短期滞在ビザは、観光、商用、親族・知人訪問などを目的に日本に短期間滞在する外国人のための在留資格です。正式名称は「短期滞在」（出入国管理及び難民認定法別表第一の三）。本ガイドでは、制度概要、申請手続き、必要書類、注意点を実務的に解説します。
1. 短期滞在ビザの概要1-1. 短期滞在ビザとは外国人が日本に一時的に滞在するための在留資格で、以下の特徴があります：
- 滞在期間：15日、30日、または90日以内
- 主な目的：
- 観光（文化・歴史・自然の見学等）
- 商用（会議、商談、展示会参加等、報酬を伴わないもの）
- 親族・知人訪問
- 学術・文化交流（講演、学会参加等）
- スポーツ・芸術活動（競技会、公演、展覧会等）
- 研修・見学（技術研修、工場視察等）
- その他（医療受診、冠婚葬祭等）
制限事項：
- 就労（報酬を伴う活動）は禁止
- 在留期間の延長は原則不可
- 他の在留資格への変更は原則不可（特例を除く）
1-2. ビザ免除制度との関係日本は68の国・地域とビザ免除協定を締結。対象国の国民はビザなしで入国可能です。
- 主なビザ免除国・地域：
- アジア：韓国、台湾、香港、シンガポール等
- 北米：米国、カナダ
- オセアニア：オーストラリア、ニュージーランド
- 欧州：EU加盟国、英国、スイス等
- 中南米：アルゼンチン、チリ、メキシコ等
- ビザが必要な主な国：
- アジア：中国、インド、フィリピン、ベトナム等
- 中東・アフリカ：大部分の国
- 旧ソ連諸国：ロシア、ウクライナ等
ビザ免除の条件：
- 観光、商用、親族訪問目的
- 90日以内の滞在
- 往復航空券と十分な滞在資金の所持
2. 申請手続き2-1. 申請場所
- 原則：申請者の居住国にある日本大使館・総領事館
- 管轄：居住地に応じた大使館・総領事館
- 代理申請：一部の国ではVFS Global等の指定機関を通じて申請
2-2. 申請から入国までの流れ
- 事前準備（申請1-2ヶ月前）
- 滞在目的・計画の明確化
- 必要書類の確認、招待者への書類依頼
- 書類準備（申請2-4週間前）
- 申請書類の作成・収集
- 翻訳が必要な書類の手配
- 招待状・身元保証書の受領
- 申請
- 大使館・総領事館に書類提出
- 申請手数料（通常無料、一部有料）
- 必要に応じて面接
- 審査（5-10営業日）
- 書類審査、追加書類の要求（場合による）
- 外務省本省での審査（必要な場合）
- 査証発給
- 審査通過後、パスポートに査証貼付
- 申請者へ返却
- 入国
- 入国審査（パスポートに印のみ、在留カードなし）
2-3. 審査のポイント
- 滞在目的の真正性（書類と記載内容の整合性）
- 経済能力（滞在費用の支弁能力）
- 帰国意思（期間終了後の帰国確実性）
- 過去の出入国歴（法令遵守状況）
- 招待者の信頼性（招待者の身元・経済状況）
3. 目的別必要書類3-1. 共通書類
- パスポート：有効期限が帰国日以降（6ヶ月以上推奨）、査証欄に空白ページ
- 査証申請書：外務省指定様式、正確な記入と本人署名
- 写真：縦4.5cm×横3.5cmまたは4.5cm、6ヶ月以内撮影、正面向き、背景白色
- 航空券予約確認書：往復または第三国への出国便が確認できるもの
- 滞在予定表：日程、滞在先、訪問地、移動手段を明記
3-2. 観光目的
- 経費支弁資料：銀行残高証明書、在職証明書、預金通帳写し
- 宿泊証明：ホテル予約確認書、民泊予約書、または滞在証明書
- 旅行計画書：詳細な観光予定、訪問地情報、移動計画
3-3. 商用目的日本側準備書類：
- 招聘理由書（目的、経緯、関係性等）
- 滞在予定表（会議・商談の相手方、訪問先情報）
- 招聘人資料（登記簿謄本、会社概要、決算報告書）
申請者準備書類：
- 在職証明書（役職・勤務期間明記）
- 会社概要（パンフレット、事業内容）
3-4. 親族・知人訪問日本側準備書類：
- 招聘理由書（目的、関係性、滞在先）
- 身元保証書（経費負担・帰国保証）
- 招聘人身分資料（住民票、在留カード・パスポートコピー）
- 経費支弁能力資料（課税証明書、残高証明書等）
申請者準備書類：
- 関係証明資料（戸籍謄本、写真、通信記録等）
- 経費支弁資料（申請者が負担する場合：残高証明書、収入証明書）
4. 申請時の注意点と成功のポイント4-1. 書類作成の注意
- 正確性：申請書と書類の整合性、情報の統一
- 完備性：チェックリストで書類漏れ防止、原本・コピー区分明確
- 信憑性：公的書類の証明印確認、偽造厳禁
4-2. 不許可理由と対策
- 滞在目的の不明確さ
- 対策：詳細な滞在計画、商用目的は相手方との関係明確化
- 経済能力不足
- 対策：十分な残高証明書、招聘人の経費負担証明
- 帰国意思の疑い
- 対策：本国の職業・家族関係証明、適法な出入国歴強調
- 招聘人信頼性不足
- 対策：招聘人の安定した身元・経済状況証明
- 書類不備・不整合
- 対策：事前チェック、専門家相談
4-3. 申請成功のアドバイス
- 事前準備：2-3ヶ月前から開始、大使館の最新要件確認
- 書類の質：正確な翻訳、高品質写真、整理整頓
- 面接対策：目的を明確に説明、書類内容の理解、誠実な回答
5. 入国審査と滞在中の注意5-1. 入国審査確認事項：
- パスポート・査証の有効性
- 入国目的、滞在期間、資金、帰国予定、滞在先
準備：
- 申請書類の携行
- 滞在予定表、宿泊証明、十分な現金・カード、招聘人連絡先
5-2. 滞在中の遵守事項
- 活動制限：許可された活動のみ、就労・風俗営業禁止
- 滞在期間：期間厳守、オーバーステイは強制退去リスク
- 住所変更届（90日超の場合）：14日以内に届出
6. 特殊ケース6-1. 数次査証（マルチプルビザ）
- 対象者：経済力・社会的地位があり、過去に日本渡航歴のある者
- 有効期間：1年、3年、または5年（1回90日以内、複数回入国可）
- 要件：過去3年以内の渡航実績、経済力証明、特別書類
6-2. 延長申請
- 事由：疾病、災害、その他特別な事情
- 手続き：在留期間満了前に地方出入国在留管理官署で申請、診断書等必要
- 期間：原則30日以内、最大90日
6-3. 在留資格変更
- 可能な資格：定住者（日本人配偶者等）、特定活動
- 要件：やむを得ない特別な事情、法定要件充足
7. トラブル対応・Q&A7-1. 査証申請拒否への対応
- 対応：拒否理由分析、不備修正、追加書類準備、一定期間後の再申請
- ポイント：状況変化の明確化、詳細な資料作成
7-2. よくある質問Q1. 申請期間は？
A1. 通常5-10営業日。書類不備や追加調査で延長する場合あり。 Q2. 査証があれば入国確実？
A2. 査証は入国申請資格。最終許可は入国審査官の判断。 Q3. 就労は可能？
A3. 禁止。違反は強制退去等のリスク。 Q4. 滞在延長は？
A4. 原則不可だが、疾病・災害等で例外的に可能。 Q5. 在留資格変更は？
A5. 原則不可だが、結婚等の特例で可能。 Q6. ビザ免除で90日超滞在は？
A6. 適切な在留資格への変更または出国・再入国が必要。
8. 制度変更と展望8-1. 最近の変更
- 電子査証（e-Visa）：対象国拡大、オンライン申請促進
- 手続き簡素化：書類削減、数次査証の有効期間延長
8-2. 今後の展望
- デジタル化：電子申請拡充、AI審査効率化
- 国際情勢対応：二国間関係や感染症対策に応じた政策調整
まとめ短期滞在ビザは、観光、商用、親族訪問等の短期滞在を支える重要な制度です。成功の鍵は、滞在目的の明確化、適切な書類準備、正確な手続きです。特に、真正な目的、経済能力、帰国意思を説得力ある書類と面接で示すことが重要です。招聘人がいる場合は、協力による書類準備が不可欠です。
複雑なケースや不安がある場合は、行政書士等の専門家相談を推奨します。適切な準備で、スムーズな査証取得と快適な日本滞在を実現してください。