
医療法人の設立について – 詳細ガイド
医療法人とは
医療法人は、医療法第39条に基づいて設立される法人です。個人事業主として開業していた医師が、法人格を取得して経営形態を変更することで、株式会社の社長のような立場になるイメージです。
医療法人化により、医師が直接診療報酬を受け取るのではなく、医療法人が診療報酬を受け取り、医師は法人から給与を受け取る形になります。
医療法人の種類
医療法人には以下の3つの種類があります:
社団法人
- 複数人が出資や拠出を行って設立
- 「定款」によって基本事項が定められる
財団法人
- 個人または法人が財産を寄附して設立
- 「寄附行為」によって基本事項が定められる
一人医師医療法人
- 一般の医療法人:医師または歯科医師が常時3名以上勤務が必要
- 一人医師医療法人:医師または歯科医師が常時1名以上勤務で設立可能
- 医師のみ、または医師と親族のみで医療法人を設立できる
医療法人化のメリット
1. 節税効果が期待できる
- 税率の優遇:法人税は所得税よりも税率が低い場合がある
- 給与所得控除:理事長が法人から給与を受け取ることで給与所得控除を適用可能
- 退職金の損金算入:退職金を経費として計上できる
- 欠損金の繰越:赤字を10年間繰り越すことができる
2. 事業承継がしやすい
- 承継手続きの簡素化:後継者への経営継承が容易
- 個人事業の場合:一度廃業し、後継者が再度開設手続きを行う必要
- 法人の場合:理事長変更手続きにより、病院運営を継続したまま経営者交代が可能
3. 事業拡大の可能性
- 分院開設:個人では不可能な分院開設が可能
- 多角化経営:介護老人保健施設等の関連事業も展開可能
4. 社会的信用の向上
- 経営の透明性向上:地域や社会からの信頼度が向上
- 金融機関からの信用:融資を受けやすくなり、経営拡大が容易
医療法人化のデメリット
1. 事務負担の増加
- 報告義務:都道府県知事への事業報告書等の提出義務
- 登記手続き:各種変更に伴う登記手続きが必要
2. 社会保険料負担の義務化
- 個人事業(従業員5名未満):社会保険加入義務なし
- 医療法人:従業員数に関わらず社会保険・厚生年金加入が義務
- 結果として福利厚生費が増加
3. 解散の制約
- 永続性の原則:地域医療の担い手として継続運営が前提
- 個人的理由での解散不可:簡単に解散することができない
- 理事長退任時は後継者選定またはM&Aの検討が必要
4. 残余財産の帰属
- 国等への帰属:解散時の残余財産は国や地方公共団体に帰属
- 対策方法:退職金支給により財産を残さない工夫が可能
- 急逝の場合:弔慰金として支払うことも可能
医療法人設立の申請プロセス
設立申請から許可取得まで約6ヶ月を要するため、綿密な準備が必要です。
1. 説明会参加と書類作成
- 説明会参加:年2〜3回開催される医療法人設立説明会への参加
- 情報収集:各都道府県のホームページで申請方法・必要書類を確認
- 書類準備:認可申請書、定款、予算書等の多数の書類が必要
2. 設立総会の開催
- 参加者:社員や理事を対象とした設立総会を開催
- 承認事項:定款や基礎事項について正式承認を取得
3. 仮申請の実施
- 書類準備:本申請に必要な全書類を仮申請時点で準備
- 必須プロセス:仮申請なしには本申請に進めない
- 注意事項:期限に間に合わない場合、次回申請期間まで待機が必要
4. 事前協議
- 書類審査:仮申請書類の詳細審査が実施
- 修正対応:必要に応じた修正・追加資料の提出
- 面接実施:担当者による面接が行われる
5. 本申請
- 最終書類提出:関係者の捺印を得た正式書類の提出
- 書類区分:原本提出書類と写し可能書類の区別に注意
6. 認可・登記
- 医療審議会による審議:提出書類の最終審査
- 許可書交付:認可後、医療法人設立許可書が交付
- 登記申請:許可書受領後2週間以内に法務局へ登記申請
専門家への相談について
医療法人設立は複雑な手続きが多数必要となるため、行政書士等の専門家への相談を強く推奨します。行政書士法人塩永事務所では、病院の法人化に向けた包括的な手続きサポートを提供しています。