
障害者グループホームの開業ガイド|立ち上げの流れと必要な条件を解説
障害者グループホームの開業を検討しているものの、「何から始めればいいの?」「必要な条件や資格は?」といった疑問をお持ちではないでしょうか。
この記事では、障害者グループホームの開業から立ち上げまでのステップを、必要な条件や市場の動向と合わせて詳しく解説します。
障害者グループホームとは?
グループホームとは、障害のある方が食事や入浴といった日常生活の支援を受けながら、一戸建てやマンションで共同生活を送る障害福祉サービスです。正式名称を「共同生活援助」といいます。
サービス種別
グループホームには、主に以下の3つのサービス種別があります。
このほかに、一人暮らしに近い形で生活しつつ、食事や余暇活動は近くのグループホームで提供する「サテライト型」もあります。
グループホームの需要と収益性
市場の動向
厚生労働省のデータによると、グループホームの利用者数と事業所数は増加傾向にあります。障害のある方の生活の場として、グループホームの需要は高まっていると言えるでしょう。
グループホームは儲かる?
2022年度の「障害福祉サービス等経営実態調査」によると、収入から支出を引いた**収支差率(利益率)**の全国平均は、以下の通りです。
収支差率がプラスの事業所が多いため、グループホームは十分に利益が見込める事業です。ただし、赤字の事業所も存在するため、開業前に綿密な事業計画を立てることが重要です。
収益構造
グループホームの主な収入源は、サービスを提供した対価として得る**「障害福祉サービスの報酬」**です。報酬は、基本報酬と加算・減算で構成されます。
- 基本報酬:利用者の障害支援区分やグループホームの種類によって金額が異なります。障害支援区分が高い(支援の必要性が高い)利用者ほど、基本報酬も高くなります。
- 加算・減算:一定の条件を満たせば「加算」として報酬が増え、基準を満たさない場合は「減算」として報酬が減ります。例えば、必要な資格を持つ職員を多く配置すると加算対象になります。
グループホーム開業に必要な条件
グループホームを開業・運営するには、以下の4つの条件を満たす必要があります。
- 法人格を有している
- 人員基準を満たす
- 設備基準を満たす
- 運営基準を満たす
1. 法人格を有している
個人事業主としてグループホームを運営することはできません。株式会社、合同会社、NPO法人などの法人格の取得が必須です。法人設立には、それぞれメリット・デメリットがあるため、開業資金や運営方針に合わせて最適な形態を選びましょう。
2. 人員基準を満たす
グループホームには、配置しなければならない職種と人数が法律で定められています。 主な職種は以下の通りです。
これらの基準は開業後も満たし続ける必要があり、満たせない場合は報酬の減額や行政指導の対象となります。
3. 設備基準を満たす
グループホームの建物は、居室の面積や設備、立地に関する基準を満たす必要があります。
- 居室:原則1人1室で、面積は収納スペースを除き7.43㎡以上必要です。
- 設備:居間、食堂、風呂、洗面所、トイレ、台所など、共同生活に必要な設備を備える必要があります。
- 立地:病院や入所施設の敷地内ではなく、住宅地やそれに準ずる地域に位置していることが求められます。
詳細な基準は自治体によって異なる場合があるため、物件を探す前に必ず確認しましょう。
4. 運営基準を満たす
サービスの目的、従業員の職種や人数、緊急時の対応方法、虐待防止策など、事業運営に関する事項を定めた**「運営規程」を作成**する必要があります。
グループホーム開業・立ち上げの流れ
グループホームの開業には、半年から1年ほどの準備期間が必要です。
ステップ1:事業計画書の作成
開業の羅針盤となる事業計画書を作成します。事業方針、競合分析、収支計画などを盛り込み、現実的な内容にすることが重要です。この書類は、指定申請や金融機関からの融資を受ける際に必要となります。
ステップ2:法人設立
株式会社、合同会社などの法人を設立します。目的や役員、資本金などを決定し、登記手続きを行います。
ステップ3:開業資金の調達
グループホームの開業には、一般的に約1,000万円の資金が必要とされています。自己資金だけでは難しい場合が多いため、金融機関からの融資を検討しましょう。
ステップ4:物件探し・契約
人員基準、設備基準、賃料、立地などを考慮して物件を探し、契約します。
ステップ5:従業員の採用
開業に必要な人員基準を満たすために、指定申請前に従業員を確保する必要があります。必要な職種と人数を事前に計算しておきましょう。
ステップ6:物件のリフォーム
物件の設備基準を満たし、利用者が快適に過ごせるように必要に応じてリフォームを行います。
ステップ7:備品の調達
電話、FAX、パソコンなどのオフィス用品から、利用者向けの家具や家電まで、必要な備品をリストアップして購入します。
ステップ8:指定申請
管轄の自治体に「指定申請」を行い、事業所の許認可を得ます。必要書類の準備には時間がかかるため、開業希望月の3~6か月前には自治体へ事前相談を始めましょう。
ステップ9:業務支援システムの手配
利用者情報や請求業務を管理するシステムを導入します。
ステップ10:サービス利用者の獲得
利用者を募集し、契約につなげます。
まとめ
グループホームの開業は、法人設立、資金調達、物件探し、従業員採用など、多くのステップを踏む必要があります。半年から1年ほどの期間をかけて、計画的に準備を進めることが成功の鍵となります。
「何から始めればいいか分からない」「手続きに不安がある」といったお悩みをお持ちの方は、行政書士法人塩永事務所の専門家にご相談ください。開業までのスケジュール作成から、各種手続きの代行まで、手厚くサポートします。