
遺言執行人の手続きの詳細
行政書士法人塩永事務所
はじめに
遺言執行人は、故人の遺言書の内容を確実に実現するための重要な役割を担います。遺言執行人に選任された方は、法的責任を伴う多くの手続きを行う必要があります。本記事では、遺言執行人が行うべき手続きについて、時系列順に詳しく解説いたします。
遺言執行人とは
遺言執行人とは、遺言者が亡くなった後、遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う者です。民法第1006条により、遺言執行人は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するとされています。
遺言執行人の選任
指定による選任
- 遺言書で直接指定される場合
- 遺言書で第三者に委託して指定される場合
家庭裁判所による選任
遺言書で指定されていない場合や、指定された者が辞退・欠格事由に該当する場合は、利害関係人の申立てにより家庭裁判所が選任します。
遺言執行人の手続きの流れ
1. 就任の意思表示
就任承諾の手続き
- 相続人等に対する就任通知書の送付
- 就任承諾書の作成
- 通知時期:就任を知った時から遅滞なく
必要書類
- 遺言執行人就任承諾書
- 遺言書の写し
- 被相続人の死亡証明書
- 遺言執行人の印鑑証明書
2. 相続人・受遺者の調査確定
戸籍等の取得
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の現在戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
相続関係説明図の作成
取得した戸籍をもとに、相続関係を明確にした図表を作成します。
3. 相続財産の調査・目録作成
財産調査の実施
- 不動産:登記簿謄本の取得、固定資産評価証明書の取得
- 預貯金:各金融機関への残高証明書請求
- 有価証券:証券会社への残高照会
- 負債:債権者からの請求書等の確認
相続財産目録の作成
- 民法第1011条に基づき、遺言執行人は相続財産の目録を作成する義務があります
- 目録完成後、相続人に交付します
4. 遺言内容の執行
不動産の相続登記
- 法務局での所有権移転登記申請
- 必要書類:登記申請書、遺言書、被相続人の戸籍謄本、相続人の住民票等
預貯金の解約・名義変更
- 各金融機関での手続き
- 必要書類:遺言書、被相続人の戸籍謄本、遺言執行人の印鑑証明書等
株式・有価証券の名義変更
- 証券会社・信託銀行での手続き
- 株主名簿の書き換え手続き
債務の承継手続き
- 債権者への通知
- 債務承継に関する手続き
5. 特別な遺言事項の執行
相続人の廃除
- 家庭裁判所への審判申立て
- 廃除の理由となる事実の立証
一般財団法人の設立
- 定款の作成
- 設立登記の申請
6. 執行完了後の手続き
執行完了の報告
- 相続人・受遺者への執行完了通知
- 執行経過報告書の作成・交付
残余財産の処理
- 遺言で指定されていない財産の処理
- 相続人への引き渡し
遺言執行人の注意事項
善管注意義務
遺言執行人は善良な管理者の注意をもって職務を行う義務があります。
利益相反行為の禁止
自己または第三者の利益を図る行為は禁止されています。
報酬について
遺言で報酬が定められていない場合は、家庭裁判所が相続財産の状況その他の事情によって定めます。
遺言執行人を辞任したい場合
正当な事由がある場合は、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます。
まとめ
遺言執行人の職務は多岐にわたり、専門的な知識と慎重な手続きが求められます。法的責任も重く、手続きに不安がある場合は、専門家にご相談されることをお勧めいたします。
お問い合わせ
遺言執行に関するご相談は、行政書士法人塩永事務所までお気軽にお問い合わせください。経験豊富な専門スタッフが、丁寧にサポートいたします。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別具体的な案件については専門家にご相談ください。
行政書士法人塩永事務所 096-385-9002