
【行政書士法人 塩永事務所】日本版DBS(こども性暴力防止法)認定手続きの全体像と実務ポイント
日本版DBS、正式名称「こども性暴力防止法」(子どもに対する性暴力の防止及び性犯罪を犯した者の円滑な社会復帰の促進に関する法律)に基づく認定制度は、民間教育保育等事業者(以下「事業者」)が、性犯罪歴の確認(以下「犯罪事実確認」)を適切に実施していることを国が証明するものです。
本稿では、事業者が単独で、または事業運営者と共同で認定を受けるために定められる、政令・内閣府令・ガイドライン等に基づき整備される予定の認定手続きの全体像と、実務上の重要なポイントについて、行政書士の視点から解説します。
1. 認定等手続きの全体像と法的位置づけ
認定または共同認定は、こども家庭庁による厳格な審査を経て付与されます。この手続きの詳細は、法律を補完する政令、内閣府令、ガイドライン、およびマニュアルによって具体的に整備される予定です。
手続きにおいては、主に以下の事項が定められます。
- 手続の流れ:申請から認定・不認定通知に至るまでの標準的なプロセス。
- 申請書の記載事項と添付書類:認定基準適合性を証明するために必要な情報。
- 標準処理期間:行政庁が申請を受理してから処分を下すまでに要する標準的な期間。
- 手数料:申請に際して必要な費用。
2. 申請手続きの流れと標準処理期間に関する留意点
申請方法
原則として、**e-Gov(電子申請サービス)**を通じてオンラインで行います。共同認定の場合は、双方(事業者と事業運営者)が内容を確認・合意した上で申請することが求められます。
審査の流れ(フロー)
- 申請書の提出:事業者が認定申請または共同認定申請をe-Govを通じて提出。
- こども家庭庁による審査:申請内容の法令および認定基準への適合性を確認。
- 補正指示と対応:記載事項の不備や添付書類の不足等がある場合、補正(修正・追加)の指示が行われます。
- 補正内容の確認:提出された補正内容を審査。
- 認定または不認定の通知:審査結果に基づき、認定の可否が通知されます。
- 手数料の納付:単独申請の場合、認定通知後に定められた手数料を納付します。
標準処理期間の想定と実務上の注意点
標準処理期間は1〜2か月と想定されています。
【実務上の注意点】 この期間は、申請が受理されてから審査完了までの目安であり、申請者側の事情による期間は含まれません。特に補正指示への対応や追加書類の準備に要する期間は含まず、実質的な認定取得までの期間はこれより長くなる可能性があります。申請前の十分な準備と、迅速な補正対応が早期認定の鍵となります。
3. 申請書記載事項と添付書類の詳細
認定の可否は、提出された書類によって認定基準への適合性が証明できるかにかかっています。特に犯罪事実確認の実施体制を示す書類は重要となります。
申請書に記載すべき主な事項
- 事業者情報:氏名、住所、法人の場合は代表者氏名。
- 事業情報:事業の概要、該当する事業区分、事業所の名称と所在地。
- 業務従事者情報:対象業務従事者の業務概要、対象従事者数、GビズIDなどの識別情報。
- 共同認定の場合は、事業運営者(国・地方公共団体等)の情報も追加で必要。
添付書類の主な例
- 事業および従事者の業務を示す資料:事業内容が確認できる資料。
- 認定基準適合性証明資料:特に、適切な犯罪事実確認の実施体制を整備していることを証する資料。
- 児童対象性暴力等対処規程:性暴力が発生した場合の具体的な対処方針を定めた規程。
- 犯罪事実確認の誓約書:犯罪事実確認を法令に基づき実施する旨の誓約書。
- 基礎情報:法人定款、登記事項証明書(法人の場合)、住民票(個人の場合)。
- 管理体制:情報管理規程、役員の略歴資料など。
4. 手数料に関する行政書士としての解説
認定申請には、**1事業あたり約3万円(試算)**の手数料が予定されています。
手数料が不要となるケース
手数料の徴収は、国または自治体の関与の度合いによって判断が異なります。
- 国・自治体が単独で申請する場合:公的機関の申請であるため不要。
- 国・自治体と事業者による共同認定申請:事業運営者として公的機関が共同で申請する場合。
- 事業開始前の準備行為:指定管理者制度の準備行為や委託の準備行為を行い、その後に国・自治体と共同認定を行う場合。
手数料が必要となるケース(最も注意が必要)
- 民間教育保育等事業者としての単独申請:たとえ国や自治体から業務の委託を受けている場合であっても、事業者が単独で認定申請を行う場合は手数料が必要となります。
5. 認定情報等の公表および認定マークの使用
認定等の公表手続き
こども家庭庁は、認定の透明性を確保し、保護者等の判断材料とするため、以下の事由が発生した場合に認定情報を公表します。
- 認定を行ったとき
- 公表事項に変更届があったとき
- 犯罪事実確認の完了届があったとき
- 認定事業の廃止届があったとき
- 認定を取り消したとき
公表内容には、事業者名・所在地、代表者名、事業概要、認定年月日、フランチャイズの有無などが含まれます。
認定マークの表示について
認定事業者は、認定を受けた事業であることを証明するため、広告や物品に認定マークを表示できます。
【使用可能となる主な対象例】 事業所の看板、受付、制服などの事業用物品、パンフレット、ウェブサイト、広告、契約書、求人広告など。
【厳守すべき利用条件】
- 未認定事業との混同防止:認定事業と未認定事業を明確に区別して表示しなければなりません。
- フランチャイズ(FC)事業:FC本部が認定を受けていても、FC事業者が個別に認定を受けていない場合は使用不可です。
- 名刺:対象業務従事者のみが使用可能です。退職時には回収が必須と定められています。
まとめ
日本版DBSの認定制度は、「犯罪事実確認を適切に実施している事業者」と「そうでない事業者」を明確に区別し、保護者や利用者の信頼と安心を構築するための極めて重要な制度です。
行政書士として、この認定制度の実務上のポイントを整理し、事業区分に応じた適切な申請手続き、必要書類の整備、およびコンプライアンス体制の構築をサポートいたします。認定の取得は、事業の信頼性を高める上で不可欠な要素となりますので、制度開始に向けて万全の準備を進めてください。
行政書士法人 塩永事務所では、本制度に関する各種規程の作成支援、申請代行、コンプライアンス体制整備に関するご相談を承っております。
ご不明な点や具体的な申請準備についてのご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
