
外国人(外国法人)による会社設立 完全ガイド
日本銀行への届出・必要書類・申請手続きを徹底解説
監修:行政書士法人 塩永事務所(2025年11月現在の情報を反映)
はじめに
海外起業家や外国法人による日本市場参入が増加しています。日本は依然として大きな市場機会を持ち、医薬・IT・観光など複数分野で成長余地があります。外国人・外国法人は会社法上日本で法人を設立できますが、在留資格、外為法(対内直接投資)に係る届出、資本金の払込方法や外国文書の翻訳・公証など独自の手続きが発生します。本稿は当事務所の実務経験に基づき、設立可否から具体的な手続き、必要書類、注意点までを分かりやすく・正確に整理した実務ガイドです。
1. 基本判断 — 外国人(外国法人)でも設立できるか
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可能です。 日本の会社法は国籍・居住地を理由に法人設立を制限しません(事業内容が違法でないことが前提)。
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しかし、代表者が日本で経営活動(報酬を得る業務)を行う場合は**在留資格(例:経営・管理)**が必要です。不法就労は刑事罰の対象となります。
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**外為法(対内直接投資)**の規定により、非居住者または外国法人が日本法人に対して1%以上の出資を行うと届出義務が生じます。届出違反は行政処分や刑事罰の対象になります。
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代表取締役や出資者が全員非居住者でも登記は可能ですが、外為法上の届出や関連手続きを必ず行ってください。
2. 設立形態の選択(株式会社・合同会社など)
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主に**株式会社(発起設立/募集設立)と合同会社(LLC相当)**が選択肢になります。
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発起設立:発起人が全株を引き受ける方法。非居住者でも手続きが比較的簡便で実務上多く利用されます。
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募集設立:外部投資家から出資を募る場合に用いる。手続きは複雑です。
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合同会社:手数料・維持コストが低く、少人数の事業向けに合理的です。
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非居住者には発起設立や合同会社が実務面で利便性がありますが、資金調達や対外信用を重視する場合は株式会社が一般的です。
3. 代表取締役が非居住者の場合の留意点
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2015年改正以降、代表者全員が非居住者でも登記可能です。ただし外為法の届出対象となることが多く、日本銀行経由での報告が必要になります。
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審査対象は安全保障・公共秩序に関わる事項の有無などです。該当する場合は事前届出が必要で、登記前の提出と受理後の待機期間が生じます。
4. 外為法(対内直接投資)に基づく日本銀行経由の届出
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届出・報告の区分
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事前届出:特定国籍や特定業種(安全保障関連等)に該当する場合、登記前に提出し、受理後一定期間(例:30日)は登記ができない場合があります。
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事後報告(標準):登記完了後45日以内に日本銀行経由で報告する形式が一般的です。
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提出書類例:対内直接投資に関する報告書、出資関係書類、登記事項等(実務で用いる様式に従う)。
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罰則:届出義務違反や虚偽報告は行政処分・株式処分命令、場合によっては刑事罰(罰金・懲役)の対象になります。
5. 会社設立の一般的な流れ(非居住者向けポイント含む)
(目安:通常1〜3ヶ月。海外書類の翻訳・公証で時間を要する場合あり)
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基本事項の決定(1週間程度)
商号、本店所在地、事業目的、資本金、発起人・取締役等を決定。外為法該当性の有無をここでチェック。 -
定款作成と認証(1〜2週間)
公証人役場での定款認証。電子定款で印紙不要。外国語定款は日本語訳・公証が必要。 -
資本金払込(約1週間)
日本国内の口座または協力者名義口座への払込。払込証明(通帳コピー等)を準備。海外送金の履歴・証明書も重要。 -
設立登記(約1週間)
法務局へ登記申請。登記完了後、登記事項証明書を取得。 -
外為法届出(登記後45日以内が標準)
必要に応じて日本銀行経由で事後報告、または事前届出を実施。 -
関係機関への届出(設立後2週間程度)
税務署、都道府県税事務所、市区町村、年金事務所、労働局、ハローワークなどへ各種届出。 -
在留資格(経営・管理等)の申請
登記後に在留資格認定証明書交付申請(在外公館でのビザ取得が必要な場合あり)。登記前の在留資格申請は不許可リスクが高まるため注意。 -
業種別許認可(必要時)
旅行業、飲食業、古物商、建設業など事業に応じた許認可を取得。
登記・届出の一部は司法書士や行政書士に委任可能(費用の目安等は別途ご相談ください)。
6. 在留資格(外国人経営者が日本で経営する場合)
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主な在留資格:経営・管理(旧:投資・経営)、高度専門職、永住者・定住者等(永住等は活動制限なし)。
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経営・管理ビザの主要要件(2025年10月16日改正の反映)
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事業所:独立した事業所(法人名義の賃貸契約等)。バーチャルオフィスや自宅だけでは不十分な場合あり。
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資金・人員:改正後の要件を踏まえ総投資額や資本金の水準(実務上3,000万円が参照されるケースあり)、または常勤従業員の確保等が問われます。
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事業計画:実現可能な事業計画書、専門家による評価書(中小企業診断士等)の提出が求められるケースが増えています。
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申請者の適性:学歴・職歴、日本語能力等が審査されます。
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申請の流れ:登記完了 → 書類準備 → 出入国在留管理局へ認定申請 → 在外公館でのビザ取得 → 入国・在留カード取得。
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注意:改正後の要件は更新・申請時に確認が必要です。登記前に無理に在留資格申請をすると不許可リスクが高まります。
7. 提出書類(代表的なもの)
※非居住者は多くの証明書に**日本語翻訳+公証(および必要に応じアポスティーユ等認証)**が必要。発行日から日数経過した書類は受理されないことがあります(発行3ヶ月以内等の指定がある場合あり)。
登記関連
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定款(認証済み)
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設立登記申請書
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資本金払込証明(通帳の払込履歴・金融機関の証明)
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就任承諾書、取締役の印鑑届出書
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印鑑証明書またはサイン証明(本国発行・公証・在外公館の認証等)
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宣誓供述書(非居住者用の追加書類等)
外為法・日本銀行提出用
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出資関係書類、登記事項証明、株主名簿等
在留資格用(経営・管理等)
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申請書・写真・パスポート写し
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事業計画書・損益計画書(専門家の評価書含む場合あり)
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会社登記事項証明書、定款、通帳コピー、オフィス賃貸契約書、事務所写真等
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学歴・職歴証明、日本語能力証明(該当する場合)
業種別許認可関連
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業種ごとに必要な書類(例:飲食業の営業許可、旅行業の保証金・書類等)
8. 設立費用の目安(代表例)
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株式会社(目安):法定費用・登録免許税・定款認証等で概ね約25万円〜(司法書士等の手数料を含めるとさらに増加)。
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合同会社(目安):概ね約10万円〜(登記費用等を含む)。
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主な内訳:定款認証手数料、公証手数料、印紙代(電子定款で節減可)、登録免許税(最低額:株式会社15万円、合同会社6万円)、専門家手数料等。
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在留資格や外為法対応、翻訳・公証費用、オフィス準備費用は別途発生します。ビザ要件を見越した資本金準備(ケースによっては高額)が必要です。
9. メリット・デメリット(要約)
メリット
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国内での信用力向上(取引先・金融機関への信頼)
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事業展開の自由度(現地雇用・販売・契約締結等)
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市場機会とインフラの活用(高い購買力・安定した法制度)
デメリット / 留意点
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外為法・在留資格など特有の手続き負担
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翻訳・公証・各種届出の手間と期間
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資本金や事業計画での審査強化(特にビザ関連)
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法令違反や届出怠りは重大な行政処分や刑事罰のリスク
10. よくある失敗例と回避策
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外為法届出を怠る → 行政処分や罰則。設立前に対内直接投資該当性の確認を。
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海外書類の翻訳・公証不足 → 登記やビザで差戻し。翻訳・公証・認証手順を確認の上手配。
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事業計画が不十分でビザ不許可 → 専門家による計画書作成・専門家評価書を活用。
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資本金払込の手続を誤る → 海外支店口座等の誤使用に注意。日本国内での払込証拠を整備。
11. 当事務所のサポート内容
行政書士法人 塩永事務所は、熊本を拠点に全国対応で以下をワンストップで支援します。
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会社設立の方針策定(形態選定・資本金設計)
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定款作成・認証支援、登記書類作成(司法書士との連携可)
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外為法(日本銀行経由)届出の代行・アドバイス
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在留資格(経営・管理等)申請書類作成支援(専門家評価書作成サポート含む)
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翻訳・公証・アポスティーユ等の手配支援
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許認可取得の支援、税務・社会保険手続の案内
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不許可事例の原因分析と再申請支援
実務での不許可事例の分析経験が豊富で、書類整備や事前確認に重点を置き、リスク低減を図ります。
12. まとめと問い合わせ先
外国人(外国法人)による日本での法人設立は法的には可能ですが、外為法届出、在留資格要件、外国書類の翻訳・公証など特有の対応が必要です。手続きの不備は登記不受理・届出不備・在留資格不許可など重大な問題につながるため、経験ある専門家による事前確認と代行をおすすめします。
行政書士法人 塩永事務所
所在地:〒862-0950 熊本県熊本市中央区水前寺1-9-6
電話:096-385-9002(平日9:00〜18:00、土曜相談可)
メール:info@shionagaoffice.jp
公式サイト: https://shionagaoffice.jp/
初回相談は設立方針の確認と必要書類の概略チェックから。当事務所での対応範囲(設立登記、外為法届出、在留資格申請、翻訳・公証手配、許認可取得)についてはお気軽にお問い合わせください。
