
短期滞在ビザ(観光ビザ)── 日本入国のための実務ガイド(改訂版)
はじめに
短期滞在(Short-term stay)は、観光・商用(報酬を伴わない)・親族訪問などを目的に短期間日本に滞在することを認める在留資格です。原則として90日以内の非報酬活動が対象となり、就労(報酬を受ける活動)は許されません。最終的な入国可否は入国審査官の判断です。
1. 短期滞在ビザの概要
1-1 定義と主な制限
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対象活動:観光、商談・会議参加(報酬を伴わない)、親族・知人訪問、短期の学術・文化交流、スポーツ・芸術参加、医療受診、冠婚葬祭など。
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在留期間の目安:最大90日(国籍・状況による)。在外公館が発給する査証の種類として15日/30日/90日等がある場合がありますが、実際の許可期間は審査により決定されます
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禁止事項:報酬を伴う就労、届出・許可のいる業務への従事。査証があっても入国時に拒否されることがあります。
1-2 ビザ免除(査証不要)について
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外務省の運用により、査証免除措置(短期滞在)を受ける国・地域の数や条件は更新されます。2025年9月時点では74の国・地域がビザ免除の対象となっています。渡航前に必ず最新の対象国・条件を確認してください。
2. 申請場所と手続きの流れ
2-1 申請窓口
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原則:申請者の居住国にある日本国大使館・総領事館で申請。
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一部の国・地域では外務省が指定する代理申請機関(例:VFS Global等)を通す場合があります(各在外公館の指示に従う)。
2-2 典型的な申請の流れ(目安)
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事前準備(申請2〜8週間前):目的の整理、必要書類の洗い出し、招聘人との調整。
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書類作成・翻訳(申請2〜4週間前):申請書、写真、旅程表、招へい関係書類などの準備。
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在外公館へ提出(申請段階):必要に応じて面接。同時に手数料を支払う(国によって無料/有料)。
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審査(通常:5〜10営業日前後が一般的だが国・時期で変動)。審査中に追加書類を求められることあり。
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査証発給 → パスポート返却 → 日本へ出発 → 入国審査で最終判断。
3. 申請時に必要な主な書類(目的別)
共通必須
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パスポート(有効期間が十分に残っていること、査証欄の余白)
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査証申請書(所定様式・署名)
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写真(最近6ヶ月以内、規格に合うもの)
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航空券予約確認書(往復または第三国行きの予約)
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滞在予定表(詳細に:日付/滞在先/訪問先)
観光の場合(+)
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銀行残高証明や在職証明など経費負担能力の立証資料
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宿泊予約確認書または滞在先の詳細
商用の場合(+)(招聘側の書類が重要)
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招聘理由書/招聘者からの滞在予定表
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招聘企業の登記簿謄本・会社概要など
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申請人の在職証明書・会社情報
親族・知人訪問の場合(+)(招聘側の書類)
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招聘理由書、身元保証書、招聘人の住民票等(招聘人が日本人または在留外国人の場合)
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申請人側は関係を示す戸籍等・写真等の追加資料があると良い
※在外公館や国籍別に追加書類が求められることが多いため、必ず該当公館の提出要項を確認してください。
4. 審査で注意すべき点(不許可になりやすい例と対策)
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滞在目的が不明確:日程・訪問先を具体的に記載し、商用なら相手企業名や会議名を明記。
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経済力不足:通帳の直近残高証明や在職証明を用意。招聘者負担の場合は招聘者側の財務資料を添付。
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帰国意思の疑い:本国の安定した職業・家族関係や帰国便の予約等を提示。
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招聘人側の信頼性不足:住民票や納税証明など招聘人の公的書類を整える。
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書類不備・矛盾:提出前に日付・氏名・住所の不整合がないか入念にチェック。
5. 入国時・滞在中の実務ポイント
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入国審査:パスポート・査証に加え、滞在目的や滞在先、帰国手段について質問されることがある。査証があっても最終判断は入国審査官。必要書類のコピー一式を携行すると安心です。
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滞在中の遵守事項:許可された活動範囲内でのみ行動すること。就労や長期滞在を意図する活動は厳禁。滞在期間を必ず守ること。
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住所変更等:90日を超えて在留する場合は届出義務等が発生(短期滞在者は原則90日以内が前提)。該当する場合は所轄の入国在留管理局の指示に従うこと
6. 特殊ケース(数次査証・延長・在留資格変更)
6-1 数次査証(マルチプルビザ)
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一部の渡航者には複数回入国可能な数次査証が発給されます(有効期間や要件は国籍・審査状況による)。過去の渡航歴や経済力等が審査要素となります。
6-2 e-Visa(電子査証)
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外務省はJAPAN eVISAを段階的に導入・拡充しています。対象国や申請要件は随時拡大しているため、e-Visaの利用可否は出発前に公式ページで確認してください
6-3 延長・在留資格変更
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短期滞在は原則延長不可ですが、疾病・災害などやむを得ない事情がある場合は地方出入国在留管理官署で延長申請(在留期間更新許可申請)を行うことができます。短期滞在から他の在留資格への変更は原則困難で、例外的に特別な事情を要します。手続きや要件は入国在留管理庁の案内に従ってください。
7. トラブル対応とQ&A(要点)
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申請拒否後:拒否理由を推定して追加資料を準備し、状況変化を示せる場合は再申請を検討。
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査証が出たのに入国拒否された場合:入国拒否理由を確認し、次回の申請資料に反映。場合によっては専門家(行政書士・弁護士)に相談。
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よくある質問(短縮版)
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申請期間:通常は数営業日〜2週間程度(公館・時期により変動)。
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査証=入国保証ではない:査証は入国申請資格を与えるのみで、入国可否は審査官が最終決定。
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8. 最新の制度動向(チェックポイント)
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ビザ免除の対象国数や条件は変動します(例:近年の拡大・見直し)。渡航前に必ず外務省の「査証免除」ページを確認してください。
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e-Visaの導入拡大:オンライン申請の対象国が拡大しており、手続きの簡素化が進んでいます。国籍や申請目的によってはe-Visaが利用可能です。
まとめ(実務ワンポイント)
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まずは公館の公式案内を確認(国籍ごとに要件が異なる)。
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滞在目的を具体化し、日程・訪問先を明確にすること。
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経済能力・帰国意思の立証を書類で整える(残高証明・在職証明など)。
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特殊事例や過去の拒否歴がある場合は早めに専門家に相談すると効果的。