
農地転用の手続きを徹底解説 ~土地活用の第一歩を行政書士がサポート~
行政書士法人塩永事務所
こんにちは、行政書士法人塩永事務所の塩永です。私どもは、土地利用に関する許認可手続きを専門とし、数多くの農地転用案件をサポートしてまいりました。近年、地方の空き地活用や住宅・商業施設の開発が増加し、農地を有効利用するための「農地転用」への関心が高まっています。しかし、手続きは複雑で、農地法の規制を遵守しなければ罰則の対象となる可能性があります。本記事では、農地転用の基本から手続きの流れ、費用、注意点までをわかりやすく解説いたします。ご相談はいつでもお気軽にどうぞ。
1. 農地転用とは?基本的な概要
農地転用とは、農地を農業以外の用途(例:宅地、工業用地、道路など)に変更するための制度です。これは、農地法(昭和27年法律第229号)に基づき、食糧生産基盤を守るために設けられた仕組みです。転用が認められるのは、農業生産に支障がない場合に限られ、許可または届出が必要です。
主な転用事例:
- 住宅や店舗の建設
- 太陽光発電施設の設置
- 道路や公園の整備
転用の必要性は、都市部では土地不足解消、地方では遊休農地の有効活用という観点から高まっています。農林水産省のデータによると、指定市町村制度の導入により、手続きの簡素化が進んでいます。
2. 農地転用の種類:3条・4条・5条の違い
農地転用に関する手続きは、農地法の第3条、第4条、第5条に基づいて区分されています。それぞれの違いを理解することが、適切な申請への第一歩です。
農地法第3条許可(権利移動のみ)
農地を農地のまま、所有権や使用権などの権利を移転する場合に必要な許可です。転用を伴わず、農業を継続することが前提となります。
対象となるケース:
- 農家が別の農家に農地を売買する場合
- 農地を賃貸借する場合
- 農地の贈与や相続による権利移転
許可基準(主なポイント):
- 権利を取得する者が農業経営を行うこと
- 必要な農作業に常時従事すること(原則年間150日以上)
- 取得後の農地面積が一定規模以上であること(地域により異なるが、一般的に北海道で2ha、都府県で50a程度)
- 周辺の農地利用に支障がないこと
申請先: 農業委員会
審査期間: 約1ヶ月程度
農地法第4条許可(自己転用)
農地の所有者が、自らその農地を農業以外の用途に転用する場合に必要な許可です。所有権の移転は伴いません。
対象となるケース:
- 自己所有の農地に自宅を建てる場合
- 自己所有の農地に倉庫や工場を建設する場合
- 自己所有の農地を駐車場にする場合
申請先:
- 市街化区域内:市町村農業委員会(届出制)
- 市街化区域外(4ha以下):都道府県知事または指定市町村長
- 市街化区域外(4ha超):農林水産大臣(都道府県知事経由)
農地法第5条許可(権利移動を伴う転用)
農地を農業以外の目的に転用し、かつ所有権や使用権などの権利移転を伴う場合に必要な許可です。第3条と第4条の要素を併せ持つ手続きといえます。
対象となるケース:
- 農地を購入して住宅を建てる場合
- 農地を借りて太陽光発電施設を設置する場合
- 農地を買って商業施設を開発する場合
申請先:
- 市街化区域内:市町村農業委員会(届出制)
- 市街化区域外(4ha以下):都道府県知事または指定市町村長
- 市街化区域外(4ha超):農林水産大臣(都道府県知事経由)
審査期間: 約1~2ヶ月程度
重要ポイント: 第5条許可の場合、売主(農地所有者)と買主(転用事業者)が共同で申請する必要があります。両者の連署が求められるため、事前の合意形成が不可欠です。
3. 特に重要!農地法第3条許可申請の詳細解説
3条許可が必要な理由
農地法第3条は、「農地を農地として利用し続ける」ことを前提とした権利移動を規制しています。これは、農地が適切な農業従事者の手に渡り、耕作放棄や投機的な取引を防ぐためです。日本の食料安全保障を守る上で、極めて重要な規定といえます。
3条許可の申請要件(詳細)
① 農業経営要件
権利を取得する者(買主、借主)は、農業経営を行う意思と能力が必要です。具体的には以下の点が審査されます。
- 常時従事要件:年間150日以上農作業に従事すること。兼業農家の場合でも、主たる従事先が農業であることが求められます。
- 農業機械・施設の保有:トラクターや農機具など、実際に農業を営むための設備があるか。
- 技術・知識:農業経験や研修受講歴など、農業を継続できる能力があるか。
② 農地面積要件(下限面積)
取得後の経営農地面積が一定規模以上である必要があります。これは地域によって異なります。
- 北海道:2ha(20,000㎡)以上
- 都府県:原則50a(5,000㎡)以上
- 一部地域:市町村が独自に下限面積を引き下げている場合あり(最小10a程度)
③ 効率的利用要件
取得する農地を適切に利用できることが必要です。
- 農地までの距離が遠すぎないか(通作可能な範囲か)
- 耕作に必要な労働力が確保できるか
- 既存の農地と合わせて効率的な経営ができるか
④ 周辺農地への影響
周辺の農業経営に悪影響を及ぼさないことが求められます。
- 取得者の営農計画が周辺と調和しているか
- 水利用や農道使用に関して問題がないか
⑤ 地域調和要件
取得者が地域の農業コミュニティに溶け込めるかも考慮されます。特に中山間地域では、集落営農や共同作業への参加意欲が重視されることがあります。
3条許可申請の必要書類(標準例)
申請に必要な書類は自治体によって多少異なりますが、一般的には以下の通りです。
基本書類
- 農地法第3条許可申請書(農業委員会指定様式)
- 申請農地の登記事項証明書(全部事項証明書、発行後3ヶ月以内)
- 申請農地の位置を示す図面(公図の写し)
- 申請農地の現況写真(複数方向から撮影)
権利取得者(買主・借主)に関する書類
- 住民票(世帯全員分、発行後3ヶ月以内)
- 営農計画書(作付予定作物、経営規模、販売計画などを記載)
- 農業機械・施設の保有状況を示す書類(購入予定の場合は見積書など)
- 既存農地の状況(既に農地を持っている場合、その登記事項証明書や位置図)
- 農業従事日数を証明する書類(農業委員会への届出実績、農業共済加入証明など)
権利譲渡者(売主・貸主)に関する書類
- 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
- 同意書(売買契約書または賃貸借契約書の写し)
その他の書類(必要に応じて)
- 相続人全員の同意書(相続農地の場合)
- 法人の定款・登記事項証明書(法人が取得する場合)
- 地域の農業者の意見書(一部地域で要求される場合あり)
3条許可申請の手続きの流れ(ステップバイステップ)
STEP 1:事前相談(必須)
まずは農業委員会への相談が不可欠です。以下の点を確認しましょう。
- 対象農地が3条許可の対象か(農地台帳で確認)
- 申請要件を満たしているか
- 必要書類の詳細
- 申請のタイミング(農業委員会の総会日程に合わせる必要があります)
所要時間: 半日~1日程度
STEP 2:書類の準備
必要書類を収集・作成します。特に営農計画書は詳細に記載することが重要です。
営農計画書に記載すべき内容:
- 作付予定作物(具体的な品種まで)
- 栽培面積の配分
- 年間の作業スケジュール
- 収穫量の見込み
- 販売先や販売方法
- 必要な農業機械・資材
- 労働力の確保方法(家族労働、雇用労働など)
所要時間: 1~2週間程度(測量や契約書作成が必要な場合はさらに時間がかかります)
STEP 3:申請書の提出
農業委員会に申請書一式を提出します。多くの自治体では、月1回開催される農業委員会総会で審議されるため、提出期限に注意が必要です。
提出期限の例:
- 総会が毎月25日の場合、申請締切は前月末や当月10日など(自治体により異なる)
所要時間: 提出自体は数時間
STEP 4:現地調査
農業委員会の委員が現地を視察し、農地の状況や周辺環境を確認します。申請者の立ち会いが求められる場合もあります。
チェックポイント:
- 農地が適切に管理されているか
- 申請内容と現況が一致しているか
- 周辺農地への影響はないか
所要時間: 半日程度
STEP 5:農業委員会総会での審議
提出された申請書が総会で審議されます。申請者が直接出席することは通常ありませんが、追加説明を求められる場合もあります。
審議のポイント:
- 申請要件を満たしているか
- 営農計画の実現可能性
- 地域農業への影響
所要時間: 総会当日(2~3時間程度)
STEP 6:許可証の交付
総会で許可が決定されると、後日許可証が交付されます。この許可証をもって、正式に権利移動が可能となります。
所要時間: 総会後1~2週間
全体の所要期間: 申請から許可まで約1~1.5ヶ月
3条許可が不許可になるケース
以下のような場合、不許可となる可能性が高いです。
- 農業従事の実態がない:週末だけの趣味的な農業では認められません。
- 下限面積を満たしていない:取得後の総面積が基準に達しない場合。
- 通作距離が遠すぎる:自宅から農地まで通うことが現実的でない場合。
- 投機目的と判断される:転売目的や、将来の転用を前提とした取得と見なされる場合。
- 周辺農地への悪影響:水利用のトラブルや、農薬使用に関する懸念がある場合。
3条許可申請の費用
- 申請手数料:無料~数千円(自治体により異なる)
- 登記事項証明書:1通600円程度
- 測量費:必要な場合、5~15万円程度
- 行政書士報酬:5~15万円程度(複雑な案件では20万円以上の場合も)
- 所有権移転登記費用:登録免許税(固定資産評価額の2%)+ 司法書士報酬5~10万円
3条許可後の注意点
許可証の有効期限
3条許可には通常、有効期限はありませんが、許可後速やかに権利移動の登記を行う必要があります。長期間放置すると、許可が取り消される可能性もあります。
農地の適正利用義務
許可取得後も、農地として適切に利用し続ける義務があります。耕作放棄が続くと、農業委員会から指導や勧告を受ける可能性があります。
転用への制限
3条許可で取得した農地は、農地として利用することが前提です。後に宅地などへ転用する場合は、別途4条または5条の許可が必要です。
4. 市街化区域と市街化調整区域の違い
農地転用の手続きは、土地の所在地によって大きく異なります。
| 区分 | 手続きの種類 | 申請先 | 概要 |
|---|---|---|---|
| 市街化区域内 | 届出制 | 市町村農業委員会 | 都市計画区域内の農地。農業への影響が少ないため、簡易手続き。転用面積に制限なし。 |
| 市街化区域外(4ha以下) | 許可制 | 都道府県知事または指定市町村長 | 地方の農地。許可基準を満たせば比較的スムーズ。 |
| 市街化区域外(4ha超) | 許可制 | 農林水産大臣(都道府県知事経由) | 大規模転用。農業振興計画との整合性を厳しく審査。 |
届出制の場合: 申請後、1週間~10日程度で受理通知が届きます。許可制より負担が軽く、受理後すぐに転用可能です。
許可制の場合: 審査期間は約6週間~2ヶ月。許可基準として、①農業生産への影響が小さいこと、②用途地域に適合すること、③事業計画の妥当性などが挙げられます。
5. 転用手続きの全体的な流れ(4条・5条の場合)
STEP 1:事前相談
転用予定地の農業委員会または都道府県の農業担当窓口で相談します。土地の区分確認と必要書類のアドバイスを受けます。
所要時間: 1~2日
STEP 2:書類の準備
必須書類は以下の通りです。法務局や自治体で取得可能です(発行から3ヶ月以内のものに限る)。
- 許可申請書または届出書(農業委員会で入手)
- 農地の登記事項証明書
- 住民票(申請者分)
- 公図および配置図(1/400スケール推奨)
- 事業計画書(転用後の用途、面積、工期を明記)
- 同意書(所有者・相続人分、譲渡の場合は第5条申請で連署)
測量が必要な場合、専門業者に依頼(費用:5~10万円程度)。
STEP 3:申請・審査
農業委員会へ提出します。審査では近隣農家の意見聴取や環境影響評価が行われることがあります。許可が下りたら、転用工事を開始できます。
STEP 4:転用完了後の届出
工事完了後、完了届を提出します。転用農地は登記変更(地目変更)が必要です。
全体の所要期間: 届出制で1~2週間、許可制で1.5~2ヶ月
6. 費用と注意点
費用の目安
- 手数料:届出・許可ともに数千円(自治体による)
- 測量費:5~15万円
- 行政書士報酬:10~30万円(案件の複雑さによる)
- 登記費用:登録免許税+司法書士報酬で10~20万円
重要な注意点
- 無許可転用は厳禁:罰金(最高100万円)や原状回復命令の対象となります。
- 優良農地の制限:農業振興地域内の農用地区域(青地)や、第1種農地は原則転用不可。
- 太陽光発電の特例:再生可能エネルギー施設の場合、環境省のガイドラインや固定価格買取制度(FIT)の要件も確認が必要です。
- 相続農地の注意点:相続人全員の同意が必要な場合があります。
まとめ:スムーズな農地転用を実現するために
農地転用は、土地の価値を最大化する重要なステップですが、特に第3条許可のような農地の権利移動には厳格な要件があり、専門知識が不可欠です。当事務所では、事前相談から申請代行、登記手続きまで他士業と連携しワンストップで対応いたします。お客様の事業実現を全力でサポートいたします。
ご質問や無料相談をお待ちしています。お電話(096-385-9002)またはお問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。貴社の土地活用を、行政書士法人塩永事務所がバックアップいたします!
行政書士法人塩永事務所
住所:熊本市中央区水前寺1-9-6
TEL:096-385-9002
Email:info@shionagaoffice.jp
