
外国法人による建設業許可申請 —
外国法人であっても、建設業法の要件を満たせば日本国内で建設業許可を取得できます。本稿は、当事務所が支援してきた多数の事例を踏まえ、申請の流れと必要要件を分かりやすく、かつ整理したものです。特に2025年10月16日施行の在留資格「経営・管理」改正により、日本法人を設立して経営・管理ビザを取得する場合の資本金要件が引き上げられている点にご注意ください(支店設置の場合は影響が小さいことが多いです)。
1. 日本での拠点形態の選択と営業可否(概要)
日本国内で建設業の営業活動を行うために選べる主な拠点形態は次のとおりです。建設工事の受注・施工など営業活動を行う場合は「駐在事務所」以外の形態を選択する必要があります。
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日本法人(株式会社等)
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営業活動:可
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資本金:実務上の基準(一般許可で実務上500万円程度の目安、在留資格「経営・管理」改正後は当該ビザ取得を前提とする場合3,000万円以上が推奨されるケースあり)
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登記:必要
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銀行口座:開設可能
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代表者のビザ例:経営・管理 等
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従業員雇用:可能
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日本支店(外国法人の在外支店)
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営業活動:可
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資本金:本国法人資本の概念で対応(日本法人の資本金規定は不要)
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登記:必要(本国法人の登記事項証明等を用いて登記)
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銀行口座:開設可能
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代表者のビザ例:企業内転勤 等
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従業員雇用:可能
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駐在事務所
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営業活動:不可(情報収集・連絡・調査等に限定)
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許可取得:営業活動ができないため、建設業許可取得のためには日本法人または日本支店の設置が必要
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注:支店を選ぶ場合は、本国法人の登記事項や法人証明書類が許可申請で重要になります。
2. 建設業許可の主な要件(外国法人も日本法人と同等)
外国法人であっても、建設業許可に関する基準自体は日本法人と変わりません。ただし、国外での役員経験や技術者経験、財務情報を使う場合は、それらの実態を裏付ける書類(翻訳・公証・認証)が必要となり、書類準備が複雑になります。主要要件は以下の通りです。
(1) 経営業務の管理責任者(常勤の役員等)
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建設業の経営業務を統括する常勤の役員(経営業務の管理責任者)を置くことが必須。
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原則として経営経験が5年以上あることが求められる。
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海外での経営経験を根拠とする場合は、国土交通大臣による**個別認定(大臣認定)**の取得が必要。認定では工事契約書、組織図、給与明細等を用いた実態審査が行われます。
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大臣認定は許可申請前に本省(国土交通省)へ申請します(認定取得まで通常数か月を要することがあるため早めの対応が重要です)。
(2) 営業所ごとの専任技術者
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各営業所に、国家資格保有者または5年以上の実務経験者を専任技術者として常勤配置すること。
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海外での技術経験を根拠とする場合も大臣認定が必要になる場合があります。
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営業所は**実態ある事業所(バーチャルオフィス不可)**であることが求められます。所在地の実在性を示す資料で確認されます。
(3) 財産的基礎(資金的基盤)
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一般建設業許可では、自己資本や資金調達能力の証明が必要で、実務上500万円程度の自己資本が目安とされています(特定建設業の場合は大きく異なり8,000万円程度の規模要件がある)。
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外国法人の支店が申請する場合、本国法人の貸借対照表・損益計算書等を翻訳・公証して提出する必要があります。
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日本法人を新設して申請する場合は、上記の在留資格改正(2025年10月16日施行)を踏まえた資本金準備を検討してください。
(4) 社会保険加入
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日本で従業員を雇用する場合、健康保険・厚生年金・雇用保険への加入が義務付けられています。
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許可申請時に加入状況の確認がなされるため、未加入の場合は申請前に手続きを完了させてください。
(5) 誠実性要件(欠格事由の不存在)
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過去5年以内に重大な法令違反(脱税・建設業法違反等)がないこと、破産手続中でないことなどを確認されます。
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外国法人については本国での違反歴も審査対象となります。必要に応じ本国の証明書類(無犯罪証明や行政処分の有無証明)を準備します。
3. 大臣認定(海外経験の取扱い)および事前相談
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海外での経営経験や技術経験を根拠に要件を満たす場合は、国土交通大臣による**個別認定(大臣認定)**が必要になるケースが多いです。
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大臣認定申請は許可申請の前に行い、取得までにおおむね3〜6か月程度かかることがあるため、早期着手が重要です(期間は個別事情により前後します)。
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許可申請前に、管轄の都道府県土木(建築)担当窓口へ事前相談を行うことを強く推奨します。事前相談で必要書類や補足説明の方針を確認し、実態を裏付ける証拠(公証済みの工事実績、契約書、組織図、給与証明等)を揃えましょう。
4. 許可申請の流れと必要書類(概略)
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要件の整理・書類準備
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定款(日本法人の場合)・登記事項証明書(本国法人・日本支店の登記関連)
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役員の履歴書・職務経歴書(国外経験を裏付ける証拠の翻訳・公証含む)
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財務諸表(翻訳・公証)・資本金証明・資金計画書
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専任技術者の資格証明・実務証明書類
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社会保険加入関係の手続き書類(必要時)
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(該当する場合)大臣認定申請(国土交通省へ)
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海外での経営・技術の実績を根拠に申請。実態確認資料の提出が必要。
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都道府県知事(あるいは所轄の大臣)へ建設業許可申請
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大臣認定取得後、または国内要件を満たしたうえで申請。
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必要書類:定款・登記事項証明書、役員経歴書、財務諸表(翻訳)、大臣認定通知書(該当時)等
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審査期間と補正
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通常、申請から許可決定まで1〜2か月程度が目安(書類不備や追加確認があると延長)。
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書類不備が見つかった場合は再提出・補正が必要になり、その分期間が延びます。事前チェックを専門家に依頼するとスムーズです。
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5. 外国法人ならではの留意点(チェックリスト)
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本国書類の**翻訳(日本語)・公証・必要に応じて在外公館での認証(アポスティーユ等)**を行うこと。
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海外での工事実績や契約書は原本+翻訳+公証で実態を示すこと。
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営業所の実態確認(賃貸契約書、事務所の写真、電気・通信料金の領収書等)を用意する。
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社会保険の加入や税務上の整理(日本側で従業員を雇う場合)を事前に整える。
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本国の行政処分・罰則歴の有無確認。必要に応じて無処分証明等を取得する。
6. 当事務所の支援内容(ご利用の流れ)
当事務所(行政書士法人 塩永事務所)は、外国法人の建設業許可に関して下記を一括で支援します。
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初期相談(拠点形態の選定、在留資格改正の影響整理を含む)
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必要書類のリストアップと翻訳・公証のサポート方針策定
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国土交通省の大臣認定(必要時)申請書類作成・提出支援
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都道府県への建設業許可申請書類作成・申請代行
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更新・業種追加・補正対応までのワンストップ支援
専門チームが申請者様と連携し、書類の抜け漏れや実態不足がないようチェックします。海外書類の取り寄せや各種証明の取り扱いについても豊富な実績がありますので、初めての案件でも安心してご相談ください。
7. お問い合わせ先
ご相談・お見積りは下記までご連絡ください。初回相談は申請方針の確認と必要書類の概略チェックから開始します。
行政書士法人 塩永事務所
電話:096-385-9002
メール:info@shionagaoffice.jp
