
- 在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書
- 証明写真(4cm×3cm、申請前3ヶ月以内撮影)
- パスポートのコピー
- 履歴書(詳細な職歴を記載)
- 実務経験証明書(前職の雇用主が発行)
- 技能を証する文書(賞状、資格証明書、コンクール入賞証明等)
- 調理師の場合:料理学校の卒業証明書や修了証明書
- パイロットの場合:技能証明書、飛行経歴書、航空身体検査証明書
受入機関(雇用企業)が準備する書類
- 雇用契約書または採用内定通知書
- 雇用理由書(なぜその外国人を雇用する必要があるか)
- 業務内容説明書(具体的な職務内容)
- 会社の登記事項証明書
- 会社案内・パンフレット
- 直近年度の決算書類(貸借対照表・損益計算書)
- 従業員名簿
- 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表のコピー
- 事業所の写真(店舗外観・内観、厨房設備など)
- 飲食店の場合:営業許可証のコピー
その他の書類
- 返信用封筒(簡易書留用、404円切手貼付)
- 身元保証書(必要に応じて)
書類はすべて日本語または英語で作成する必要があります。その他の言語の場合は日本語翻訳文を添付してください。
審査期間と結果通知
標準的な審査期間
- 在留資格認定証明書交付申請:1~3ヶ月
- 在留資格変更許可申請:2週間~1ヶ月
ただし、申請内容や入管の混雑状況によって審査期間は変動します。特に4月(新年度)前後や年末年始は申請が集中するため、通常より時間がかかる傾向があります。
結果通知の方法
許可・不許可いずれの場合も、申請時に提出した返信用封筒で通知が郵送されます。または、入管窓口で直接受け取ることも可能です。
許可後の手続き
許可通知を受け取ったら、指定された期間内(通常1週間以内)に入管窓口で在留カードを受け取ります。この際、手数料として4,000円の収入印紙が必要です。
不許可となる主なケース
技能ビザ申請が不許可となる主な理由は以下の通りです。
実務経験の不足または証明不十分
最も多い不許可理由です。必要な経験年数に達していない、または実務経験証明書の内容が不十分で実際の経験を証明できない場合、不許可となります。前職の雇用主から詳細な証明書を取得することが重要です。
職務内容と資格のミスマッチ
申請書に記載された職務内容が「技能」の在留資格で認められる範囲を逸脱している場合です。例えば、調理師として申請したのに実際にはホール業務が主な仕事内容となっている場合などです。
報酬額が不適切
日本人と同等以上の報酬という要件を満たしていない場合です。雇用契約書に記載された給与が同業他社や同地域の相場と比較して著しく低い場合、不許可となります。
受入企業の経営状況不安
雇用企業が赤字決算が続いている、債務超過状態にある、従業員への給与支払いが滞っているなど、安定的な雇用継続が困難と判断される場合です。
書類の不備・虚偽
必要書類の不足や記載内容の矛盾、虚偽の経歴や証明書の提出は重大な不許可事由です。一度でも虚偽申請が発覚すると、その後の申請でも厳しくチェックされます。
過去の入管法違反
以前の日本滞在中にオーバーステイや資格外活動などの違反歴がある場合、審査で非常に不利になります。
事業所の実態不明
飲食店の場合、実際に店舗が存在しない、営業許可を取得していない、従業員が他にいないなど、受入体制に疑義がある場合も不許可となります。
不許可を防ぐためのポイント
徹底した事前準備
実務経験証明書は詳細かつ具体的に作成してもらいましょう。勤務期間、職務内容、役職、勤務時間などを明確に記載することが重要です。
職務内容の明確化
雇用契約書や業務内容説明書には、具体的にどのような業務に従事するのか詳しく記載します。「技能」の在留資格で認められる専門的技能業務が中心であることを明示してください。
受入体制の整備
企業側は外国人を受け入れる準備を整えましょう。適切な給与設定、就業規則の整備、社会保険の加入手続きなど、法令に則った雇用環境を用意することが必要です。
専門家への相談
技能ビザは要件が複雑で、職種によって求められる証明内容も異なります。不安がある場合は、入管業務に精通した行政書士に相談することをお勧めします。
事務所紹介
行政書士法人塩永事務所は、外国人の就労ビザ申請を専門的にサポートする行政書士事務所です。
技能ビザは実務経験の証明が特に重要であり、書類準備が複雑になりがちです。当事務所では、これまで数多くの技能ビザ申請をサポートしてきた実績があり、調理師、建築技術者、パイロットなど様々な職種の申請に対応しております。
お客様の状況を丁寧にヒアリングし、必要な書類のリストアップから書類作成、入管への申請代行まで一貫してサポートいたします。特に海外にいる方を呼び寄せる場合は、現地での書類取得方法についてもアドバイスさせていただきます。
また、万が一不許可となってしまった場合でも、不許可理由を分析し、再申請に向けた適切な対応策をご提案いたします。
初回相談は無料で承っております。技能ビザの取得をお考えの企業様、外国人ご本人様は、ぜひお気軽にご相談ください。専門知識を持ったスタッフが、許可取得に向けて全力でサポートいたします。
技能ビザに関するご質問やお悩みがございましたら、行政書士法人塩永事務所までお問い合わせください。皆様の日本での就労実現を応援いたします。
