
外国人(外国法人)による会社設立完全ガイド
海外起業家・外国法人でも、日本では会社法上の国籍・居住地による設立制限はありません。実務上は在留資格、外為法(外国為替及び外国貿易法)の届出、資本金払込の方法、登記に必要な公証・翻訳などを適切に整えることで、円滑に設立・運営が可能です。本ガイドは最新の一般的実務に基づき、制度の趣旨と手続の要点を重複なく整理しています。
設立の可否と前提条件
- 会社法の原則: 国籍・居住地を理由に日本の会社設立が禁止されることはありません。事業目的も違法でない限り自由に設定できます。
- 代表者の居住地: 代表取締役が非居住者でも設立可能です(かつての「代表者の国内居住要件」は撤廃済み)。ただし、登記後の銀行口座開設や行政対応では国内居住の事務連絡担当者がいると実務がスムーズです。
- 在留資格(活動時必要): 設立そのものに在留資格は不要ですが、日本国内で報酬を伴う経営活動を行う場合は「経営・管理」など適切な在留資格が必要です。不法就労に該当すると刑事・行政上の処分対象になります。
- 外為法(FEFTA): 外国投資家による日本法人設立・出資は「対内直接投資」に該当し、事前届出の対象となりうる事業分野の確認、登記後の事後報告提出などが必要です。
株式会社設立方法と比較(合同会社含む)
| 項目 | 発起設立 | 募集設立 | 合同会社(参考) |
|---|---|---|---|
| 概要 | 発起人が全株式を引き受ける | 外部から出資者を募る | 出資者=社員で機関設計簡易 |
| 発起人数 | 1名で可 | 複数前提 | 1名で可 |
| 特徴 | 手続簡便・小規模向け | 手続複雑・大規模資本向け | コスト低・意思決定迅速 |
| 決定方法 | 発起人協議で決定 | 創立総会で決定 | 社員間合意 |
| 非居住者向け適性 | 高い(実務が簡便) | 低い(調整・書面が増える) | 高い(費用面の優位) |
推奨方針: 非居住者や外国法人は、まずは発起設立(株式会社)または合同会社での設立が実務効率に優れます。
代表者が非居住者でも設立可能な点と留意事項
- 設立要件: 非居住者のみでも登記は可能です。印鑑届出・公証人役場での定款認証・資本金払込など、基礎手続は居住の有無に関わらず進められます。
- 実務上の配慮: 銀行口座開設、税務・社会保険の手続、許認可取得では、国内連絡先・常駐担当者の設置が望ましい場合があります。
- 外為法上の届出義務: 非居住者・外国法人による設立・出資は「対内直接投資」として、事前届出(対象業種の場合)または事後報告の義務が生じます。
日本銀行経由の届出(外為法)と対象範囲
対内直接投資の該当性と届出区分
- 該当範囲: 外国投資家(非居住者・外国法人)が日本の非上場会社の株式(出資)を取得・引き受ける場合や、新会社を設立して出資する場合は、対内直接投資に該当します。上場会社の議決権取得は原則として取得割合の基準(例: 一定以上の議決権取得)で該当判定されます。
- 事前届出(該当時): 安全保障・重要インフラ等の指定業種に該当する場合、登記前(投資実行前)に日本銀行経由で財務大臣・事業所管大臣へ届出。受理後、原則30日間は投資実行が制限されます(短縮あり)。
- 事後報告(標準ケース): 指定業種に該当しない一般分野は、投資実行(登記)後に日本銀行へ所定の報告書を提出します。提出期限の目安は完了後45日以内です。
提出先・書類・違反時の措置
- 提出先: 日本銀行(対外取引審査の窓口)経由で、財務省および所管省庁に回付。
- 書類: 取得(引受)内容・投資額・投資家属性・事業内容を記載した所定様式(例: 株式・持分・議決権取得に関する報告書等)。
- 違反時の措置: 事前届出を要する取引の無届、虚偽報告等は、当該投資の中止・株式処分命令などの行政措置、刑事罰の適用対象となることがあります。
重要: 具体的な該当判定(事前届出の要否・事後報告の手続)は、業種・投資形態・取得割合で変わります。設立前に対象業種の確認と届出スケジュール設計が不可欠です。
設立の標準的な流れ(非居住者の追加対応含む)
- 基本事項の決定: 商号・本店所在地・事業目的・資本金・役員構成を確定。
- 注意(外為法): 事業目的が指定業種に該当する可能性がないかを確認。
- 定款作成・認証: 公証人役場での認証(電子定款なら印紙税不要)。
- 費用目安: 認証手数料は資本金規模に応じ概ね数万円。
- 非居住者対応: 本国発行書類の日本語訳・公証(必要に応じアポスティーユ)。
- 会社実印等の作成: 代表印・角印・銀行印を作成。
- 非居住者対応: 本国のサイン証明書で一部代替可能。
- 資本金の払込: 発起人名義の日本国内口座等へ振込し、通帳写し等で証明。
- 不可: 海外口座・海外支店からの直接払込は原則認められません。
- 補足: 払込方法は設立時点の金融実務に合わせて段取りを調整。
- 設立登記申請: 法務局へ申請、概ね1週間程度で登記完了。
- 非居住者対応: 宣誓供述書等、追加書面を準備することがあります。
- 関係機関届出: 税務署・都道府県税事務所・市区町村・年金事務所・労働基準監督署・ハローワークへ必要届出。
- 外為法報告: 対内直接投資の事後報告は登記等完了後、期限内に提出。
- 事業許認可の取得: 旅行業・飲食業・古物営業などは、所管官庁の許可・届出を事前確認のうえ順次取得。
所要期間の目安: 全体で1〜3ヶ月。非居住者は翻訳・公証・届出で期間が延びることがあります。登記は司法書士への委任も可能(報酬目安は案件規模により変動)。
経営者に必要な在留資格(概要)
- 対象: 日本で報酬を得る経営活動を行う外国人。
- 主な資格: 経営・管理、高度専門職(要件充足時)、または永住者・定住者等(活動制限なし)。
- 経営・管理の一般要件(代表例):
- 事業所の確保: 独立した事業用オフィス(原則バーチャルオフィス不可)。
- 事業の実在性・継続性: 実現可能な事業計画、運営体制、資金計画、人員計画の整合性。
- 規模要件の立証: 投資額・売上計画または常勤職員の確保等、総合的に事業の安定性を示す資料。
- 申請フロー: 登記完了 → 書類一式整備 → 出入国在留管理局へ申請(審査期間は案件により変動) → 在外公館で査証取得 → 入国・在留カード交付。
留意点: 金額や語学要件などの「一律基準」を満たせば必ず許可されるわけではありません。審査は事業の実在性・継続可能性を総合評価します。
必要書類(登記・在留・外為法)
登記関係(代表例)
- 定款(認証済)、登記申請書、資本金払込証明(通帳写し等)
- 就任承諾書、印鑑届出書、会社実印
- 印鑑証明書またはサイン証明書(本国官公署・公証役場・在外公館等)
- 非居住者関連書面(宣誓供述書など、必要に応じ)
在留資格申請(経営・管理の例)
- 本人関係: 申請書、写真、旅券写し、経歴証明等
- 会社関係: 登記事項証明、事業計画書、損益計画、定款写し、株主名簿、資金の出所資料、オフィス契約書・写真、税務届出の写し 等
外為法届出・報告
- 提出先: 日本銀行
- 書類例: 「対内直接投資に関する事前届出書」または「株式・持分・議決権取得に関する報告書」等、投資形態に応じた様式一式
- 補足: 指定業種の該当性確認、投資条件(取得割合・投資額)の記載整合性が重要
設立費用の目安(概要)
- 定款認証手数料: 資本金規模に応じ概ね数万円(電子定款なら印紙税4万円不要)
- 登録免許税: 株式会社は最低15万円(資本金×0.7%と比較の高い方)、合同会社は最低6万円
- 登記事項証明等: 数千円程度(ページ数により変動)
- 専門家報酬: 案件難易度・翻訳・公証の有無で変動(十数万円〜)
補足: 事業用オフィス費用、許認可取得費用、社会保険加入後の保険料など、初期運転資金を合わせて試算してください。
日本法人設立の主なメリット
- 信用力: 取引先・金融機関への信頼獲得、融資・口座開設での評価向上。
- 責任限定: 親会社の責任分離(原則)により、グループ全体のリスク管理が容易。
- 市場アクセス: 安定した制度・インフラ・人材基盤を活用して、国内調達・採用・許認可を円滑化。
注意点と専門家活用の価値
- 外為法の遵守: 事前届出対象の見落としは行政措置・刑事罰のリスク。スケジュールに届出期間(原則30日)を組み込む必要があります。
- 資本金払込の適法性: 海外口座からの直接払込は不可。払込方法・証明書類の整合を厳密化。
- 在留審査の実在性立証: 計画の妥当性、資金の出所、オフィス実在性、人員体制など、総合的に一貫した資料構成が不可欠。
- 許認可の事前確認: 業種ごとの所管手続の未取得は行政処分の原因。設立前から要件確認。
相談窓口(全国対応・ワンストップ支援)
- 行政書士法人塩永事務所 会社設立登記、在留資格申請、外為法届出、事業計画作成、英語等の多言語書類の翻訳・公証まで一括支援。過去の不許可事例は原因分析から再申請まで伴走します。初回相談は無料です。
- 所在地: 〒862-0950 熊本県熊本市中央区水前寺1-9-6
- 電話: 096-385-9002(平日9:00〜18:00、土曜相談可)
- メール: info@shionagaoffice.jp
- 公式サイト: https://shionagaoffice.jp/
