
行政書士が解説|日本版DBS(こども性暴力防止法)における「犯罪事実確認」業務フロー
1. 制度の概要と目的
日本版DBS(こども性暴力防止法)における「犯罪事実確認」は、制度の中核をなす手続きです。
教育・保育・福祉等の現場で子どもと関わる従事者について、過去の性犯罪歴を確認し、子どもを性暴力のリスクから守ることを目的としています。
この仕組みは、
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子どもの安全確保を最優先とする理念の下に運用され、
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従事者のプライバシーや職業選択の自由、事業者の営業の自由に直接関わるため、
必要性と合理性に基づき、厳格かつ限定的に実施されることが特徴です。
全国の教育・保育・福祉事業者にとって、本制度は安全な職場環境を維持するための最重要手続きといえます。
2. 犯罪事実確認の業務フロー(Step A〜G)
Step A:事前準備・情報提供
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制度の趣旨、対象者、必要書類、結果への対応方法、個人情報管理の取扱いを従事者に周知。
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新規採用者、現職者、派遣職員、ボランティア等、対象者を網羅的に把握。
Step B:申請プロセス
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従事者本人が戸籍情報を登録(電子戸籍・除籍データ・紙媒体のいずれか)。
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事業者がシステム経由で申請し、新規従事者か否か、また「いとま特例」適用の有無を記載。
Step C:行政による確認・照会
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こども家庭庁が戸籍情報と本人を照合。
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法務大臣への照会を経て、検察総合情報管理システムにより特定性犯罪事実の有無を検索。
Step D:結果通知・交付
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事業者に対して「犯罪事実確認書」を交付。
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従事者本人にも通知が届き、誤りがあれば2週間以内に訂正請求が可能。
Step E:結果に基づく措置・情報管理
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特定性犯罪歴がある場合、原則として業務に従事させない。
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「いとま特例」適用時には、以下の措置が必須:
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子どもとの一対一接触禁止
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研修受講
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複数職員による体制整備
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情報は最高レベルの機密として管理し、5年経過後または離職時に完全消去。
Step F:監督・報告
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所轄庁による監督が実施される。
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事業者は 年1回以上の定期報告、および重大事態発生時の 緊急報告 が義務付けられる。
Step G:再発防止策
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性暴力事案や制度違反が発生した場合は、要因分析 → 改善策 → モニタリングを継続的に実施。
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評価が難しい場合でも、予防的観点からの再発防止策を講じることが推奨される。
3. 実務担当者のチェックリスト
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制度説明・必要書類の準備
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戸籍情報登録およびシステム申請の管理
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結果通知の確認・訂正請求対応
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防止措置の徹底(配置転換・特例時の体制確保)
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情報管理、記録作成、廃棄スケジュールの設定
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年次報告と緊急報告の実施
4. よくある質問(FAQ)
Q1. 従事者が戸籍提出を拒否した場合は?
→ 法的義務に基づく手続きであるため、拒否は業務命令違反となる可能性があります。事前説明を徹底し、それでも拒否する場合は就業規則に基づいて対応が必要です。
Q2. 「いとま特例」はいつ利用できる?
→ 急な欠員や契約遅延など、やむを得ない事情に限られます。
Q3. システム障害が発生した場合は?
→ 復旧を待つのが原則ですが、緊急性が高い場合はこども家庭庁へ直接相談します。
5. 事業者が今すぐ取り組むべき準備
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就業規則・雇用契約書の見直し
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従事者説明資料の作成
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戸籍取得の手順確認
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システム利用環境と緊急時対応体制の整備
6. まとめと実務上のポイント
日本版DBSの「犯罪事実確認」は、単なる形式的な手続きではなく、子どもたちの安全を守る使命を果たすための制度的ツールです。
事業者には、
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透明性
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正確性
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継続性
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機密性
を確保した運用が求められます。
「準備は早めに、実施は慎重に」
子どもたちの安全な環境づくりに向けて、着実に取り組むことが重要です。
従事者への丁寧な説明、正確な申請、適切な措置、徹底した情報管理をサポートいたします。
事業者の皆様が安心して制度を運用できるよう、弁護士・社会保険労務士等の専門家と連携しながらバックアップを続けてまいります。