
技能実習制度における外部監査人の役割と行政書士に依頼するメリット
技能実習制度を適正に運用するため、監理団体には外部監査人または指定外部役員の選任が義務付けられています。これらの役割は、制度の透明性と信頼性を確保するために不可欠です。この記事では、特に外部監査人に焦点を当て、その役割、職務内容、そして行政書士に依頼する際の具体的な流れとメリットについて詳しく解説します。
外部監査人とは?
外部監査人は、監理団体が監理事業の許可を受けるための必須要件の一つです。その主な目的は、監理事業が適正に運営されているかを外部の独立した視点からチェックすることにあります。
外部監査人の概要と要件
外部監査人または指定外部役員を選任しなければならないという要件は、以下の法律に基づいています。
監理事業の適切な運営を阻害するおそれがないように、役員の構成を管理すること。あるいは、監理団体の外部の者で、実習実施者と密接な関係を持たない者に、役員の職務執行の監査を行わせること。
外部監査人は、監理団体からの選任を受けた個人または法人が就任できます。その職務は、技能実習を実施する団体(実習実施者)の監査業務が適切に行われているかを外部から監査することです。
選任されるには以下の要件を満たす必要があります。
- 過去3年以内に外部監査人に対する講習を修了していること。
- 外部監査を適正に行う経験と能力を有していること。この能力は、公的資格(行政書士など)や人事労務の実務経験によって証明されることが一般的です。
指定外部役員との違い
外部監査人と指定外部役員は、どちらも監理事業の監査を担いますが、監査を行う立場が異なります。
- 外部監査人: 監理団体の外部から監査を行います。法人または個人が選任されます。
- 指定外部役員: 監理団体の内部から監査を行います。監理団体の外部役員の中から指定されます。
この違いを理解することは、監理団体がどちらの形態を選ぶかを判断する上で重要です。
外部監査人の具体的な職務内容
外部監査人の業務は、監理団体の事業所に対する監査と、実習実施者(受け入れ企業)に対する監査の2つに大別されます。
監理団体に対する監査
外部監査人は、監理団体の各事業所において、3か月に1回以上の頻度で以下の業務を行います。
- 報告の受領: 責任役員や監理責任者から、事業運営に関する報告を受けます。
- 帳簿書類等の閲覧: 事業所の設備や帳簿、その他関連書類を閲覧し、運営状況を確認します。
- 報告書の作成・提出: 上記の監査結果を文書にまとめ、監理団体に提出します。
実習実施者に対する監査
外部監査人は、監理団体が実施する技能実習生の受け入れ企業への実地確認に、1年に1回以上同行します。
- 監理の適正性確認: 監理団体が実習実施者を適切に監理しているかを確認します。
- 報告書の作成・提出: 監査結果を文書にまとめ、監理団体に提出します。
外部監査人がチェックする項目
監査項目は多岐にわたりますが、主に以下の5つのカテゴリーに分類されます。
- 監理費: 監理費の用途や金額が事前に明示されているかを確認します。不透明な費用徴収がないかをチェックします。
- 業務: 技能実習が、認定された計画通りに行われているかを確認します。
- 書類: 実習実施者や実習生の管理簿が適切に作成・保管されているかをチェックします。
- 保護: 技能実習生に対し、暴行、脅迫、監禁などの人権侵害行為がないかを監査します。
- その他: 監理団体の許可証が事業所に備え付けられているかなど、法令順守に関わる項目を確認します。
外部監査人を行政書士に依頼するメリットと流れ
外部監査人には、「監理団体および技能実習受け入れ企業と過去5年以内に関わりがない」という要件があります。そのため、特定の団体との利害関係がない行政書士が外部監査人として選任されるケースが非常に多いです。
依頼するメリット
行政書士に依頼する主なメリットは以下の通りです。
- 専門性と信頼性: 行政書士は法律の専門家であり、国際関連業務に精通した人も多いため、安心して監査業務を任せることができます。
- 適切な監査の実施: 技能実習制度に関する最新の法令や要件を熟知しているため、法令に則った適切な監査が期待できます。
- 業務のリスク軽減: 不適切な監査による法的問題の発生リスクを低減できます。
依頼の基本的な流れ
外部監査人を行政書士に依頼する際の一般的な流れは以下の通りです。
- 問い合わせ: 電話やメール、ウェブサイトの問い合わせフォームを通じて、行政書士事務所に連絡します。
- オンライン相談: Zoomなどを利用して、業務内容や料金、契約条件などについて相談します。
- 詳細な打ち合わせ: 面談などを通じて、監査の具体的な範囲やスケジュールを詳細に決定します。
- 契約: 双方の合意に基づいて、契約を締結します。契約期間は1年間で、自動更新となるケースが多いです。
- 業務の実施: 契約内容に基づき、監査業務が開始されます。
- 報告と対応: 監査結果の報告書を受け取り、必要に応じて改善策などのアドバイスを受けます。
外部監査人依頼の費用
外部監査人を行政書士に依頼する場合の費用は、業務内容によって異なります
- 交通費: 実費
- 監査料: 1時間あたり5500円
- 書類作成料: 1件あたり15,000円から
- 日当: 1時間あたり5000円
これらの費用に加えて、監理事業許可申請や技能実習計画の認定申請などを併せて依頼する場合は、別途費用が発生します。
技能実習制度の適正な運用は、監理団体と実習実施者双方にとって不可欠です。外部監査人として信頼できる行政書士に依頼することは、制度の健全な発展に貢献するだけでなく、事業運営上のリスクを軽減する上でも非常に有効な手段と言えます。お声掛けください。