
【熊本の建設業の方へ】事業年度終了変更届について
建設業許可を受けている事業者の皆様は、毎年、事業年度終了後4ヶ月以内に事業年度終了届(決算変更届)を作成し、提出する法的義務があります。この手続きを怠ると、将来的に建設業許可の更新ができなくなる可能性がありますので、十分にご注意ください。
事業年度終了届出とは
事業年度終了届出とは、建設業許可を受けた事業者が、決算期ごとに変動する財務内容や工事施工実績などの経営状況を「事業年度終了届出書」(決算変更届)としてまとめ、許可行政庁に報告する制度です。
建設業法第11条に基づき、この届出は毎事業年度(決算期)経過後4ヶ月以内に必ず提出しなければなりません。この届出義務は、建設業許可を維持するための重要な要件の一つであり、提出を怠ると許可の更新ができなくなるリスクがあります。
建設業許可更新時における重要性
建設業許可の有効期間は5年間であり、許可を継続する場合は更新申請が必要です。更新申請の際には、前回の許可申請または更新申請から今回の更新申請までの期間における、全ての事業年度終了届出書が適切に提出されていることを確認するため、事業年度終了届出書の副本を全て(通常は5期分)提示することが求められます。
したがって、毎年確実に事業年度終了届を提出していない場合、5年後の許可更新手続きにおいて大きな支障が生じ、最悪の場合、建設業許可を失うおそれがあります。特に、過去の届出書を紛失している場合や、提出していない年度がある場合は、更新手続きが非常に複雑になり、許可の継続が困難になる可能性があります。
提出期限について
事業年度終了届の提出期限は、事業形態によって異なりますので、ご注意ください。
法人の場合
事業年度(決算期)が終了してから4ヶ月以内が提出期限となります。 例えば、3月決算の法人であれば、3月31日に事業年度が終了するため、7月31日が提出期限となります。
個人事業主の場合
個人事業主の事業年度は、開業時期に関わらず、暦年(1月1日から12月31日まで)と法律で定められています。したがって、12月31日に事業年度が終了し、提出期限は翌年の4月30日まで(4月末日)となります。
提出までのスケジュールと注意点
事業年度終了届の作成には、税務署に提出する決算報告書(税理士等が作成)が必要不可欠です。しかし、建設業法に基づく財務諸表は、税務用の決算報告書をそのまま使用することはできず、建設業法特有の様式と勘定科目に従って作成し直す必要があります。
実務上、決算報告書の作成完了を待ってから事業年度終了届の作成に取り掛かることになるため、実質的に事業年度終了届の作成・提出に使える期間は、決算報告書作成に要する時間を除いた約2ヶ月程度となります。この限られた期間内に、建設業法に準拠した複雑な書類を正確に作成し、提出しなければなりません。
期限に遅れることのないよう、計画的に準備を進めることが重要です。
提出に必要な書類
事業年度終了届の提出には、以下の書類が必要です。事業形態(法人・個人事業主)によって必要書類が一部異なりますので、ご注意ください。
【全事業者共通の必要書類】
■ 変更届出書(表紙) 届出書の表紙となる書類で、事業者の基本情報や提出年度などを記載します。
■ 工事経歴書 許可を受けている建設業種ごとに、当該事業年度中に施工した主要な工事について記載します。記載内容としては、注文者名、工事名称、工事を行った場所、元請・下請の別、請負金額、配置技術者の氏名などが含まれます。
なお、工事経歴書に記載を要する完成工事の範囲は、経営事項審査を受ける事業者と受けない事業者では異なります:
- 経営事項審査を受けない場合:主要な工事のみを記載
- 経営事項審査を受ける場合:全ての完成工事を記載
■ 直前3年の各事業年度における工事施工金額(3期分) 申請日より直近3年分の各事業年度において完成した建設工事の施工金額を、許可を受けている業種ごとに区分して記載します。許可を受けていない建設工事については、「その他の建設工事」の欄に施工金額を記載します。
■ 納税証明書 納税証明書は、許可権者(熊本県知事許可または国土交通大臣許可)と事業形態(個人・法人)によって、必要な種類が異なります。
(熊本県知事許可の場合)
- 個人事業主:個人事業税の納税証明書
- 法人:法人事業税の納税証明書
(国土交通大臣許可の場合)
- 個人事業主:申告所得税(その1)の納税証明書
- 法人:法人税(その1)の納税証明書
【財務諸表】
以下の財務諸表は、税理士が作成した税務用の決算報告書をそのまま転記して提出することはできません。建設業法に基づく特有の様式と勘定科目に従って、建設業用の財務諸表として作成し直す必要があります。また、個人事業主と法人では使用する様式が異なりますので、十分注意してください。
■ 貸借対照表(財務諸表) 法人用と個人事業主用で様式が異なります。建設業法特有の勘定科目(未成工事支出金、完成工事未収入金など)があり、建設簿記の知識に基づいて正確に作成する必要があります。
■ 損益計算書(財務諸表) 法人用と個人事業主用で様式が異なります。建設業法特有の勘定科目(完成工事高、完成工事原価など)があり、建設簿記の知識に基づいて正確に作成する必要があります。
【法人のみ必要な書類】
以下の書類は、法人の場合のみ提出が必要です。
▲ 完成工事原価報告書(財務諸表) 完成工事に要した原価の内訳を示す報告書です。材料費、労務費、外注費、経費などに区分して記載します。
▲ 株主資本等変動計算書(財務諸表) 株主資本(資本金、資本剰余金、利益剰余金など)の当期における変動状況を示す計算書です。
▲ 注記表(財務諸表) 財務諸表に関する重要な会計方針や補足情報を記載する書類です。
▲ 事業報告書 会社の事業内容、役員の状況、株式の状況などを報告する書類です。
専門家へのご相談をお勧めします
事業年度終了届の作成は、建設業法特有の複雑な様式と勘定科目の理解が必要であり、一般的な決算書類の作成とは大きく異なります。書類の不備や記載ミスがあると、受理されなかったり、補正を求められたりして、提出期限に間に合わなくなる可能性があります。
また、毎年確実に提出することが建設業許可の維持に不可欠ですので、計画的かつ正確な手続きが求められます。
熊本県内の建設業における事業年度終了届の作成・提出サポートは、建設業許可手続きに精通した行政書士法人塩永事務所にお任せください。
私たちは、建設業法に基づく正確な財務諸表の作成から提出までを一括してサポートし、お客様の建設業許可維持を確実にお手伝いいたします。
お問い合わせ先
行政書士法人塩永事務所
- 電話:096-385-9002
- メール:info@shionagaoffice.jp
事業年度終了届に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。経験豊富な専門スタッフが、丁寧にサポートいたします。
